路線バスの改革で先進的な取り組みをしている青森県八戸市を訪れました。八戸市都市整備部都市政策課の方々のご案内で中心街や八戸駅周辺を視察しました。都市政策課の方々にはこの場を借りてお礼を申し上げます。中心街と八戸駅を分けて書いたのは、JR東日本東北新幹線などが発着する八戸駅は中心街からは6kmほど離れているからで、中心街にもっとも近いのは八戸線の本八戸駅になります。

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八戸市が改革を始めたきっかけは、2007年に施行された「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」でした。これを受けて八戸市地域公共交通会議が設置され、地域交通が専門の大学教授をアドバイザーに迎えて協議を進めた結果、2年後に「八戸市地域公共交通総合連携計画」が作成され、2010年以降実施に移されました。

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八戸市には八戸市交通部の市営バス、みちのりホールディングス傘下の岩手県北自動車が走らせる南部バス、十和田観光電鉄の十鉄バスが運行していますが、以前は各事業者が独自にバスを走らせていたので、日本の地方都市によくある例ですが、メインルートとなる八戸駅と中心街の間は本数が多すぎ、需要があるのに収益が悪いことが問題となっていました。

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そこで八戸駅~中心部は共同運行路線として10分ごとのダイヤを作成。さらに中心街を起点として方面別にアルファベットを系統番号の頭に付けました。アルファベットは欧州の都市交通を参考にしたそうで、市民病院方面はS、湊方面はMなどとなっています。バスマップは系統別に色分けがなされ、線の太さで運行頻度を示していました。運賃を50円刻みとしたことを含め、分かりやすさが印象的でした。

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*ダイヤ改正直前だったので時刻表は紙で示してありました

また中心街は方向別にバス停を5つにまとめターミナルとしていました。ターミナルといってもビルがあるわけではなく、中心街の通りのバス停5か所を総称したものですが、鉄道の駅名標をヒントにしたという大きく見やすい情報板のおかげもあって、すぐに使いこなすことができました。待合場所はバス停脇の商業施設などの協力を得て、軒先を使わせてもらうという合理的な発想でした。

前述したように八戸駅と中心部の間にはJR八戸線も走っていますが、両者は競合することなく、うまく棲み分けができているようでした。10分間隔で走るバスの所要時間が25分なのに対し、昼間は1時間に1本の鉄道は9分で結んでいるからです。それを裏付けるように、八戸線の車両は2年前に投入されたばかりの新型で、安定した需要があることが想像できました。

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驚いたのはバスの乗車率で、平日の昼間に座席がほぼ埋まるのは、自分が乗車した地方の路線バスとしては異例です。中心部を歩く人の数も、良い意味で日本の地方都市とは思えないほどで、商店や飲食店は当然のように営業しており、複合施設の「八戸ポータルミュージアムはっち」や「八戸まちなか広場マチニワ」は市民の憩いの場所として活用されていました。公共交通活性化によるまちづくりの成功例のひとつと言っていいでしょう。

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気になる点を挙げるとすれば、バスも鉄道も現金対応だけで、ICカードやアプリなどが使えないことかもしれません。ただしアドバイザーを務める先生は、フィンランドのMaaSなど国内外の交通事情に精通しているので、早々にデジタル化が進められるのではという期待はあります。なによりも市の主導でここまでの交通改革を成し遂げた経験と実力があるのですから、実現の可能性は高いと考えています。