令和の時代が始まりました。この新しい時代に大きな変化が起こりそうなモビリティのひとつに、自動車の自動運転があります。我が国では来年、自家用車の高速道路でのレベル3および限定地域でのレベル4無人運転移動サービスの市場化を期待しており、大きな問題が起こらなければ普及が進んでいくと予想しています。

この話題については、5月1日13時からJFN/ジャパンエフエムネットワーク系列で放送された特別番組「新しい時代が始まるラジオ」でもお話しましたが(放送から1週間以内であればradikoで聞くことができるそうです)、そこでは触れなかった話題として、自動運転車の普及によって渋滞が増えるという研究結果を最近いくつか見るようになりました。
 
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このブログでは1年以上前に、「自動運転があれば公共交通は不要という嘘」と題して、乗用車は輸送効率の点で、鉄道などの大量輸送機関に取って代わるものにはなり得ないと書きました。MaaS誕生に関わった組織のひとつであるITSフィンランドも同様の考えを持っており、上のような図版で説明しています。だからこそMaaSにマイカーを含めず、タクシーやライドシェアより鉄道やバスの利用を促した内容としたのでしょう。
 
自動運転車は車間距離が人間の運転より詰められることから、渋滞を減らせるという主張は以前からありました。ライドシェアのパイオニア、ウーバー・テクノロジーズは自動運転とライドシェアの融合で最大97%の自動車を減らせると公表していました。しかし移動者の数が減るわけではありません。人件費削減によって自動運転移動サービスの運賃が安価になれば、公共交通の利用者がこちらに移り、むしろ台数が増加するという予想が出るようになったのです。

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現時点でも、ライドシェアの普及により公共交通の利用率が下がり、道路渋滞が増えたというニュースは目にします。中国ではドックレス方式の自転車シェアが大量に配備された結果、各所に自転車が放置され、人や車両の通行に支障を及ぼし、景観面でも悪影響をもたらしています。道路のキャパシティには限界があるのですから当然です。これが自動運転移動サービスにも当てはまります。

自動運転をビジネスとして推し進めたい人たちは、上で挙げたようなネガティブな話題は避けてきた印象があります(「空飛ぶタクシー」業界も似ています)。最近になってなぜ、逆風になるような真実が明かされたかは不明ですが、本格導入を前にこういう意見が出されるのは良いことです。私も自動運転やライドシェアは肯定の立場ですが、道路の能力を超えた配備は混乱を招くだけであり、自治体による総量規制などを掛ける必要がありそうです。

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ただしこれは都市部に限った話であり、地方は別の視点を持つべきです。地方は多くの場合、道路のキャパシティや人の流れに余裕があります。自動運転移動サービスによるコストメリットがほぼそのまま利点になるのです。ソフトバンクとトヨタ自動車の合弁会社モネ・テクノロジーズでは、すでに自動運転社会を見据えたモビリティサービスの実証実験を始めていますが、場所は過疎地域やニュータウンなどであり、自動運転移動サービスをどう活用すべきか理解していると感じています。