先月のブログで、京都府京丹後市でウーバーのアプリを使った地域交通「ささえ合い交通」を紹介しましたが、京丹後市ではそれ以外にもさまざまな交通改革を実施しています。今回は市内を走る唯一の民間バス事業者である丹後海陸交通の丹海バス(他に市営バスもあります)、唯一の鉄道である京都丹後鉄道が実施している上限200円運賃を取り上げます。

上限200円運賃

上の写真は丹海バスの車内に掲示している運賃表です。200円の数字が並んでいます。以前は多くの地方のバス同様、距離制運賃を採用しており、最高で1150円にもなっていました。京丹後市はその運賃の高さが利用者減少につながっていると考え、利用者でのアンケートでもっとも多かった200円を上限としたのです。

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2006年に一部路線で実証実験を始めると、すぐに利用者数の減少が止まり、反転しました。新規利用者の6割は高校生で、従来は多くがマイカー送迎や自転車などでの通学でしたが、200円なら定期券代が出せると家庭が判断したようです。高齢者の中にも、運転免許を返納してバス移動に切り替える人が出てきました。そこで2007年には市内全域に拡大。2010年からは本格実施となり、2013年からは周辺の宮津市、与謝野町、伊根町でも上限200円を採用しています。

最高で1000円以上だった運賃が200円となると、減収を予想する人もいるでしょう。しかし結果は逆で、利用者数が約2.7倍に増えたこともあり、新路線開設やバス停新設を行う余裕が生まれており、京丹後市が丹海バスに出している補助金額はほとんど変わっていません。補助金がないと運営が難しいことは事実ですが、このコラムで再三触れてきたように、海外の公共交通は税金や補助金主体で運営するのが一般的で、黒字赤字を重視する日本は特殊な状況であることを改めて記しておきます。

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一方京都丹後鉄道では2011年(当時の運行事業者は第三セクターの北近畿タンゴ鉄道)から、高齢者に限り上限200円運賃を導入しています。丹後地域2市2町住民が地域内から乗車するなら、福知山市、舞鶴市、兵庫県豊岡市の降車もOKで、最高運賃1530円が200円になります。高齢者の利用は実施前の3倍を超えるそうで、自分が乗車した際にも窓口で申し込む人がおり、バスと合わせてマイカー移動からの移行が進んでいると感じました。高齢ドライバーの交通事故減少にも寄与するでしょう。

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ささえ合い交通を含めて感じたのは、自治体に「交通の目利き」がいるかどうかで、地域の交通整備が大きく変わってきていることです。以前書籍にまとめた富山市などにも通じることですが、京丹後市や京都府が各種補助金の内容を理解し、ウーバーのような新しいサービスの存在を熟知していたことが、大胆かつ柔軟な交通改革を推進できた原動力のひとつだと考えています。

課題がないわけではありません。東京23区でも露呈しているバスの運転士不足です。宮津市では昨年、丹海バスが一部路線の維持困難という方針を示しました。しかし京丹後市には豊富な経験と多彩な選択肢があります。ささえ合い交通は運転士不足の解決策のひとつでもあり、将来自動運転が導入される際にはウーバーアプリの経験が活きるはずです。交通に関する引き出しを多く持つことが、将来的にも効果を発揮するのではないかと期待しています。