フランス観光開発機構の紹介で、ニース・コート・ダジュール地域圏観光局の局長にお会いする機会がありました。先方にとっては畑違いであることを承知で、当方がモビリティジャーナリストであることを告げると、「モビリティは今ニースでもっとも力を入れている分野です」という答えが返ってきて最初は驚きましたが、おかげで予想以上に話が弾みました。

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ニースというと観光都市のイメージを持つ人が多いでしょう。たしかに年間観光客は500万人に上るそうです。一方でニースはフランス第5の都市であり、国際空港はパリに次ぐ発着回数を誇り、コンベンションの拠点としてもパリに続く規模となっています。 ただ地域圏全体での人口は約56万人に達するのに対し、土地の80%は山地で、海沿いの限られた場所に多くの人が住むこともあり、交通渋滞に悩まされてきたそうです。

話の中で局長が特に強調していたのがLRT(トラム)でした。ニースのLRTについては3年前のこのブログで紹介していますが、現在さらに2路線が建設中です。2号線は空港から中心市街地を抜けて港に至る11.3kmの路線で、中心市街地はトンネルで抜けることになります。完成すれば空港と中心市街地が直接結ばれることになります。

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LRTが開通すればマイカー利用者はもちろん、バス路線の多くがLRTに転換するため、交通が集中する海沿いの道の渋滞減少が期待されます。さらに一部と地下化するので、世界的な観光地として有名な海沿いの遊歩道はそのまま残ります。ここに電車を走らせるのが好ましいとは鉄道好きでも思わないでしょう。

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一方の3号線は国際空港から北へ伸びる7kmの路線です。ヴァール川沿いのこの地域は現在、「ニース・エコバレー」という名称で国家レベルでの開発が進んでおり、すでにサッカースタジアムは完成していますが、それ以外にも6つのホテル、床面積6.5万m2の国際展示場などが建設される予定です。

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今年秋に開業予定という2本の新路線が、いずれも都市問題の解決や都市計画の進展とリンクしていることがお分かりでしょう。LRTを走らせることそれ自体が目的ではなく、まちづくりのためのツールのひとつであることを、ニースの計画は改めて教えてくれます。

LRTの停留場からはフィーダーバスの運行も予定しているそうです。以前から用意している自転車シェアリングも、自転車レーンともども拡充されるとのことです。またニースはパリに先駆けて電気自動車のシェアリングサービスを導入した都市でもあり、現在も稼働中です。環境に優しいモビリティを提供しようという姿勢がこれらからも伝わってきます。

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上の資料は今回お会いした観光局の局長からいただいたものです。観光用の資料であるにもかかわらずLRTのことが記してありました。それだけ現地の人たちにとって、モビリティ=移動できることは大切な要素なのでしょう。機会があれば開通後にニースに足を運び、交通まちづくりの成果を確かめてきたいと思いました。