横浜市を走るAGT(無人運転新交通システム)の「金沢シーサイドライン」で逆走事故が起こり、10人以上の負傷者を出したことは、多くの人がご存知でしょう。以前から国内外の新交通システムを取材・視察してきたこともあり、今週はこの件でテレビの報道番組にコメントを出したり、インターネットメディアに記事を書いたりしました。

シーサイドライン
シーサイドライン逆走事故についての記事 = https://citrus-net.jp/article/82793

記事にも書いたのですが、自動運転(無人運転を含む)になったからといって事故がゼロになるわけではありません。乗り物の事故の原因の多くは人間のミスと言われますが、自動運転の車両やインフラもまた人間が設計し製造するわけで、そこでのミスも起こるからです。ただ設計や製造は、認知・判断・操作を一瞬で行う運転に比べれば、時間をかけてじっくり取り組むことが可能で、それぞれの場面でテストもできます。自動運転のミスが少なくなる理由はここにあると考えます。

それでも事故直後は原因が解明されていなかったこともあり、自動運転の信頼性や安全性に疑問を投げかける声が目立ち、専門家の記事にもそのような内容がありました。しかし事故から1週間が経過して、状況は変わってきたと感じています。

ひとつは原因が明らかになってきたことです。現時点での情報によると、今回の事故はATO(自動列車運転装置)が原因ではなく、運転士の代わりに安全を見守る集中監理室と車両との間の情報伝達も正常だったそうで、車上のATOから制御装置に信号を送る配線が切れてモーターが逆回転に切り替わらなかったということです。自動運転の中枢部分のトラブルとは言えません。

ただ断線を警告するシステムが備わっていなかったこと、列車が止まる位置から車止めまでの間にATOなどのセンサーがなかったことは落ち度だと思います。逆走など起こらないと信じていたのかもしれませんが、この部分は早急に考えを改めるべきでしょう。

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もうひとつ、今回の事故の見方が変わってきた理由として、手動での運転を再開した6月4日に、福岡市で高齢者が運転する車両が暴走して数台を巻き込み、運転者と同乗者が死亡した事故が起きたことがあります。これに限らず、今年も交通事故で多くの命が失われているのに対し、我が国でのAGTでの事故では今回のシーサイドラインはもちろん、1993年に大阪市の「ニュートラム」が終点で停車せず車止めに衝突した際も、負傷者は200名以上になりましたが死者は出していません。

AGTが自動車の自動運転と同じぐらいの歴史しか持たず、開発途上の技術であると思い込んでいて、それを理由に危険視している人もいそうです。しかし実際は、1981年に開業した神戸市の「ポートライナー」以来、40年近い歴史があります。日本以外では北米や欧州に開発企業がありますが、信頼性は日本がトップと言われており、写真で紹介しているシンガポールや米国アトランタをはじめ、世界各地で我が国のAGTが受け入れられています。モビリティでは数少ない、日本が主導権を握る分野なのです。

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前にも書いたように自動運転は完璧ではありません。しかしシーサイドラインが有人運転だったとしても、突然の逆走に運転士が驚いてパニックになり、そのまま激突した可能性があります。バスでは運転士の急病により事故を起こした事例もいくつかあります。やはり人間の運転のほうがミスは多いと考えるのが自然でしょう。事故原因が解明されつつある今、上記のような対策をしっかり施したうえで、早急に無人運転に戻すべきだと思います。