今週18日、国土交通省と経済産業省が今年4月に始めた「スマートモビリティチャレンジ」について、具体的な支援対象地域・事業が発表されました。昨年から両省では独自に、MaaSに代表されるIoT・AI活用による新しいモビリティサービスの研究会や懇談会を開催していたのですが、テーマが近いことから2019年4月に両省合同で新プロジェクトを開始。このほど支援対象を選定したものです。

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スマートモビリティチャレンジのウェブサイト = https://www.mobilitychallenge.go.jp

選ばれたのは合計28の地域・事業で、経産省が採択したパイロット地域分析事業が13、国交省が採択した新モビリティサービス推進事業が19で、それぞれのうち4つは両省採択事業となっています。我が国は欧州に比べるとMaaSの取り組みは遅れていると言われていますが、両省が動き始めてからわずか1年後に、省庁の枠を超えたプロジェクトを共同で形にしたことは注目に値します。

ただこれで欧州に並んだと考えるのは早計です。いずれも実証実験だからです。本格サービスを導入する前に実験を行うのは大切ですが、我が国のモビリティシーンでは過去にも、国や自治体の支援を受けてさまざまな実証実験を行なったものの、本格導入に結びつかなかった例がいくつもあります。

理由のひとつに、我が国ではモビリティをビジネスとして見る人が多いことがあります。特にMaaSをはじめとする新しいモビリティサービスについては、新規ビジネスとして取り組む企業が多くあります。ビジネス視点で見れば、需要のある場所に投資を行い、需要が減れば供給を打ち切るという判断が自然です。だから本格サービスに移行する前に終了となる実証実験があるのでしょう。

ヘルシンキのトラム

ここで何度も書いてきたことですが、欧米ではモビリティは社会サービスのひとつであり、税金や補助金を主体とした運営がなされています。なので赤字だからすぐに減便廃止という判断になることはあまり目にしません。MaaSを生んだフィンランドは、大都市への人口集中による交通問題解消という社会目的のために10年かけてこの概念を練り上げたもので、お金儲けのために始めた事業ではありません。

スマートモビリティチャレンジの支援対象になった地域・事業に取り組む自治体や企業は、目先の損得に左右されず、長い目でモビリティサービスの理想像を追求していってほしいと思います。そして国はその挑戦を実のあるものとするためにも、欧米のようなモビリティは公が支える体制への移行を進めていくべきではないかと考えています。