交通事故というと多くの人は自動車事故を想像しますが、鉄道や選択、飛行機の事故もまた交通事故です。 今月21日に閣議決定され、公表されたばかりの令和元年版交通安全白書には、自動車以外の交通事故についてもデータを紹介しているので、今回はこのテーマを取り上げます。ただし航空事故は年間10〜30件と少ないので、鉄道と船舶について記します。

まず鉄道交通における運転事故は、長期的には減少傾向にあり、昨年は676件で前年比1.5%減でした。死者数は273人で前年比4.9%減、乗客の死者数はゼロでした。ちなみに運転事故とは、列車衝突・脱線・火災事故のほか、踏切障害・道路障害・人身障害・物損事故のことを言います。

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ただし踏切事故は、踏切保安設備の整備などで長期的には減少傾向にあるものの、昨年は247件で前年比4.2%増でした。死者数は97人で前年比4.0%減ですが、負傷者数を含めると前年を上回っています。また人身障害事故のうちホームから転落あるいはホーム上で列車と接触して死傷する事故(ホーム事故)は,昨年は191件で前年比7.3%増<死者数は36人で20.0%増でした。

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令和元年版交通安全白書のウェブサイト = https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/index-t.html

日本の鉄道の踏切の数は少しずつ減っており、一方でホームドアは増えています。にもかかわらず事故数や死者数が横ばいなのです。ホーム事故の6〜7割は自殺と言われますが、近年は我が国の自殺者数は減少傾向です。踏切事故では遮断機や警報機を備えた踏切での事故率が多いという統計もあります。

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次に船舶事故の隻数を見ると、1976〜80年度の平均では3232隻だったのが、昨年は2178隻と約3割減少。海難事故による死者・行方不明者の数は同時期と比べ8割以上減った50人となっています。ただし船舶種類別で見ると、漁船や貨物船などの事故隻数が減少傾向なのに対し、プレジャーボートは増加傾向で、近年は漁船を上回って最多となっています。また発生状況では、漁船では衝突が最多なのに対し、プレジャーボートは機関故障や舵障害などの運行不能が多くなっています。

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鉄道事故と船舶事故の統計を見て思い浮かぶのは、利用者のマナーです。以前に比べれば隻数が減少しているプレジャーボートの事故が増えているのは、運航のための知識・技能の不足した運航者が増加しているためではないかと交通安全白書では記しています。鉄道における踏切事故やホーム事故の状況も、個々の利用者がどれだけ安全な移動を心がけているかを示しているのではないでしょうか。

立体交差や地下化による踏切の廃止、ホームドアの設置などによって、事故を減らしていくことは大切ですが、インフラが対策するから利用者は漫然としていて良いというわけではありません。これは自動車交通にも言えることですが、安全は人と乗り物がいっしょに作り上げていくものであることを、忘れてはいけないと思っています。