東海、関東甲信越、東北地方も梅雨明けし、今年も猛暑の季節がやってきました。今回のブログは例年この時期に気になっているSNSなどの投稿について触れたいと思います。それは自動車の車載温度計をアップすることによる「高温自慢」です。今回はブログのテーマにするので下のような写真を撮影しましたが、ふだんはこのような写真はアップしないようにしています。

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車載温度計の数字は多くの場合、外気温より高い数字になります。だからSNSなどでアップしたくなるのかもしれません。しかしそういう行動を取っている人たちは、路面のアスファルトが黒色なので熱を吸収しやすいという理由以外に、自分が乗る自動車そのものが熱源になっていることを知っているのでしょうか。

自分を含めて多くの人が乗る内燃機関自動車は、燃焼によって生まれる熱の多くを捨てています。最新の研究ではガソリン/ディーゼルエンジンともに熱効率50%を達成したそうですが、それでも半分はなんらかの形で大気中に放出しているわけです。

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自動車が発生する熱が相当のレベルにあることは、大都市内の地下トンネル、東京で言えば首都高速道路の山手トンネルを通ると分かります。直射日光が当たらず、周囲に建造物もなく、一部区間ではミストを噴射しているにもかかわらず、地上の道路より高い温度を表示することが多いからです。

こういうことを書くと、現在の日本は電力の多くを火力発電でまかなっているので、電気自動車に置き換えても発生する熱量は変わらないという理由を掲げ、内燃機関自動車を擁護する意見が出てきそうです。しかし日本の火力発電所の熱効率は世界トップレベルで、ガスタービンを併用したコンバインドサイクル発電では約60%を実用化しており、自動車用エンジンを上回ります。

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しかも火力発電所は水を多く使い、燃料の多くを輸入に頼ることから、多くが海辺に設置されます。大都市から離れた風通しの良い場所にあり、写真のように熱の多くは背の高い煙突によって地表から離れた場所に放出されます。理想は再生可能エネルギーへの転換ですが、ヒートアイランド防止という点では大都市を走る自動車よりはるかに環境に配慮した存在と言えます。

自動車が社会にもたらす熱の影響としては、ここまで書いてきた直接的なもののほかに、CO2などの温室効果ガス排出という間接的なものもあります。近年は「Well to Wheel」、つまり燃料採掘から走行時排出までのトータルで考える見方が主流になっていますが、これもまた、電気自動車と内燃機関自動車の環境性能が同一であることを示す指標ではありません。

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先日、自動車メーカーの執行役員の方に聞いたところ、ノルウェーのように再生可能エネルギーで発電のほとんどをまかなう地域だけでなく、発電所から離れていて交通が集中する大都市でも、電気自動車導入による環境性能向上が期待できるとのことでした。前述のように火力発電所の多くはCO2が滞留しにくい環境にあるわけで、適材適所で考えるべきであるという主張に納得しました。

ではどうすればいいか。電動の公共交通、つまり電車を活用することではないでしょうか。もちろん物流には自動車が不可欠ですし、車いすやベビーカー利用者など自動車がなければ移動が難しい人もいます。しかし東京などの大都市なら、自動車でなくても移動できる人はたくさんいるはずです。自分の移動だけでなく、その周囲で働き暮らす人のことを思いやることを考えられるなら、車載温度計の高温自慢などしないのではないでしょうか。

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上の図はウェザーニュースが発表した8月3日の最高気温です。南に行くほど暑いのではなく、人が多い場所ほど暑いことが分かります。かといって住宅や職場のエアコンをオフにするわけにはいきません。できるところから発熱を抑制する。そのひとつが大都市における不要不急の内燃機関自動車移動を控えることではないかと思っています。