昨年6月に国土交通省が概要を発表したグリーンスローモビリティ(以下グリスロ)は、今年4月にはIoTと組み合わせた活用方法の実証事業を公募。6月に7地域が選ばれました。そんな中、昨年度の実証実験からひと足先に、本格的なタクシー事業に移行した事例があります。現場を見るべく、観光地として知られる広島県福山市の鞆の浦に行きました。

IMG_9608

鞆の浦のグリスロは地域のタクシー会社、アサヒタクシーが走らせており、「グリスロ潮待ちタクシー」と名付けられました。鞆の浦は瀬戸内海で潮の流れが変わる場所であり、昔は潮が変わるのを待つ船でにぎわったそうです。運賃は他のタクシーと同じ初乗り630円。そのほか30分単位で貸切での観光利用も可能で、自分は鞆の浦初訪問だったこともあり、鞆港発着の30分コースを電話で予約しました。

福山駅から出るバスの終点、鞆港に着くとすぐに、ヤマハ発動機の電動カートを使ったグリスロタクシーがやって来ました。以前、石川県輪島市で乗った車両に似ていますが、最大の違いは軽自動車の黄色いナンバープレートではなく、他のタクシーと同じ緑ナンバーであることです。ここからも本格導入であることが分かります。

IMG_9581

走り出したグリスロは、いきなり細い路地に入ります。鞆の浦の市街地は、軽自動車でもギリギリという幅の道ばかりでした。範囲は狭いので元気な人は徒歩で巡れますが、快適に観光したい人にこのグリスロタクシーは最適です。ドアや窓がなく、ゆっくり走ることも観光向きです。道が細いので左右のお店に手が届きそうなほどであり、街の一部になって移動している感覚です。見たい場所があればさっと降りて目的地に行くこともありがたかったです。

IMG_9593

いくつかの観光スポットを回ったあと、運転手さんお勧めの絶景ポイント、医王寺に向かいます。道は先ほどより狭く、急な登り坂です。これまで観光客は徒歩でしかアクセスできなかったそうですが、この坂道で断念する人が多かったそうです。しかし今回はグリスロタクシーのおかげで楽に到達できました。山の中腹にある寺からは、ランドマークの常夜燈をはじめ鞆の浦が一望できました。

グリスロは最高速度19km/hなので、すべての道に適しているとは言えません。どんな乗り物にも言えることですが、ふさわしい場所でふさわしい使い方をすれば魅力が数倍にもなります。鞆の浦はグリスロを走らせるのに最適な街でした。ただ自分が知るだけでも、似たような観光地はいくつもあります。そういう場所でもサービスを始めてほしいと思いました。

IMG_9602

あとは予約や支払いをスムーズにできればさらに好ましいところですが、私が訪問した直後、アサヒタクシーはUberと提携し、スマートフォンアプリで配車や決済が可能になったそうです。グリスロタクシーがここに含まれれば、外国人観光客もこの乗り物を利用することで、鞆の浦をより奥深く知ることができるのではないでしょうか。今後の発展に期待します。