日本では鉄道やバスの路線が一度廃止されると、復活することは滅多にありません。そんななか2017年、広島市内を走るJR西日本可部線が、それまでの終点だった可部駅から1.6km西のあき亀山駅まで延伸しました。可部線はかつて、広島市に隣接する安芸太田町の三段峡駅が終点でしたが、2003年に可部〜三段峡間が赤字を理由に廃止されました。つまり2年前の開業区間は復活でもあり、JRがいったん廃止した路線を蘇らせた初めての例になります。

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可部線は第二次世界大戦前に広島市内の横川〜可部間が私鉄によって開業したあと国有化され、戦後三段峡まで延伸という経緯を辿っており、もともと可部駅までは電車、それ以遠はディーゼルカーで運行していました。可部駅以遠の赤字が目立っていたので、列車の運行が分かれている可部駅より先を廃止したようです。

Google マップ

しかしGoogleマップで見ると、市街地は可部駅の西側にも広がっていることが分かります。JRは運行上の分岐点である可部駅から先を廃止にしましたが、河戸(こうど)地区の住民を中心に電化延伸の運動が起こりました。広島市がこの声を聞き入れて動き出し、JRやバス会社との協議を重ね、以前県営住宅があった場所までの延伸が実現したのです。

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復活区間には河戸帆待川・あき亀山の2駅が設けられました。廃止前はこの中間に河戸駅があり、2駅先に安芸亀山駅がありました。ゆえに終着駅は「あき」がひらがな表記になったようです。以前は駅がなかった場所なので、駅北側は住宅が点在しており商店などはありません。一方駅南側の県営住宅があった場所は整備が進んでおり、この地に市民病院を建設するという看板がありました。

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広島市は可部線延伸とセットで市民病院移設を考えており、市長が突然発表したことから市議会で賛成反対が同数になり、議長裁決で一度否決されましたが、その後現病院と新病院を並立させる方向で落ち着きました。現病院で地域医療を継続しつつ、新病院で 高度・急性期医療機能、災害拠点病院及びへき地医療機関としての機能を担当するそうです。合わせて南側を流れる太田川の治水対策も進めるようです。

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安佐市民病院についての広島市の資料 = http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/1449473900183/simple/08-sankou.pdf

現在の病院は市街地にありますが、可部線中島駅から徒歩10分、可部駅から徒歩15分を要し、最寄りのバス停留所からも徒歩5分と、高齢者が公共交通でアクセスするには不便です。市街地にあるので駐車場が狭く、ヘリポートがないという欠点もあります。一方の新病院はあき亀山駅と屋根付き通路で結ばれ、駐車場も広く確保してあります。 ここを拠点としたバス路線整備の計画もあります。

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つまり可部線再延伸は、総合病院のような施設を誘致することで、地域輸送を維持するうえでの一定の需要を確保するという判断もあったのではないでしょうか。高齢化が進む今の日本で、医療施設と公共交通をつなげることは大切であり、導入のプロセスに問題があったかもしれませんが、まちづくりという観点では納得できるプランです。今はまだ駅がポツンとあるだけなので、新病院開院後の状況をまた見てみたいと思います。