先月のブログで取り上げた電動キックボードシェアに、その後動きがありました。政府の成長戦略のひとつである「規制のサンドボックス制度」にLuupとmobby rideの2社が10月17日に認定され、大学構内の一部区域を道路と位置づけ、規制改革を行うための情報を収集していくことになったのです。この件についてはウェブメディア「現代ビジネス」で記事を書いていますので、気になる方はお読みいただければと思います。

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ひと口に電動キックボードシェアと言っても、事業者によってビジョンに違いがあります。先月取り上げた、ドイツWind Mobilityの日本法人が運営しているWindは、原付のナンバープレートや灯火類を車両に装着し、ヘルメットを袋に入って用意してありました。つまり原付扱いとなります。一方、今回制度認定された2つの事業者は、ナンバーなしで自由に乗れること目指しており、公園や河川敷、イベント会場などで実証実験を重ねています。

規制のサンドボックス制度とは、新しい技術やビジネスモデルの導入が現行の規制では難しい場合に、事業者の申請に基づいて、規制官庁の認定を受けた実証を行い、そこで得られた情報やデータを用いて規制の見直しにつなげていく制度です。資料に目を通すと、「まずやってみる!」という、これまでの日本ではあまり見られなかった文言を見ることができます。

同制度はモビリティのスタートアップに限ったものではなく、医療、金融、不動産などの分野が該当しており、パナソニックなどの大企業も名を連ねています。モビリティ領域では電動キックボードのほか、人力モードと電動モードを切替可能なハイブリッドバイクの自転車レーン走行実証、キャンピングカーの移動できない状態での空間活用に関する実証も選ばれています。

電動キックボードシェアの場合、事業所管省庁は経済産業省、規制所管省庁は国家公安委員会と国土交通省となっています。警察庁を管理する国家公安委員会が関係していることは、新たなルール制定に向けた希望を抱かせます。経産省では適切な形で電動キックボードを公道で走行できる環境を実現し、短距離移動の効率化や観光客誘致などに貢献したいとしています。

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先日、実証を行っている大学を訪れてみると、構内の車道を使ってシェアリングを行なっており、学生などが利用をしていました。今月4日まで開催していた第46回東京モーターショーで、2つの会場間を4社の電動キックボードで移動ができるメニューが用意されたことは以前報告しました。あのときほどではないですが、多くの学生が行き交う場所での試乗メニューは、従来の実証実験とは注目度が違っており、事業者にとっては貴重な経験になるはずです。

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新しいモビリティに対しては厳しい態度を取り続けてきたこの国が、電動キックボードシェアに関しては導入に前向きになっているような気がします。本格的に公道を走れるのはまだ先かもしれません。しかし海外では認められた乗り物やモビリティサービスを、前例がないからという理由で否定する姿勢ではないことはたしかです。人々の移動の自由を切り拓いていくためにも、今回の制度などが契機となって、門戸が開いていくことを期待しています。