新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多く見るようになった言葉のひとつに「エッセンシャルワーカー」があります。医療や介護をはじめ、食品販売、公共交通、物流など、社会を支えるために必要不可欠な、インフラやライフラインに相当する仕事に従事する人のことです。

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フランスのマクロン大統領は今週13日「農家、教職員、トラック運転手、配送業者、電気工、レジ係、ごみ収集員、警備員、清掃員、公務員たちが社会生活が続くことを可能にしてくれた」と、エッセンシャルワーカーへの感謝を口にしました。次の日にはNHKがニュースの中で海外のエッセンシャルワーカーを取り上げ、米国のバス運転士を紹介した後、この運転士がその後感染が原因で亡くなったことを伝えていました。

多くの人が自分の仕事は社会のために必要不可欠だと思っているはずです。しかし海外ではそれを踏まえた上で、インフラやライフラインを守る人たちをエッセンシャルワーカーという呼び名で区別し尊重しているわけです。その裏にあるのは公共という概念への理解だと思います。優れた公共があるからこそ個人が快適に生活できると考えているのでしょう。

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多くのエッセンシャルワーカーが過酷な労働を強いられています。交通分野で見れば物流がそれに該当します。先日そのひとつである宅配バイクについて記事を書きましたが、こうした人たちが安全快適に目的を遂行するためにも、私たち部外者はなるべく道路を使わないことを心がけるべきでしょう。まして今は、交通事故を起こしても病院に入れないかもしれませんし、それによって医療従事者というエッセンシャルワーカーにさらなる負担を掛けることになります。



ところがエッセンシャルワーカーの中で移動を担う人々については、今週水曜日にJ-WAVEのラジオ番組「STEP ONE」でタクシーをテーマに電話出演(radikoであれば1週間聴取可能です)した際にも触れましたが、物流とは正反対に需要の激減に悩んでいます。一部のタクシー会社では、以前から地方では展開が進んでいた買い物代行などを取り入れています。今はバスや鉄道を含めた多くの事業者が、貨客混載を真剣に考える時期かもしれません。



しかしそれだけでは抜本的な解決にならないでしょう。ゆえに米国では今月2日、感染拡大で深刻な影響を受けている公共交通機関に対し、総額250億ドルの緊急支援金を交付すると発表しました。感染がもっとも深刻なニューヨーク周辺だけで54億ドルになりますが、それ以外の多くの都市に交付されるようです。写真のポートランドはTRI-MET(トライメット)という組織が公共交通を一括して管理しているので、ここへの支援になるのでしょう。

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対する日本は、仮に米国のような支援が交付されたとしても、地方都市であっても複数の交通事業者が競合していることが多く、どの事業者にどのぐらい配分するかを自治体や各事業者の間で話し合ったりするプロセスが不可欠で、スピードが遅れるのは明らかです。とりわけ地方の交通事業者は経営基盤が弱い分、さらに深刻になっていると想像できるので、なおさらスピードが必要です。

運営面では民間企業の知恵や工夫は大切であると私も思います。しかしこうした非常時に対面すると、公共の基盤はやはり公的組織が一体で支えることが望ましいと感じます。理想はすべての部分の統合ですが、それが無理なら、すでに国内各地で実例がある上下分離方式で公共交通を維持していくのが、今の日本では理に叶っているのではないかと思っているところです。