新型コロナウイルス感染拡大とともに、一気に沈静化した分野のひとつにMaaSがあります。昨年まではモビリティに直接関わっていない人々を含め、多くの人がこの概念に注目していましたが、MaaSの基本になる日々の移動そのものが制限あるいは自粛になったこともあり、すっかりこの4文字を見ることが少なくなりました。

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では今後のMaaSはどうなるのか? SBクリエイティブのウェブメディア「ビジネス+IT」で書かせていただきましたが、コロナ禍はMaaSにとって悪いことばかりではないと考えています。理由のひとつはこれまで「MaaSで儲ける」「MaaSは万能」などの軽い気持ちで考えていた人々が、稼ぎが出そうな大都市の移動総量の激減で参入を控えつつあるからです。MaaSという言葉を見る機会が少なくなったこと自体が、それを証明しているのではないでしょうか。



つまりMaaSにおいては、新型コロナウイルスがフィルターの役目を果たしてくれそうです。本気で都市や地方のモビリティを良くしたいと考える人たちだけが残るのであれば、それは良い傾向です。実際、3月25日には東京メトロが「my! 東京MaaS」を発表し、5月20日には東日本旅客鉄道(JR東日本)が「MaaS・Suica推進本部」を新設するなど、最近は交通事業者の発表が目立ってきています。

ただしテレワークの普及や郊外・地方移住という流れの中では、今までの都市型MaaSの考えがそのまま通用しないことは明らかです。たとえばフィンランドのWhimが導入して話題になったサブスクは、定期券より回数券のようなスタイルのほうが使いやすいでしょう。そしていわゆる三密を避けるための自転車などパーソナルモビリティのシェアリングとの連携が、今まで以上に重要になりそうです。

もうひとつ日々の移動で気になるのは鉄道や駅の混雑状況です。JR東日本、東京メトロ、東京都交通局などアプリで見ることができる事業者もありますが、これをMaaSアプリと紐づけて空いている経路を選べるようにし、必要に応じて自転車シェアなどに切り替えられるようにすれば、都市全体での混雑の平準化に貢献できるのではないかと考えています。

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では地方はどうでしょうか。これまでも私は、MaaSはモビリティが弱い地方こそ大切だと思ってきましたが、今は重要度がさらに増していると思っています。経営体力の弱い地域交通の利用者を取り戻す効果があるのはもちろん、公共交通の移動に慣れた大都市からの移住者を引きつける役目もあり、自分たちの地域を選んでもらうきっかけにもなるはずです。

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地方は大都市に比べれば鉄道やバスの本数だけでなく、商店や飲食店も限られていますが、逆に言えばそれらの連携は楽であるはずで、すべてをシームレスに使える仕組みができれば、大都市に暮らす人たちをも惹きつけるツールになりそうです。いずれにしても新型コロナウイルスによって、MaaSはサービスとしてのモビリティという本来の意味を問われる状況になったと考えています。