日本の高速道路の一部区間で、最高速度が120km/hに引き上げられるというニュースがありました。警察庁が2017年から、静岡県の新東名高速道路と岩手県の東北自動車道のいずれも一部区間で110km/h、2年後からは120km/hに試験的な引き上げを実施した結果、それ以前と比べて実勢速度や死傷事故率に大きな変化がなく、安全性は確保されると判断したそうです。

最初は新東名の御殿場〜浜松いなさジャンクション(JCT)、東北道の花巻南〜盛岡南インターチェンジ(IC)のほか、同じ東北道の浦和IC〜佐野サービスエリアスマートIC、常磐自動車道の柏〜水戸IC、東関東自動車道の千葉北IC〜成田JCTの5区間を候補とし、状況を見たうえで他の区間についても検討していくとのことです。

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このブログでは最初に引き上げのニュースがあった直後に取り上げて以来なので4年ぶりになりますが、120km/hへの引き上げに賛成という考えは変わっていません。4年前にも書きましたが、現在の自動車とドライバーの能力を考えると120〜130km/hでの走行に問題はなく、欧米や中韓など多くの国の制限速度がこのあたりに集中しているからです。

今回のニュースで注目したのは、試験的に引き上げを行った区間で実勢速度に大きな変化がなかったことです。つまり120km/hへの引き上げは制限速度を実勢速度に近づけたことになります。制限速度を守る車両と実際の流れの差がなくなるので、安全性が高まることになります。日本に先駆けて110km/hから130km/hへ引き上げたデンマークではむしろ事故が減ったそうです。

大型貨物車・三輪車・けん引車は80km/hのままとなるようです。これを危険ととらえる人もいるようですが、実際は乗用車との速度差が大きくなれば大型トラックの追い越しが減るので、重大事故防止に貢献するはずです。そのうえで個人的には以前も記事で紹介したスイスの事例を参考にしてほしいと思っています。

スイスは2016年、片側3車線ある高速道路のいちばん中央寄り(スイスは右側通行なのでもっとも左側)の追い越し車線の最低速度を、80km/hから100km/hに引き上げました。最高速度は乗用車・二輪車が120km/h、バスが100km/h、トラック・けん引が80km/hなので、トラックはいちばん中央寄りの車線を走れなくなりました。100km/h未満で走る乗用車もこの車線を走るのは違反になるので、速度差の大きい車両が接近する危険も防止できます。

2020-07-25 21.36
TCS(日本のJAFに相当する組織)の高速道路利用の手引き =
https://www.tcs.ch/fr/tests-conseils/conseils/regles-de-circulation/autoroutes.php

経済性と安全性をいかに両立させるか。ウィズコロナでの新しい生活様式にも似たこの難しいテーマを解決すべく、スイスは車種や車線の制限速度を明確に変えることで、自分が運転している車種はどのように高速道路を走るべきか、3つの車線にはどんな意味があるかを利用者に伝えています。それが無駄な車線変更などによる事故の防止に寄与するのではないかと感じています。

今回のニュースでは最低速度についての言及は目にしません。もし50km/hのままだとすると、トラックが多くなるもっとも左の車線はともかく、いちばん右の車線は速度差が70km/hにもなります。引き上げの候補に上がった区間は、交通量の少ない岩手県の東北道を除けばすべて片側3車線で、今後も郊外や地方の3車線区間で展開が進むと予想されます。車線に余裕があるわけですから、車線ごとの位置付けを明確にするのが安全面から見て好ましいと考えます。