経済産業省と国土交通省の合同プロジェクトという画期的な取り組みとして昨年度に実施した「スマートモビリティチャレンジ」が、今年も行われています。新しいモビリティサービスの社会実装を通じて移動課題解決や地域活性化に挑戦する地域や企業を応援するというコンセプトは従来どおりで、今年度は経産省の先進パイロット地域、国交省の日本版MaaS推進・支援事業合わせて52地域が選ばれました。

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内容を見ると、静岡県伊豆半島や京都府京丹後市など昨年に引き続き選定された地域も多く、このブログで取り上げた「グリスロ潮待ちタクシー」「ちょいソコ」などのサービスも見ることができますが、一方で新規に採択された地域ももちろんあります。このうち地方で目立つのは、鉄道・バスやタクシー、オンデマンド交通に加えて、自家用有償旅客運送を活用した事例です。

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自家用有償旅客運送についてはこのブログで何度か取り上げてきましたが、マイカーなど白ナンバーの車両を使って地域の移動を支えるものです。市町村が運営するものとNPOや商工会などが運営するものがあり、それぞれに福祉目的のものと交通空白地解消目的のものがあります。車両数は年々増えており、近年は企業や学校などが所有する車両の持ち込みが可能となったり、タクシー事業者に運行を委託したりという規制緩和も行われています。

昨年度のスマートモビリティチャレンジで自家用有償旅客運送の使用を明らかにしていたのは、京都府南山城村の1カ所だけでした。ところが今年度は、北海道上士幌町が福祉バス、静岡県湖西市が企業シャトルバス、富山県朝日町がマイカー、浜松市佐久間地区がEVタクシーを使って行うと表明しています。さらに京都府舞鶴市と大阪府池田市は無償輸送を選択していますが、地域の住民が移動を支えるという点は同じです。

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meemo実証実験についてのサイト = https://www.city.maizuru.kyoto.jp/shisei/0000006900.html

このうち舞鶴市はオムロンの子会社や大阪の日本交通と共同で、日本で初めて地域住民による輸送と公共交通を組み合わせたMaaSの実証実験を2020年4〜6月に実施。続いて7〜9月にも実証実験を行っています。いずれも専用開発したMaaSアプリ「meemo」を用いています。一方朝日町ではスズキや博報堂などとともに「ノッカルあさひまち」の名称で今月から来年3月まで実証実験。ウェブあるいは電話で登録や予約を受け付けていくそうです。

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ノッカルあさひまち予約サイト = https://buscatch.jp/nokkaru_asahimachi/

国交省では地域輸送を考えるうえで、まずは道路運送法に定めてあるバスやタクシーの整備や維持から考えてほしいとしています。しかしご存知の方も多いとは思いますが、バスが撤退しタクシーも数台という地域が少なくありません。そこで市町村やNPOなどが道路運送法上の登録を行い、自家用有償旅客運送を走らせる事例が増えているのです。

それが難しい場合は舞鶴市のように、道路運送法上の許可・登録を要しない運送として、無償で移動を提供することになりますが、個人的には移動や物流を担う者に対しては、相応の報酬を利用者あるいは自治体が支払うべきであると考えています。今のルールで言えば、公共交通の維持が難しい地域ではやはり自家用有償旅客運送が適役でしょう。

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スマートモビリティチャレンジではデジタル技術の活用により、事業者の負担を減らしつつ利用者が使いやすいサービスの提供を重視しています。その視点で見ると、このブログでも紹介した京丹後市の「ささえ合い交通」は、日本の地域交通にUberアプリを組み込んだという点でやはり先駆的です。そしてここまで多くの事例が出てきたわけですから、地域ごとの個性的な名前とは別に、国が主導して「相乗り交通」などわかりやすい呼び名を与えてほしいものです。

*来週は夏休みとさせていただきます。次回は8月22日更新予定です。