欧米を中心に目立っている「◯◯年からエンジン車禁止」の流れ。日本でも地球温暖化対策の一環として、2030年代半ばにガソリン/ディーゼルエンジンだけで走る自動車(ここでは以下エンジン車と書きます)について事実上、国内での新車販売を禁止する動きがあるという報道がありました。今回はこのテーマに触れます。

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この種のニュースでよく使われるのが「電動化」という表現です。自分の記憶ではこの表現はスウェーデンのボルボカーズ(商用車のボルボとは別会社)が使いはじめたと記憶しています。これは全車を電気自動車にすることではなく、マイルドハイブリッドを含めたハイブリッド車も電動化になります。しかし当初はマスコミでさえ電動化=電気自動車化と誤解する人がおり、いまなお同じような解釈をしている人がいるようなので注意が必要です。

日本はトヨタ自動車を筆頭にハイブリッドカーを数多く市場化してきており、電気自動車についても日産自動車がリーディングカンパニーのひとつになっています。マイルドハイブリッドについては軽自動車でも採用車種があるほどです。なので今回、2030年代中盤にエンジンだけで走る自動車の新車販売を禁止するというルールになっても、さほど困らないのではないかという気がしています。

ではなぜ欧米は電動化戦略を推進しているのか。2つの理由があると考えています。ひとつはゲームチェンジを画策していることです。欧州の自動車業界は、日本製ハイブリッド車の人気を快く思わず、クリーンディーゼル車で対抗する姿勢を明確にしましたが、フォルクスワーゲンの不正行為が明るみに出たことで、戦略の見直しを余儀なくされました。そこで新たにターゲットに据えたのが電動化であると理解しています。

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https://www.swissinfo.ch/jpn/進む氷河の融解_消えゆくスイスの氷河-2018年の異常気象で更に縮小/44490606

もうひとつは温暖化の影響が日本以上に深刻であることです。我が国でも近年、異常気象が頻発していますが、欧州ではアルプスの氷河減少やヴェネツィアの浸水など、より明確な形で影響が出ています。さらにコロナ禍での対応にも違いがあります。日本は一度現状に戻してから改革を始めようという考えが主流なのに対し、海外はコロナ禍を改革の好機と捉えているというマインドが目立ちます。このあたりは民族性の違いもあるので、どちらが良いと決めつけることはできません。

モビリティ、つまり移動のしやすさは移動する人、乗り物を走らせる人の判断が第一であり、企業や国家の戦略を押し付けるべきではないと考えています。ただ都市内の移動でエンジン車が効率面でも環境面でも好ましくないのは自分の経験からも明らかであり、このブログでも何度か提案したように、自動車についても使い分ける時期に来ているのではないかと思っています。

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新幹線と路面電車の車両はデザインもメカニズムも明らかに違います。それと同じように、都市内の移動は電気自動車のシェアリングをメインとして、郊外や地方に出かけるときにマイカーに乗るような使い分けが好ましいのではないでしょうか。将来的には前者は自動運転のシェアカーになっていくでしょう。ドアtoドアの魅力は手放すことになりますが、自ら操る楽しさはそのほうが満喫できると考えています。