先週のブログで取り上げた自動車の電動化という言葉を聞いて、個人的に思い出すのが鉄道の電化です。ただし似ているのは字面だけで、鉄道の電化の場合は線路に架線などを張って、電車や電気機関車の運行を可能にすることを言います。車両とインフラの両方に関係する言葉であるわけで、家庭の電化とも意味が異なります。

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電化路線を走る車両がすべて電車あるいは電気機関車になるわけではありません。たとえばJR東日本東北本線の仙台と仙石線石巻あるいは石巻線女川を結ぶ仙石東北ラインは、東北本線が交流電化、仙石線が直流電化で、両線をつなぐ短絡線は電化していないため、ディーゼルハイブリッド方式の車両が架線の下を走っています。

逆に電化していない路線を電車が走ることもあります。同じJR東日本では宇都宮と烏山を結ぶ烏山線がそのひとつで、バッテリーに蓄えた電気で走る、電気自動車のような方式の車両が走っています。充電は両端の駅、および宇都宮周辺の東北本線乗り入れ区間で行なっています。

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海外ではこのようなハイテク車両は珍しいですが、電化しているのにディーゼルカーやディーゼル機関車が走る例は多くあります。フランスのグルノーブルからリヨンへの移動は、全線電化していたにもかかわらずディーゼルカーでした。さらに列車の本数が少ないローカル線では、費用対効果が薄いこともあり電化しません。これは日本も共通です。電化が進んでいて非電化が遅れているとは一概に言えません。

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つまり鉄道の場合、国や自治体の政策として電化が推進される場合もありますが、架線を張るか否か、電車を走らせるか否かは、多くが事業者の判断です。コストが見合わない場合は非電化やディーゼルカーという選択をし、非電化であっても沿線の環境対策が必要であればバッテリー電車などを導入しています。前回のブログで、自動車の電動化は利用者や事業者など使う側の判断を尊重すべきと書いたのは、こうした鉄道の状況を知っていたからでもあります。

ただ鉄道が自動車より、はるかに環境負荷が低いことは頭に入れておく必要があります。国土交通省の2018年度のデータでは、ひとり1kmあたりのCO2排出量は乗用車133gに対し、鉄道はわずか18gにすぎません。これはディーゼルカーなども含めた数字です。しかもJR東日本は自前の発電所を2つ持っており、運行に使う電力の約6割、首都圏に限れば約9割の電力を賄っています。うちひとつは再生可能エネルギーとして扱われる水力発電所です。

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国家や企業の戦略的な部分も大きいエンジン車販売禁止を強行するより、移動の一部を鉄道に切り替えるほうが、手軽に温暖化対策できることを改めて認識します。特に大都市周辺に住んでいる人たちにとっては鉄道イコール電車なわけですから、各自が日々の移動に鉄道を積極的に組み込めば、それだけで電動化になります。電車移動の比率が高まれば、電気自動車に乗り換えるより、結果的にはエコになるかもしれません。