年が明けてからも新型コロナウィルスの感染拡大が止まらない日々が続きますが、一方で今月はこれまでに、モビリティに関係する2つの大きなニュースがありました。北陸地方などを襲った大雪と、全国的な電力不足です。この2つの出来事では、電気自動車で立ち往生したらバッテリー切れで生命の危険につながる、これ以上電気自動車を増やしたら停電が頻発するなどの声が出ました。

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たしかに立ち往生と電力不足という結果だけ見れば、電気自動車はふさわしくないという論調になりますが、それぞれの問題を起こさないようにすることもまた大事です。

まず大雪は、地震や台風と同じ天災のひとつですから、不要不急の外出は控え、どうしても移動が必要な場合は絶対に止まらない技能と装備を義務付けるべきでしょう。今回の大雪では先月の関越自動車道に続き、北陸自動車道で長時間の立ち往生が発生しました。そもそも高速道路は駐停車禁止であるはずで、1時間を超える立ち往生車両は取り締まるなどのルールを作らないと、何度も同じ過ちを繰り返すことになりそうです。

次に電力不足について。こちらは当初、今の日本は慢性的な電力不足であり、解消のためには原子力発電所の再稼働が必要という主張が一部から出ました。しかし慢性的であれば、これまでも幾度となく電力不足に陥っていたはずです。実際の原因は、火力発電に使うLNGの貯蔵量不足とのことでした。こうした事態を避けるには、エネルギーの選択肢を数多く持つことが大事になりそうです。

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経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」ニュースリリース =
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225012/20201225012.html



政府では昨年末、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表しています。以前このブログでも取り上げた、2030年半ばまでに乗用車新車販売で電動車100%実現を目指すことが盛り込まれたほか、エネルギーについても多角的に触れています。この発表を含めた自動車のエネルギーについては、インターネットメディア「ビジネス+IT」でも書かせていただきました。

この中で注目したいのは、アンモニアを燃料とする火力発電およびe-fuelと呼ばれる合成燃料です。これらが実用化されれば、火力発電やエンジン車が環境に悪いという前提そのものが変わることになります。水素同様、製造には電気などが必要になりますが、非常時を考えれば輸入に頼る石油などより安心できます。

自然エネルギーでは洋上風力発電が戦略に盛り込まれていますが、個人的には水力発電と地熱発電にも注目してほしいと思います。山がちで雨が多く、火山国でもある日本の国情に合っているからです。逆に太陽光発電は、日本は国土が狭い上に雨が多いわけで、工場の屋上やビルの壁面などへの設置は理に叶っていますが、メガソーラーは生態系にも悪影響を及ぼしがちで地球に優しいとは思えません。

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加減速がひんぱんな都市内では電気、高速巡航が多い都市間では内燃機関の効率が高いことは、プラグインハイブリッド車などが証明しています。モビリティシーンを含めて、今後も電気に頼る生活が続いていくことは確実ですから、LNGが不足になっただけでピンチになるような事態は避けてほしいところですし、私たちもエネルギーの特性を理解したうえで効率的な移動を心がけたいものです。