長野県飯田市に用事があったので、以前から気になっていたラウンドアバウト(環状交差点)を見てきました。飯田市はJR東海飯田駅の東側約300mにある東和町交差点と、そこからさらに300mほど東に位置する吾妻町交差点の2か所がラウンドアバウトになっています。駅からの距離でわかるとおり、いずれも街の中心部にあります。

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2つのラウンドアバウトは歴史が異なります。吾妻町は1947年の飯田大火からの復興の際にロータリーとして設置されました。ロータリーとある通り、当時はラウンドアバウトとは違う交通ルールでした。一方の東和町は既存の交差点を2013年にラウンドアバウト化したもので、信号交差点からの転換は日本初となります。

飯田市は当初、東和町交差点のラウンドアバウト化を進めようとしましたが、当時の日本ではラウンドアバウトの知見が不足していたので、まず吾妻町のロータリーをラウンドアバウトに作り替え、2010年度に社会実験を行いました。その結果、自動車の通過速度が抑えられるだけでなく、利用者からも好意的な意見が過半数を占めたことから転換。続いて東和町交差点のラウンドアバウト化に着手しました。

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東和町のラウンドアバウト化が完成した当初は、進入時の一時停止が義務付けられていましたが、翌年、道路交通法が改正され、欧米と同じように徐行での進入が可能になりました。こうして見てくると、日本のラウンドアバウトのルール作りに飯田市が多大な貢献をしてきたことがわかります。

2つのラウンドアバウトは2018年度のグッドデザイン賞を受賞しています。当時審査委員のひとりだった私もこの取り組みは高く評価しましたが、当時は現地に足を運ぶことができませんでした。しかし今回初めて2つのラウンドアバウトを目にして、3年前に資料で見たときより、はるかに素晴らしい交差点だと実感しました。

導入されてから10年近く経っていることもあり、すべてのドライバーやライダー(2つの交差点の間には飯田郵便局があるので郵便配達のバイクも多く走ります)がスムーズに交差点を抜けていくことが確認できましたが、それ以上に感心したのが歩行者への対応です。

ラウンドアバウトは信号がないので、横断歩道を歩行者が渡る際には自動車は停止しなければいけません。日本ではこの交通ルールを守らない人が多いので気になっていました。ところが実際は、歩行者が横断歩道を渡ろうとすると、すべての車両が横断歩道の前で止まりました。ラウンドアバウト自体、日本ではあまり見かけない景色ですが、それ以上にこの交通マナーが、欧米にいるかのような気持ちにさせてくれました。

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もちろん歩行者も自動車の動きには気をつける必要があり、横断歩道にはそれを促す注意も記されていました。しかし歩行者か運転者かにかかわらず、他の交通に気をつけながら進むのは、交通安全の基本だと思います。信号の色で判断するよりも、道路を通行する1人ひとりが自分の目や耳で状況を確認し、安全かどうかを判断して通行することの大切さを、ラウンドアバウトは教えてくれます。

ラウンドアバウトは環境負荷が小さい交差点であることも報告されています。自動車がもっともエネルギーを消費するのは発進の瞬間です。飯田市の2つの交差点ぐらいの交通量であれば、赤信号からの発進回数が減らせるラウンドアバウトは、環境にも優しいのです。

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さらに環境と言えば、飯田市はラウンドアバウト整備に伴い、周囲の歩道空間を広く取り、ベンチを置き、周辺住民は花を置くなどして、公園のような景色を作り出しています。交差点でありながら広場のような場所でもあると感じました。少し前のブログで、東京やパリで道路を広場に作り変えるプロジェクトを紹介しましたが、ラウンドアバウトは地方において同じ目的を実現するための交通システムであることも確認できました。