4月1日から、熊本市と岡山市の乗合バスに、新しい法律が適用されることとなりました。人口減少などで持続的なサービス提供が難しい乗合バス事業者と地域銀行について、合併や共同経営などについて独占禁止法(独禁法)の特例を定める法律が2020年11月に施行されたことを受けて、2つの地域で適用されたのです。

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具体的には熊本が九州産交バス、産交バス、熊本電気鉄道、熊本バス、熊本都市バスの5社による熊本市内4区間の55系統について、岡山では岡山電気軌道と両備ホールディングスの2社による岡山市内1区間の13系統において共同経営を行うもので、熊本では待ち時間の平準化や一部路線の延伸、岡山では等間隔運行や停留所の統一などが行われます。群馬県前橋市など他のいくつかの自治体でも同法の適用を検討しているようです。

日本では似たような動きが第二次世界大戦中にもありました。あのときは乱立する公共交通事業者を整理統合し、経営の安定化を図る観点から「陸上交通事業調整法」が制定され、地域鉄道・バスの経営統合がなされました。富山県の富山地方鉄道や香川県の高松琴平電気鉄道など、いくつかの地域では枠組みがそのまま残っていますが、戦後になって独禁法が制定され、こうした枠組みは逆に禁止されることになりました。

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*熊本の共同経営推進室のオフィシャルサイトはこちら

以前ここで紹介した青森県八戸市では、八戸駅と市の中心部を結ぶ路線で市交通部と南部バス、十鉄バスがわかりやすいダイヤや運賃体系を共同で実現し、減少傾向であったバス利用者を増加させる効果を上げましたが、 公正取引委員会(公取委)に事前相談を行ったにもかかわらず、運賃額や減便数について協議することはカルテルに該当するなどの指摘があったそうです。

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利用者減少や運転士不足に加えて新型コロナウイルス感染症で、地方のバス事業者は厳しい状況に置かれています。多くの民間事業者が同一の都市内で競争しつつ、運賃収入を原資として収益を上げ、赤字になれば路線や駅・停留所の廃止などを行う日本流の公共交通運営は、コロナ禍で限界にきていると感じています。利用者にとってもダイヤや運賃などがわかりやすくなるわけで、歓迎すべき動きだと思っています。

ただし合併や経営統合をするとはいえ民間企業のままであり、公的組織が管轄し、税金や補助金を運営の軸とする欧米流の運輸連合とはまだ違いがあります。一例を挙げれば、MaaS発祥の地であるフィンランドの首都ヘルシンキの公共交通では、実際に運行を司る事業者は複数存在するものの、周辺都市を含めてHSLという単一の組織が管轄し、営業収入の半分近くは政府や自治体からの補助金で賄われているのです。

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日本の公共交通にも補助金は充当されていますが、車両購入など個別の投資に対するもの、赤字の穴埋めに相当するものが主体であり、経営の基盤となるものではありません。ベースとしての資金が安定していれば車両やインフラのバージョンアップ、自動運転やMaaSなどのテクノロジーの導入がスムーズにいくはずで、乗務員の待遇改善もできるでしょう。今回の法改正を契機に、鉄軌道を含めた地方の公共交通が欧米流に転換していける枠組みの整備を望みます。