ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから、2週間以上が過ぎました、その前段階であったウクライナ東部地域の一方的な国家承認を含め、ロシア政府の行動は到底許されるべきではありませんが、ここではモビリティにとって重要になるエネルギー問題に絞って取り上げます。

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日本ではレギュラーガソリンの価格が1リッターあたり170円を超え、ニュースになっています。これは世界的な傾向で、欧州ではリッター2ユーロ、つまり250円以上というレベルになっているようです。ただ振り返れば、エネルギー危機はこれまでにも何度かありました。もっとも有名なのは1973年と79年のオイルショックでしょう。

こうした状況に対して、日本をはじめ多くの国が社会全体で取り組んだのが、いわゆる省エネでした。私も幼い頃の記憶で、商業施設などの照明が減らされたことを覚えていますし、米国では小型で燃費の良い日本製乗用車に人気が集まり、自国のメーカーが小型車の開発にシフトしたというエピソードも知っています。

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ところで今回のロシアの蛮行が始まる前まで、エネルギー分野のトレンドはカーボンニュートラルでした。環境対策に貢献する点では省エネと共通していますが、中身は大きく違います。

省エネは文字どおり、石油や天然ガスだけでなく、そこから生まれた電気など、あらゆるエネルギーを節約することです。多くの人が実行できる、わかりやすい目標でしたが、ゆえに具体的な数値は定めにくかったようです。一方のカーボンニュートラルは、温室効果ガスをゼロにするという数値目標が前提です。なので生活者より事業者に向けた指標であると思っています。

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だからでしょう、カーボンニュートラルは分野ごとに論じるのが一般的になっています。省エネ視点、モビリティ視点では、石油依存の少ない移動・物流手段に切り替えることも考えられますが、カーボンニュートラルはあくまで自動車業界内での排出量ゼロを目標にしており、不足があれば金銭で埋め合わせする排出権取引を利用してまで、ゼロに近づけようとしていました。

エネルギー危機に直面した移動者にとって、どちらが重要かは言うまでもないでしょう。多くの人が望むのは、個々の移動のエネルギーコストを抑えることです。そのためには、マイカーから公共交通や自転車に切り替えることができるようにしておくなど、乗り物の選択肢を多く持っておくことが大事です。

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「地方は車がなければ生活できない」というフレーズが嘘であることは、これまでも立証してきました。住む場所を選べば、乗り物の選択肢は増やせます。今回もそうですが、エネルギー危機は突然やってきます。だからこそ日頃の備えが重要だと思っています。繰り返しになりますが、それがカーボンニュートラルとは違う視点での環境対策にもなるわけですから。