今月11日、JR西日本が「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」というタイトルで、2019年度の輸送密度(平均通過人員)が1日2,000人未満の線区について収支率などを開示しました。多くのメディアで取り上げられたニュースであり、沿線自治体などから意見が相次いで出されたことを知っている人もいるでしょう。

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JR西日本のニュースリリースはこちら

新型コロナウイルス感染拡大によって公共交通が危機的状況にあるにことは、以前のブログでも書きました。そのときは欧州などで導入されている、税金や補助金を前提とした運営に切り替えるべきという主張をしました。今回の発表に際して、その気持ちがさらに強くなりました。ここでは数字を挙げて妥当性を説明したいと思います。

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令和4年度国土交通省予算配分のウェブサイトはこちら

まず国土交通省が発表した今年度の予算配分額から抜粋して紹介すると、道路整備は約1.76兆円に達しているのに対し、都市・幹線鉄道は約693億円と25分の1以下です。輸送担当比率もこのぐらいなら納得できますが、JR東日本の資料によると、鉄道の旅客輸送分担率は3割に達しています。もちろん道路は歩行者や自転車なども使いますが、それを勘定に入れても鉄道予算は少なすぎると感じます。

しかも道路は高速道路などを除けばすべて無料、つまり税金で作られています。一方、日本の多くの鉄道は、運賃収入を主体として運営しています。これも大きな違いです。では欧州はどうか。フィンランドの首都ヘルシンキ都市圏の公共交通を運営するHSLの資料を紹介すると、収入の約半分を自治体や国からの補助金で賄っていることがわかります。

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日本にも公共交通向けの補助金はありますが、多くは経営を支えるためであり、運営が改善すれば補助は打ち切られます。欧州の場合は運営状況にかかわらず、一定の補助金や税金が投入されます。なので経営努力が実を結べば、顧客サービス向上やスタッフの待遇改善につながるのです。

経営が厳しいならバスに転換すればいい、マイカーがあれば鉄道はいらないという意見もあります。ただし鉄道には定時性・速達性という長所があり、とりわけ日本の鉄道はこの面で世界に誇るレベルにあります。一方でこの国の道路交通のマナーが世界に誇るレベルにないことは、東京での降雪時の対応を見ても明らかです。信頼度が圧倒的に違うことは、私自身もメリットとして感じています。

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しかも大量輸送は当然ながらエネルギー効率でも有利です。JR東日本の資料によれば、同社の鉄道のひとり1kmあたりのCO2排出量はマイカーの10分の1以下です。ロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー危機が訪れつつある今必要なのは、ガソリン車か電気自動車かという狭い議論ではなく、あらゆる面で省エネを心がけることであり、大量輸送が可能な鉄道はむしろ注目すべきモビリティです。

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JR東日本環境対策のウェブサイトはこちら

今回のJR西日本の発表には、既存の考え方ではこの問題は解決できないというメッセージが含まていると感じています。国レベルでの抜本的な改革が必要な時期にきていると感じており、国会などで迅速にこの分野の議論が活性化されることを望みます。