先週に続いて、先月衆議院で可決された道路交通法の改正案を取り上げます。今回の改正案では電動キックボードなどが属する新たなカテゴリー「特定小型原動機付自転車」の新設とともに、自動運転についての内容もあったからです。

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改正案ではドライバーがいないレベル4相当の自動運転を「特定自動運行」と定義して、従来の運転の定義には該当しないものと位置づけ、新たに許可制度を創設しようとしています。日本政府では現在開会中の通常国会での成立を目指しており、早ければ今年度中に限定地域でレベル4の車両を使った移動サービスが可能になるとのことです。

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こうした動きは日本以外でもあります。たとえばドイツでは昨年、やはり道路交通法の改正案が閣議決定され、特定分野に限定して公道でのレベル4を可能にするという通称「自動運転法」が、今年度内に導入される見込みだそうですが、ここではレベル4が可能な分野として、シャトル交通サービス、自動運転ミニバス、ラストワンマイルの移動や物流などを挙げています。

米国でも今年3月に自動車の安全基準を修正しており、ハンドルなどの手動制御機能がない車両に義務付けられる安全基準を明文化しました。前の月にゼネラルモーターズ(GM)が、子会社のクルーズ、我が国の本田技研工業(ホンダ)と共同開発する自動運転車「オリジン」の生産および商用サービス展開を申請しており、この要請に対応したものと言われています。 つまり日米独で導入が計画されている新しいルールは、いずれも移動サービスを主眼に置いたものです。

自動運転は当初、マイカーへの導入が話題になりました。しかしマイカーはいつでも好きなところに行けるというメリットゆえ、走行状況は無限と言えるレベルになります。それでも自動運転の研究開発を進める企業は、実験走行を繰り返してはAIに学習させているようですが、この手法では到底追いつけるはずもなく、現在はシミュレーションを併用して対処しているそうです。

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それに比べれば走行経路や時間が限定され、運行管理者も特定される移動サービスは、はるかにハードルが低いと言えるでしょう。ゆえに自動車メーカーの中でもGMやホンダのように、この面に注力しているところが出てきており、日本でクルーズ・オリジンの運行を担当するホンダモビリティソリューションズでは、東京都心でのサービス展開を目指してタクシー会社との合意締結などを進めています。



自動運転が実現すれば公共交通はいらない。かつてこのような意見が多く出されていましたが、直近の状況を踏まえれば、自動運転=公共交通なのです。自分の愛車で寝ている間に目的地に着くというシーンの実現は、かなり先の話と考えたほうがよさそうであり、多くの人にとってのレベル4自動運転は、まず移動サービスによって体験することになりそうです。