4年ぶりに海外に出ています。まず向かったのは、これまで何度も訪ねてきたフランスの首都パリです。もちろん新型コロナウイルスの感染が拡大して以降では初めてになります。このブログではコロナ禍が始まった頃、パリでは自転車走行空間の拡大に乗り出していることを書きました。今回の渡航はそれを確かめる目的もありましたが、結果から先に言えば予想以上でした。

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最初の写真はルーヴル美術館の脇を走るリヴォリ通りです。ここは以前は一方通行の車線が3車線分ぐらいあったと記憶していますが、コロナ禍を受けて自動車レーンを1車線だけ残し、残りをすべて双方向に通行可能な自転車レーンに変えてしまいました。これなら自転車はもちろん、4年前には見ることさえなかった電動キックボードも安心して走れます。これまで自動車で何度も走ったことがある場所だけに、大胆な変身に驚きました。

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次はバスティーユ広場です。ここはナポレオンによるフランス革命以降、何度か革命の地になった場所で、広場の中央に7月革命記念柱がそびえ、道路はその周辺を巡るラウンドアバウト(環状交差点)となっていました。ところがひさしぶりに訪れると、ラウンドアバウトの南側が人のための広場に姿を変え、交差点は信号制御に変わり、広場を取り巻くように自転車レーンが用意されていました。人と自転車を優先した空間づくりというメッセージが伝わってきました。

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これ以外にもシャンゼリゼ通りをはじめ、多くの道に自転車レーンが整備されていました。そして自転車の数も、4年前より明らかに増えていました。ここまで急ピッチで自転車の走行空間が増え、逆に自動車のそれが減ったことで、自転車で移動しようと考える人が増えたのでしょう。そしてリヴォリ通りの広いレーンは、パリが自転車推進都市であることを世界にアピールする象徴になっていると感じました。

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パリの中心部は建物が密集していて、新たに道路を作るのは困難です。そこで道路や広場の再配分を選んだのでしょうが、注目したいのは手法が大胆なことです。自動車利用者からの不満はあるでしょう。日本の多くの都市はその点に配慮しそうです。でも移動そのものを否定しているわけではなく、時代に合った移動環境を提供しているのです。そこには「未来のパリをこうしたい」という行政の明確なビジョンを感じます。パリがいつ訪れても新鮮に感じる理由のひとつは、ここにあると思いました。