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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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フランスの交通多様性に学ぶ

先週に続いてエネルギーの話をします。今回は私が何度も現地に足を運んだフランスにスポットを当てます。1年前の記事になりますが、欧州ブランドの電気自動車(EV)が増えてきた頃、インターネットメディア「マイナビニュース」で同国のエネルギー政策などに言及していますので、気になる方はこちらもご覧ください。

フランスが電力の約7割を原子力発電に依存していることは知っている人もいるでしょう。2020年の統計では残りの多くも水力や風力などの自然エネルギーで賄っており、火力などCO2を排出する発電は10%以下と、カーボンニュートラルに近い国のひとつになっています。

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フランスが原子力に舵を切ったのは、前回のブログでも触れたオイルショックが契機でした。それまでは多くの先進国同様、石油に依存してきたようですが、オイルショックを受けて自給こそ重要という機運が高まり、アンリ・ベクレルやピエール・キュリーなどの専門家を輩出した地でもあることから、原子力を選択したとのことです。

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その結果、当初はガスタービンエンジンを使う予定だった高速鉄道TGVは電車に切り替わり、絶滅寸前までいった路面電車がLRTとして復活する後押しにもなりました。EVの開発も始まりました。環境都市としても知られるラ・ロシェルではシェアリングサービスを行っており、私は20年近く前、ここで初めて電気自動車を運転して公道を走りました。

ただ当時は鉛電池を使っていたので、後席や荷室があった場所はすべて電池が敷き詰められ、車体はあきらかに重く、加速が活発なのは60km/hぐらいまででした。ゆえに限られた用途向けの供給に留まっていました。将来を見据えて路上に送り出した姿勢を評価しつつ、多くの人が便利で快適だと思うレベルではないものは量販しないという判断に納得しました。

新しい分野に積極的に挑戦しつつ、あくまで使い手の気持ちを尊重する姿勢は、カーボンニュートラルという新しい物差しが登場した近年も変わっていないと感じています。

自動車分野では、ルノーは2020年欧州ベストセラーEVになった「ゾエ」などを持っていますが、エンジン車のユーザーにも目を向け、ディーゼル車からの乗り換えとして、多くの欧州メーカーが敬遠するハイブリッド車を導入しています。イタリアのフィアットや米国クライスラーとともにステランティスの一員になったプジョーやシトロエンは、同じ車体でエンジン車とEVの両方を用意しています。

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一方でルノーはモビリティサービス専用の組織「モビライズ」を立ち上げ、プジョーやシトロエンはシェアリングやレンタルだけでなく駐車場や充電スポットの予約もできるアプリ「Free2Move」を提供。さらに公共交通に近い分野では、自動運転シャトルのナビヤ「アルマ」やイージーマイル「EZ10」がいち早く登場し、このカテゴリーの主役になっています。



こうした動きを見て思い出したのは、交通権という概念です。フランスは世界でいち早く、誰もが自由で快適に移動できることが国民の基本的権利であると法律で定めました。電力に余裕がありながら電動以外の選択肢も残し、既存の枠組みを超えたサービスを考案するなど、多様な移動の選択肢を提供していく姿勢が、交通権に通じていると思ったのです。

前回のブログでは、移動者1人ひとりが複数の移動手段を持てば、エネルギーショックは小さくできると書きましたが、それには選択肢が存在していることが前提です。便利だからとひとつの乗り物に固執せず、新しいモビリティを次々に創造し、でも既存の乗り物と共存させることで使い手に寄り添っていくフランスの姿勢は、これからも注目すべきだと思っています。

キャンピングしないキャンピングカー増殖中

千葉市の幕張メッセで明日13日まで開催されている、ジャパンキャンピングカーショー2022に行ってきました。このイベントに足を運ぶのは久しぶりで、新しい発見がいろいろありました。なによりも目を引いたのは、キャンピングという本来の目的以外の使い方を提案した車両があったことです。具体的にはテレワークやワーケーション、災害対策に対応した車両がいくつか見られました。

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業界団体である日本RV協会によれば、新型コロナウイルスの感染が拡大するにつれて、テレワークの場としてキャンピングカーを考え、問い合わせてくる人が増えたそうです。一方、気候変動の影響で災害が増えたことを受けて、災害対応の車両も展示されていました。防災のためにキャンピングカーを買う人もいるとのことで、協会と自治体との間で車両提供の協定を結ぶ例もあるそうです。

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今の日本は景気は良いとは言えませんが、その中でキャンピングカーの販売台数は新車・中古車ともに順調に増えています。コロナ禍や多発する災害という状況を受けて、ユーザーがキャンピングのために生まれた車両に違う可能性を見出した結果であり、このカテゴリーに注目するユーザーは日本人としては柔軟な発想の人が多いことに好感を抱きました。

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日本RV協会のウェブサイトはこちら

こうした状況もあるのでしょう、今年はイタリアのフィアットプロフェッショナルが生産する「デュカト」の正規輸入が発表されました。欧州小型商用車のベストセラーで、ボディはやや大柄ですが、日本の多くの商用車とは異なる前輪駆動方式なので床が低く、平均的日本人であれば立って歩けるスペースが魅力です。キャンピングカーだけでなく宅配や送迎の用途も考えているそうで、こちらも幅広い用途での展開が期待できそうです。

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もうひとつ感じたのは、昔に比べて架装のセンスが格段に洗練されたことです。最近のリビングルームやオフィスを思わせる仕立てで、これなら生活をともにしてみようかという人が多いのではないでしょうか。日本RV協会公認の車中泊施設「RVパーク」など環境整備も進んでいるとのこと。作り手も乗り手も柔軟な発想で、モビリティの世界をさらに広げていってほしいと思っています。