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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

モビリティ

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群馬から全国に広がる低速電動バス

1か月前のこのブログで、グリーンスローモビリティという新しいカテゴリーを紹介しました。そのとき石川県輪島市で稼働している電動カートと並んで、群馬県桐生市などで運行中の電動バス「eCOM」に触れました。その後桐生に行く機会ができたので、今回はこの乗り物を取り上げます。モビリティメディア「ReVision Auto&Mobility」でも記事を掲載しているので興味のある方はご覧ください。

桐生再生本社とeCOM8_2
ReVision Auto&Mobilityの記事 = https://rev-m.com/mobility/ecom20180727/

記事にもあるとおり、eCOMは群馬大学と自動車設計技術会社「シンクトゥギャザー」が開発生産し、桐生ではまちづくり会社の「桐生再生」が運行していますが、それ以外に国内外各地で走っています。産官学の共同プロジェクトで、自動車メーカーが関わらずに、ここまで完成度の高い電動バスを製作し、各地で走行するまでの実績を作っている事実にまず感心します。

eCOM8_2の車内

しかもそれは、多くの地方都市が抱える人口減少と高齢化問題に対処した移動手段であり、電動化によって夏の酷暑に代表される地球温暖化対策の影響を抑えつつ、「西の西陣、東の桐生」と言われた繊維産業の伝統を残す街並みを観光資源としてアピールするツールでもあります。まちづくりの一部としてのモビリティという考え方も、これまでの多くの自動車とは異なるビジョンであり注目すべき部分です。

後部に車いす用リフトを装備

桐生市内をひとまわり乗った印象をひとことで言えば、予想以上の完成度の高さでした。低速電動バスの前に超小型モビリティの開発も行っていたグループならではの経験が伝わってきました。一方で19km/hという最高速度は、短距離の移動では不満は感じられず、コストや環境負荷、事故の際の被害を抑えられるだけでなく、独特の街並みをより身近に体験できるという美点も教えられました。

桐生本町通りを走行中

それは自転車や路面電車など、かつては前時代的と考えられたものの、環境に優しいなどの理由で再び脚光を浴びている乗り物と似ています。考えてみればこれらもグリーンスローモビリティです。世界的にモビリティの物差しが変わりつつあるからこそ、新しい物差しのもとで生まれたeCOMが各地で注目されているのでしょう。低速電動バスのベンチマークになりつつある存在として、今後も動向に注目していきたいと思います。

線路有効活用としてのLRT

今週も西日本豪雨で被害を受けた地域の鉄道にスポットを当てます。今回は岡山県岡山市と総社市を結ぶJR西日本吉備線(愛称・桃太郎線)です。同線は今年4月、JRと両市がLRT(ライトレール)化における役割分担や費用負担について基本合意しました。

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これを受けて現地で三者などに取材した内容が、今日発売の鉄道専門誌「鉄道ジャーナル」に掲載されました。かなり長い記事でもあり、興味がある方は購読していただきたいのですが、取材を通して考えた吉備線LRT化の特徴としては、既存の鉄道路線を継承することと、廃止が議論されるほど利用者減少に悩んでいないことが挙げられます。

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前者は富山ライトレールという前例がありますが、吉備線の一日の平均利用者数はライトレール化される直前のJR富山港線の3倍以上に上ります。実際に乗ってみても、沿線には住宅が立ち並び、学校が多いこともあって、朝のラッシュ時を含め利用者の多さに驚きました。しかし車両は古いディーゼルカーで、本数は朝のラッシュ時でも3本、昼間は1〜2本に過ぎず、家や会社があるのに駅がないという場所も目立ちました。

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岡山県もまた自動車移動者が多く、交通渋滞が問題となり、環境悪化も懸念されています。高齢化も進んでおり、移動困難者の増加や高齢ドライバーによる事故も問題視されています。増えつつある外国人観光客のための交通整備も重要です。しかし現状の吉備線は、こうした要求に応えきれていないと感じました。

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駅を増やすとともにユニバーサル性を高め、加減速性能の良い小さな車両を数多く走らせれば、自動車で移動していた住民の一部が吉備線に移行し、沿線訪問をためらっていた観光客も使ってくれるようになるのではないでしょうか。つまり吉備線のLRT化は、いまある線路を有効活用することで住民や観光客などの利便性を高めつつ、都市問題の解決を図るための選択と言えます。

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吉備線が開通したのは今から110年以上前の1904年。当時もまちづくりのような考えはあったと思いますが、今とは状況が大きく異なります。同じ線路を使いながら、未来のまちづくりに見合った鉄道にできるか。その答えがLRT化なのだと思いました。

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LRT化の議論はまだ始まったばかりであり、今後住民理解など多くのステップをクリアして行く必要があります。その前に今は三者とも復興に全力を注ぐ時期だと思います。しかし少子高齢化をはじめ、将来起こり得る問題に対し、先手を打って対処していこうという積極的な姿勢には好感を抱きました。

地方鉄道の「見せる力」に期待する

先月仕事で関西を訪れた際には、今年3月から京都市の叡山電鉄で走り始めた「ひえい」も見てきました。ひえいは叡山電鉄が属する京阪グループが比叡山・琵琶湖への観光ルート活性化の一環として製作した車両で、特別料金は取らず、他の車両に混じって出町柳〜八瀬比叡山口間を走っています。

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外観は何と言っても前面の金色の楕円形が目を引きます。沿線の神聖な空気感や大地の気などをイメージしたそうです。ただ車体の緑を含めて派手ではなく、実車は想像以上に落ち着きがありました。横の窓も楕円で統一してあり、こだわりが伝わってきました。車内のカラーコーディネートも外観と同様で、座席はひとり掛けとして座り心地にこだわり、優先スペースは色違いのヘッドレストと長めの吊り革で識別できます。ドアの上の乗り方案内や運賃表・路線図もスマートにまとめてありました。

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ところでこの車両を形式名ではなく「ひえい」という名前で紹介したのには理由があります。新型車ではなく改造車だからです。1987年に登場した700系をベースに1両だけ作られたもので、その700系は1950年代以前の旧型車の機器を用いて生まれました。700系になってから機器を入れ替え、今回車体を作り変えたという変遷を辿っているのです。

地方鉄道ではこうした形で新しい車両を生み出す例が多く見られます。JR九州の「或る列車」や「はやとの風」などののD&S(デザイン&ストーリー)列車は有名で、多くは特別料金を必要としますが、ひえいと同じように通常料金で乗れる車両も、猫の駅長たまをモチーフにした和歌山電鐵「たま電車」、0系新幹線をイメージしたJR四国「鉄道ホビートレイン」などがあります。

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なぜ新型車ではないのかは説明するまでもないでしょう。費用を出せないからです。欧州のように地方鉄道も自治体が運営主体となれば、税金などを投入して新型観光車両を導入できるでしょう。かつて訪れた南仏ニースのプロヴァンス鉄道はそうでした。それでも叡山電鉄は実績と経験のあるデザイン会社(GKデザイン総研広島)を起用しており、デザインにコストを掛けて良いものに仕上げようという姿勢は感心しますし、その気持ちは観光客に響くはずです。

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ただし現在の日本の観光車両は、多くが水戸岡鋭治氏のデザインであることも事実です。彼の作風を否定するわけではありませんが、似たような雰囲気の車両が増えているという印象を持つ人もいるでしょう。日本には数多くのデザイナーがいます。未知のクリエイターに形を委ねるのはたしかにリスクが伴うかもしれませんが、鉄道会社には勇気を出して新しい可能性に挑戦してもらいたいと思います。

高齢化社会を見据え小さな車の復権を

高齢者の移動にまつわる問題では、先月末に神奈川県茅ヶ崎市で起きた90歳女性運転の乗用車による死亡事故で、ふたたび議論が高まるようになりました。そんな中、私も会員になっている「日本福祉のまちづくり学会」の地域交通を専門とするメンバーが昨日集まり、他の組織とともに議論を行いました。

この席でまず話題になったのが超小型モビリティです。我が国では2013年に国土交通省が超小型モビリティ認定制度を発表しましたが、5年経った今も独自規格が作られず、伸び悩みという状況に陥っています。しかし超小型モビリティの小さく軽く遅いという特性は、20世紀の自動車の価値基準では短所でしたが、環境問題や高齢化問題などに直面する現在では逆に長所だと考えています。

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日本福祉のまちづくり学会ウェブサイト=http://www.fukumachi.net

現在の道路交通の流れに乗れることは、複数の車両に乗って確認済みです。しかし高速道路は走行できないので、過剰な力は備えていません。仮に操作ミスで暴走しても勢いはほどほどです。しかも重量は現在の軽自動車の半分以下なので、衝突時の衝撃も抑えられます。欧州では地方の高齢者が超小型モビリティを利用していますが、この特性を理解したうえでの選択であれば、素晴らしい見識だと思います。日本でも今一度このカテゴリーに注目すべきではないでしょうか。

もうひとつ、超小型モビリティは高速道路を走行しないので、衝突安全基準がさほど厳しくありません。ゆえに自由なデザインが可能となります。たとえばIT先進国エストニアで開発されたレトロデザインの三輪電気自動車「Nobe」は、デザイナーが欧州の昔の超小型モビリティをヒントにしたと言っており、このクラスを前提として作られたことが想像できます。

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Nobeのウェブサイト=https://www.mynobe.com

昨日の席では茅ヶ崎の死亡事故で女性が運転していた20年以上前の日産プリメーラも注目されました。このプリメーラは2Lエンジンを積みながら5ナンバーサイズに収まっています。最近の乗用車はモデルチェンジのたびに車体が大きくなるので、買い替えせずに乗り続ける高齢者が目立つという報告がありました。安全性を高めた車両を発売しても、もっとも必要とされる人々に行き渡らないという状況があるようです。

自転車やライトレールなど小さく軽く遅い乗り物が再評価され、旅客機や高速鉄道の速度競争も一段落している昨今。乗用車だけがより大きく、より速くを是とし続けているように見えます。社会状況の変化に即したビジョンを期待したいところです。もちろんこれ以外にも、高齢者の移動にまつわる問題は山積しています。日本福祉のまちづくり学会では、今年8月に神戸市で開催される全国大会をはじめ、各所でこのテーマについて提言していきたいと考えています。

東京のサイクルシェアにモノ申す

NTTドコモが全国各地で展開しているサイクルシェアリング。現時点で25地域でサービスを提供しており、東京23区では事務所のある渋谷区でも昨年10月からサービスが始まったので、今年になって会員登録を行い、何度か使っています。

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以前横浜の「ベイバイク」を使った際は、携帯電話がドコモでなかったこともあって会員登録が大変でしたが、現在はドコモなので簡単に登録が完了しました。事務所は新宿区に近い場所にあるので、練馬区以外は借りた区と異なる区で返却できることも、利用しようと思った理由です。

これまで国内外のいくつかのサイクルシェアリングを利用してきましたが、電動アシスト自転車は初めてです。東京は23区内であっても坂が多いので助かります。ただそれ以外の部分で気になるところも出はじめています。

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上の地図はよく行く新宿駅周辺のポートマップです。新宿区はオレンジ、渋谷区は紫色で示していますが、微妙に駅から離れた場所が多いことが分かると思います。渋谷駅周辺も似たような感じです。そのため現状ではさほど便利ではないという印象を抱いています。二次交通であることをわきまえ、駅近ポートにこだわってほしいところです。

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また最初の写真でポートにきちっと収めていない自転車に気づいたかと思います。マナーにも問題ありですが、ドコモのサイクルシェアリングは上海のそれに似ていて、自転車側の端末で借り出し・返却が可能となっています。それなら上海のようにポートなしでも良いように思えますが、他の多くのサービス同様、ポート側に端末を装備したほうが景観面では有利でしょう。

2018

国内にも好ましいサイクルシェアリングはあります。2017年3月の国土交通省の資料によれば、わが国でポート密度と回転率(1日1台あたり利用回数)が高いのはどちらも岡山市の「ももちゃり」です。晴れの日が多く、中心部がほぼ平地という有利さはありますが、ポートマップを見ると路面電車の停留場や公共施設、観光地の近くに多く設置してあることが分かります。回転率で岡山市に次ぐ金沢市も似たような状況です。

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それでも世界主要都市の状況と比べると、日本はこの分野で大きく遅れを取っていることが分かります。突出しているのはやはり、このブログで何度も取り上げたヴェリブを擁するパリで、東京がこの分野でパリに追いつくのは至難の技でしょうが、せめてニューヨークと同レベルは目指してほしいと思っているところです。 
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