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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

モビリティ

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地方交通をどう育てていくか

この1年で国内の地方鉄道に何度か乗りました。昨年は岡山県のJR西日本吉備線(桃太郎線)と秋田県の秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線を取材し、先月は岩手県の三陸鉄道南リアス線とJR東日本釜石線を利用しました。取材では同区間をレンタカーやシェアカーでも走り、先月も移動の一部は自動車を使いました。その結果、鉄道と道路を無意識のうちに比較するようになりました。

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岡山駅と総社駅を結ぶ吉備線は、JR西日本と沿線自治体の岡山市・総社市でLRT化の議論が進んでいます。全線にわたり国道180号線が並行しているのですが、道幅が狭く、踏切もあり、各所で渋滞が発生していました。山陽自動車道は多くの高速道路と同じように郊外を走るので、都市間移動には適しません。そこでLRT化による駅と本数の増加で移動の利便性を上げようという構想が生まれたようです。

秋田内陸線は元国鉄の阿仁合線と角館線を第3セクターに転換し、両線を結んだものです。鷹巣〜阿仁合駅間が第2次世界大戦前に開通したのに対し、残りの旧国鉄区間は1960〜70年代、新設区間は1989年と半世紀以上の差があります。所要時間は鷹巣〜阿仁合間33kmが53分、比立内〜角館駅間48.2kmが59分(いずれも各駅停車)と、距離に差があるのに所要時間はほぼ同じでした。Googleマップで調べると北側は自動車のほうが速いのに対し、南側は鉄道のほうが速くなります。

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鉄路も道路も、昔に作られた区間は市街地を経由し、山を避けるルートが多く、カーブや勾配が多いのに対し、最近作られた区間はトンネルを多用し、市街地から離れた場所を直線に近いルートで結びます。秋田内陸線はそれが分かりやすい路線で、沿線人口が少ない地域でこの鉄道が存続している理由のひとつが理解できました。

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先月乗った三陸鉄道は、来月23日からJR山田線の釜石〜宮古駅間の運行を継承し、盛〜久慈間で一体運行を始めますが、一方で自動車専用道路の整備も続いており、南リアス線・JR釜石線と並行する区間は3月9日に全区間が開通。東北自動車道と三陸沿岸の自動車道が直結することになります。

今回乗った南リアス線盛〜釜石駅間は1970〜84年開通で(宮古〜久慈駅間の北リアス線も同時期開業)、線路状態は良く、スピードは速めだったので、自動車専用道路が中心市街地は通らないことを含めて考えれば棲み分けは可能と考えており、共存共栄での復興の後押しを期待したいところです。

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ただ三陸沿岸地域は特別な場所であり、今後地方では鉄道はもちろん道路の新規建設も減ると思われます。既存施設の活用が望まれるわけで、吉備線のLRT化はその点で納得です。秋田内陸線も冬の積雪や他の交通との比較を考えると存続に納得できます。一方で以前訪れたJR北海道札沼線の北海道医療大学駅以北など、鉄道存続は難しそうだと思う区間もあります。大事なのはやはり現場を知ること。そのうえで将来を見据えつつ、感情的にならず冷静な判断を下すことであろうと感じました。

地方型MaaSが試される2019年

2019年最初のブログになります。本年もよろしくお願いいたします。今回は以前ここでも紹介した、昨年末に開催された「地域交通と情報技術〜MaaS・ライドシェア・自動運転と地域交通計画〜」というテーマのセミナーについて記します。当日はこのブログを見ている方々も何名か参加していただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。

ルーラルMaaS概念図

この日は第一部がフィンランドのMaaSについて、私も登壇した第二部はMaaS・ライドシェア・自動運転と地域交通計画についてプレゼンテーションを行いました。フィンランドのMaaSについては以前も紹介したので割愛させていただくとして、第二部についてひとことで紹介すると、以前のブログで予想したとおり地方視点、生活者視点の内容になりました。

アーバンMaaS概念図

上の2つの図版はフィンランド交通・通信省での勉強会で見せていただいたものです。2枚目の都市型MaaSでは複数の交通をシームレスにつなぎ合わせることがポイントなのに対し、1枚目の地方型MaaSは多様な移動や物流を単一の交通で賄うことが重要としていました。フィンランドでは前者はヘルシンキのWhim(ウィム)が具現化したのに対し、後者については決定的な回答は出ていないとのことでした。

一方日本では、以前のブログで紹介したように貨客混載という取り組みがあります。2015年のヤマト運輸と岩手県北交通による「ヒトものバス」が最初で、その後鉄道やタクシーにも波及しており、異なる物流事業者の混載も実現しています。こうした多種多様な需要をMaaSによりシームレスに1台につなげる仕組みを確立すれば、世界に先駆けた地方型MaaSの提案になるのではないかと考えています。

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ヤマト運輸のウェブサイト = http://www.kuronekoyamato.co.jp

こうした取り組みはビジネス視点では難しいでしょう。儲けが見込めないからです。一方で今回のセミナーでは、地方交通は多くが自治体の補助により運行されているので、自治体主導によるMaaSは実現しやすいのではないかという意見が出ました。個人的にもそのような動きが出てくることを期待します。そのためには路面電車整備時に用意されるような「MaaS補助金」が必要になってくるかもしれません。

当日、私は自動運転とMaaSの関係について話しました。自動運転は自家用車よりも公共交通、特に交通量が少なく運行経路が限られる地方交通で導入しやすいという意見が多くなっています。しかし現在実証実験中の無人運転車が実用化されると、乗務員に行き先を聞いたり、両替を依頼したりという行為はできなくなります。MaaSによる事前の経路探索や運賃決済が必須になってくるのです。

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日本は世界最先端の高齢化国家であり、 運転免許返納者も増加しています。一方で若年層を中心に大都市への一極集中が進んでおり、地方の過疎化もまた加速しています。運転手不足も深刻です。我が国の交通でまず手をつけるべきは地方であると、多くの人が認識しているでしょう。その解決策のひとつとして、地方型MaaSをどう導入していくか。今年のモビリティシーンにおけるテーマのひとつだと考えています。

グリーンスローモビリティ・アズ・ア・サービスへの期待

2018年の自分のモビリティ分野の活動を振り返ってみると、2つのキーワードが思い浮かびました。ひとつは6月に国土交通省が提案したGSM(グリーンスローモビリティ)、もうひとつは9月にフィンランドの首都ヘルシンキで説明を受けるとともに議論を重ねたMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)です。

その前段階として、1月には石川県輪島市の電動カートを使った一部自動運転による移動サービスを体験しました。5か月後にこれがGSMの代表例として紹介されるとは思いませんでしたが、そこではさらに、群馬県桐生市などで走行している低速電動バスeCOMも取り上げていたので、機会を見つけて桐生に足を運びました。

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10月には愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンを訪れ、かつてニュータウンとして開発された街こそGSMが必要であると痛感し、11月には横浜市金沢区の電動カート実証実験を見に行って、坂の多い街での電動車両の有効性を教えられました。GSMが必要とされる舞台は予想以上に多いことを思い知らされました。

ところでGSMで使われる乗り物は、電動カートにしても低速電動バスにしても、横の窓を持たずエアコンがないなどシンプルな構造です。実はこれがタイトルでMaaSと結びつけた理由です。

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従来の考え方では、安全装備や快適装備は上級の乗り物ほど充実しており、それを理由にして利用者に上級の乗り物を選んでもらうというヒエラルキーが存在してました。しかしMaaSはすべてのモビリティをシームレスにつないで快適な移動を提供する概念であり、MaaSのもとでは自転車、鉄道、バス、タクシーなど、すべての乗り物が平等となります。

GSMで使われる乗り物もMaaSに組み込まれれば、既存の鉄道やバス、タクシーと同等の移動手段として活用が期待できます。そうなれば車両価格や維持費の安さはメリットになり、自動運転に積極的に取り組んでいることは、運転手不足や高齢化などの問題解決で有利になるでしょう。

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GSMは大都市ではなく、郊外や農村などでの移動手段として期待されているようです。一方のMaaSはビジネス視点で考えるとどうしても需要の多い大都市偏重になりがちです。フィンランドやヘルシンキのように、国や自治体が主導してMaaSを考え、そこにGSMを結びつけることで、シンプルかつエコな移動環境を構築し、地方の移動問題解決につなげていくことを期待しています。

*次回は2019年1月5日公開予定です。

公共交通無料という地域活性策

先々月から先月にかけて、フィンランドの首都ヘルシンキでMaaSのスタディツアーに参加したことや、フェリーでバルト海対岸のエストニアの首都タリンに渡ったことを書きました。しばらく時間が空きましたが、今回はタリンで体験したことを書きます。それは市民向けに実施している公共交通無料の取り組みです。

タリンでは市役所の担当者に話を聞くことができたので、無料にした理由、財源について、無料化の効果、市民に限定した理由などについて質問をしました。その答えを含めたタリンの公共交通事情については、東洋経済オンラインで記事にしているのでご覧ください。 

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タリンを取り上げた東洋経済オンラインの記事 = https://toyokeizai.net/articles/-/249037 

話を聞いてまず感じたのは、我が国との公共交通に対する考え方の違いです。タリンは公共交通運営への補助金を72%から90%に引き上げることで無料化を実現しました。つまり運賃収入の割合は無料化以前から30%未満だったことになります。これはエストニアに限った話ではなく、ドイツは45%、フランスは30%ぐらいとなっています。一方日本の広島電鉄は、昨年のブログで紹介した時点では、9割以上を運賃収入で占めていました。

タリンの公共交通が文字どおり公共サービスとして位置付けられ、その延長上として無料化を実施したのに対し、日本の公共交通の多くは営利事業となっており、無料化は遠い世界の話であることを、あらためて思い知らされました。黒字赤字という収支状況によってサービス内容が大きく左右されるというのは、公共サービスとして好ましくないことです。公立学校が赤字なので授業を減らしたり休校にしたりするでしょうか? 公共交通も同じ考えのもとで運営すべきと思います。

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もうひとつ、タリン市役所の担当者は、公共交通無料化がフランスを中心にいくつかの都市で実施され、今後も導入予定があることを言及していました。自分も今年になって無料公共交通の現場を訪れるのは初ではなく、これが3度目でした。最初はこのブログでも紹介した石川県輪島市、2度目は米国ペンシルベニア州ピッツバーグで、後者についても東洋経済オンラインで記事にしています。

輪島市の場合、運営主体の輪島商工会議所は交通事業者ではなく、ドライバーは2種免許を持たないので、日本のタクシー業界のルールに沿って無料にしたという理由もあったとのことです。一方ピッツバーグでは市の中心部のみ無料とすることで、ショッピングやスポーツ観戦などに利用してもらい、都心の活性化や交通渋滞の解消などを狙っているようです。

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タリンの実例では無料化による収入減を、住民の増加による税収増が大きく上回ったという報告もありました。そのうちに転入者が少なくなり、無料化が負担になると考える人もいるでしょう。そういう場合は有料に戻せば良いと思います。現に昨年訪れた米国オレゴン州ポートランドでは、以前はピッツバーグと同じように都心部を無料としていましたが、現在は有料となっています。しかしポートランドはいまなお「全米でもっとも住みたい街」であり続けているようです。

交通以外にも積極的な都市改革を実行したおかげもあり、にぎわいが定着したので有料にしても問題ないと判断したのではないでしょうか。そして今、タリンが同じ道を目指しているような気がしました。記事にも書きましたが、日本も今すぐ公共交通を無料化せよとは思いません。それよりも、公共交通の活性化が都市の活性化につながるという欧米の実例を、ひとりでも多くの日本人が知ってほしいという気持ちでいます。

MaaSの真実を知った日

2週間前のこのブログで、フィンランドのヘルシンキからエストニアのタリンへフェリーで移動したことを書きました。では両都市では何をしていたのか。まずヘルシンキでの活動を書けば、私も所属している日本福祉のまちづくり学会の有志が企画したMaaS(マース)のスタディツアーに参加していました。

ご存じの方も多いかと思いますが、MaaSはMobility as a Serviceを示した言葉です。しかし単なるモビリティサービスを示しているわけではありません。この言葉をいち早く使いはじめたフィンランドの交通通信省、ヘルシンキ市役所、MaaS Global社から説明を受け、議論を重ねることで、MaaSの真の意味が理解できたような気がします。内容についてはモビリティ専門ウェブサイト「ReVision Auto&Mobility」でも紹介していますので、興味のある方はご覧ください。

ヘルシンキのトラム
ReVision Auto&MobilityのMaaSの記事 = https://rev-m.com/mobility/whim20181009/

日本でも今年になって、MaaSに取り組む交通関係者が多くなりました。特に自動車業界で目立つような気がします。しかしフィンランドのMaaSは自動車のために生まれたわけではありません。その逆で、ICTを駆使することで公共交通にマイカー並みの利便性を持たせ、自動車移動に頼りがちな市民を公共交通に誘導するという考えです。

そのためにMaaS Global社が製作したスマートフォンアプリ「whim(ウィム)」は、目的地への経路探索を行うのみならず、クレジットカード情報をあらかじめ入力しておくことで事前決済を行い、定額乗り放題のプランまで用意しています。しかも鉄道やバスだけでなく、タクシーや自転車シェア、カーシェア、レンタカーなど、あらゆるモビリティサービスを使って案内をしてくれます。

whimアプリ画面

アプリを開発すればOKという簡単な話ではありません。ヘルシンキの交通にはさまざまな事業者が絡んでおり、各事業者の時刻や運賃などのデータがないと実現は不可能です。そのために陣頭指揮を取ったのがフィンランド政府で、交通事業者などが持つデータのオープン化を進めました。国を挙げてのスマートモビリティへの取り組みがMaaSに結実したと言えそうです。

もうひとつヘルシンキのMaaS関連のウェブサイトを見ると、インテグレーテッドモビリティという言葉を目にします。ユーザーの声でもオールインワンであることがもっとも評価されているようです。前述のように鉄道、バス、自転車シェア、レンタカーなどあらゆる交通を、マイカーのように一体で利用できることもスマートモビリティでは大切だと教えられました。

ヘルシンキ自転車シェア

つまり特定の交通事業者が自分たちの利益だけのためにアプリを提供することは、MaaSとは言えないと思います。日本の多くの都市は複数の民間事業者が競合している状況ですが、利用者にとって有り難いのはやはり、ひとつのアプリで多彩なモビリティを一体に使いこなせる、スマートでインテグレーテッドなサービスではないでしょうか。そのためには国や自治体のリーダーシップが大切だと感じました。

前述のReVision Auto&Mobilityでは11月21日にセミナー&交流会を開催予定で、私もMaaSをテーマにした回で登壇予定です。この場を含め、MaaSの本場を見てきたひとりとして、今後も積極的にこのテーマについて情報発信をしてきたいと思っています。
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