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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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神戸高速鉄道 次の50年はどうなる

神戸市の鉄道会社、神戸高速鉄道が今年4月で開業50周年を迎えました。といっても関西に住む人以外にはピンとこない話題かもしれません。車両を持たないインフラ保有会社であることが大きいのではないでしょうか。ただしこの神戸高速、市内に点在していた私鉄のターミナルを結びつけて相互乗り入れを実現し、地方鉄道で話題になることが多い第三セクターや上下分離方式をいち早く導入するなど、先駆的な取り組みを実施したことは事実です。

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昨年この鉄道に関する記事を東洋経済オンラインに掲載させていただきました。半世紀にわたる歴史は記事の中で解説していますので、興味のある方はご覧いただきたいのですが、路線は変わらないものの、阪神・淡路大震災や村上ファンドによる阪神株買収などの出来事も影響して、開業当初とは経営形態や運行形態が大きく変わっています。そして沿線の状況も変わりつつあるようです。

今週関西での仕事があったので神戸高速を再訪し、高速神戸駅と新開地駅を利用して感じたのは、150万人級の大都市の中心部とは思えない閑散とした雰囲気でした。高速神戸〜新開地間にある地下街「メトロこうべ」は良く言えば昭和時代の面影を濃厚に残す、時間が止まったような空間になっていました。三宮周辺に高層ビルが林立するのとは対照的です。

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東洋経済オンラインの記事=https://toyokeizai.net/articles/-/192480 

実は神戸市、日本のメガシティの中では人口減に悩む稀有な存在でもあります。神戸新聞によれば、2005年には阪神・淡路大震災直前のレベルを超えたものの、2012年をピークに減少に転じているそうです。三宮がある中央区や大阪に近い灘区・東灘区は人口が増えているのに対し、市の西部や北部で減少が目立っているようです。神戸においても一極集中と都心回帰が進んでいるのかもしれません。

昨年秋の記事では今後の神戸高速の動きとして、阪急と神戸市営地下鉄西神・山手線の乗り入れの可能性について書きました。すると直後に行われた神戸市長選挙で乗り入れを公約に掲げた久元喜造市長が再選。市長が早急な検討を口にすると、阪急側も協議を加速させていきたいと表明しました。

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西神・山手線沿線には西神ニュータウンや須磨ニュータウンなどが広がっていますが、住民の減少に悩んでいるそうです。神戸市全体の人口減に歯止めをかける対策のひとつとして、これらのニュータウンの活性化を考え、そのために市営地下鉄と阪急の乗り入れを推進したいと考えているのでしょう。

一方の阪急は村上ファンドの一件を契機にライバルだった阪神と合併しており、大阪〜神戸間で競争をする必要はありません。すでに神戸高速への乗り入れは新開地までとなり、当初行なっていた山陽への乗り入れは阪神に一任しています。地下鉄との接続点がどこになるか不明ですが、もし三宮周辺となるなら、三宮〜高速神戸間の路線を新開地止まりとなっている神戸電鉄に譲ってはどうかと提案しました。

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神戸市西部を抜けて三木市や小野市に至る神戸電鉄の粟生線は乗客減少に悩んでいます。神戸市の中心である三宮まで乗り換えなしで行くことができれば、少しは状況が変わるかもしれません。神戸に限った話ではありませんが、都市は生き物であり、鉄道はそれに柔軟に対応していくことが求められます。神戸高速の次の50年が、この街の繁栄につながる系譜になることを期待しています。

レール&カーシェアのすすめ

大型連休が近づくと話題になるテーマのひとつが高速道路の渋滞です。サービスエリアの情報を含めて、渋滞といかに付き合うかという記事は私も執筆したことがあります。ただ気になるのは、大型連休を含めた遠出の際、多くの方が自動車にするか公共交通にするかという二者択一になっていることです。

自分の場合は自動車と公共交通を組み合わせた移動をする場合があるからです。 具体的には鉄道とカーシェアリングを使い分けながら目的をこなすパターンが多くなっています。

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自動車にはドアtoドアの魅力があります。自宅から目的地まで乗り換えなしでダイレクトに行けるという自在性は、移動を考えるうえで捨てがたい長所です。しかし渋滞になれば、通常1時間で済む距離に2〜3時間も要してしまうことがあります。鉄道はその逆で、特に日本のそれは定時性では最高レベルですが、自宅から目的地まで鉄道だけで直接行けることはほとんどありません。多くの場合は自転車やバスなどの二次交通が必要になるでしょう。

それなら移動の中で、定時性が重視される区間は鉄道、自在性が重視される区間は自動車に分担させれば良いと、自分は考えています。カーシェアリングを選んだのは、そのために最適な手段ではないかと思ったからです。私はパーク24グループのサービス「タイムズカープラス」の会員なので、ビジネスでもプライベートでもこの組み合わせを使っています。

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今週はJR西日本のローカル線を訪ねる仕事がありました。鉄道の取材なのでその路線を何度か使いましたが、日中は1時間に約1本という運転間隔で、二次交通も貧弱なのでカーシェアリングを併用しました。しかし並行する道路は朝夕の渋滞がひどいと聞いていたので、その時間帯は逆に本数が充実する鉄道に頼ることになりました。

一部の鉄道会社もパーク24と共同で、この組み合わせを勧めています。上で挙げたJR西日本はそのひとつで、タイトルに使ったレール&カーシェアという言葉は、5年前に両社が共同事業を立ち上げる際に使いはじめた言葉だと記憶しています。JR西日本のレンタカーにタイムズのカーシェア車両が用意され、JR西日本のICカード乗車券で車両のアクセスが可能になるほか、新規入会者や利用者への優遇も行なっているようです。

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趣味的な目で見れば、どの乗り物で移動するかという部分も大事になるでしょう。しかし移動を機能として考えるなら、どうすれば快適かという考えからスタートして、それに見合った乗り物をチョイスしていくほうが、結果的に心地よい移動が手に入るのではないかと思っています。

自転車ナビマークを見て思うこと

東京の道路で自転車のアイコンや矢印を見かけることが多くなりました。自転車ナビマーク、あるいは自転車ナビラインと呼ばれるもので、前者は自転車を正面から見たアイコンと矢印を道路の左端に白で描き、後者は交差点内で矢印のみをブルーで表示しています。

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私は自宅と事務所、約2kmの道のりを自転車で移動することが多いのですが、そのとき通る上の道にも自転車ナビマークが描かれています。道幅にも余裕があるので問題なく走れます。しかし別の機会に自動車で走った環七(環状七号線)は下のような状況になっていました。片側3車線の道路はいずれも車線が狭く、自転車ナビマークはタイヤが通る場所に描かれています。そのためすでに表示が消えかかっていました。

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警視庁のウェブサイトによれば、自転車ナビマークは道路、自転車ナビラインは交差点で、それぞれ自転車の走る場所や進む方向を示し、安全な走行を促すものとのことです。しかし環七の自転車ナビマークが安全な走行を促すものだと考える人は少ないのではないでしょうか。

自転車ナビマークそのものを否定しているわけではありません。構造を変えずに自転車空間を確保するのが無理な道路が多いわけであり、これを機に多くの場所で「道路の再配分」を進め、明確な自転車レーンを作っていってほしいと思っているのです。さきほどの環七で言えば自動車の車線をひとつ減らし、その分を歩道拡充と自転車レーン新設に充てるのが自然でしょう。

このブログでも告知した3月1日開催の「スマートドライバーフォーラム」で、私は「道路は誰のもの?」というテーマで、欧米各国が過度な自動車依存社会からの脱却を目指すべく、道路の再配分を実行した例をお見せしました。ここではアムステルダム、バルセロナ、ポートランドを紹介します。いずれも最近になって整備された場所であることが写真からお分かりかと思います。

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気づいた方がいるかもしれませんが、すべて歩道上に自転車レーンがあります。3都市とも車道に自転車レーンを用意した場所もありますが、あえてこの3点を出しました。理由は我が国の自転車政策が下のように、自転車は車道走行が原則というルールを自転車レーンにも導入してしまっており、欧米では一般的に見られる歩道上の自転車レーン設置を認めていないからです。

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国土交通省(http://www.mlit.go.jp/index.html)の資料より

その理由として、自転車事故は大幅に減少しているのに対し自転車と歩行者の接触事故が減らないことを挙げていますが、歩行者・自転車・自動車の移動速度の差を考えれば、速度差が大きな自転車と自動車のレーン間を明確に分けたほうが安全ではないかという気がします。逆に自転車と歩行者の速度差は小さく、危険な場面では自転車が速度を落とせば多くの場合事故は防げるのではないかと考えます。

現在国土交通省では、昨年施行された自転車活用推進法に基づき、自転車の活用の推進に関する目標や実施すべき施策を定める「自転車活用推進計画」の骨子をとりまとめ、今年夏までの計画策定に向け、3月27日(火)までインターネットによるアンケートを実施しています。日本の自転車政策をどうすべきか、気になる方は声を寄せてはいかがでしょうか。

「自動運転があれば公共交通は不要」という嘘

今回はまず、1月に富山で行なったセミナーで使ったスライドからお見せします。「自動運転ですべて解決、ではない」というタイトルの下に4つの乗り物の写真があり、脇に数字が書かれていますが、何を意味しているかお分かりでしょうか。

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数字は自転車、軽自動車、無人運転バス(イージーマイルEZ10)、LRT車両 (富山ライトレール)の乗車定員を示したものです。ここで取り上げるLRT車両の全長は18.4mですが、これと同じ人数を運ぶとするとEZ10では7台・27.4m、軽自動車では20台・67.9mにもなります(自転車はサイズがまちまちで幅がかなり狭いので比較は避けます)。

最近一部のメディアで、自動運転が実用化されれば公共交通は不要になるという論調を目にすることがあります。しかし私はそもそもこの両者を比べることが誤りだと考えます。理由は東京の新交通システムゆりかもめなど、公共交通にはすでに自動運転を実用化しているものがあり、現在実験中の自動運転・無人運転の多くはバスやライドシェアなど公共交通としての利用を目的としているからです。

ライドシェアは現状では個人所有の乗用車を使っているので、パブリックとパーソナルの中間と言えそうですが、 ドライバーがいなくなれば運行業者がコントロールすることになるので、公共交通の一種になります。今月5日から日産自動車とDeNAが実証実験を開始する「イージーライド」については日産が開発した自動運転乗用車を使っていますが、同社では交通サービスと呼んでいます。

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イージーライドについてはこちらもご参照ください=https://news.mynavi.jp/article/20180302-easyride/

自動運転と公共交通を対立軸に置く人は、おそらく自動運転は乗用車、公共交通は鉄道に代表される大量輸送機関をイメージしたのではないかと思われます。正確な言葉を使ってほしいものですが、それでも両者は比較相手にはならないと考えます。理由が最初に挙げた数字です。

場所や時間によって移動する人の数は異なります。過疎化が進む農村部では乗用車で間に合うでしょうが、地方都市でも富山の中心部であればLRTレベルの車両が必要になります。これをすべて乗用車で賄えば、多くの道が大渋滞になるでしょう。自動運転になっても車両の大きさは変わらないのですから。東京で暮らす人は東日本大震災が発生した日の夜を思い出してください。あのときも鉄道がストップしたことで多くの人が自動車で移動した結果、大渋滞となりました。

自動運転乗用車が普及するとコンパクトシティの考えが必要なくなるので、大量輸送機関が必要なくなるという人もいます。しかしコンパクトシティは交通の集約化が目的ではありません。7年前に富山市長の森雅志氏からお聞きした「除雪の費用が大変」という言葉は今も忘れられません。水道やガスなどインフラの長さも違ってきます。コンパクトシティは行政サービスの効率化が最大の目的であり、そのためのツールとして公共交通を活用しているのです。

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このブログで自動運転・無人運転の実験現場を何度も報告してきたことで分かるとおり、私は自動運転推進派です。しかしすべての乗り物が自動運転の乗用車に置き換わることは、インフラのキャパシティなどから鑑みて無理だと思います。モビリティの問題解決のための選択肢がひとつ増えたとするのが自然だと考えています。

信用乗車への第一歩

信用乗車という言葉をご存知でしょうか。ワンマン運転のLRT(路面電車)などで、運転士などの乗務員が乗車券の確認をせず、利用者が運賃を支払って乗車していると信用することで、複数の扉での乗り降りを認める方式です。他にも呼び名があるようですが、ここではもっともよく使われている信用乗車という言葉を使います。

欧州の都市交通では一般的になっていますが、日本では乗車時あるいは降車時に乗務員が運賃収受やICカードの確認を行う方式を踏襲しています。しかしこの方式では、乗降の扉が限定してしまうので混雑時に時間が掛かるという欠点があります。特に車両が長く扉数が多い近年のLRT車両は、信用乗車を前提とした設計と言えるでしょう。

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こうした流れを受けて、日本では広島電鉄で数年前、ICカードのみ全扉での乗降を認める試験運用が行われたのに続いて、昨年10月からは富山ライトレールで降車のみ導入されています。富山ライトレールは後ろ側の扉から乗り、乗務員がいる前側の扉から降りる方式ですが、カード利用者に限り降りるときも後ろ側の扉を使うことができるようになりました。

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先月富山ライトレールに乗ったのは週末の午前中という混んでいない時間帯でしたが、当然のように後ろ側の扉からカードをタッチして降りる利用者が多く見られました。 乗務員の目の届かない場所で乗り降りができるので無賃乗車も可能ですが、朝のラッシュ時には以前から導入していたことに加え、他の乗客の目があることもあり、大きな問題にはなっていないようです。

前述のように欧州では全扉での乗降が可能です。写真はル・マン(フランス)のLRTですが、扉付近に乗車記録を行う端末を取り付けてあり、切符の場合は乗車時に挿入、カードの場合は乗車時と降車時にタッチすることで、所定の運賃を支払ったことになります。

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ただし不定期で乗車券の確認を行う係員が乗車しているとのことで、無賃乗車が見つかった場合は高額の罰金を取られます。カードの場合も係員が持つ端末で瞬時に分かるそうです。下の写真のフランクフルト(ドイツ)の場合は60ユーロと、最大で通常の乗車券の約20倍にも相当します。これを抑止力としているのです。

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実はここに日本での信用乗車導入が難しい理由のひとつがあります。日本の法律では無賃乗車に対する罰金は乗車券の2倍以内と定められているそうなのです。つまり富山ライトレールの場合は340円(カード利用時)であり、自動車で交通違反をした際に支払う反則金を考えれば、比べるべくもないほどの少額です。

日本ではローカル線のワンマン車両も同様の乗降スタイルを使っていますが、長い車両に2〜3駅だけ乗る場合など、走行中に後方から前方に移動しなければならず不便です。ワンマン方式が当然であり、将来的には無人運転も考えられるわけですから、早急に信用乗車を前提とした法整備をすべきでしょう。
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