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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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上毛電鉄で感じた交通結節点の重要性

大型連休を利用して群馬県と栃木県を日帰りで巡ってきました。その行程の中でローカル私鉄の上毛電鉄にも乗りました。西桐生駅から中央前橋駅まで通しで利用したので、いろいろな発見がありました。

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上毛電鉄は慢性的な利用客減少に悩んでいます。群馬県は人口当たりの自動車保有台数が日本一というクルマ社会であり、スバル(旧富士重工業)の開発現場や生産施設があるなど産業面でも自動車への依存度が大きい地域であることが関係しているのでしょう。

上毛電鉄はそんな中で多彩な対策を講じています。代表例がサイクルトレインです。平日は中央前橋発8時17分/西桐生発8時19分発以降終電まで、土日祝日は全列車で自転車の持ち込みができます。日本の多くの鉄道で自転車は分解あるいは折り畳んで袋に入れないと持ち込めない中、欧米流のルールを先取りした好ましい動きです。鉄道利用者のための無料レンタサイクルも一部の駅にあります。

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さらに今回乗った車両は地元の不動産業者の協賛で、車内に水族館のようなラッピングが施してありました。これ以外にも上毛電鉄では、利用区間を限定しない「マイレール回数乗車券」、65歳以上の高齢者を対象とした「寿回数乗車券」 などさまざまな対策を講じています。パーク&ライド駐車場も6駅に用意しています。

沿線には住宅が建ち並んでおり、いわゆる過疎地域ではありません。それを考えると1時間に2本という本数は少ないかもしれませんが、並行するJR東日本両毛線桐生駅はさらに少なく昼間は1時間1本です。にもかかわらず利用者数が減少の一途を辿るのはなぜか。理由のひとつに交通結節点があると感じました。

私が訪れた地方鉄道の中で、ひたちなか海浜鉄道、いすみ鉄道、福井鉄道、和歌山電鐵は再生の成功例として取り上げられることが多いですが、この4つの鉄道には共通点があります。始発駅がJR駅と直結していることです。さらに福井鉄道と和歌山電鉄の起点は県庁所在地です。一方のいすみ鉄道は終着駅で小湊鉄道という別の地方鉄道とも連絡しています。

上毛電鉄も途中の赤城駅で東武鉄道桐生線と接続しており、ここからは浅草行きの特急りょうもう号が出ています。しかし赤城駅があるみどり市は平成の大合併で生まれた都市であり、地域拠点と呼べるほどの規模ではありません。拠点となり得るのはやはり県庁所在地の前橋市、織物産業で発展した桐生市でしょう。しかし駅名で分かるように、上毛電鉄の駅はどちらもJRの駅から離れているのです。

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1928年開業当時の駅舎が残る西桐生駅はJR桐生駅から300mほどなので、多くの人が楽に歩いて行けます。JRの駅とつなげるには駅舎を取り壊す可能性も出てきます。約5km西には赤城駅もあり、そこまでして両駅をつなげる必要性は薄いという認識です。しかし前橋中央駅と前橋駅は約1km離れており、バスで移動することになります。多くの人が面倒だと感じるでしょう。

そこで前橋・桐生・みどり3市で作る上電沿線市連絡協議会では以前から、上毛電鉄をLRT化してJR駅まで延伸する計画を検討していました。ところが同会は5月8日、コンサルタントに調査を委託した結果、中央前橋〜前橋駅間でも118億円の整備費用が必要との結果を明らかにしました。

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2006年に開業した富山市の富山ライトレールは、やはりJR富山駅周辺の約1kmを路面電車化しつつ、車両や駅を含めた整備費用は58億円で済んでいます。同じ距離の整備に2倍の費用を計上したことに唖然としています。この結果を受けて前橋市長は早期のLRT化は難しいと述べていますが、上毛電鉄の存続には前橋側の結節点構築は絶対条件だと考えています。求められるのは早期の判断です。

自動車1000万円という交通政策

今回のテーマはシンガポールです。この地を訪れた目的は現地で運行している三菱重工業の新交通システムの視察で、記事にもなりましたのでご興味がある方はご覧ください。ここでは記事でも触れた、シンガポール独自の大胆な交通政策について紹介していきます。

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東洋経済オンラインの記事=http://toyokeizai.net/articles/-/169570

シンガポールで自動車を買う際には、まずCOEと呼ばれる新車購入権を公開入札で取得する必要があります。さらに乗用車はすべて輸入ということもあり100%の税金がかかります。COEは専門業者に依頼する形となるので手数料も発生します。その結果、日本では約150万円で買えるトヨタ・カローラは1000万円、250万円のプリウスはおよそ1500万円にもなります。

シンガポールでは環境対策や渋滞防止などの観点から、国を挙げて自動車の台数を制限しているのです。その結果、国民ひとりあたりの自動車保有率は15%ほどに抑えられています。日本の都道府県でもっとも自動車保有率の低い東京都(33%)の半分以下です。COEの入札費用は状況に合わせてひんぱんに変更されており、環境負荷が小さい2輪車は小型乗用車の約1/8に抑えられています。

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その代わりシンガポールでは公共交通の整備を積極的に進めています。MRT(マス・ラピッド・トランジット)と呼ばれる鉄道の総延長距離は約170km。シンガポールの面積は東京23区と同等でありながら、東京メトロの195kmに近い長さを持っており、今も3本の新路線建設や既存路線の延伸工事が続いています。一方新交通システムのLRT(ライト・ラピッド・トランジットの略で通常のLRTとは位置付けが異なります)は、沿線のニュータウンとセットで建設されました。運賃も東京の鉄道より安価です。

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この政策のおかげで、シンガポールは世界第2位の人口過密国家でありながら、渋滞はほとんどありません。また公共交通を運行する側にとってみれば、安定した運賃収入を確保することが可能になります。

シンガポールは貧富の差が大きいことも有名ですが、私の目から見る限り、格差が原因の問題はあまり表面化していませんでした。英語・中国語・マレー語・タミール語の4つを公用語とするなど多民族国家としての姿勢を明確にしていることもありますが、万人に等しく移動の機能を与えていることも効果を上げているのではないでしょうか。

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自動車産業が社会に及ぼす影響が大きい日本やドイツなどでは、シンガポールの手法は受け入れられないでしょう。しかしこういう国もあることは記憶に留めておいて損はないと思います。

四条通の柔軟性

ひさしぶりに京都に行ったので、以前から気になっていた四条通を訪れました。京都市の中心部を東西に貫く四条通は、国内外から多くの観光客が訪れることから、歩道の狭さが問題となっていました。そこで2005年の地元関係者からの要望をもとに歩道拡幅事業を実施。2015年に完成しました。その様子を2年後に見に行ったということになります。

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四条通の歩道拡幅については2年前にニュースで報じられたのでご存知の方も多いかと思います。当時は変更直後で大渋滞が発生していたので批判が多かったと記憶しています。そのニュースを見て、現場を知らない人の中には、片側2車線だった車道をすべて1車線に狭めたと誤解している人もいたようです。しかし実際はもっと柔軟な対応をしていることが分かりました。

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歩道拡幅が行われ車道が1車線になっているのはバス停留所の部分ぐらいで、それ以外の部分はタクシー乗り場、荷捌き場、左折車線のために2車線のままとしてあるのです。直進車線を1車線に限定し、残りの空間についてはそれぞれの場所に見合った用途に転用しているという状況でした。

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今回はタクシーに乗る機会もあったので、運転手の方にも歩道拡幅について聞いてみました。タクシー乗り場以外で客扱いがしにくくなったこともあり、四条通を走ることは少なくなったと言っていたぐらいで、表だった苦情は述べていませんでした。たしかに私が訪れた平日の夕方は、渋滞は発生していませんでした。2年が経過してドライバーたちが道の変化に慣れたと言えそうです。

またこのタクシー運転手は、京都を訪れる観光客の多くはバスで移動するので、一般的な路線バスとは逆に土日祝日のほうが本数が増え、その影響で四条通のバス停留所には多くの人が押し寄せ、歩道通行の支障になっていたことを指摘していました。その状況を考えれば今回の歩道拡幅は理に叶っています。バス停留所も前後に長くなり、表示も多彩になっていて利用しやすくなっていました。

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車線の中央には車両1台分のゼブラゾーンが設けられています。京都市ではこのゼブラゾーンを、緊急車両の通行用に確保したと表明していますが、四条通を走る自動車は停車中のバスを追い越すためにこのゼブラゾーンを使っていました。ここではドライバー側が道路を柔軟に活用していたわけです。

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欧米では歩道の拡幅や自転車レーンの設置、路面電車の導入などを理由として車道を減らす例は数え切れないほどあります。当初は批判の声も聞かれるようですが、数年すると新しい道路環境に見合った交通が形成されています。交通とはそもそも流動的なものです。問題解決のために積極的に動いていくことが正しい流れを作っていくはずであると、四条通を眺めながら思いました。

駐車場の優先順位

大型連休を前にして、東京都内を走る路線バスに下のようなポスターが掲出されていました。夏休みや年末年始を含めた繁忙期に羽田空港の一般車駐車場が混雑し、数時間待ちという事態も予想されるので、なるべく公共交通を利用してくださいというお願いです。

交通が不便な地方空港ならともかく、モノレールを含めた鉄道やバスが乗り入れている羽田に、どうして自家用車で向かう人が多いのか、疑問に思う人も多いと思います。私も前後の予定の関係で自動車を使わねばならないとき以外は鉄道かバスなので、同様の気持ちです。

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ただベビーカーや車いす利用者、足腰の弱い人、怪我をしている人、ペット連れの人など、大きな荷物を持って行く場合に、自動車でなければ移動が難しい人々もいます。私が身を置いているジャーナリズム業界ではカメラマンなど、荷物が多いなどの理由で自動車での移動が前提となる人もいます。

空港や駅のエレベーターでは最近、こうした方々に優先して乗ってもらう表示を見るようになりました。駐車場でも車いす利用者のための枠を建物への出入口近くに用意する施設が多くなっています。羽田空港の駐車場も、ただ公共交通への転換を促すだけでなく、優先順位を記したほうが、理解が深まるのではないでしょうか。

もちろん利用者側の理解も必要です。駐車場は公共施設であるわけですから、他の公共施設と同様の配慮が欲しいところです。また旅行用の荷物を小さくまとめることは、公共交通で空港に行こうという気持ちにさせるだけでなく、目的地での移動など多くの場面でメリットになることを、自分自身の経験からも付け加えておきます。

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平日に何度か羽田空港の駐車場を利用した経験から言えば、キャパシティが決定的に不足しているとは思えません。空港アクセス交通はあらゆるモビリティを統括して考えた結果であり、ここまで鉄道やバスが充実している羽田へのアクセスは公共交通が原則と考えるべきでしょう。

たしかに自動車は、自分の好きな時に好きな場所へ行けることが魅力のひとつです。しかしその結果、環境面をはじめ多くの問題が起こっているわけで、今回のような場合には真に自動車での移動を必要としている方々に道路や駐車場を譲るという考え方が根付いて良いのではないかと思っています。

LCCかレガシーキャリアか

東南アジア出張で、 日本とタイの往復にはLCC(ローコストキャリア)のタイ・エアアジアX、タイとシンガポールの間はタイを代表するエアラインのタイ国際航空を使いました。スケジュールの都合でこうなりましたが、両者の違いが分かりました。ちなみにLCCに対して従来からの航空会社を大手と呼ぶことがありますが、エアアジアも大手なので、航空業界で使われる「レガシーキャリア」という表現とします。

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成田空港にはLCC専用の第3ターミナルがありますが、タイ・エアアジアXは第2ターミナルから出発します。ただしチェックインカウンターは建物の外に作られた小部屋の中でした。機体は往復ともエアバスA330で、エコノミークラスは左右も前後もやや詰めた印象。斜めにフラットになるビジネスクラスは、ひと昔前のレガシーキャリアの設備を譲り受けたのかもしれません。

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6時間以上乗る国際線でありながら、ビジネスクラスを含めて機内エンターテインメントはありません。提供されるのはペットボトルの水だけ。それ以外の飲食物はすべて有料です。ビジネスクラスは食事も無料ですが軽食というレベルです。機内持ち込み手荷物の大きさや重さも厳しく制限されており、オーバーした場合は追加料金を支払って預けることになります。

ただし飛行は安定しており、タイの首都バンコクへの到着が30分遅れたぐらいで、帰りは逆に30分早く成田に着くほどでした。やはり先月乗ったアメリカン航空のロサンゼルス〜羽田便は、乗務員がひとり見つからないとかで出発が2時間遅れた経験があります。LCCの運行が不安定とは言い切れません。隣の乗客はLCC慣れしていたようで、手持ちのiPadで映画を見て過ごしていました。到着前に客室乗務員が枕や毛布を片付けに来ることも、コスト対策として納得できました。

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ところがバンコク〜シンガポール間のタイ国際航空を利用して、少し考えが変わりました。2時間ほどのフライトなのに、全席に機内エンターテインメントが付き、水だけでなくワインやコーヒー、タイ・エアアジアXより豪華な食事まですべて無料です。とりわけ行きはエアバスA350という最新鋭機で、圧倒的に静かだっただけでなく、コーポレートカラーのパープルを間接照明で表現した演出は見事でした。付加価値を提供するレガシーキャリア、付加価値は自分で用意するLCCの違いが明らかになりました。

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レガシーキャリアとLCCの違いは、携帯電話の大手通信事業者とMVNOの違いに通じるところがあります。しかし携帯電話が二者択一なのに対し、航空会社は場面ごとに選ぶことが可能です。私は4回のフライトで、両者を使い分けていこうという結論になりました。他の多くの交通同様、共存が望ましいと感じたのです。航空運賃は購入のタイミングで大きく上下することや、今回のようにスケジュールが左右することもありますが、そのときの状況に合わせて選ぶことで旅の幅が広がると思いました。

もっとも昔からサウスウエスト航空などがある北米では、LCCとレガシーキャリアの差が少なくなっているようです。たとえば日本にも就航するデルタ航空は、米国内線では手荷物や食事は有料と、LCCに近いサービスになっています。LCCの歴史が浅いアジアで、今後両者の関係がどのようになっていくかも注目です。
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