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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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能登から始まるシンプル自動運転

2週間ぶりに北陸の話題を記します。私が訪れた週末は、この時期では珍しく晴天に恵まれましたが、その後北陸地方は記録的な大雪に見舞われ、今日も降雪が続いているようです。亡くなった方々のご冥福をお祈りし、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げますとともに、1日も早く普段の生活を取り戻すことができるよう願っているところです。

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さて、富山でのセミナーの前日には石川県輪島市を訪れました。 ここでは7年前からヤマハ発動機の電動カートを中心市街地の移動に使用し、一部の道路では自動運転の実証実験を行なっているからです。くわしい内容はウェブサイトReVision Auto & Mobilityに記してありますが、 現地で関係者に話を伺うとともに実際に試乗しながら、富山と福井のモビリティシーンを思い出しました。

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ReVision Auto & Mobilityの記事=https://rev-m.com/self_driving/wajima20180214/

ひとつはこのプロジェクトが輪島商工会議所会頭のリーダーシップにより進められ、ヤマハや関係省庁、研究者などと協力しながら、当初は不可能だった電動カートのナンバー取得や公道での自動運転の実証実験など、困難とされるハードルを少しずつクリアして、先進的な取り組みを実現したことです。富山市長と富山ライトレールの関係を思い出します。

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もうひとつは高度で複雑な機構に傾倒せず、簡潔な構造でありながらゴルフ場などで自動運転の経験が豊富な電動カートを活用し、最高速度は保安基準の一部が緩和される19km/h以内に留め、自動運転についてもルート内の一部で実施していることです。既存の設備をうまく活用しながら適切な投資を行なっているところは、福井の交通改革に共通していると感じました。

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電動カートを活用した自動運転は今後福井県永平寺町、沖縄県北谷町などでも行われる予定で、輪島市では無人運転による移動サービスも視野に入れているそうです。電動カートを活用し自動運転を視野に入れた輪島の挑戦は、高齢化や過疎化が進んで日々の移動の確保に悩んでいる小都市に適した交通改革として、多くの影響を与えていきそうです。

富山の交通改革はLRTだけではない

先月20日に富山市でセミナーの講師を務めさせていただいたことは、以前このブログでも紹介しました。富山に行くのは2年ぶり6度目で、地方都市の中ではしばしば足を運んでいますが、せっかくなので早めにこの街に入り、これまで見なかった場所をいくつか訪れることができました。

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まずは富山ライトレール蓮町駅です。ここは終点の岩瀬浜駅とともにフィーダーバスが発着しています。電車を降りると反対側にバスの停留所があり、簡単に乗り換えすることができます。この配置は岩瀬浜駅と似ていて、電車とバスの連携を考えた設計であることが伝わってきました。また駅前広場の反対側にはパークアンドライド駐車場もあり、週末にもかかわらずかなり埋まっていました。

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こちらは蓮町駅前のパン屋さん。今回案内していただいた方によれば、ライトレール開業時にはなかったお店だそうです。 富山市が進める「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」が着実に進んでいることの証明と言えるでしょう。

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富山駅に戻り、今度は富山地方鉄道本線に乗って2つ目の新庄田中駅で降りました。2012年に開業したばかりの新駅で、整備費用の一部は市が負担したそうです。周辺は住宅地が広がっており、やはりJR高山本線に作られた婦中鵜坂駅を思わせます。ホームは1面だけですが予想以上に乗降客がおり、駅としてしっかり機能していることが確認できました。

ひと駅戻って不二越・上滝線が分岐する稲荷町駅へ。駅前には大きなショッピングセンターがあります。店の前には広い駐車場があり自動車で埋まっていました。マイカー利用がメインになっているようです。しかし店の入り口にはタクシー会社への直通電話が置かれるとともに、コミュニティバス「まいどはやバス」の時刻表も貼ってありました。

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まいどはやバスは富山ライトレール開業前から走り続けており、現在は2ルートで運行しています。ブルーのイメージカラーは最近制定されたそうで、派手さを抑えながら識別しやすい、公共交通として好ましい色だと思いました。こちらも買い物客などに利用されており、市内交通網のひとつとして多くの市民に親しまれているようでした。

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富山の交通改革というとLRTが有名ですが、実際はLRT以外にも多くの交通が移動を支えています。既存の鉄道やバスも活用することで、多くの人が安全快適に移動できるまちづくりを実現しようとしています。富山市も高齢化が進んでおり、高齢ドライバーの事故も問題になっているようです。この街の交通改革はその対策としても、お手本たり得る存在に思えました。 

大雪=走らないという選択肢もある

今週月曜日の昼頃から関東地方に降りはじめた雪は、東京で23cmの積雪を記録するまでになりました。この大雪で交通も大きく乱れました。特に道路は、首都高速道路の山手トンネルで10時間の立ち往生が発生したほか、各所で通行止めや渋滞に見舞われました。

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あれから一週間近く経って、幹線道路の雪はほぼなくなりました。しかし環状7号線を訪れると、代わりに路肩にグレーの粉塵が溜まっていました。車両が通過するたびに粉塵が巻き上げられ、視界が霞むこともありました。タイヤチェーンが路面を傷つけることでアスファルトが粉塵になり、それが路肩に積もっていたのです。

思い返せば数日前まで、この道にはチェーンを装着したトラックやバスなどが(乗用車はわずかでした)通常に近いペースで走っていました。これでは道路が削れ粉塵を巻き上げて当然でしょう。もちろんスタッドレスタイヤとて万能ではなく、用心しての走行が前提ですが、それを含めて大雪でも通常どおりに車両を走らせることがそこまで大事なのかという気持ちになりました。

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こういうときだけでも自動車の数がいつもより減れば、除雪や立ち往生車両の撤去もはかどったのではないかと想像します。それができないのは東京への一極集中とトラックに依存した物流、そして大雪の時でも通常どおりの生活にこだわろうとするマインドが原因ではないかと感じるようになりました。

自分が所有する乗用車には昨年末、久しぶりにスタッドレスタイヤを装着しましたが、大雪後は今日になって初めて走らせました。動かす理由がなかったからです。雪道で車の流れが遅くなるのはしかたないことであり、公の場である道路が道路としての機能を保持するために「乗らない」という選択肢も考えるべきでしょう。

日本一のバスターミナルは?

日本一の高速バスターミナルというと、多くの人が2016年に開業した東京都のバスタ新宿(新宿高速バスターミナル)を思い浮かべるのではないでしょうか。国土交通省が今年発表したデータによれば、1日平均の発着便数は約1500台、乗降客数は約3万人となっており、たしかに規模の大きさが窺えます。

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しかし日本には同規模のバスターミナルが他にもあります。福岡県の西鉄天神高速バスターミナルはそのひとつです。2015年に西日本鉄道が発表した数字は、発着便数約1600台、乗降客数約2万人と、新宿と互角の数字であることが分かります。
 
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少し前に九州に行く機会があったので、このバスターミナルを訪ねました。繁華街として知られる天神のターミナルビル「ソラリア」の中にあり、2階が西鉄電車の駅、3階がバスターミナルになっています。地下街によって地下鉄天神駅とも結ばれており、雨でも濡れずに行けるのは新宿に対するアドバンテージです。

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バス乗り場は6か所と、新宿の半分にすぎません。しかしクオリティでは明らかにこちらが上でした。茶色と黒を基調にしたシックな配色で、サインは黒い丸で統一してあり、案内表示も見やすいものでした。待合室やトイレは広く、カフェやコンビニエンスストアが最初から用意してある点も好感を抱きました。

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天神のバスターミナルが開業したのは1961年で、何度かの改良を経て2015年、現在の形になりました。この経験が豊かな空間づくりに結実しているのでしょう。「量」はともかく「質」では天神の完勝です。なのにあまり知られていないのは、メディアの東京偏重報道にも原因がありそうです。もっと注目してほしいモビリティシステムのひとつであると痛感しました。 

スーパーカブ1億台の原動力

本田技研工業(ホンダ)の原動機付自転車(原付バイク)「スーパーカブ」が今年10月に累計生産台数1億台という偉業を達成。同時に最新の排出ガス規制をクリアすることを主目的としてマイナーチェンジが行われました。その新型に横浜で行われた試乗会で乗ることができました。試乗の印象については下記ウェブサイトを見ていただくとして、ここでは生産1億台に達し、来年で60周年を迎えることができた理由を考えました。

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スーパーカブの試乗記(webCG)http://www.webcg.net/articles/-/37629

偉業達成の第一の理由が「壊れにくさ」にあることは間違いないでしょう。これは13年ぶりに日本市場に復活したトヨタ自動車のピックアップトラック「ハイラックス」、先日マイナーチェンジした同じトヨタの「ハイエース」など、グローバル展開する我が国の実用車が共通して持つ特徴です。スクーターや乗用車とは比べ物にならないぐらい故障しないことが重視される分野で、日本製品ならではの信頼性や耐久性の高さが生きているのでしょう。

この信頼性を得るために、可能な限り簡単な構造を用いていることは特筆すべきではないかと思います。トランスミッションには遠心クラッチを用いることで、複雑な機構を使わずクラッチ操作を解放しました。燃料タンクの上に乗るシートのストッパーはなんとゴムの吸盤で、吸盤の端をタンク側のリブに引っかけることで固定しています。こうした柔軟な創意工夫がロングライフ、ロングセラーに貢献しているのだろうと感じました。

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スーパーカブは最新型でもセルモーターだけでなくキックスターターを装備しています。出先でバッテリーが弱ってもエンジンを掛けて帰ってくるようにできるためでしょう。これ以上排出ガス規制が厳しくなったら水冷化を考えるかもしれないが、可能な限り空冷でいきたいというエンジニアの言葉からも、シンプルさにこだわる精神が伝わってきます。

もうひとつは「乗りやすさ」です。先ほどの遠心クラッチはもちろん、フレーム構造はスクーターに近い乗り降りのしやすさで、当初から4ストロークにこだわったエンジンは力の出方が穏やかなので、2輪車に乗ったことがある人ならすぐに乗りこなせるでしょう。エンジンを水平に倒し、その上に燃料タンク、人間が乗るというパッケージングが重心変化を最小限に抑えていることも見逃せません。

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しかしそれは、つまらない乗り物であることを意味しません。遠心クラッチとシーソー式シフトペダルの連携操作は簡単ではありますが、スムーズに走らせるにはマニュアル・トランスミッション(MT)並みのコツが必要です。つまり乗りこなすプロセスが味わえます。エンジンを回してギアを変え、大径タイヤで支えられた車体をリーンして曲がる走りはモーターサイクルそのものです。これもまた愛着のある乗り物として育くまれた一因ではないかと思いました。

こうした基本構成を、レッグシールドからリアフェンダーにかけてのS字カーブが独特のスタイリングでまとめた技も感心します。スーパーカブは個性という点でも比類なき乗り物だと断言できます。そして今回のマイナーチェンジでは、角形ヘッドランプにスマートなスタイリングの従来型を海外向けとして残しつつ、日本製に戻った国内仕様は昔のスタイリングを取り戻すという、伝統を尊重する動きも見せています。

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デビューから約60年が経過しているのに現役の実用品として立派に通用し、なおかつ趣味的な面で見ても満足できるデザインと走りを備えている。このバイクの生みの親でもある本田宗一郎氏はやはり偉大な人なんだと実感しました。モビリティに興味を持つ日本人のひとりとして、スーパーカブの素晴らしさをしっかり国内外に伝えることも仕事のひとつであるという思いに至りました。
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