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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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サブスクリプションかシェアリングか

トヨタ自動車が来年から、サブスクリプションサービス「KINTO」を始めると発表しました。サブスクリプションを日本語に直せば「定額制」となるでしょう。携帯電話料金や音楽配信サービスでは以前から一般的でしたが、モビリティの世界では最近になって注目が集まっているようで、今週ラジオ番組で紹介したほか、インターネットメディアで記事にもしました。そこで今回はこのテーマを取り上げたいと思います。
新車購入やカーシェアリングなどとの違い
ReVision Auto & Mobilityのサブスクリプションの記事=https://rev-m.com/mobility/subscription20181205/

交通の世界で定額というと、鉄道やバスの定期券を思い出す人がいるかもしれません。しかし定期券は1日の利用機会が行き帰りぐらいであり区間も決まっています。現在サブスクリプションと呼ばれるものは、もっと範囲が広く自由に使えるものを指すものであると認識しています。

モビリティの分野ではこのブログでも紹介したフィンランドのMaaSアプリ「Whim(ウィム)」が代表格でしょう。Whimは経路検索や事前決済といった、それ以前から一部で実現していたスマートモビリティのサービスに加え、1か月ごとの定額メニューを用意したことが斬新で、現時点でMaaSアプリの最高ランクに位置付けられています。

Whim3つのメニュー

一方自動車の分野ではトヨタに先駆けて、中古車買取のガリバーで有名なIDOM(いどむ)が中古車を用いたサブスクリプションサービス「NOREL」をWhimと同じ2016年からスタート。今年からは新車のBMWとミニもラインナップに加えました。米国ではいくつかのブランドが新車で展開を行なっており、今年ドイツのプレミアムブランド、ポルシェが参入した際には話題になりました。

ポルシェパスポート

どちらも多種多様な選択肢の中から、ユーザーが自由に選んで自由に使えることが魅力となっているようです。ただし公共交通と自動車とではプロセスが違います。前者はルートが選択肢となり、速さ重視か環境重視かなどによって結果が異なってきます。後者は目的や用途に合わせてどんなクルマを選ぶかが分かれ目になります。さらに新車サブスクリプションでは魅力的な新車を短期間で乗り換えできることも魅力に数えられるでしょう。

ただこれは他の業界のサブスクリプションにも言えることですが、自分にとって得か損かは冷静に判断したほうが良いと思います。Whim Unlimitedは月額499ユーロ、ポルシェは安いほうでも2000ドルです。ヘビーユーザーでなければ元は取れないでしょう。インターネットメディアに数字の比較を載せてありますが、週1回レベルならWhimであれば一時利用(Whim To Go)、自動車ではカーシェアリングのほうが妥当だと考えます。

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サブスクリプションメニューがない時代、自動車においては所有かシェアかの比較をよく見かけました。カーシェアリング大手タイムズカープラスのウェブサイトには料金シミュレーションがあるので、気になる方は試していただければと思いますが、月20回・1回4時間利用で所有と同等になり、それ以下ならカーシェアリングのほうが割安になるそうです。

IDOMではサブスクリプションについて、自家用車とカーシェアリングの中間的存在としています。そのとおりだと思います。他のモビリティにも言えることですが、トレンドだからと安易に飛び付くのではなく、自分の移動をしっかり見つめたうえで、もっとも適したサービスを選んでほしいと思います。サービスが多様化しているからこそ、ユーザーの選ぶ目が大事になってきていると考えています。

車いすこそ美しくあれ

毎年この時期、東京の渋谷ヒカリエで開催している「超福祉展」に行ってきました。自分にとってひさびさの超福祉展でもっとも印象に残ったのは、車いすの充実ぶりでした。ここでは会場に置いてあったいくつかのモデルを紹介します。なお最近、車いすをパーソナルモビリティと呼ぶこともありますが、今回のブログではそうした呼び名を知らない人にこそ読んでほしいと思い、あえて車いすと記します。

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まずはオフィス家具で有名なオカムラの「ウェルツ セルフ」。座ったままでスムーズに移動できることを考えたチェアで、大型車輪を重心付近に置いたことでその場での旋回がしやすく、フレーム形状を工夫して足元を広くすることで足こぎ移動をしやすくしたそうです。なによりも通常のオフィスチェアと並べても違和感のない洗練されたデザインに感心します。

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次は自動車や二輪車で有名であり、電動カート(シニアカー)のトップメーカーでもあるスズキのコンセプトモデル「kupo」です。写真で分かるように1台で電動車いすと電動アシスト手押し車の2役を備えています。手押し車のときはいすを畳んで荷台にするだけでなく、踏み台も格納されるなど良く考えられています。早期の市販化を希望します。

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こちらはパラリンピックのオフィシャルサプライヤーでもあるRDSが展示した「WF01」。フォーミュラカーのようなカッコいいデザインと最先端のテクノロジーを融合させた車いすです。ミニ四駆のようにさまざまなパーツを装着して、自分の用途に合った形状や機能にカスタマイズ可能としているところも新鮮で、車いすという枠にとらわれない使い方ができそうです。

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スタイリッシュな車いすと言えば2015年、私が審査委員を務めるグッドデザイン賞で大賞を受賞したWHILL Model Aをまず思い出します。あれからわずか3年で、デザインにこだわったモデルがこれだけ登場したのは喜ばしいことです。一昔前まで、車いすは歩行が困難な人が仕方なく乗るというイメージでしたが、ここに紹介した3台なら健常者でも進んで使いたくなるのではないでしょうか。

車いすは歩行が困難な人だけの乗り物ではありません。少し前に紹介したニュータウンやショッピングモールなど、広い敷地内での移動を快適にするためのツールでもあります。そのためにもデザインの力で敷居を低くすることが大事だと考えます。パーソナルモビリティという言葉を使わなくても、車いすというだけで多くの人がカッコいい姿を想像できるようになれば理想です。超福祉展は13日まで開催中。気になる方は足を運ぶことをお勧めしておきます。 

計画運休は今後も実施すべき

先週末に日本に上陸した台風24号では、進路に近い首都圏でJR東日本が前もって運休を告知・実施する、いわゆる「計画運休」を初めて行なって話題になりました。

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まず記しておきたいのは、首都圏では計画運休は今回が初めてだったものの、JR西日本の京阪神圏では4年前に初めて行なっており、今年は強風や高潮で多くの被害が出た台風21号でも実施していることです。つまり日本国内で見れば画期的なことではありません。鉄道に限ったことではありませんが、マスメディアの東京偏重報道は是正を望みたいところです。

ではなぜJR東日本は、JR西日本では4年前から取り入れていた計画運休を、今回初めて導入したのか。これは台風の襲来予定が日曜日の夜だったことが大きいと思います。平日に比べれば明確に利用者が少なく、朝ではないので事前に知らせやすかったのではないでしょうか。

ただし決定の時間帯は、台風21号のときのJR西日本は前日だったのに対し、読売新聞のウェブサイトでは運休の約6時間前に記事がアップされていました。東京在住の自分はこれでも十分だと思いましたが、台風の進路はある程度予測できるものであり、遠くから東京を訪れる人のことを考えれば、前日発表のほうが望ましかったように思います。

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YOMIURI ONLINEのウェブサイト = https://www.yomiuri.co.jp

一方でテレビのニュースでは、列車が止まりはじめた20時過ぎに駅に来て初めて運休を知った利用者を映し出していました。この場合は「知らなかった」のではなく「知ろうとしなかった」のだと考えます。手にはスマートフォンを持っていたので、情報収集はできたはずです。地震と違って予測が可能なわけですから、こういう人まで判断に含める必要はないと思います。

ただJR東日本にとっては、翌日のアナウンスがなく、運休や遅延で混乱を招いた点はマイナスでした。夜の間に強風による倒木などがあることは想定できたはずで、朝のラッシュ時が終わった午前9時ぐらいからの運転再開にしても良かったのではないかと思います。倒木の瞬間を時刻入りで記録し、公開することができれば、計画運休が正しい判断だったと理解してもらえるでしょう。

計画運休は仕事に支障を及ぼすという声も出るかと思います。しかし普段の生活環境を守ろうとする気持ちが、被害を大きくした例はいくつもあります。東日本大震災では、避難を拒む住民の自宅に消防団員が説得に向かったが聞き入れてもらえず、消防団員もろとも津波で命を落としたという話を聞きました。台風が近づいていれば仕事や学校を休み、身の危険を感じたら自治体に言われなくても率先して避難するのが自然な行動ではないでしょうか。

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台風24号は自分の動きにも影響を与えました。関東地方に最接近する日曜日の夜にヨーロッパから帰国予定だったからです。現地でやることは残っていましたが、早めに日本に帰るほうが重要だと考え、1日早い便に振り替えてもらいました(上の図版の左が当初の予定表、右が変更後の搭乗券)。帰国後、本来乗るべきだった便を見ると、同じ時間帯に到着する他の国際線と同じように、翌日到着に変わっていました。

翌日は前述のように、沿線の倒木などで多くの路線が運休あるいは遅延という状況になっていたので、自分の選択は正しかったのかなと思っています。備えあれば憂いなし。この言葉の大切さを噛み締めているところです。

東京2020自動運転実験をどう考えるか

日本自動車工業会(以下自工会)が9月20日、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催直前となる7月6〜12日の1週間、自動運転の実証実験を公開するという発表をしました。この実証には自工会加盟会社10社(スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車、日野自動車、本田技研工業、マツダ、三菱自動車工業、ヤマハ発動機)が用意する、合計80台もの車両が参画するそうです。

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使用する車両は、 SAEの自動運転レベルでレベル4に相当するようですが、安全性に配慮してドライバーが乗るとのことで、レベル3に近い状態になりそうです。場所は3か所を想定しており、羽田空港地域での公共交通機関であるバスをモデルケースとした実証・デモ、羽田と臨海副都心・都心を結ぶ首都高速道路でのインフラ連携の実証・デモ、臨海副都心での交通量の多い混合交通の公道における自動運転や緊急停止、乗用車や小型モビリティなど多様なタイプの自動運転車両による実証・デモを行うとしています。

日本政府は2020年に、自家用車でのレベル3と移動サービスでのレベル4実現を目標としており、この実証実験は目標どおりの結果を披露する場として、海外からも注目を集めそうです。一方で羽田空港、首都高速道路、 臨海副都心はいずれも外部からの交通流入が限られた場所であり、東京都内では比較的自動運転の実証が行いやすい場ではないかと考えています。

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ではなぜ本格的なサービスではなく実証実験に留まるのか。今年3月のウーバー自動運転車による死亡事故によって、不特定多数のドライバーが自動運転車に自由に乗る形態を不安視する意見が目立ってきたことがあるでしょう。また法整備が追い付いていないことも挙げられます。昨年、市販車初のレベル3を実現とアナウンスしたドイツの高級車アウディA8は、発表から1年経った今も、日本のみならずドイツでさえレベル3は認められず、一部の機器を搭載せずに販売しています。

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最近はレベル3、レベル4とひとつずつステップを上げていくのではなく、車両側は完全自動のレベル4を達成したうえで人間を乗せ、人間の介在度合いを変えていくことでレベルアップを図る方式が主流になりつつあるようです。シティモビル2から生まれた無人運転小型バスはそうですし、自工会が今回発表した内容もこの方式です。その場合、完全なレベル4に至るまでは実証実験扱いになるのは仕方がないでしょう。

ただし自動運転の研究開発を行なっているのは自工会に加盟するメーカーだけではありません。このブログでも紹介してきたDeNAやソフトバンクグループのSBドライブなど、新たな企業がこの分野に参入しています。米国におけるウェイモ(旧グーグル)やアップルなどに似た立場と言えるでしょう。石川県輪島市のように、自治体が主導して自動運転の実証を行なう例もあります。自動運転を多くの人に体験してもらうという点で、彼らの貢献度は大きいと思っています。

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既存のメーカーとこれら新興勢力を敵対関係に置く論調も見られますが、そもそもモビリティとは鉄道、バス、自動車、自転車などが力を合わせて理想の移動環境を作り上げていく世界ではないかと思っています。メーカーが得意な分野、ベンチャーが得意な分野があるはずです。競争ではなく共存の精神で、自動運転社会のいち早い実現という同じ目標に向けて進んでいってほしいと考えています。

山手線自動運転化の奥にあるもの

今週はJR東日本の山手線や東北新幹線などが、自動運転を検討しているというニュースに驚きました。将来的に運転士がいない無人運転を目指すそうです。運営維持に悩む地方のローカル線ではなく、どちらも利用者は多く、収支面で厳しい状況にはない両線の自動化に驚いたのです。

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このニュースについてはニュースサイト「citrus」で記事にしているので、ご興味のある方はお読みいただきたいのですが、鉄道の自動運転そのものは、さほど驚くべき事例ではありません。神戸のポートライナーや東京のゆりかもめなど、新交通システムと呼ばれることが多いAGT(オートメーテッド・ガイドウェイ・トランジット)は、30年以上前から運転士のいない無人運転を実用化しているからです。

また私もよく利用する東京メトロ丸ノ内線をはじめ、一部の地下鉄では、乗務員がボタンを押すだけで発車から停車までを行うATO(オートマティック・トレイン・オペレーション)を導入しています。東京メトロ南北線や福岡市営地下鉄空港線のように、他社の車両の乗り入れを受け入れている線も存在します。海外ではAGTと同じように運転士のいない無人運転の地下鉄もフランスのパリなどにあります。

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これらの路線と比べると、山手線は1か所ですが踏切があり、3年前に信号ケーブルが燃やされるという事件があったように、沿線から線路に立ち入りができそうな場所もあることが気になります。この点をクリアしなければ無人運転は難しいでしょう。逆に東北新幹線の場合は、走行距離が長いので非常停止した際の対応がスピーディに行われるかという懸念があります。

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citrusの記事 = https://citrus-net.jp/article/65881

ではなぜJR東日本は山手線などのいわゆる「ドル箱路線」の自動化・無人化を進めようとしているのか。列車の本数が多いぶん、ワンマン運転とするだけでも将来的な乗務員不足の対策になるうえに、1日に数本というローカル線に比べかなりの人件費が抑えられるからだと想像しています。

JR東日本は新幹線や首都圏の通勤路線だけでなく、東北地方などで赤字ローカル線も走らせています。東日本大震災で被災した路線の一部は、BRTへの転換や三陸鉄道への運行移管が進められており、運営の苦しさが窺えます。その状況を改善するために山手線などの収益率を上げ、赤字路線を支えるという、JR東日本トータルでの経営判断があるのではないかと考えています。

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前回のブログでは東京都心から自動車で約1時間の千葉県市原市が、日々の移動手段維持にも困っている現実をお伝えしましたが、東日本という広い目で見れば東京であっても、自動運転などの省力化を推進する必要に迫られるようです。このまま行くと日本中の公共交通が危機に陥ってしまわないでしょうか。欧米同様、公共交通は公で支えるという仕組みをいち早く構築する必要があると認識したニュースでした。

*来週は夏休みとさせていただきます。
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