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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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東京23区でも進むバス廃止減便

先日、東京都内のバス停でバスを待っていた際に、こんな張り紙を目にしました。減便のお知らせです。自分が乗る路線ではなかったのですが、気になって表示をさらに見ていくと、現状でも1日12便、1時間1便だったものが、減便後は半分の6便に減り、日中はバスが走らなくなってしまうことが分かりました。

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下の写真がこの系統のバスです。他の多くの路線バスとはやや違う、公共交通空白地域を含めた住宅地帯を縫いながら走り、高齢者会館や特別支援学校などを巡っています。便がなくなる昼時にバス停を訪れると、数人の利用者がおり、バスの車内にも乗客が確認できました。利用者の減少だけで減便に至ったわけではなさそうです。

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気になって京王バスのウェブサイトを見ると、何度か利用したことがある渋谷駅と初台駅を結ぶ路線が運行終了というお知らせがありました。渋谷駅と初台駅の間はほかにも路線がありますが、この路線は一部で細い道を経由しているので、沿線住民にとっては唯一の公共交通になります。なによりも渋谷駅を発着するバスが運行終了というのは衝撃的です。

夕刻に初台駅バス停を訪れると、10人ほどの利用者がバスに乗り込んでいきました。ウェブサイトには利用客が減少し路線の維持が困難という、地方のバス路線を思わせる言葉が並んでいましたが、運転士不足も理由ではないかと、2つの路線を見て感じました。

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東京23区内を走る他のバス事業者のウェブサイトを見ると、多くは時刻変更とあるだけでしたが、ツイッターでは減便という書き込みがいくつか見られました(正直に減便に言及した京王バスは立派だと思います)。人口集中で需要が安定していると思われている東京23区内でさえ、こうした問題が起こりつつあります。地方であればマイカーへの転換を考えるかもしれませんが、23区内は駐車場代が高くマイカー所有も困難です。

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渋滞もある道路を、路上駐車車両を避けながら、乗客の安全快適を第一に走行し、停留所との間隔が小さくなるように停め、両替を含めた運賃収受のみならず行き先案内も行う。路線バス運転士の業務が大変であることは端で見ていても分かります。やはり自動運転の導入による負担軽減をいち早く推し進めるべきではないかと感じています。従来はまず地方からと考えていましたが、今回の状況を見て、全国的に自動運転による移動サービスの導入が待ち望まれていることを思い知らされました。 

技術とともに制限速度も進歩する

警察庁が、静岡県の新東名高速道路と岩手県の東北自動車道のいずれも一部区間で試行している時速110kmの最高速度について、3月1日から120kmに引き上げるというニュースがありました。110kmへの引き上げ試行前と試行開始後のそれぞれ1年間で、人身事故の件数や自動車が実際に走る速度(実勢速度)に大きな差はなかったことを受けての判断だそうです。

120km引き上げ試行の対象区間は、新東名の新静岡IC(インターチェンジ)〜森掛川IC間、東北道の花巻南IC〜盛岡南ICで、これまで110km引き上げの施行を実施していた区間と同じです。今後、少なくとも1年の施行を続けたうえで、安全が確認できれば他の路線への拡大を検討するそうです。

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私はブログの他テレビやラジオをはじめ各メディアでこのテーマを取り扱ってきました。その際は主に欧州の事例を紹介してきましたが、今回は昨年中国・上海近郊の高速道路を移動した際の写真をお見せします。ご覧のとおり最高速度は120kmです。中国では2004年に、それまでの110kmから120kmに引き上げられたそうです。韓国も現在は120kmになっています。

欧州大陸の多くの国の最高速度が120〜130kmであることは以前紹介したとおりです。主要国で数字が揃っているのは、自動車の性能向上と人間の能力向上を考慮すると、最適な上限がこのあたりということなのでしょう。大型トラックの最高速度に乗用車と明確な差をつけていることも、ブレーキ性能などに大きな差があることを考えれば理解できます。

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鉄道でも、日本のJR在来線の最高速度は120〜130kmが上限になっています。かつてはもっと低いレベルにありましたが、ブレーキ性能や安全設備の向上などから、現在の数字に落ち着いているようです。ここからも現在の人間の能力と乗り物の技術で安全が担保できる上限であることが伺えます。

こういう話題を出すと速度無制限のドイツのアウトバーンを挙げる人がいますが、世界的に見ればガラパゴス的政策と捉えるのが自然です。ドイツでは環境保護や事故防止に熱心な人々が速度制限導入を訴え、自動車関連団体が反対の立場を取る状況が続いていますが、最近の選挙では緑の党が躍進しているうえに、温暖化対策が目標どおりに進んでいないという報道もあり、全面規制化に向けて加速していくかもしれません。

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120km化を前に書いておきたいことがあります。ひとつは全区間が120kmにはならないこと。欧州では都市部や山岳部では最高速度を下げるのが一般的です。また遅い車と速い車の速度差が大きくなるので、追い越しをしないのに追い越し車線を走り続ける車両は危険であり、煽り運転につながる可能性もあることから、取り締まりの強化を望みたいところです。実勢速度と制限速度が近づいたわけですから、速度違反の取り締まりも欧州並みに厳格にすべきでしょう。

東急の観光列車は北海道を変えるか

JR北海道が東京急行電鉄(東急)と連携し、北海道で観光列車を走らせようと計画しているというニュースが昨日ありました。東急からの正式発表はありませんが、現在JR東日本と伊豆急行を直通運転し、横浜と伊豆急下田を結ぶ東急の観光列車「THE ROYAL EXPRESS(ザ・ロイヤルエクスプレス)」のような車両を考えており、早ければ2020年にも走らせたいとのことです。

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伊豆急は東急グループなので、東急の観光列車が走るのは理解できます。横浜発着というのも東横線の終点であることを考えれば妥当です。しかし今回報じられた観光列車が走るのはJR北海道の路線で、東急グループとは無関係です。

JR北海道の経営状況が芳しくないことは以前も書きました。改善のための手段として収益率の高い観光列車は有望ですが、今のJR北海道が自力で観光列車を開発するのは難しいという気がしています。そこで東急との連携という話が出てきたのだと思います。THE ROYAL EXPRESSは温暖地域を走る直流電車なので、JR北海道の車両ベースということも考えられるでしょう。

東急グループは北海道と無縁ではありません。札幌でバスを運行する「じょうてつ」(旧定山渓鉄道)を傘下に持ち、札幌にはホテルや百貨店、ニセコにはスキー場やリゾートホテルを構えるなど、道内でも多彩な展開をしています。ハードとしての交通だけでなく、まちづくりやレジャーといったソフト分野に強みを持つことも、観光プロジェクトに向いているのではないかと考えています。

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さらに東急は近年、空港運営に積極的に参加しています。2016年から仙台空港に関わり、今年4月からは静岡空港も運営開始。さらに今年7月に優先交渉権者が決定予定の北海道内7空港(新千歳・稚内・釧路・函館・旭川・帯広・女満別)の特定運営事業公募にも応募しています。

北海道7空港については、東急は新千歳空港ターミナルビルを運営する北海道空港や三菱地所、日本政策投資銀行などと企業連合を組み、仏バンシ・エアポートとオリックスなどの連合、仏パリ空港公団と加森観光、東武鉄道、東京建物などの連合とともに第一次審査を通過。しかしバンシ・オリックス連合が台風で被害を受けた関西国際空港の復旧と対策に全力を注ぎたいということから辞退し、北海道空港陣営とパリ空港公団陣営の一騎打ちになっているとのことです。

まだ北海道7空港の運営参加が決まったわけではありませんが、これまで札幌中心のネットワークを構築してきたJR北海道の特急列車に対し、東急の観光列車については新千歳空港を核としたネットワークとなることを望みます。北海道を観光で訪れる人の多くが飛行機を利用しているからです。一部で報道されている新千歳空港駅の機能強化が、この観光列車を契機として推進されることも期待します。

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2030年度に札幌延伸予定という北海道新幹線と競合するという意見も出そうですが、そうは思いません。JR東日本が検討している東北新幹線盛岡~新青森間の最高速度引き上げが実現すれば、東急がリゾート施設を構えるニセコは東京からの所要時間が飛行機利用と同等になります。ニセコの最寄駅である倶知安までの先行開業を望む声もあるほどです。新幹線は雪に強いことも知られています。旅の選択肢が増えるのは好ましいことだと思っています。

車いすの自動運転が重要な理由

昨年末のセミナー「地域交通と情報技術〜MaaS・ライドシェア・自動運転と地域交通計画〜」で自動運転とMaaSの関係について話したことは、前回のブログで書きました。自動運転というと多くの方はバスやタクシーを含めた自動車を連想するでしょう。私の話もメインは自動車についてでしたが、最後に車いすについても触れました。

このブログで何度も紹介しているWHILLは、パナソニックと共同開発した自動停止・自律移動・隊列走行可能な「WHILL NEXT」を、2017年に羽田空港で実証実験を行い、東京モーターショーで展示もしましたが、今月米国ラスベガスで開催したCES(家電見本市)では独自開発の自動運転システムを公開するとともに、MaaSの中でラストワンマイルを担っていくと表明しました。

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WHILLのウェブサイト = https://whill.jp

私も短期間ながら車いす利用経験があります。10年ほど前のフランス出張時に足を骨折し、その状態で帰国となった際に、パリと成田の空港内で介助スタッフとともに車いすのお世話になったのです。パリの空港で事情を説明したところ車いすがスタッフとともに準備され、飛行機のドア直前まで移動。到着した成田でも車いすが用意されており、スタッフの介助で快適に空港を出ることができました。

両空港と航空会社(エールフランス)の協力により、フランス出国から日本入国までのプロセスをシームレスにつなげてもらったわけで、今思えば一種のMaaSであったと感じています。また当時、松葉杖での歩行はできたにもかかわらず車いすのお世話になった経験から、普段は車いすに乗らない人でも、長距離・長時間移動の際に車いすを選ぶという考え方はアリだと思うようになりました。

ではその車いすを自動運転とする理由は何か。空港のように多数の人が行き交う場所での接触事故防止に役立ちますし、空港に慣れていない人にとっては、目的の飛行機に確実に搭乗するためにMaaSと自動運転の連携は有効です。そして使い終わった車いすを回収し、必要とされる場所に輸送する際にも自動運転は役立ちます。パナソニックがプレゼンテーションしたように、同じシステムを用いたパレットを連携させることも可能でしょう。

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パナソニックのウェブサイト = https://www.panasonic.com/jp/home.html

技術的にも、日本における電動車いすの最高速度は6km/hであり(本音を言えば欧米諸国のような15km/h前後が望ましいですが)、制動距離は自動車に比べると圧倒的に短くて済みます。また自転車と違って停車時に自立しているので、自動停止や隊列走行がしやすいという利点もあります。自動運転との相性が良い乗り物のひとつと言えるのです。

もちろん空港だけでなく、ショッピングモールや展示会場など、車いすと自動運転・MaaSの融合はさまざまなシーンで、足腰の弱い人々の移動を快適にしてくれるでしょう。昔のブログで、英国の商業施設で車いすを貸し出す「ショップモビリティ」という仕組みを紹介しましたが、それの進化形と言えるかもしれません。2020年に公道での自動運転実現を目指すというWHILLの取り組みに期待します。

サブスクリプションかシェアリングか

トヨタ自動車が来年から、サブスクリプションサービス「KINTO」を始めると発表しました。サブスクリプションを日本語に直せば「定額制」となるでしょう。携帯電話料金や音楽配信サービスでは以前から一般的でしたが、モビリティの世界では最近になって注目が集まっているようで、今週ラジオ番組で紹介したほか、インターネットメディアで記事にもしました。そこで今回はこのテーマを取り上げたいと思います。
新車購入やカーシェアリングなどとの違い
ReVision Auto & Mobilityのサブスクリプションの記事=https://rev-m.com/mobility/subscription20181205/

交通の世界で定額というと、鉄道やバスの定期券を思い出す人がいるかもしれません。しかし定期券は1日の利用機会が行き帰りぐらいであり区間も決まっています。現在サブスクリプションと呼ばれるものは、もっと範囲が広く自由に使えるものを指すものであると認識しています。

モビリティの分野ではこのブログでも紹介したフィンランドのMaaSアプリ「Whim(ウィム)」が代表格でしょう。Whimは経路検索や事前決済といった、それ以前から一部で実現していたスマートモビリティのサービスに加え、1か月ごとの定額メニューを用意したことが斬新で、現時点でMaaSアプリの最高ランクに位置付けられています。

Whim3つのメニュー

一方自動車の分野ではトヨタに先駆けて、中古車買取のガリバーで有名なIDOM(いどむ)が中古車を用いたサブスクリプションサービス「NOREL」をWhimと同じ2016年からスタート。今年からは新車のBMWとミニもラインナップに加えました。米国ではいくつかのブランドが新車で展開を行なっており、今年ドイツのプレミアムブランド、ポルシェが参入した際には話題になりました。

ポルシェパスポート

どちらも多種多様な選択肢の中から、ユーザーが自由に選んで自由に使えることが魅力となっているようです。ただし公共交通と自動車とではプロセスが違います。前者はルートが選択肢となり、速さ重視か環境重視かなどによって結果が異なってきます。後者は目的や用途に合わせてどんなクルマを選ぶかが分かれ目になります。さらに新車サブスクリプションでは魅力的な新車を短期間で乗り換えできることも魅力に数えられるでしょう。

ただこれは他の業界のサブスクリプションにも言えることですが、自分にとって得か損かは冷静に判断したほうが良いと思います。Whim Unlimitedは月額499ユーロ、ポルシェは安いほうでも2000ドルです。ヘビーユーザーでなければ元は取れないでしょう。インターネットメディアに数字の比較を載せてありますが、週1回レベルならWhimであれば一時利用(Whim To Go)、自動車ではカーシェアリングのほうが妥当だと考えます。

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サブスクリプションメニューがない時代、自動車においては所有かシェアかの比較をよく見かけました。カーシェアリング大手タイムズカープラスのウェブサイトには料金シミュレーションがあるので、気になる方は試していただければと思いますが、月20回・1回4時間利用で所有と同等になり、それ以下ならカーシェアリングのほうが割安になるそうです。

IDOMではサブスクリプションについて、自家用車とカーシェアリングの中間的存在としています。そのとおりだと思います。他のモビリティにも言えることですが、トレンドだからと安易に飛び付くのではなく、自分の移動をしっかり見つめたうえで、もっとも適したサービスを選んでほしいと思います。サービスが多様化しているからこそ、ユーザーの選ぶ目が大事になってきていると考えています。
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