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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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国産バスの安全性強化に注目

連日のように交通事故の報道が飛び込んできます。多くが乗用車によるものですが、バスが関わったニュースを目にすることもあります。かつて関越自動車道や碓氷バイパスで起きたような大惨事には至っていないようですが、運転ミスだけでなく、ドライバーが突然意識を失うことで発生した事故もあるようです。

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そんな中、先月から今月にかけて、安全性能を高めた日本製新型バスが相次いで登場しました。5月に発表された国産初のハイブリッド連節バスであるいすゞ自動車「エルガデュオ」と日野自動車「ブルーリボンハイブリッド連節バス」、6月にマイナーチェンジを受けた日野の大型観光バス「セレガ」です。ちなみにいすゞと日野は現在、バスについては共同開発生産を行っています。

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まずエルガデュオとブルーリボンハイブリッド連節バスは、昨年商用車として世界で初めて両社の大型観光バスに搭載したEDSS(ドライバー異常時対応システム)を、今度は路線バスとして世界で初めて採用した点が注目です。ブレーキボタンは運転席と前後車室の3カ所にあり(運転席ボタンのみ解除モードあり)、前後車室には作動中に点滅するランプも用意しています。

いすゞはその後、連節タイプではない大型路線バス「エルガ」および中型路線バス「エルガミオ」にもEDSSを導入しており、同社が販売する路線バス全車への装備を完了しています。

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いすゞエルガデュオのウェブサイト = https://www.isuzu.co.jp/product/bus/ergaduo/

一方の日野セレガは、ドライバーの状態を自動検知する「ドライバーモニターⅡ」や車両の挙動をチェックする「車線逸脱警報」とEDSSを組み合わせ、ドライバーの異常な状態を自動検知して、車両を徐々に減速、停止するシステムに進化させています。システム作動時には、あらかじめ設定したメールアドレスに対象車両・作動時刻・位置情報が通知されるようになっており、迅速な対応ができるようにもなっています。

乗用車のアダプティブクルーズコントロールに相当する機能も備えており、ミリ波レーダーで先行車を検出し、車間距離を維持することに加え、先行車が停止した場合には追従して停車し、ステアリングに設置したスイッチあるいはアクセル操作により再発進するという内容を持っています。高速道路渋滞走行時の運転負荷軽減にも貢献するでしょう。

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日野セレガのウェブサイト = https://www.hino.co.jp/selega/index.html

バスは多くの人を載せて移動する公共交通であり、乗用車以上に安全性が求められると思っています。その一部はドライバーが担うわけですが、以前書いたようにバスのドライバーの労働環境は、乗用車以上に過酷であると想像できます。そんな中で日本のメーカーが最先端の安全対策を盛り込んできたことは、利用者のひとりとしても歓迎できます。

近年、電動バスやフルフラット低床バスのジャンルでは、外国製バスの進出が目立っています。しかし安全装備についてはここまで書いてきたように、日本製は世界トップレベルにあります。海外展開の際のアピールポイントにもなるでしょう。さらに最近の事故報道を見ると、バスだけでなく乗用車への採用も考えていいのではないかと思っています。

シーサイドラインの無人運転復活を望む

横浜市を走るAGT(無人運転新交通システム)の「金沢シーサイドライン」で逆走事故が起こり、10人以上の負傷者を出したことは、多くの人がご存知でしょう。以前から国内外の新交通システムを取材・視察してきたこともあり、今週はこの件でテレビの報道番組にコメントを出したり、インターネットメディアに記事を書いたりしました。

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シーサイドライン逆走事故についての記事 = https://citrus-net.jp/article/82793

記事にも書いたのですが、自動運転(無人運転を含む)になったからといって事故がゼロになるわけではありません。乗り物の事故の原因の多くは人間のミスと言われますが、自動運転の車両やインフラもまた人間が設計し製造するわけで、そこでのミスも起こるからです。ただ設計や製造は、認知・判断・操作を一瞬で行う運転に比べれば、時間をかけてじっくり取り組むことが可能で、それぞれの場面でテストもできます。自動運転のミスが少なくなる理由はここにあると考えます。

それでも事故直後は原因が解明されていなかったこともあり、自動運転の信頼性や安全性に疑問を投げかける声が目立ち、専門家の記事にもそのような内容がありました。しかし事故から1週間が経過して、状況は変わってきたと感じています。

ひとつは原因が明らかになってきたことです。現時点での情報によると、今回の事故はATO(自動列車運転装置)が原因ではなく、運転士の代わりに安全を見守る集中監理室と車両との間の情報伝達も正常だったそうで、車上のATOから制御装置に信号を送る配線が切れてモーターが逆回転に切り替わらなかったということです。自動運転の中枢部分のトラブルとは言えません。

ただ断線を警告するシステムが備わっていなかったこと、列車が止まる位置から車止めまでの間にATOなどのセンサーがなかったことは落ち度だと思います。逆走など起こらないと信じていたのかもしれませんが、この部分は早急に考えを改めるべきでしょう。

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もうひとつ、今回の事故の見方が変わってきた理由として、手動での運転を再開した6月4日に、福岡市で高齢者が運転する車両が暴走して数台を巻き込み、運転者と同乗者が死亡した事故が起きたことがあります。これに限らず、今年も交通事故で多くの命が失われているのに対し、我が国でのAGTでの事故では今回のシーサイドラインはもちろん、1993年に大阪市の「ニュートラム」が終点で停車せず車止めに衝突した際も、負傷者は200名以上になりましたが死者は出していません。

AGTが自動車の自動運転と同じぐらいの歴史しか持たず、開発途上の技術であると思い込んでいて、それを理由に危険視している人もいそうです。しかし実際は、1981年に開業した神戸市の「ポートライナー」以来、40年近い歴史があります。日本以外では北米や欧州に開発企業がありますが、信頼性は日本がトップと言われており、写真で紹介しているシンガポールや米国アトランタをはじめ、世界各地で我が国のAGTが受け入れられています。モビリティでは数少ない、日本が主導権を握る分野なのです。

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前にも書いたように自動運転は完璧ではありません。しかしシーサイドラインが有人運転だったとしても、突然の逆走に運転士が驚いてパニックになり、そのまま激突した可能性があります。バスでは運転士の急病により事故を起こした事例もいくつかあります。やはり人間の運転のほうがミスは多いと考えるのが自然でしょう。事故原因が解明されつつある今、上記のような対策をしっかり施したうえで、早急に無人運転に戻すべきだと思います。

超小型モビリティに再度注目したい

高齢ドライバーが関係する交通事故が後を絶ちません。一部の人は警察庁の統計を出し、免許取り立ての若者のほうが高齢者より事故率が高いことを指摘していますが、その統計を見ると多くの年齢層で前年より事故率が減っている中、70歳以上では増加していることが分かります。このような情報に惑わされず、高齢ドライバー対策に真剣に向き合うことが大切です。

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しかしながら高齢者にとっても移動は大切であり、移動の自由を確保しながら、事故を起こしにくい、事故を起こした際の被害を最小限に食い止める環境を考えていくことが大事だと考えています。そんな中、一部で超小型モビリティに再び注目が集まっているようです。

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超小型モビリティについてもう一度ここで簡単に紹介しておくと、電動車いすと軽自動車の間に位置する3/4輪の車両で、多くは電気自動車となります。第一種原動機付自転車と、国土交通省が2013年に制定した軽自動車ベースの認定制度による車両からなり、前者はひとり乗りですが後者は2人乗りも可能になっています。

この超小型モビリティに再度注目する理由のひとつは、高速道路が走れず、最高速度が時速60キロ以下となっていることです。以前私が1か月間使用していたトヨタ自動車の「i-ROAD」も、時速59キロ以上は出ない設計になっていました。つまり仮にペダル操作を誤っても、時速100キロ近い高速での暴走は起こらないということです。 

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もうひとつは車体が小型軽量であることです。車体が小さければ、仮にコントロールを失っても歩行者や他の車両に衝突する衝突する可能性は小さくなり、衝突した場合のエネルギーを小さく抑えることができます。前述したi-ROADで言えば、全幅は870mmと5ナンバーのコンパクトカーの約半分、車両重量は300kgと3分の1以下にすぎません。

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しかしながら現時点では、運転免許は普通自動車扱いのままです。認定制度が生まれた当時は、将来的に独立したカテゴリーの創設が噂されていましたが、それから6年が経過した今も変わっていません。新たなカテゴリーの制定が難しいのであれば、自動二輪車の小型限定(125cc以下)のような限定制度を作り、それ以上の自動車の運転に不安がある人は、この限定免許での運転とすれば、事故による被害を抑えられるのではないかと思っています。

英国では今年1月、97歳になる王室のフィリップ殿下が衝突事故を起こし、日本同様、運転免許年齢に上限を求めるかどうかが議論になりました。その際に同国では、医師に運転を止める権限があることが報じられました。日本では免許更新時に認知機能などの検査を受け、必要に応じて医師の診断を受ける形になっていますが、医師が直接運転を止めることはできません。世界屈指の高齢化社会を有する国として、世界に先駆けた高齢ドライバー対策を望みたいところです。

なぜ日本は歩行中の交通事故犠牲者が多いのか

また悲惨な交通事故が起こってしまいました。 滋賀県大津市の交差点で、直進する乗用車と右折する乗用車が接触し、直進車両が横断歩道脇で待っていた保育園児の集団に突っ込み、幼い園児2人が亡くなってしまった事故です。亡くなられた方々、ご遺族の方々には、この場を借りてお見舞いを申し上げます。

少し前にブログで取り上げた東京池袋での高齢ドライバーによる事故もそうですが、犠牲になったのは歩行者で、大津の事故では2人のドライバーは無傷だったそうです。当然だと思うかもしれません。しかし以前も紹介しましたが、日本は歩行中の交通事故死者の比率が極端に高い国でもあります。

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IRTAD道路安全レポート2018年版 = https://www.itf-oecd.org/road-safety-annual-report-2018

上の3つの円グラフは、IRTAD(国際交通安全データ解析グループ)が1年前に発表した32か国のレポートから、交通死亡事故の状態別比率について、クルマ社会の代表と言われることもある米国、自動車が基幹産業となっているドイツを日本を比べたものです。歩行中の犠牲者(Pedestrians)の比率が米独の倍以上であることが分かります。

32か国の中にはアジアがあまり入っていないのでグローバルデータとは言えないかもしれないですが、ひとつの指標にはなるでしょう。欧州各国はおおむねドイツに近く、歩行中犠牲者の比率で日本を上回っているのは韓国と南アフリカだけで(ナイジェリアはデータなし)、GDPランキングで日本よりはるかに下位のモロッコやウルグアイより比率が高くなっています。

では歩行中の犠牲者が日本より格段に低い欧米は、歩道橋や地下道、 ガードレールなどを整備して完璧な歩車分離をしているのでしょうか。過去に訪れた都市の写真をいくつか見てもらえれば、まったく逆であることが分かります。欧米で歩行者の犠牲者が少ないのは、歩行者優先という意識が日本よりはるかに浸透しているためだと考えています。今の自動車は軽いものでも1トン前後あり、衝突すれば生身の人間はひとたまりもないことを熟知しているのでしょう。

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中にはその意識が薄いドライバーもいるでしょう。そこで欧州では、日本に先駆けて生活道路の速度制限を時速30キロとするゾーン30を取り入れ、横断歩道の前などには路面を盛り上げたハンプを作って減速を促し、生活道路の入り口にはリモコンで上下する支柱ライジングボラードを設けて歩行者を保護しています。これらについても数年前に取り上げましたが、あとの2つについては日本ではほとんど見たことがありません。

フランスのパリ(下の写真)など、横断歩道の手前にガード用の支柱を設置した都市も一部にありました。しかし横断歩道以外の部分にはガードはありません。しかもパリの支柱は日本によくある白色ではなく、茶系の色として景観を害さないようにする配慮が見られます。茶系であっても歩行者からは識別できるので問題はありません。

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まちづくりにも違いがあると思っています。欧州の都市はいわゆるコンパクトシティで、郊外とはっきり分かれており、道路の速度制限も大きく異なります。 たとえばドイツでは、郊外では時速100キロで走れた道が、市街地に入ると制限速度50キロとなり、学校の近くなどでは時速30キロまで落ちることもあります。都市内は歩行者優先、都市間は自動車優先という違いが明確なのです。

ところが日本では、多くの地方で市街地が無秩序に拡大したために、都市と郊外の境目が曖昧になっています。これがまちなかでもスピードを落とさないドライバーの多さにつながっているような気がします。その点でもコンパクトシティは重要です。都市を高密度化すれば公共交通への投資が容易になります。これも交通死亡事故防止につながります。

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それ以前の話として、欧米では信号のない横断歩道の手前で待っていると必ずクルマが停まり、渡らせてくれます。逆に言うと停まってくれないのは自分の経験では日本ぐらいです。この違いは昔、足首を骨折して松葉杖生活を送った時の、欧州と日本の鉄道駅や列車内の対応の差に似ています。

ガードレールを設置したり通学路を変更したりすれば、歩行中の犠牲者は減るかもしれません。しかし車道はそのままで歩道に手を加えていくという考え方では、ドライバーは悪くない、歩行者が注意しなければいけないという気持ちが増長するのではないかと危惧しています。不思議に感じてしまうほど、この国は交通弱者に対して冷淡な社会であると再認識しています。

自動運転渋滞という新たな課題

令和の時代が始まりました。この新しい時代に大きな変化が起こりそうなモビリティのひとつに、自動車の自動運転があります。我が国では来年、自家用車の高速道路でのレベル3および限定地域でのレベル4無人運転移動サービスの市場化を期待しており、大きな問題が起こらなければ普及が進んでいくと予想しています。

この話題については、5月1日13時からJFN/ジャパンエフエムネットワーク系列で放送された特別番組「新しい時代が始まるラジオ」でもお話しましたが(放送から1週間以内であればradikoで聞くことができるそうです)、そこでは触れなかった話題として、自動運転車の普及によって渋滞が増えるという研究結果を最近いくつか見るようになりました。
 
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このブログでは1年以上前に、「自動運転があれば公共交通は不要という嘘」と題して、乗用車は輸送効率の点で、鉄道などの大量輸送機関に取って代わるものにはなり得ないと書きました。MaaS誕生に関わった組織のひとつであるITSフィンランドも同様の考えを持っており、上のような図版で説明しています。だからこそMaaSにマイカーを含めず、タクシーやライドシェアより鉄道やバスの利用を促した内容としたのでしょう。
 
自動運転車は車間距離が人間の運転より詰められることから、渋滞を減らせるという主張は以前からありました。ライドシェアのパイオニア、ウーバー・テクノロジーズは自動運転とライドシェアの融合で最大97%の自動車を減らせると公表していました。しかし移動者の数が減るわけではありません。人件費削減によって自動運転移動サービスの運賃が安価になれば、公共交通の利用者がこちらに移り、むしろ台数が増加するという予想が出るようになったのです。

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現時点でも、ライドシェアの普及により公共交通の利用率が下がり、道路渋滞が増えたというニュースは目にします。中国ではドックレス方式の自転車シェアが大量に配備された結果、各所に自転車が放置され、人や車両の通行に支障を及ぼし、景観面でも悪影響をもたらしています。道路のキャパシティには限界があるのですから当然です。これが自動運転移動サービスにも当てはまります。

自動運転をビジネスとして推し進めたい人たちは、上で挙げたようなネガティブな話題は避けてきた印象があります(「空飛ぶタクシー」業界も似ています)。最近になってなぜ、逆風になるような真実が明かされたかは不明ですが、本格導入を前にこういう意見が出されるのは良いことです。私も自動運転やライドシェアは肯定の立場ですが、道路の能力を超えた配備は混乱を招くだけであり、自治体による総量規制などを掛ける必要がありそうです。

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ただしこれは都市部に限った話であり、地方は別の視点を持つべきです。地方は多くの場合、道路のキャパシティや人の流れに余裕があります。自動運転移動サービスによるコストメリットがほぼそのまま利点になるのです。ソフトバンクとトヨタ自動車の合弁会社モネ・テクノロジーズでは、すでに自動運転社会を見据えたモビリティサービスの実証実験を始めていますが、場所は過疎地域やニュータウンなどであり、自動運転移動サービスをどう活用すべきか理解していると感じています。
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