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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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計画運休は今後も実施すべき

先週末に日本に上陸した台風24号では、進路に近い首都圏でJR東日本が前もって運休を告知・実施する、いわゆる「計画運休」を初めて行なって話題になりました。

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まず記しておきたいのは、首都圏では計画運休は今回が初めてだったものの、JR西日本の京阪神圏では4年前に初めて行なっており、今年は強風や高潮で多くの被害が出た台風21号でも実施していることです。つまり日本国内で見れば画期的なことではありません。鉄道に限ったことではありませんが、マスメディアの東京偏重報道は是正を望みたいところです。

ではなぜJR東日本は、JR西日本では4年前から取り入れていた計画運休を、今回初めて導入したのか。これは台風の襲来予定が日曜日の夜だったことが大きいと思います。平日に比べれば明確に利用者が少なく、朝ではないので事前に知らせやすかったのではないでしょうか。

ただし決定の時間帯は、台風21号のときのJR西日本は前日だったのに対し、読売新聞のウェブサイトでは運休の約6時間前に記事がアップされていました。東京在住の自分はこれでも十分だと思いましたが、台風の進路はある程度予測できるものであり、遠くから東京を訪れる人のことを考えれば、前日発表のほうが望ましかったように思います。

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YOMIURI ONLINEのウェブサイト = https://www.yomiuri.co.jp

一方でテレビのニュースでは、列車が止まりはじめた20時過ぎに駅に来て初めて運休を知った利用者を映し出していました。この場合は「知らなかった」のではなく「知ろうとしなかった」のだと考えます。手にはスマートフォンを持っていたので、情報収集はできたはずです。地震と違って予測が可能なわけですから、こういう人まで判断に含める必要はないと思います。

ただJR東日本にとっては、翌日のアナウンスがなく、運休や遅延で混乱を招いた点はマイナスでした。夜の間に強風による倒木などがあることは想定できたはずで、朝のラッシュ時が終わった午前9時ぐらいからの運転再開にしても良かったのではないかと思います。倒木の瞬間を時刻入りで記録し、公開することができれば、計画運休が正しい判断だったと理解してもらえるでしょう。

計画運休は仕事に支障を及ぼすという声も出るかと思います。しかし普段の生活環境を守ろうとする気持ちが、被害を大きくした例はいくつもあります。東日本大震災では、避難を拒む住民の自宅に消防団員が説得に向かったが聞き入れてもらえず、消防団員もろとも津波で命を落としたという話を聞きました。台風が近づいていれば仕事や学校を休み、身の危険を感じたら自治体に言われなくても率先して避難するのが自然な行動ではないでしょうか。

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台風24号は自分の動きにも影響を与えました。関東地方に最接近する日曜日の夜にヨーロッパから帰国予定だったからです。現地でやることは残っていましたが、早めに日本に帰るほうが重要だと考え、1日早い便に振り替えてもらいました(上の図版の左が当初の予定表、右が変更後の搭乗券)。帰国後、本来乗るべきだった便を見ると、同じ時間帯に到着する他の国際線と同じように、翌日到着に変わっていました。

翌日は前述のように、沿線の倒木などで多くの路線が運休あるいは遅延という状況になっていたので、自分の選択は正しかったのかなと思っています。備えあれば憂いなし。この言葉の大切さを噛み締めているところです。

東京2020自動運転実験をどう考えるか

日本自動車工業会(以下自工会)が9月20日、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催直前となる7月6〜12日の1週間、自動運転の実証実験を公開するという発表をしました。この実証には自工会加盟会社10社(スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車、日野自動車、本田技研工業、マツダ、三菱自動車工業、ヤマハ発動機)が用意する、合計80台もの車両が参画するそうです。

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使用する車両は、 SAEの自動運転レベルでレベル4に相当するようですが、安全性に配慮してドライバーが乗るとのことで、レベル3に近い状態になりそうです。場所は3か所を想定しており、羽田空港地域での公共交通機関であるバスをモデルケースとした実証・デモ、羽田と臨海副都心・都心を結ぶ首都高速道路でのインフラ連携の実証・デモ、臨海副都心での交通量の多い混合交通の公道における自動運転や緊急停止、乗用車や小型モビリティなど多様なタイプの自動運転車両による実証・デモを行うとしています。

日本政府は2020年に、自家用車でのレベル3と移動サービスでのレベル4実現を目標としており、この実証実験は目標どおりの結果を披露する場として、海外からも注目を集めそうです。一方で羽田空港、首都高速道路、 臨海副都心はいずれも外部からの交通流入が限られた場所であり、東京都内では比較的自動運転の実証が行いやすい場ではないかと考えています。

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ではなぜ本格的なサービスではなく実証実験に留まるのか。今年3月のウーバー自動運転車による死亡事故によって、不特定多数のドライバーが自動運転車に自由に乗る形態を不安視する意見が目立ってきたことがあるでしょう。また法整備が追い付いていないことも挙げられます。昨年、市販車初のレベル3を実現とアナウンスしたドイツの高級車アウディA8は、発表から1年経った今も、日本のみならずドイツでさえレベル3は認められず、一部の機器を搭載せずに販売しています。

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最近はレベル3、レベル4とひとつずつステップを上げていくのではなく、車両側は完全自動のレベル4を達成したうえで人間を乗せ、人間の介在度合いを変えていくことでレベルアップを図る方式が主流になりつつあるようです。シティモビル2から生まれた無人運転小型バスはそうですし、自工会が今回発表した内容もこの方式です。その場合、完全なレベル4に至るまでは実証実験扱いになるのは仕方がないでしょう。

ただし自動運転の研究開発を行なっているのは自工会に加盟するメーカーだけではありません。このブログでも紹介してきたDeNAやソフトバンクグループのSBドライブなど、新たな企業がこの分野に参入しています。米国におけるウェイモ(旧グーグル)やアップルなどに似た立場と言えるでしょう。石川県輪島市のように、自治体が主導して自動運転の実証を行なう例もあります。自動運転を多くの人に体験してもらうという点で、彼らの貢献度は大きいと思っています。

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既存のメーカーとこれら新興勢力を敵対関係に置く論調も見られますが、そもそもモビリティとは鉄道、バス、自動車、自転車などが力を合わせて理想の移動環境を作り上げていく世界ではないかと思っています。メーカーが得意な分野、ベンチャーが得意な分野があるはずです。競争ではなく共存の精神で、自動運転社会のいち早い実現という同じ目標に向けて進んでいってほしいと考えています。

山手線自動運転化の奥にあるもの

今週はJR東日本の山手線や東北新幹線などが、自動運転を検討しているというニュースに驚きました。将来的に運転士がいない無人運転を目指すそうです。運営維持に悩む地方のローカル線ではなく、どちらも利用者は多く、収支面で厳しい状況にはない両線の自動化に驚いたのです。

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このニュースについてはニュースサイト「citrus」で記事にしているので、ご興味のある方はお読みいただきたいのですが、鉄道の自動運転そのものは、さほど驚くべき事例ではありません。神戸のポートライナーや東京のゆりかもめなど、新交通システムと呼ばれることが多いAGT(オートメーテッド・ガイドウェイ・トランジット)は、30年以上前から運転士のいない無人運転を実用化しているからです。

また私もよく利用する東京メトロ丸ノ内線をはじめ、一部の地下鉄では、乗務員がボタンを押すだけで発車から停車までを行うATO(オートマティック・トレイン・オペレーション)を導入しています。東京メトロ南北線や福岡市営地下鉄空港線のように、他社の車両の乗り入れを受け入れている線も存在します。海外ではAGTと同じように運転士のいない無人運転の地下鉄もフランスのパリなどにあります。

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これらの路線と比べると、山手線は1か所ですが踏切があり、3年前に信号ケーブルが燃やされるという事件があったように、沿線から線路に立ち入りができそうな場所もあることが気になります。この点をクリアしなければ無人運転は難しいでしょう。逆に東北新幹線の場合は、走行距離が長いので非常停止した際の対応がスピーディに行われるかという懸念があります。

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citrusの記事 = https://citrus-net.jp/article/65881

ではなぜJR東日本は山手線などのいわゆる「ドル箱路線」の自動化・無人化を進めようとしているのか。列車の本数が多いぶん、ワンマン運転とするだけでも将来的な乗務員不足の対策になるうえに、1日に数本というローカル線に比べかなりの人件費が抑えられるからだと想像しています。

JR東日本は新幹線や首都圏の通勤路線だけでなく、東北地方などで赤字ローカル線も走らせています。東日本大震災で被災した路線の一部は、BRTへの転換や三陸鉄道への運行移管が進められており、運営の苦しさが窺えます。その状況を改善するために山手線などの収益率を上げ、赤字路線を支えるという、JR東日本トータルでの経営判断があるのではないかと考えています。

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前回のブログでは東京都心から自動車で約1時間の千葉県市原市が、日々の移動手段維持にも困っている現実をお伝えしましたが、東日本という広い目で見れば東京であっても、自動運転などの省力化を推進する必要に迫られるようです。このまま行くと日本中の公共交通が危機に陥ってしまわないでしょうか。欧米同様、公共交通は公で支えるという仕組みをいち早く構築する必要があると認識したニュースでした。

*来週は夏休みとさせていただきます。

2020年までに進めたい東京モビリティ改革

東京五輪の開幕まで2年となりました。これから新たに鉄道や道路を作りはじめても2020年には間に合わないでしょう。モビリティに限らず、既存のインフラをどう活用するか、に焦点が移ったのではないかと考えています。すでに交通渋滞を緩和すべく、さまざまな提案がなされていますが、ここでは2020年以降の日本全体のモビリティに役立つであろう2つの点に触れたいと思います。

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ひとつは東京メトロと都営地下鉄、2つの地下鉄の運賃一元化です。この問題は猪瀬直樹元都知事が副知事時代から経営統合を最終目的として取り組んでいましたが、九段下駅の壁の撤去などに留まり、その後の都知事は積極的には関与せず現在に至っています。

残る2年間で経営を一体化することはかなり難しいでしょう。しかし経営母体が別々であっても運賃体系を同一とした例は、世界各地に存在します。東京メトロの前身である帝都高速度交通営団も、2つの会社の統合により生まれています。写真は新宿駅ですが、同じ駅の地下鉄が2つの運賃表を掲げるのは奇妙なシーンであり、外国人には東京の交通が分かりにくい理由のひとつになっているはずです。

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もうひとつは専用レーンです。五輪・パラリンピックのワールドワイドパートナーを務めるトヨタ自動車は今週、東京五輪・パラリンピックを最先端モビリティとトヨタ生産方式でサポートすると発表しました。今年1月に公開したモビリティサービス用電気自動車「e-Palette」などを走らせ、完全自動運転の実証実験・デモンストレーションを行うとしています。

実証実験は将来のサービス実現を視野に入れたものであり、公道を使って大会関係者などの移動を担当することに価値があります。しかし一般公道を他車に混じって完全自動運転車を走らせるのはリスクが大きいと考える人も多いでしょう。専用レーン確保が現実的なソリューションとなるはずです。それ以外でも選手や関係者の移動確保は大会の成功のために必須であり、優先レーンではなく専用レーンが理想だと考えています。

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最初に書いたように、2つの革新は2020年以降の東京以外で役立つと考えています。地下鉄の運賃一元化は、地方交通の運賃体系共通化によるサービス向上の参考事例になると思いますし、専用レーンは完全なるBRT実現に向けて必須となるものです。完全なると書いたのは、今の日本のBRTの多くは連節バス導入が主眼で、本来の目的である定時制・速達性にあまり寄与していないからです。完全自動運転が赤字経営と運転手不足に悩む地方交通の味方になることは言うまでもないでしょう。

地方都市がこれらの施策を他に先駆けて導入するには相当の苦労があります。一方五輪・パラリンピックは、国のバックアップにより革新的な技術やサービスを実現しやすい機会でもあります。2020年の東京での経験を地方の移動に役立たせるためにも、革新的なモビリティが導入されることを期待します。

物流確保のためにも山陽本線の早期復旧を

先週末から今週初めにかけて西日本の広い地域を襲った豪雨は、200人以上の方が犠牲になるという大災害になってしまいました。この場を借りて、亡くなられた方のご冥福をお祈りしますとともに、被害に遭われた方にお見舞いを申し上げます。

今回の災害では、天候が回復したにもかかわらず大雨で増水していたため池が決壊するなどの二次災害も発生しており、片付けにあたる人々を猛暑が襲うなど、影響は長期にわたりそうです。一方で今日は山陽自動車道が全通しており、復興への動きも少しずつ出始めています。そんな中で個人的に気がかりなのは、JR西日本山陽本線のかなりの区間が不通であることです。

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並行して走る山陽新幹線は大きは被害がなく、雨が弱まった7日夜には運転を再開しており、現在は山陽本線不通区間の乗車券を持っていれば自由席に乗れるという代替輸送も行なっています。しかし貨物については、新幹線で貨物輸送を行なっていない以上、止まったままです。

鉄道には大量輸送という長所があります。JR貨物のウェブサイトによると、山陽本線などを走る高速貨物列車は最大650tの荷物を一度に運ぶことが可能で、これは10t積みの大型トラック65台分に相当します。運転士の数の違いを含め効率の高さは圧倒的です。また貨物1tを1km運ぶ際のCO2排出量は、トラック240gに対し鉄道はわずか11gと、ここでも大差がつきます。加えて定時性でも鉄道は優位に立っています。

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国土交通省の統計では、国内の貨物輸送の内訳は自動車が50%、船舶が44%で、鉄道は5%にすぎません。一方欧米では環境保護の観点から、自動車から鉄道や船舶へのモーダルシフトが進んでいます。今年初めにはドイツの自動車メーカー、ポルシェが鉄道による物流輸送を進めており、物流部門の年間CO2排出量を3%、CO2の発生を6000t以上削減することを目指すと発表し話題を集めました。

数年前に広島県の山陽本線西条駅を数日間利用した際、昼間は2本に1本ぐらいの割で貨物列車が走っていたことに驚いた覚えがあります。あとで調べてみると、鉄道貨物のメリットを生かした路線でした。それがストップしているわけですから影響は多大です。JR貨物ではフェリーやトラックで代行輸送を始め、日本海側を走る山陰本線への振替も検討しているそうですが、いずれも輸送力が低下し、環境面でも不利になることは確実です。

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このブログでも書いてきたように、現在の日本のトラック輸送業界はドライバー不足と高齢化に悩んでいます。前述の世界的な流れに加え、こうした状況も考えれば、大きな災害に見舞われてもモーダルシフトを推し進めていくことが必須であり、そのためにも山陽本線の早期復旧は重要だと思っています。
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