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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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原付125cc化の動き始まる

今週はオートバイメーカーの方々と話をする機会がありました。同社では今後の二輪車マーケットが世界的に縮小してくのではないかと危惧しており、こうした状況に対処すべく、車両のみならずインフラを含めて斬新なコンセプトを提案したいとのことでした。そんな中、警察庁が125ccまでのオートバイを運転できる小型限定普通二輪免許の取得負担軽減に向けて動き始めたというニュースを目にしました。

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従来は普通自動車免許保持者がAT限定の小型限定二輪免許の教習を受ける場合、現在の法令では最短で3日が必要となっているところ、内容を見直すとともに設備を改善し、週末などの2日間で取得できるようにすることで、取得を容易にしようというものです。

ご存知の方もいるとは思いますが、原付の定義は道路交通法と道路運送車両法で異なります。前者では50cc以下が原付で51〜125ccが小型限定自動二輪なのに対し、後者では50cc以下が原付一種、51〜125ccが原付二種となります。今回のニュースの内容は、道路交通法の区分はそのままに、道路運送車両法での原付の主軸を50ccから125ccへ移行させるという目論見がありそうです。

現在の原付に問題があることは、昨年10月のブログで書きました。あのときは業界第1位の本田技研工業(ホンダ)と第2位のヤマハ発動機が50cc以下で協業検討開始という衝撃的なニュースが流れた直後でした。その後も今年3月の東京モーターサイクルショーで、ホンダが今年でデビュー50周年を迎える「モンキー」の生産終了を発表しました。厳しさを増す今後の排出ガス規制を50ccでクリアするのが技術的にもコスト的にも困難であるというのが理由でした。

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主要メーカーから相次いで50ccの将来を不安視する発表が出されるなかで、国もようやく危機感に気付き、欧州やアジアで主力となっている125ccへのシフトを進めていこうと決断したのかもしれません。従来の50ccのように自動車免許保持者に無条件で資格を与えるのではなく、独自の免許区分を維持したうえでハードルを下げるという手法も、安全面を考えれば納得できるものです。

昨年のブログでは二輪車が、経済性や環境性のみならず機動性にも優れていることを書きました。今後都市への人口集中が加速していくと、自転車より速く、四輪車より時間が正確で場所を取らないという二輪車のメリットはさらに生きると予想しています。四輪車が電気自動車などになれば、環境負荷は減るでしょう。しかしボディサイズが現状のままである限り渋滞はなくすことができず、少し前に紹介したシンガポールのように、都市部への四輪車流入を意図的に減らす法律が導入される可能性もあります。

国民が機動性を重視して二輪車を選択するというパターンもあるでしょう。タイではGDPは順調に増加し、人口もゆるやかに増え続いているにもかかわらず、四輪車の販売台数は伸び悩んでいます。3月に首都バンコクを訪れると、幹線道路の渋滞は相変わらずひどく、以前同様二輪車をひんぱんに目にしました。快適ではあるが時間が読めない四輪車を選ばず、定時性に勝る二輪車を愛用し続けている国民が多いのではないかと感じました。

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日本における二輪車は、高度経済成長時代は自転車から四輪車への橋渡し的存在に捉えられ、その後は暴走族の影響で不良の乗り物というイメージが根付くなど、良からぬ印象がついて回っていますが、世界的にはこの状況は異例と言えるものです。自転車が環境に優しく健康に役立つ乗り物として再評価されているように、二輪車も都市への人口集中が進むなかで欧州やアジアと同じように機動性を評価すべき時期にきていると考えます。そのために30km/h規制や二段階右折などがハードルになっている50ccから125ccへ主軸を移す動きは理解できることです。

上下乗り換えとエスカレーター問題

昨日、国土交通省が「第12回大都市交通センサス」を発表しました。首都圏・中京圏・近畿圏の三大都市圏における鉄道、バスの利用実態を把握し、公共交通施策の検討に資する基礎資料の提供を目的としているもので、1960年から5年ごとに実施しています。今回は2015年に実施した調査結果を取りまとめ、公表されました。

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結果については国土交通省のウェブサイトからダウンロード可能となっていますが、利用者へのアンケート調査の他、自動改札機などを介して集計したビッグデータなども活用した調査結果は膨大であり(首都圏だけで約300ページに上ります)、ここですべてを紹介することは不可能なので、今回は「乗り換え」に焦点を絞って話を進めていきます。

というのも、乗り換え移動時間について5年前の結果と比べると、中京圏と関西圏ではわずかに短くなっているのに対し、首都圏では少し長くなっているからです。具体的に駅別で見ると、水平方向では東京駅や渋谷駅、上下方向では大井町駅や下北沢駅などが長いと報告されています。主要駅の乗り換え時間を水平移動・上下移動・列車待ちに分けたグラフもあります。多くの駅で水平移動が4分の3を占める中、大井町駅では半分近く、下北沢駅ではなんと約7割を上下移動が占めています。

乗り換え時間比較
大都市交通センサスのウェブサイト=http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000064.html

水平方向の乗り換え距離が長い駅は以前からあったのに対し、上下方向が長い駅は最近になって増えてきたと感じています。理由はもちろん、既存のインフラを避けるべく、駅がどんどん地下深くなっているからです。ここでネックとなるのは移動手段です。階段では利用者に負担をかけ、一方のエスカレーターやエレベーターは輸送量が限られます。効率的な上下移動モビリティが発明されない現状では、移動そのものをなるべく少なくする設計が大事でしょう。

駅別移動グラフ

エスカレーターの利用方法についても触れておきます。最近日本では、安全のためにエスカレーターは歩かず立って乗るという方向に動いています。一方海外は、今週訪れたタイやシンガポールを含めて片側を空けています。しかし海外でも、混雑時は両側とも歩かず立ったままというシーンを多く見かけます。

エスカレーターに限った話ではありませんが、いまの日本人には臨機応変な判断が不足していると考えます。駅は時間帯によって利用者が大きく上下します。それをひとつのルールで決めつけるのは無理があります。乗り場に列ができているときは両側立ち、できていないときは片側空けなど、そのときの状況によって利用者が決めるほうが、判断力が養われて、結果的に人の流れがスムーズになりそうな気がします。

オリパラBRTの危機

東京都中央卸売市場築地市場の豊洲への移転が延期となったことで、2020年の東京オリンピック・パラリンピック(以下オリパラと称します)の関係者や観光客などの移動の動脈として考えられているBRTが、存続の危機に立たされています。

2014年に一部が開通した環状2号線を使い、東京都心とオリパラ選手村が作られる晴海および複数の競技場が整備される有明地区を結ぶオリパラBRTについては、以前もこのブログで取り上げました。そのときにも不安点をいくつか列記しましたが、それ以前の段階として、走るかどうかが不安になってきているのです。

京成連節バス

この件については東洋経済オンラインで記事を掲載しているので、興味がある方はご覧ください。そこにも記しましたが、昨年8月に移転延期が発表されてから、現在までにBRTに関する動きが2つ起こっています。ひとつは昨年11月、新橋と築地を結ぶ環状2号線のトンネルが、移転延期の影響で2020年の完成が難しくなり、地上ルートへの転換を模索しているということ。もうひとつは今月、東京都と京成バス(上の写真)によるBRT運行のための新会社設立が延期になったことです。

これも以前ブログで記したことですが、日本はBRTを誤解している人が多いようです。BRTとはバス高速輸送システムの略であり、バスに鉄道並みの定時制や速達性を盛り込んだものです。そのためには専用レーンの用意が必須です。連節バスやバスロケーションシステムを用意することがBRTだと思っている人もいるようですが、これらは利便性には寄与するものの、定時性や速達性にはさほど効果はありません。

豊洲大橋
東洋経済オンラインの記事=http://toyokeizai.net/articles/-/164494

築地と晴海を結ぶ築地大橋(記事参照)、晴海と豊洲を結ぶ豊洲大橋(上の写真)はいずれも基礎部分は完成しており、後者は工事車両に限り通行が許可されています。つまり新橋と築地の間だけが残されています。これに対して東京都では、現時点でも渋滞している新大橋通りや狭い市場内道路を活用し、信号システムを工夫するとしているようですが、これでBRTが成立するとは思えません。そもそも市場内道路にBRTを走らせれば、市場として機能させることは難しくなります。

昨日の都知事の定例会見では、都庁内に「市場のあり方戦略本部」の設置が明らかにされました。安全性だけでなく経済性などからも市場移転をじっくり検討していくとのことです。たしかに市場移転にタイムリミットはありません。しかしオリパラは開催時期が決まっています。BRTはそれ以前の整備が前提です。東京の交通は世界的に高い評価を受けています。その評価が一変する可能性もあります。移転か否か、とにかく早めの決断を望みます。

タクシー相乗りとともにすべきこと

今月9日、タクシーなどの相乗りについて2つの発表がありました。ひとつは国土交通省が明らかにしたもので、来年度に相乗りや乗車時運賃確定についての実証実験を営業車両で行うというもの。もうひとつはNTTドコモと公立はこだて未来大学発ベンチャー企業・未来シェアが共同で、やはり来年度にAIを使った相乗り自動配車のサービス開始を目指すという動きです。

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アイディアそのものはライドシェアで実現済みですが、ご存知のとおり日本ではタクシー業者がライドシェアの本格導入に反対してきました。理由は一般ドライバーの有償輸送が「白タク」行為にあたり危険というものでしたが(以前書いたように実際にはタクシーのほうが一般ドライバーより事故率が高くなっています)、もうひとつのライドシェアの美点、相乗りや乗車時運賃確定については、業界側も導入を要望しているそうです。

ドコモと未来シェアの発表会では実際に乗車体験もできたので内容を紹介すると、事前にAIを活用して需要予測を行い、それに基づいてルートや車両の大きさ、台数などを決定。利用者がスマートフォンのアプリで乗車希望を送信すると、近くにいる車両が立ち寄り、名前で本人かどうかを確認をしたあと、目的地まで輸送するというものです。

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最初に乗る人にはあらかじめ到着時間を幅をもたせて伝え、相乗りを受け入れてもらうことにするそうです。AIはその範囲内で何人まで相乗り可能かを計算。料金についてもAIがルートを計算し事前に確定する形になるようです。途中で相乗りになった場合は、所要時間は長くなるものの、逆に料金は下がっていくことになります。

従来のデマンド交通は前日までに予約する例が一般的でしたが、AIを活用したこのサービスなら瞬時に予約が可能です。一方交通事業者にとっては運行効率を高められるので、その分をサービス向上に振り向けることができます。NTTドコモと未来シェアではこのサービスを、日々の移動に困っている交通空白地での移動に役立ててもらいたいとのことです。さらにNTTドコモでは、DeNAとともに実証実験を進めている無人運転バスの導入も考えているそうです。

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しかしまだ問題は残っています。日本ではタクシーは定員10名以下、バスは定員11名以上で、ここを境に法律が変わってくるからです。デマンド交通は乗客数が不確定で、状況によってタクシーとバスのどちらが良いかは変わってきます。タクシーの相乗りや乗車時運賃確定認可はもちろん好ましい動きですが、同時に両者の境目を考え直すことも必要だと思っています。

自動運転車と無人運転車

昨年後半から、自動運転とは別に、無人運転という言葉が使われるようになってきました。政府が発表した官民ITS構想・ロードマップ2016では自動走行システムの種類として「自動パイロット」と「無人自動走行移動サービス」を分けていますし、このブログで何度も紹介している仏イージーマイル「EZ10」を日本で走らせているDeNAはこのモビリティを無人運転バスと称しています。

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さらに先月末には、 自動車メーカーが無人運転への参入を明らかにしました。ルノー・日産アライアンスが世界各地で公共交通の運営を行う仏トランスデブ(Transdev)との間で、無人運転車を活用した公共交通およびオンデマンド型交通向けのモビリティサービスを共同開発すると合意したのです。まずはルノーの電気自動車「ゾエ(ZOE)」を使ったパリでの実証実験や、トランスデブのオンデマンド配車や運行管理・経路選択のためのプラットフォームなどの検証を行うそうです。

少し前まで、多くの人はこれらを自動運転車の一種として見なしていました。私は自動車メーカーが開発する車両とIT企業や研究機関が開発する車両では方向性が違うので分けて扱っていましたが、やはり自動運転車と総称していました。しかし自動車メーカーの自動運転車が、運転席に人間が乗っていることを前提とするのに対し、EZ10などの無人運転車はその名のとおり無人でも走ります。この違いを呼び名として使ったのは分かりやすいと感じています。

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両者は普及のプロセスも違ってきます。自動運転車は個人が買って乗ることを前提としていますが、無人運転車はバスやタクシーなど公共交通として走らせることを念頭に置いています。EZ10をはじめとして箱型車体が多いのはそのためです。公共交通の運営が厳しい過疎地や、自動車の運転が難しくなった高齢者の移動手段として自動運転を期待する声がありますが、その要望に応えるのは主に無人運転車になりそうです。

日本ではソフトバンクグループのSBドライブが、自動運転技術を活用して新しいモビリティサービスを提供するとアナウンスしており、いくつかの市町村と連携協定を締結しています。自治体では福井県永平寺町が鉄道の廃線跡を活用して来年度に実証実験を行うそうです。一方EZ10および同じシティモビル2プロジェクトから生まれた仏ナビヤ「アルマ(ARMA)」は、米国やニュージーランドなど世界各地で実験を進めています。最初の写真でお分かりのように米国のテストにはトランスデブも関与しています。

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自動運転の報道では、IT企業VS自動車メーカーという取り上げ方が続いてきました。しかし自動運転車と無人運転車は敵対関係にはありません。片やパーソナル、片やパブリックな移動手段になりますが、個人が自家用車を使って公共交通を担うライドシェアを見れば分かるように、モビリティにおいてパーソナルとパブリックを分けることは意味がなくなりつつあるのです。大切なのは、すべての人が安全快適に移動できること。新しい自動車として、新しい公共交通として、無人運転車の普及を望みます。
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