少し前の話になりますが、昨年11月、千葉市の幕張メッセで、第9回レイルウェイ・デザイナーズ・イブニングが行われました。鉄道デザインの未来を考える活動として2013年から続いているもので、私も何度か参加しています。昨年は「鉄道とブランディング」というテーマで、年末に私がまとめた実施報告がアップされたので、対象をモビリティに広げて、このテーマを考えたいと思います。
日本のモビリティシーンで、早くからブランディングを確立した存在と聞かれたら、阪急電鉄の名を挙げる人が多いのではないのでしょうか。1910年の開業時からマルーンの車体色を使っているうえに、塗装前にパテを使って表面を平滑に仕上げることで、光沢のある見た目に仕上げているとのこと。車内についても、木目調の化粧板とゴールデンオリーブ色の座席の組み合わせは長年不変で、座席は表面の素材や内部のスプリングにもこだわっているそうです。
車両だけでなく、写真の大阪梅田駅ホームも、月一回ワックスがけをしているとのことです。大阪梅田の百貨店や沿線の住宅地にも、いろいろな配慮が行き届いているのでしょう。不特定多数の人が日常的に使う鉄道で、ここまで美しさにこだわるのは異例ですが、それが上品で落ち着いたブランドイメージを作り出していることがわかります。
道路を走る乗り物では、カワサキモータースジャパンのモーターサイクルを思い出します。欧米では不吉な色とも言われるライムグリーンを、1969年からレーシングマシンで使いはじめ、現在では市販車を含めてイメージカラーになっています。またシリーズ名のNinjaは今年40周年です。いずれも万人向けという感じは受けませんが、むしろそれがカワサキらしさをアピールし、熱狂的なファンづくりに役立っていると考えています。
一度は手放したブランドの象徴を甦らせたのが、今月2日の羽田空港での事故で奇跡の全員脱出を果たした日本航空です。尾翼に描かれている「鶴丸」は、1959年に商標として登録されましたが、21世紀に入ると日本エアシステムとの統合に伴い、一度消滅しました。しかし2010年の経営破綻からの再建のシンボルとして復活。その後は日本ならではのおもてなしはそのままに、エアバス機の導入など柔軟な部分も併せ持つエアラインに変わりつつあるようです。
最初に紹介したレイルウェイ・デザイナーズ・イブニングでは、実施報告にもあるように、新京成電鉄、南海電気鉄道、相模鉄道の3社が最近のブランド戦略について説明しました。このうち相模鉄道の車両は、最近は東京都内に乗り入れているので乗る機会もあり、独自の存在感を示していると思っています。だからこそ今後、時代の変化にうまく対応しながら長く育てていけるかどうかがキーになりそうです。
今は社会が成熟してきて、デザインやテクノロジーだけでは差別化が難しくなってきました。しかも情報は溢れていて、何をもって判断していいか迷う人も多そうです。そうした人たちに、根源的な哲学や精神をわかりやすく伝えるのがブランドではないかと考えています。モビリティについて言えば、乗ってもらえるかどうかを決める要素のひとつになるわけで、これまで以上に重要になると、鉄道会社の話を聞きながら思いました。
日本のモビリティシーンで、早くからブランディングを確立した存在と聞かれたら、阪急電鉄の名を挙げる人が多いのではないのでしょうか。1910年の開業時からマルーンの車体色を使っているうえに、塗装前にパテを使って表面を平滑に仕上げることで、光沢のある見た目に仕上げているとのこと。車内についても、木目調の化粧板とゴールデンオリーブ色の座席の組み合わせは長年不変で、座席は表面の素材や内部のスプリングにもこだわっているそうです。
車両だけでなく、写真の大阪梅田駅ホームも、月一回ワックスがけをしているとのことです。大阪梅田の百貨店や沿線の住宅地にも、いろいろな配慮が行き届いているのでしょう。不特定多数の人が日常的に使う鉄道で、ここまで美しさにこだわるのは異例ですが、それが上品で落ち着いたブランドイメージを作り出していることがわかります。
道路を走る乗り物では、カワサキモータースジャパンのモーターサイクルを思い出します。欧米では不吉な色とも言われるライムグリーンを、1969年からレーシングマシンで使いはじめ、現在では市販車を含めてイメージカラーになっています。またシリーズ名のNinjaは今年40周年です。いずれも万人向けという感じは受けませんが、むしろそれがカワサキらしさをアピールし、熱狂的なファンづくりに役立っていると考えています。
一度は手放したブランドの象徴を甦らせたのが、今月2日の羽田空港での事故で奇跡の全員脱出を果たした日本航空です。尾翼に描かれている「鶴丸」は、1959年に商標として登録されましたが、21世紀に入ると日本エアシステムとの統合に伴い、一度消滅しました。しかし2010年の経営破綻からの再建のシンボルとして復活。その後は日本ならではのおもてなしはそのままに、エアバス機の導入など柔軟な部分も併せ持つエアラインに変わりつつあるようです。
最初に紹介したレイルウェイ・デザイナーズ・イブニングでは、実施報告にもあるように、新京成電鉄、南海電気鉄道、相模鉄道の3社が最近のブランド戦略について説明しました。このうち相模鉄道の車両は、最近は東京都内に乗り入れているので乗る機会もあり、独自の存在感を示していると思っています。だからこそ今後、時代の変化にうまく対応しながら長く育てていけるかどうかがキーになりそうです。
今は社会が成熟してきて、デザインやテクノロジーだけでは差別化が難しくなってきました。しかも情報は溢れていて、何をもって判断していいか迷う人も多そうです。そうした人たちに、根源的な哲学や精神をわかりやすく伝えるのがブランドではないかと考えています。モビリティについて言えば、乗ってもらえるかどうかを決める要素のひとつになるわけで、これまで以上に重要になると、鉄道会社の話を聞きながら思いました。