THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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ちょっと変わった「自動運転本」出しました

久しぶりに本を出すことになりました。写真でお分かりのとおり自動運転に関する書籍で、4年前の超小型モビリティの本と同じ秀和システムから、来週火曜日9月12日に発売となります。すでにAmazonなどでは予約を受け付けています。価格は1500円(税抜き)です。

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自動運転に関する書籍は多く出されていますが、本書はタイトルにもあるとおり、自動運転の導入によって社会はどうなるか?にフォーカスを当てている点が、やや違うのではないかと思っています。 歴史や技術の解説もしていますが、単なる技術書や経営書ではなく、もっと広い視野での「自動運転社会」を想像しながら、専門的にならず分かりやすく書いたつもりです。

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国内外の数多くの自動運転・無人運転に接してきた結果思ったのは、自動運転にはソーシャルとマーケティングの2つの側面があることです。個人的にはその中で、ソーシャル面を大事にすべきという結論に至りました。よって本書では自動車メーカーの自動運転とIT企業などが主導する無人運転車に同じ比重を置いています。どちらが勝つかではなくどちらも選べることが、安全快適な社会を作るからです。
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もうひとつ、自動運転の基礎技術はほぼ確立しており、そろそろ「どう作るか」から「どう使うか」に考えをシフトすべきと感じています。世界各地で普及しているライドシェアが、10年前に登場したスマートフォン前提のサービスであることを思い出してみてください。自動運転をより便利なものとするためには、ソフト面の発展が大切であると考えています。

このように一風変わった自動運転本ですが、気になった方はぜひお求めいただければと思っています。よろしくお願いいたします。

交通と政治の関係

このブログでも何度か紹介した栃木県宇都宮市・芳賀町のLRT計画(以下宇都宮LRT)について、鉄道ジャーナル9月号に記事を掲載させていただきました。5年前からこの地に何度か通い、さまざまな関係者に話を伺いつつ沿線となる地域を訪ね歩いた記録をまとめたものです。
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宇都宮LRTのこれまでの道のりは雑誌にくわしく書いたので、ご興味のある方は読んでいただきたいのですが、 2012年の宇都宮市長選挙で現職の佐藤栄一氏が、以前から計画にあったLRT導入を争点に掲げて大差で三選。まず宇都宮駅東側の優先整備と芳賀町への延伸、公設型上下分離方式の導入を決めました。

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ところがその直後から反対派の声が目立つようになりました。当初は260億円としていた宇都宮駅東側の整備費が450億円以上に増大したことを問題視したのです。昨年の市長選でも佐藤氏は当選したものの、LRT反対を訴えた対立候補との票差は僅差と呼べる状況になっていました。

自治体の首長を決める選挙で交通が争点になることは良くあります。それ自体は問題ではありません。しかし昨年の選挙では、対立候補がLRT整備費用1000億円という数字を掲げました。実際には宇都宮駅西側を含めても整備費は700億円以内で収まり、すべてが宇都宮市の支出ではありません。一方対立候補のウェブサイトに1000億円の内訳についての説明はなく、「一説には」という表現に留めていました。

1000億円というインパクトのある数字が効いたとも言えますが、逆に現職側がLRTのメリットをしっかり説明しなかったことも辛勝につながったと見ています。

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そもそも宇都宮LRTは市の東部や芳賀町などに展開する工業地帯への通勤輸送として計画されました。当初の予定ルート図を見れば一目瞭然です。当時の宇都宮市の関係者は、通勤輸送だけで黒字になると説明し、沿線への公共施設誘致や住宅整備などには言及していませんでした。これでは多くの市民の支持はもちろん、興味も得られないはずです。

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しかし昨年から風向きが変わり始めました。ウェブサイトにLRTを説明するパンフレットや動画を相次いでアップし、6月に現地を訪れた際には県庁でLRTのオープンハウスを開催していました。市長選での辛勝を受けて、工業団地への通勤輸送から市民のための路線へ考えを改めたのでしょう。最新の予定ルート図から工業団地が消えていることでも、それは伝わってきます。

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宇都宮LRTは政治に揺り動かされつつ、結果的にはその揺れによって、市民路線という好ましい方向に絞り込まれつつあると感じています。交通と政治は密接な関係にあることを、今回の事例は教えてくれました。しかしそこに党利党略を持ち込むべきではないと考えます。すべての人に安全快適な移動を提供すること。これが交通分野における政治の使命だと思っています。

電子書籍を出しました

2011年1月から続けてきたこのブログが電子書籍になりました。新年度ということで新しいことを始めたいと思ったし、メディアに関わる人間として早めに体験しておくべきと考えたのが大きな理由です。このブログは国内外のモビリティやまちづくりにまつわるモノやコトについて触れてきましたが、今回はそのなかから、2020年オリンピック・パラリンピック開催が決まった東京のモビリティに関するものを再編集しまとめ、Amazonで発売しました。

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価格は500円。ダウンロードはPCのみになるようですが、そこからスマートフォンなどに転送可能。下の写真は自分のiPhoneで表示したものです。自分自身、電子書籍を買ったのは初めてなので、字の大きさや背景色が選べるなど、紙の書籍とは違う魅力があることを知りました。これまで電子書籍に縁がなかった人にこそ、この新しい世界を体験してほしいと思っています。

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電子書籍の出版と同時に、ブログで公開する記事は過去半年分に限らせていただくことになりました。理由は2つあります。ひとつはこのブログのテーマ別アーカイブ版として電子書籍を位置づけたいと考えていること、もうひとつは今回選択したAmazonのプログラムの規定で、内容の10%以上の公開が禁止されているからです。もちろん今後も本ブログのアーカイブ版としての電子書籍発行を計画しています。ご理解をよろしくお願いいたします。


ピケティ・ブームから考える移動格差

いま経済界でもっとも注目の人物が、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏でしょう。2013年に母国で、そして昨年日本で発売された著書「21世紀の資本」は、約700ページというボリューム、6000円近い価格(いずれも日本版)にもかかわらず、世界的なベストセラーになっています。私も読者のひとりです。

彼の主張については、すでに多くのメディアで紹介されているので、著作を読む必要はないと考える人がいるかもしれません。また「◯分でわかる」などの参考書に目を通せば良いと思っている人も多いようです。安易に結果を求めたがる最近の日本らしい風潮です。

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この本の肝は、結果よりも過程にあるのではないかと思っています。産業革命から現在までの主要国の経済状況を、当時は存在しなかったコンピュータを活用して統計化し、結論を導き出したのです。つまり憶測や願望でモノを言っているのではなく、主張に裏付けがあるのです。それが世界中から評価を受けている理由でしょう。

そこから導かれた主張である「資本主義が発展すると格差は大きくなる」は、現在の我が国のモビリティの世界にも、ある程度当てはまります。JR九州の超豪華寝台列車「ななつ星」は予約が殺到し、料金値上げが実施されたのに対し、地方住民の足である鉄道やバスは廃止や減便が相次いでいます。自動車の世界では、新車で販売された4割が軽自動車でありながら、1000万円以上の超高級車も売れ行きを伸ばしています。

格差が小さくなれば、超豪華列車や超高級車は、一時的に需要が低下するかもしれません。しかしクオリティを大きく落とさない範囲で価格を下げれば、すぐに挽回するはずです。逆に格差が大きくなっても、同じ列車に乗る回数を増やしたり、同じ車種を何台も手に入れたりすることは、マニアでない限り稀有でしょう。そこで料金や価格の値上げとなります。逆に低所得者層では、所得がさらに減少し、移動に支障をきたす人が増える可能性があります。移動の格差もさらに拡大することになります。

格差を完全になくすことは不可能であり、すべきでもありません。背が高い、絵が上手、運動神経に優れるなど、人は生まれた時点で格差を持っているわけですし、ある程度の競争がなければ、たぶん人は怠けてしまって、新しい技術やデザインが登場しなくなり、やがては人間以外の生物に地球の主役を奪われてしまうでしょう。しかし我が国でも近年、格差が過大になりつつあるのは事実であり、どこかで歯止めをかけるべきではないかと考えます。


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日本ではあまり話題になりませんが、彼は20世紀の100年間で格差が小さくなった時期として、二度の世界大戦を挙げています。戦争が起これば格差は縮小する。これが歴史の真実なのです。21世紀は戦争以外の手段で格差縮小をすべき。それが「世界的な資本税」という提案をしたピケティ氏の真意ではないかという気がしています。

格差拡大を人のせいにして放っておけば、過去のオウム真理教や現在の中東地域のような過激派が台頭し、やがて戦争に結び付くのではないかと危惧しています。そうならないためにも、1人ひとりが真剣にこの問題を考え、動くことに尽きるのではないかと思っています。

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