3月下旬、以前このブログでも紹介した富山市の富山駅路面電車南北接続を取材しに行く途中で、長野県上田市を訪れました。この地を走る上田電鉄別所線が千曲川を渡る通称「赤い鉄橋」が昨年10月の台風19号で一部崩落したことを覚えていて、現場を見に行ったのです。
このときは現場を含めた沿線の一部を訪ねただけでしたが、東京に戻って調べると、崩落直後から市民などの寄附や署名が驚くほど多く集まっていたうえに、上田市も別所線を残すべく積極的に動いていることを知りました。そこで市の担当者に話を伺い、「東洋経済オンライン」で記事を掲載していただきました。
記事をまとめながらまず感じたのは、上田市が公共交通を大切に考えていることです。自治体のウェブサイトを見れば、公共交通に対する姿勢がある程度想像できるのですが、上田市では別所線電車存続期成同盟会が立ち上げた「別所線にのろう!」が市のサイトの一部になっており、観光情報などとともに存続運動の様子も記載しています。
ここではかつて別所線を走っていた「丸窓電車」をキャラクターに仕立て、愛着を持ってもらおうという取り組みも目立ちます。現在使っている新型車両の一部も丸窓電車風のラッピングを施しています。しかも3両あった丸窓電車はすべて現存しており、終点の別所温泉駅のほか、市内の学校や企業で保存されています。市内の人々が別所線に愛着を持っている証拠でしょう。
上田市の資料には、鉄橋が崩落してからの市民活動が記録してあります。学校・会社・組合などさまざまな組織が署名や募金など多彩な活動を繰り広げていて驚きます。これを受けて上田市では今年1月、台風19号災害が非常災害に指定されたことで適用可能になった「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助」を適用すべく、市が赤い鉄橋を保有することを選択。復旧費用の97.5%を国の補助でまかなえるようになりました。
上田市は鉄道以外の公共交通維持にも真剣に取り組んでいます。記事でも紹介したように路線バスでは欧州のゾーン制を思わせるエリア分けを設定し、同一エリア内は最高300円、隣接エリア間は最高500円としています。違う方からの情報では、ここでも取り上げた京都府京丹後市を参考にしたそうです。前述の補助金もそうですが、交通に関して幅広い知識を持つ組織であることも重要と教えられます。
記事では2017年7月の九州北部豪雨で一部区間が不通になり、BRTでの復活という方向性になったJR九州の日田彦山線にも触れました。別所線とは不通区間の長さ、復旧費用、沿線自治体の数、災害指定のレベルなどの違いはありますが、鉄道での復旧には財政支援が必要としたJR九州と、財政負担なしでの復旧を望んだ自治体との間で意見がまとまらず、約3年を要した末、自治体側の負担がないBRT転換で決着しました。
鉄道よりもBRTのほうが今の地域の実情には合っているかもしれませんが、モビリティには財政支援はしないという姿勢を貫いていると、BRTが立ち行かなくなったときにどうするのか、転不安が募ります。人口減少局面に入った今の日本で、公共交通を運賃収入だけで運行するのは、大都市の限られた地域以外は無理です。上田市は富山市や京丹後市のように、自治体が住民に丁寧に現状を説明し、住民がそれを理解してきたからこそ、全市を挙げて別所線を支えようという動きになるのでしょう。
国の責任に言及する人もいますが、現状でも上田市や富山市や京丹後市は地域に見合った交通改革を着実に進めているわけで、自治体と住民を含めた地域の力次第ではないかと思います。そもそも民主主義は私たち1人ひとりが政治の主役なのですから。新型コロナウイルスを恐れて大都市から地方へ暮らしの拠点を移そうと考える人が出てきている中で、「地方力」がさらに試される状況になっていると感じています。
このときは現場を含めた沿線の一部を訪ねただけでしたが、東京に戻って調べると、崩落直後から市民などの寄附や署名が驚くほど多く集まっていたうえに、上田市も別所線を残すべく積極的に動いていることを知りました。そこで市の担当者に話を伺い、「東洋経済オンライン」で記事を掲載していただきました。
記事をまとめながらまず感じたのは、上田市が公共交通を大切に考えていることです。自治体のウェブサイトを見れば、公共交通に対する姿勢がある程度想像できるのですが、上田市では別所線電車存続期成同盟会が立ち上げた「別所線にのろう!」が市のサイトの一部になっており、観光情報などとともに存続運動の様子も記載しています。
ここではかつて別所線を走っていた「丸窓電車」をキャラクターに仕立て、愛着を持ってもらおうという取り組みも目立ちます。現在使っている新型車両の一部も丸窓電車風のラッピングを施しています。しかも3両あった丸窓電車はすべて現存しており、終点の別所温泉駅のほか、市内の学校や企業で保存されています。市内の人々が別所線に愛着を持っている証拠でしょう。
上田市の資料には、鉄橋が崩落してからの市民活動が記録してあります。学校・会社・組合などさまざまな組織が署名や募金など多彩な活動を繰り広げていて驚きます。これを受けて上田市では今年1月、台風19号災害が非常災害に指定されたことで適用可能になった「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助」を適用すべく、市が赤い鉄橋を保有することを選択。復旧費用の97.5%を国の補助でまかなえるようになりました。
上田市は鉄道以外の公共交通維持にも真剣に取り組んでいます。記事でも紹介したように路線バスでは欧州のゾーン制を思わせるエリア分けを設定し、同一エリア内は最高300円、隣接エリア間は最高500円としています。違う方からの情報では、ここでも取り上げた京都府京丹後市を参考にしたそうです。前述の補助金もそうですが、交通に関して幅広い知識を持つ組織であることも重要と教えられます。
記事では2017年7月の九州北部豪雨で一部区間が不通になり、BRTでの復活という方向性になったJR九州の日田彦山線にも触れました。別所線とは不通区間の長さ、復旧費用、沿線自治体の数、災害指定のレベルなどの違いはありますが、鉄道での復旧には財政支援が必要としたJR九州と、財政負担なしでの復旧を望んだ自治体との間で意見がまとまらず、約3年を要した末、自治体側の負担がないBRT転換で決着しました。
鉄道よりもBRTのほうが今の地域の実情には合っているかもしれませんが、モビリティには財政支援はしないという姿勢を貫いていると、BRTが立ち行かなくなったときにどうするのか、転不安が募ります。人口減少局面に入った今の日本で、公共交通を運賃収入だけで運行するのは、大都市の限られた地域以外は無理です。上田市は富山市や京丹後市のように、自治体が住民に丁寧に現状を説明し、住民がそれを理解してきたからこそ、全市を挙げて別所線を支えようという動きになるのでしょう。
国の責任に言及する人もいますが、現状でも上田市や富山市や京丹後市は地域に見合った交通改革を着実に進めているわけで、自治体と住民を含めた地域の力次第ではないかと思います。そもそも民主主義は私たち1人ひとりが政治の主役なのですから。新型コロナウイルスを恐れて大都市から地方へ暮らしの拠点を移そうと考える人が出てきている中で、「地方力」がさらに試される状況になっていると感じています。