THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

まちづくり

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東京の人口が減りはじめている

新型コロナウィルスの感染が東京などの大都市周辺で目立つことを受け、東京への一極集中が収まり、地方移住が進むのではないかという予想が、現実になりつつあるようです。総務省が27日に発表した今年7月の人口移動の概況によると、東京都は転出者数が転入者数を大きく上回り、全都道府県でもっとも多い2522人の転出超過となったのです。逆に転入超過が多かったのは北海道の1534人、千葉県の1189人、大阪府の1036人などとなっています。

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このうち北海道と大阪府は昨年の7月も転入超過でしたが、千葉県は昨年7月は転出超過だったのに対し、今年は転入超過になっています。同じように昨年は転出超過だったのに今年は転入超過になったのは、岩手県、茨城県、山梨県、島根県、香川県、長崎県など10県以上あります。逆にプラスからマイナスになった県も東京都以外にいくつかありますが、東京都は昨年は1199人の増加を記録しており、数字の大きさで見ても突出しています。

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東京都が転出超過になったのは、今年は5月に続いて2度目になります。しかしこれまでも転出増加の月があったわけではなく、毎年3月と4月は新生活に合わせて転入が大きく増えるだけでなく、それ以外の月も増加していました。東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)、大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)の3大都市圏の比較でも、東京圏の転入増加数が名古屋圏と大阪圏に比べて大きく落ちています。



出生や死亡もあるので、これだけでは人口そのものが増減したかはわかりません。そこで東京都の人口を見ると、今年5月に初めて1400万人を超えて1400万2973人に達したものの、その後の伸びはなく、7月は1399万9624人となっています。私が事務所を置いている渋谷区の人口を見ても、今年3月に14万人ちょうどになり、翌月は14万1186人に増えたものの、その後は少しずつ減り続けていて、8月1日時点では14万928人になっています。 

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今後、新型コロナウイルスの状況が変われば、この流れにふたたび変化が起こる可能性はあります。しかし私の知人が勤める会社も、テレワークが一般的になったことを受けて来年度からオフィスの縮小を決めたそうで、完全に元に戻ることはないと予想しています。東京の人口は増え続けるというのが多くの人々の共通した認識だったはずであり、この動きは驚くべきものです。

一方で以前から、一極集中の弊害がさまざまな場面で出てもいました。このブログでもたびたび指摘してきました。なのでこの動きは歓迎すべきものだと考えています。そして最初に書いたように多くの県では逆に転入増加となっている、つまり新たに住む人が増えているわけです。5月に「今が一極集中是正の好機」と書きましたが、それが現実になりつつあります。

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とはいえ東京から出て行く人たちが、いわゆる田舎暮らしを望んでいるわけではないことは明白です。人が密集した場所は避けたいが、モビリティを含めた都市機能は欲しいと思っているはずです。5月にも書きましたが、まちづくりをしっかりやっている場所が選ばれるのではないかと思います。もちろん地方もコロナの影響は受けており、その中でのまちづくりは大変ではありますが、ここなら住みたいと思わせる土地を作っていくことが、いままで以上に大事になっていると認識しています。 

気になりませんか?タクシーのマナー

今回は新型コロナウイルス関連の話題から少し離れて、日頃から気になっていることを書きます。それはタクシーについてです。このブログでタクシーについての話題というと、多くは今後の日本の地域交通で必要不可欠になるであろう地域が移動を支える仕組み、つまり自家用有償旅客運送を含めたライドシェアに異を唱え続ける態度に関するものでしたが、今回は違った部分にスポットを当てます。

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上の写真を見ていただければ今回の趣旨が想像できるのではないかと思います。横断歩道の直前でタクシーが乗客を降ろしたことがわかります。道路のルールである道路交通法では交差点や横断歩道から前後5m以内、バス停留所の前後10m以内などは駐停車禁止となっており、これはマイカーだけでなくタクシーにも当てはまるので道交法違反になります。こうした事例をしばしば目にします。

このような事例が頻発する理由は2つあると考えています。ひとつはタクシーの利用者にあります。日本の義務教育では交通安全を学ぶ科目がありません。任意の交通安全教育はやっているところが多いですが、ほとんどは歩行者や自転車目線であり、道路や車両全般についてのルールは多くが運転免許を取得する際に初めて教わることになります。つまり免許を取らない人は道路のルールをあまり知らずに道路を使っていることになります。

海外の例としてフランスを挙げると、フランスでは義務教育に交通安全の科目が用意されており、小学校と中学校でそれぞれの段階の交通安全証明書というものが発行されます。中学校の交通安全証明書がないと運転免許が取得できないそうです。フランスでは14歳から超小型モビリティに運転免許なしで乗ることができますが、実際はこの交通安全証明書を取得していることが前提になっているようです。

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さらにフランスの交通安全協会と自動車メーカーのルノーが運営する財団では共同で交通安全のウェブサイト「ROAD4US」を立ち上げており、歩行者から運転者まで道路を利用するすべての人が簡単に交通安全を学べるよう、シンプルかつアクセシブルなイラストを用意。教育者や団体などが無料でダウンロードし自由に使用可能となっています。交通安全に年齢や文化、教育レベルは関係ないというメッセージが伝わってきます。

運転免許の有無を問わず交通安全教育を行う仕組みが整っていれば、冒頭の写真のように横断歩道の近くで乗り降りしようとする乗客はいなくなるはずですし、仮にそのような要望を出す乗客がいたとしても、その人は交通違反を幇助しようとしていることになるので、運転手の判断で安全運転を優先した乗せ方、降ろし方をしても問題はないと予想しています。

タクシーの運転手にも課題はあると考えています。写真は反対側に利用者を見つけてUターンしたものの曲がりきれず、切り返しをしているシーンです。最初からUターンを考えていれば十分転回可能な道幅です。これに限らず突然速度や進路を変えるタクシーが多く、同じ道路利用者として肝を冷やしたことが何度もあります。自身と乗客のことだけでなく道路全体を見て運転に努めてほしいものです。
 
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最近は日本でもウーバーに範を取ったタクシー配車アプリの導入が進んでいます。出発地と目的地をあらかじめ設定するこうしたアプリが一般的になれば、利用者を乗せたり降ろしたりするために突然速度や進路を変えることは少なくなりそうです。ただ日本はモビリティ分野に限らず、デジタル化に消極的な層が一定数おり、こうした層への配慮のために進化が滞りがちであるのは歯痒いところです。

オープンカフェ緩和 だからこそ必要なこと

国土交通省が昨日、新型コロナウイルスの影響を受けているレストランやカフェなどを支援する緊急措置として、路上でテイクアウトやテラス営業などのサービスを提供する際の許可基準を緩和すると発表しました。

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緊急事態宣言は解除されたとはいえ、飲食店ではいわゆる「三密」を防ぐために、席を離したり間引いたりという対策を強いられています。収入減は確実です。そこで対策のひとつとして、路上に席を置いたりテイクアウトを提供したりしやすくすべく、今回の緩和に行き着いたようです。同様の取り組みは少し前から仙台市や佐賀市などで社会実験などの形で行っており、それを全国展開した形です。
道路占用許可緩和
国土交通省 = https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/senyo/senyo.html

日本でこれまで飲食店の路上利用ができなかったわけではありません。しかし原則として道路管理者(国道事務所や都道府県土木事務所など)の道路占用許可、警察の道路使用認可、地方公共団体の食品営業許可の3つが必要でした。とりわけ警察の認可は他の分野を見る限り、個々の飲食店が申請を出すにはハードルが高かったと想像しています。

それが今回は、地方公共団体や協議会などが個別の飲食店の要望を受けて一括申請すれば、許可基準が緩和されるそうです。資料の中には警察庁交通局と調整済みという文言もあります。地方公共団体にも取り組みを要請という言葉もあり、積極的な姿勢が伝わってきます。しかも周辺の清掃などに協力をしてもらえれば占用料は免除、つまり無料という特典もあります。

空間については原則として、歩行者が多い場所では3.5m以上、その他の場所では2m以上を確保したうえでの設置とあります。期間は11月末までとなっていますが、12月以降は今回の実状を踏まえて検討としてあり、延長の可能性もあります。地方の財政を考えれば、占用料は地域の裁量に委ねたうえで有料が妥当と考えますが、申請の簡略化は続けてほしいところです。

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オープンカフェというとまず思い出すフランスのパリは、路上営業はパリ市が管理しており、ルールを守れば奨励という立場を取っていますが、料金は有料で、シャンゼリゼなどの大通りに行くほど高くなります。歩行空間は1.6m以上あれば良いとのことですが、景観や音を含めて周囲の環境を妨げないというパリらしいルールもあります。こうして見ると今回の国交省の緩和措置はかなりフレンドリーな内容だと思います。

となると問題は、オープンカフェを展開できるだけの広いスペースがあるかどうかです。やはりまちづくりが絡んでくるわけです。たとえば富山市のように、歩いて暮らせるまちづくりを目指し、公共交通の整備を進めながら歩道を広くとる整備を進めてきた都市であれば、今回の緩和をすぐに受け入れ、展開できるでしょう。それが都市の価値を上げることにもつながります。

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少し前のブログでは、欧米の都市がコロナとの共存を見据え、歩行者や自転車を重視したまちづくりを進めていることを書きました。今回の国交省の発表が、この路線に通じる方向であるのは興味深いと感じています。

今が一極集中是正の好機

新型コロナウイルス対策の非常事態宣言が39県で解除になり、今なお非常事態宣言が続くのは北海道と首都圏1都3県、関西圏2府1県になりました。このうち北海道は今週末、札幌市などが位置する石狩振興局以外で法令に基づかない商業施設や飲食店の休業要請を解除し、大阪府でも「大阪モデル」と名付けた独自の指針に基づき、同様の解除や緩和に踏み切りました。

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東京都も昨日ロードマップを発表しており、近々具体的な動きが出てくる可能性もあります。ただ先月欧米の事例を紹介した時にも書きましたが、収束や出口には程遠く、「コロナとの共存」がしばらく続くと認識しています。また今回は多くのことがまだ解明されておらず、現時点で正解とはなく、自粛緩和についても賛否両論があるのは当然です。それでも感染が始まった頃に比べると対策のノウハウは確立しつつあるので、それらを参考に各自が対策していくのが最善の策だと思います。

もっとも現時点で分かっていることもあります。収束後の大都市の生活がかなり変わることはそのひとつです。多くの職場でリモートワークが進んでおり、それに対応してオフィスの縮小や撤去を進めた企業もあります。大幅な経費節減ができるのですから当然でしょう。つまり「会社に行くことが仕事」というスタイルは通用しにくくなっているのです。ゆえに都心の商業施設や飲食店は、コロナ前の需要を取り戻すのは難しく、高い土地代が負担になりそうです。

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住む場所についてもそうで、テレワークがメインになれば都心に近い必要はありません。2拠点生活(デュアルライフ)も同じで、この言葉自体すっかり見なくなりました。逆に書斎が必要になったりすることを考えると、手頃な予算で広い住居が手に入る郊外や地方に住む人が増えるでしょう。すでにニュースではいち早く生活を変えた人のレポートも目にします。

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ではどこに住むか。個人的に思い浮かぶのはやはり「まちづくりに熱心な場所」です。大都市のトレンドに影響されることなく、その土地ならではの個性を尊重し、公共交通などを使って誰でも楽に移動しやすく、まちなかに個性的な飲食店やリラックスできる広場などがあると、ここなら住みたいと思わせてくれますし、新たにお店を開くときの可能性も感じます。

さらに観光については、リモートワークの普及で郊外や地方への移住が進むことに加え、首都圏や関西、海外から飛行機や新幹線を使って訪れるタイプの観光は回復まで時間が掛かりそうであり、同じ県内のスポットを訪れる「近場観光」が注目されるのではないかと考えています。こうした部分を見据えた地域交通やまちづくりの整備もまた大切になると予想しています。

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一極集中是正は国レベルでもメリットがあります。今の日本は学校の再開ひとつとってもバラバラであり、それがさまざまな支障を及ぼしています。地域ごとの人口密度の差が小さくなれば、全国一斉での動きを取りやすくなるのではないでしょうか。リモートワーク同様、一極集中是正も、普及によるメリットは計り知れないと考えています。

コロナとの共存を見据えた道路再配分

新型コロナウイルス感染拡大防止のために厳しい外出規制を実施していた欧米諸国が、ここへきて規制緩和の動きを始めています。感染をある程度抑え込めているというのが理由ですが、それでも1日の死者数は米国が1200人以上、英国が600人以上です。民族性の違いを実感するとともに、約2か月規制しても収束不可能なので経済対策との共存を目指したとも考えられ、出口戦略には程遠いと理解しています。

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注目はその中で、いくつかの都市が道路の再配分に乗り出していることです。最初の3枚のイラストは以前このブログでも紹介した米国オレゴン州ポートランドの交通局が発表した「スローストリート/セーフストリート・イニシアチブ」です。現時点でオレゴン州は外出規制を続けていますが、今後の市民の交通行動の変化を見据え、いくつかのプランを提示しています。

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生活道路では市民の憩いの場を提供すべく、一時的にバリケードを設置して地元住民以外の自動車の通行を制限し、比較的にぎやかな通りでは感染防止のために歩道を拡大。イラストにはないですが自転車レーンの設置も進めていくとのことです。そしてビジネス街では交差点近くの歩道を拡大して歩行者間の距離を維持するとともに、物流のための専用ゾーンを設けていくとのことです。

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一方フランスでは、パリを中心とするイル・ド・フランス地域圏で、RER Vと名付けた広域自転車レーンネットワークの整備が決まりました。もともとこの地域圏で運行していた近郊電車ネットワークRERをモデルに、自転車を意味するveloの頭文字を加えたものです。現地の自転車愛好家からは「コロナピスト」(ピストは日本では自転車の種類として使われますが本来はトラック/競技場という意味です)と呼ばれています。
 
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この動きに対応するように、パリでは5月11日に予定される国の規制緩和に合わせ、ルーヴル美術館の北側を走るリヴォリ通りを歩行者・自転車専用道に切り替える予定です。リヴォリ通りは自分も何度も通ったことがある道なので大胆な決断に驚きましたが、パリではここを含めて50 kmの自転車レーンを新たに追加し、市境のパーク&ライド駐車場を2倍に増やすなどの対策を進めていくとのことです。

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これ以外にもポートランドと同じ米国のニューヨークでは公園の混雑緩和のために市内約100マイルの道路を歩道化するそうで、イタリアのミラノでは約35kmの道路の自動車用車線を減少し、その分を歩道の拡幅や自転車レーン設置に活用していくとのことです。
 
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公共交通での感染を警戒してマイカー移動が増えるという予想があります。しかしそれは、都心の荒廃や大気汚染を防ぐべく公共交通回帰を進めた欧米の都市にとっては後戻りになるわけで、それだけは避けたいという気持ちが、短距離移動を徒歩や自転車に移行してもらいたいという姿勢になっているのでしょう。さらに自転車については、欧米でも電動アシスト(e-bike)が増えて長距離移動が楽になったことも関係していると思っています。