THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

まちづくり

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車道から歩道へ、というまちづくり

少し前の話になりますが、昨年秋、東京都内の2つの商業施設が相次いでリニューアルオープンしました。この2つの場所について、モビリティの面で共通する取り組みがあったので、今回はそこにスポットを当てていきます。

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まずは1973年にオープン以来、渋谷の流行発信地となり、公園通り(パルコは公園という意味のイタリア語)など周辺の道路が愛称で呼ばれるきっかけにもなったパルコです。2016年に一旦閉店しましたが、昨年11月に復活しました。パート1からパート3まであったうち、パート2はホテルに姿を変え、残るパート1とパート3が合体して新しいパルコになりました。

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ではパート1とパート3の間にあった、サンドイッチ通りと呼ばれた車道はどうなったかというと、歩行者専用通路に姿を変えています。渋谷駅からセンター街〜スペイン坂という順で向かうと、スペイン坂を登りきったところがこの通路になっており、スムーズにアクセスできます。南北の道路に高低差があることを利用して、階段とスロープが設けてあるので、車両の進入や突破を防ぐこともできそうです。

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公園通り側も、1階部分は歩道ギリギリまで建物を伸ばすことはせず、待ち合わせなどに使えそうな、余裕のある空間の使い方をしています。渋谷文化の発信地として君臨し続けてきたパルコが考える、これからのまちづくりのメッセージなのだと理解しました。

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もうひとつは町田市の南町田グランベリーパークです。東急電鉄田園都市線と国道16号線および246号線、境川に囲まれたここは、2000年に南町田グランベリーモールと呼ばれるショッピングモールがオープンしましたが、3年前に1度閉館。その後再開発され、昨年11月に名称をあらためてオープン。最寄駅も南町田から南町田グランベリーパークに改称しました。

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モールからパークに名前を変えたのは、隣接する鶴間公園と一体で再開発を行ったことがあるようです。モールと公園の間には従来、車道が走っていましたが、再開発に合わせて歩道に転換し、2つの空間を安全に歩いて行き来できるようにしたのです。その代わり公園の北側に新たに車道を設けることで、円滑な自動車通行にも配慮しています。

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欧米ではニューヨークのタイムズスクエアやパリのセーヌ川沿いなど、車道を歩道に転換した事例がいくつもあります。歩道にLRTを通して利便性を高めたトランジットモールも数多く存在しています。日本でも北海道旭川市の平和通など、先駆的な事例がいくつかありますが、東京の2例を見て、これが今の社会を反映した潮流なのだと感じました。

日本で24時間都市が難しい理由

昨年あたりからコンビニエンスストアの24時間営業についての意見が目立つようになりました。今回の年末年始では一部の飲食店や商業施設が元日営業を止め、2日あるいは3日からの営業とするお店が増えました。そして今週、ガストやジョナサン、バーミヤンなどを展開するファミリーレストラン大手のすかいらーくグループが、24時間回営業を止めていくことを決断しました。

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一方で日本には、東京オリンピック・パラリンピックを前にナイトタイムエコノミーを推進しようという動きもあります。欧米の大都市に比べて日本は夜を楽しむことができないので、飲食店の営業時間をのばしたり、公共交通を終夜運転したりという主張が見られます。こうした論点の際に必ずと言っていいほど例に出るのがニューヨークです。ニューヨークでは地下鉄や路線バスが24時間運行だからナイトライフが満喫できるという主張です。
 
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 しかしニューヨークの地下鉄は、運営環境が日本の地下鉄とは大きく違います。このブログで何度も触れてきたように、欧米の多くの都市交通は公的組織が一括して管理しており、目先の黒字赤字に一喜一憂して減便や廃止を行うことはあまりありません。ニューヨークもMTA(メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ)が一括して管理しています。ちなみにMTAは公共交通のみならず、マンハッタンと周辺を結ぶ橋やトンネルも管理しています。
 
ニューヨークの地下鉄は、ひとつの路線に複数の系統が走っているのも特徴で、日本で言えば地下鉄よりも路面電車やバスに近い状況になっていますが、すべての路線が24時間運行というわけではなく、深夜には運転しない系統も減り、本数もかなり少なくなります。深夜専用の路線図まで用意しています。朝晩に比べて利用者が少ないのはニューヨークも同じであることが想像できます。

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日本でも東京都が六本木と渋谷を結ぶ路線バスの24時間運行を実施したことがありますが、1年を待たずに廃止になりました。本数が少なかった、他のバスや鉄道との連携がなかったなどの理由が考えられますが、それをニューヨーク並みにするには今の運営体制では無理です。加えて近年は運転士不足も課題になっています。東京の地下鉄の24時間運行に言及する人は、このあたりの事情まで考えて議論してほしいものです。

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24時間運行の交通が日本にないわけではありません。空港では関西国際空港が知られていますし、都市間の夜行バスや列車も根強い人気があります。物流の世界も24時間営業です。しかし国際空港は海外との時差を勘定に入れる必要があり、夜行のバスや列車は高速移動手段が確立していなかった頃から存在しています。いずれも都市内の24時間運行とは分けて考えるのが自然でしょう。

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日本は農耕により発展してきた国であり、日の出とともに仕事を始め、日の入りとともに仕事を終え休むという生活を送ってきました。その風習が残っている観光地も多くあります。たとえば浅草の仲見世は19時ぐらいにはほとんどの店が閉まります。それでも世界各地から多くの人が訪れ賑わっています。これが日本らしさではないでしょうか。ナイトタイムエコノミーの議論はそろそろ終わりにして、多くの人が心地よく過ごせる社会を目指してほしいと思っています。

TOKYO 2020の年を迎えて

今年最後のブログなので、来年開催される東京オリンピック・パラリンピック関連の話題を取り上げます。東京五輪ではマラソンと競歩が札幌開催に変わるという波乱もありましたが、先日新国立競技場が完成するなど、パラリンピックを含めて準備は着々と進んでいるようです。それとともに会期中の交通対策の検討も進んでいることが、TOKYO 2020のオフィシャルサイトを見ると分かります。

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その内容について、世界を代表するメガシティでの開催という点で共通する2012年ロンドン大会と比較をまじえながら、自動車メディアMOTAで執筆しました。詳しくは記事を見ていただきたいのですが、ロンドンの公共交通は他の多くの欧州都市と同じようにロンドン交通局が一括して運営しているうえに、同じ組織が道路交通も管轄するという優位性はあります。またロンドン大会では観戦チケットに公共交通の1日乗車券が付いていました。これは東京でも実現してほしいサービスです。

一方で東京にも強みはあります。そのひとつが首都高速道路です。欧州の都市は一般的に首都高速のような道路は持たないので、ロンドンでは一般道路の一部をオリンピック・ルート・ネットワークに指定し、専用レーンや優先レーンなどを用意して対処したそうです。首都高速は有料であり、交差点がなく、歩行者や自転車が通らないので、交通のコントロールがはるかにしやすいことは誰でも予想できます。個人的にも首都高速の活用には賛成します。

組織委員会では一般道路で大会前の交通量の10%減、首都高速は競技会場が集中したり通過交通が多く混雑したりする重点取組地区とともに30%減を目指しているそうです。ところが今年の夏に行った実験では、一部の入口閉鎖や料金所ゲート制限、環状7号線内側の一般道の通行制限などの規制を行ったうえに、企業などに混雑緩和に向けた取り組みのお願いをしたにもかかわらず、結果は約7%減に留まりました。

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この数字、移動者のほうにも原因があると思っています。今年、関東地方を相次いで襲った台風で、交通事業者が計画運休を発表したのに、出勤しようとする人々で各地の駅が大混雑しました。事前に運休が分かっているのに会社に行く。あるいは出社を命じる。こうした考え方が来年も引き続き残るようでは、どんな素晴らしい対策を行っても混乱は間違いないでしょう。

ロンドン大会のモビリティマネジメントは多くの人が評価していますが、資料を調べると、1日乗車券の用意や自転車レーンの整備などに加え、多くの住民がオリンピック・ロード・ネットワークの存在を理解し、約150万人がテレワークに切り替えたという記録が残っています。多くの人々が、選手や関係者とは違う形で大会に参加しようという気持ちだったのではないでしょうか。東京大会のモビリティシーンもこのような雰囲気になってほしいと願っています。

*次回は2020年1月11日更新予定です。良いお年をお迎えください。

人が主役の神戸都心まちづくり

先月は浜松、富山、そして神戸で講演があったので、短時間でしたが各都心を散策してきました。今回は12月8日まで開催されたグッドデザイン神戸展で訪れた神戸の都心・三宮に触れます。当日は神戸市役所の方々も多く来ていただき、情報交換の中で再整備を進めていることを教えていただきましたが、実際に三宮からウォーターフロントの会場に向かう道でも、いくつか発見がありました。

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まずはJR神戸線三ノ宮駅通路に掲げられていたイラストから紹介します。今は下の写真のように広い車道が交わる交差点を、歩行者中心の空間「三宮クロススクエア」に生まれ変わらせる計画があるようです。歩行者空間にはBRTあるいはLRTが乗り入れ、トランジットモールを形成する様子が描かれています。日本の大都市の中心部がここまで歩行者優先というのは例がなく、実現すれば画期的な場になることは間違いありません。

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一部の道ではすでに改革が実行されていました。メインストリートのフラワーロードに並行して三宮からウォーターフロントに伸びる「葺合南54号線」では、車線や停車帯を減らし、車道は細くカーブさせることで自動車の速度を落とす一方、新たに生まれた空間を歩行者のために配分していました。広がった歩行者空間にはベンチも置かれ、憩いの空間になっていました。

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グッドデザイン神戸展の会場だったデザイン・クリエイティブセンター神戸は「KIITO」という愛称が示しているように、1927年に輸出生糸の品質検査を行う施設として作られた建物を用いています。隣には同じ1927年に完成した神戸税関もあり、長い歴史を持つ港町らしい趣のある地域でした。いずれも三宮からは1km近い距離がありますが、だからこそ単なる歩道ではなく、休みながら目的地を目指すことができるこのような道はありがたいと思いました。

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三宮へ乗り入れる既存の鉄道にも動きがあります。新幹線新神戸駅と六甲山北側の神戸電鉄谷上駅を結ぶ北神急行電鉄が、来年から神戸市営地下鉄と一体化されます。これまでも列車の乗り入れはしてきましたが、来年からは運賃も一体となるので、谷上〜三宮駅間は大幅値下げになります。さらに阪急電鉄の神戸三宮駅周辺が地下化され、地下鉄と乗り入れる構想もあります。実現すれば市北西部のニュータウンから大阪まで乗り換えなしで行けることになりそうです。

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神戸市は近年人口減少に悩んでおり、2015年には福岡市、今年は川崎市に抜かれました。前述の交通網整備はそれが理由であることは明らかですが、一方で都心ではタワーマンションの規制に乗り出すなど、闇雲に発展を目指しているわけではないようです。むしろ三宮周辺の動きを見ると、暮らしやすさ、居心地のよさを第一に考えている感じを受けます。「人が主役のまち」を目指す神戸の動きに、これからも注目していきたいと思います。

日本のモータウン再興に期待

前回の富山と順序が逆になりましたが、今回は2週間前に特別講座のために伺った浜松について感じたことを書きます。特別講座の会場は静岡文化芸術大学。浜松駅から1.2kmほどの場所なので、前回訪れたときは徒歩で向かいましたが、今回は路線バスを使い、帰りは大学の先生方と歩いて駅を目指しました。

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そのときに気付いたのは、歩道の広さでした。浜松市は以前からユニバーサルデザインに注力しており、大学周辺は2000年の開学に先駆けて区画整理事業が行われたためもありますが、車道に対して歩道が広く取ってあり、土地勘がない自分のような人間でも安心して歩くことができました。

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今回の特別講座では隣の磐田市に本社があるヤマハ発動機デザイン本部長の長屋明浩氏に同席していただきました。また浜松市に本拠を置くスズキの方々にも参加していただきました。この2社は、先月から今月にかけて開催された第46回東京モーターショーで、ともに歩道領域の電動パーソナルモビリティを展示したことでも共通しています。

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新しいモビリティを導入するためには、一定条件での実証実験が必要です。もちろんその後、本格的な導入につなげていくことが大切ではありますが、車両の製造企業が地元にあり、ふさわしい道路もある浜松は、歩道領域の電動パーソナルモビリティの実証実験を進めるのに最適なフィールドではないかと思います。

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この種のモビリティは個人所有のほか、たとえば東京や名古屋から静岡文化芸術大学に行きたいが足腰が弱く歩く自信がないという人などのために、シェアリングの可能性も考えられます。幸いにして浜松市などで鉄道やバスを運行している遠州鉄道は、小田急電鉄が今秋サービス開始したMaaSアプリ「EMot」を導入しました。これのサービス範囲をパーソナルモビリティにも広げれば、浜松市内での行動範囲がさらに広がることでしょう。

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もちろんこれは大手メーカーに限った話ではありません。浜松市は第二次世界大戦直後、多くの二輪車メーカーが誕生したことから日本のモータウンと言われています。現在も関連企業が多く存在しており、技術力を生かして車いすの製造などを行っています。スモール&スローなモビリティに注目が集まる今だからこそ、豊富なものづくり経験を持ち、走らせる場にも恵まれた浜松で、普及に向け先陣を切ってほしいと、久々にこの街を訪れて感じました。