THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

まちづくり

講演・調査・執筆などのご依頼はこちらからお願いいたします→info@mobilicity.co.jp

モンパルナスの駅上庭園が意味するもの

一見すると普通の大都市の公園。しかしこの場所はタイトルにあるように駅の上です。場所はパリの鉄道ターミナルのひとつモンパルナス駅です。ホームの上に人工地盤を築き、緑で埋め尽くしてしまったことになります。

IMG_5752

パリの他の鉄道駅が石造りの重厚な建物と大きな屋根を特徴とするのに対し、モンパルナス駅はいわゆる駅ビルとなっています。1960年代に駅の位置を南に移動させ、それまで駅がある場所に高層ビル(モンパルナスタワー)を建てるという再開発が実施されたためで、駅舎を含めて三方をビルで囲まれる姿となりました。

IMG_5562

しかしその後、パリでは行きすぎた再開発を見直す動きが起こり高層ビルの建設はストップ。逆に緑地を増やしていきます。この過程でラ・ヴィレットの食肉市場、ベルシーのワイン倉庫、シトロエンの自動車工場の跡地などが公園に姿を変えました。その流れでモンパルナス駅のホーム上も1994年に庭園化されたのです。

IMG_5746

IMG_5749

名前はアトランティック庭園。モンパルナス駅を出るTGVが大西洋岸に向かうことが理由だそうです。たしかに照明のデザインは風になびく旗を思わせ、公園の中央にはギリシャ神話に出てくる西の楽園ヘスペリデスの園にちなんだ「ヘスペリデスの島」があり、温度計や風向計などを内蔵したオブジェが置いてあります。明確なコンセプトが空間をより魅力的に見せています。

IMG_5761

公園の中には子どものための遊園地、テニスコート、さらに美術館もあります。複合的な余暇施設であることが分かります。駅に早く着いたとき、こうした場所でも待ち時間を過ごすことができそうです。ちなみに敷地内にいくつかある通気口からは駅のアナウンスや電車の音、乗客の喧騒が聞こえてきます。

IMG_5741

東京で駅の上のスペースというと、ほぼ例外なく商業施設になります。モンパルナス駅にもカフェや売店はありますが、それ以上にこの公園のようなフリーな場所に多くの空間が割かれています。これは駅に限ったことではありません。近年のパリは空間があれば緑にするような雰囲気なのに対し、東京は空間があれば店を作るという印象があります。文化の違いを痛感しました。

築地と豊洲の狭間で

東京都中央卸売市場の築地市場を豊洲へ移転する計画が滞っている問題については、以前この地を通る環状2号線の開通が遅れており、東京五輪・パラリンピックに影響することを記しました。あれから2か月が経過しましたが、状況はほとんど進展していません。そんな中、環状2号線が通る予定の勝どき地区を訪れる機会があったので報告します。

IMG_4655

勝どきは3・4丁目と5・6丁目の間に新月島川が流れており、環状2号線は川のすぐ南側を通過しています。写真を見ればお分かりかと思いますが、築地とこの地を結ぶ築地大橋から、晴海との間の朝潮運河に架かる橋まで、道路はほぼ完成し、標識も取り付けてあります。自動車が走っていないのが不思議に思えるほどです。

IMG_4668

道路の脇には高層マンションが林立しています。しかしにぎわいはありません。マンションを眺めると生活感が希薄であることに気づきます。近所には分譲マンションの看板もありました。「空室につき即内覧可能」というフレーズから、販売がいまひとつであることが伺えます。

IMG_4666

勝どきには都営地下鉄大江戸線の駅があります。この場所からの距離は500mほどと、それほど遠くはありません。しかし環状2号線が開通すれば、脇を走る道からBRTに乗って虎ノ門などに行けることになります。マンションの販売業者やすでに生活を始めている人は、それを見越していたでしょう。しかし現状ではBRTがこの道を走るかどうかすら分かりません。

IMG_4664

都市と交通は一体となって計画され建設されます。道路も例外ではありません。しかし勝どきや晴海の場合は、建設はすでに終わっているのに、市場の移転問題に翻弄され、開通時期が不明という状況に陥っています。沿道にいち早く移り住んだ住民は、複雑な気持ちで現在の状況を見つめていると察します。

IMG_4678

市場移転の問題に沿道住民を巻き込むべきではありません。築地にするか豊洲にするか、この議論も早く結論を出してほしいと思いますが、何よりもまず解決すべきは、環状2号線に道路としての機能を与えることではないでしょうか。勝どきや晴海に住む人たちのためにも、1日も早い決着を望みます。

都市と治安と交通の関係

 1月に続いて米国に行ってきました。 今回はSXSW(サウスbyサウスウエスト)というイベントの取材のためにオースティンを訪れたほか、アトランタとロサンゼルスにも滞在しました。 1月にラスベガスとポートランドを訪問したので、3か月で5都市に足を運んだことになります。

IMG_3576

米国の都市と言えば治安が気になりますが、この5都市の中で、もっとも安心して過ごせたのがオースティンでした。 直前まで犯罪率が高いアトランタにいたこと、SXSWは街全体がイベント会場になっているので朝から晩まで賑わっていたこともありますが、まちづくりも関係しているのではないかと思いました。

IMG_3556

オースティンはコンパクトな街です。都心はテキサス州議会議事堂とハドソン川に挟まれた1km四方ほどで、歩いて回れます。昔ながらの街並みも残っており、飲食店も目に付きます。さらに議事堂の北にはテキサス大学オースティン校の広大なキャンパスが広がっています。そこにバス、カーシェアリング、サイクルシェアリング、自転車タクシーなど、さまざまな乗り物が走っています。こうした作りが賑わいを生み出していることは間違いありません。

IMG_3294

特にバスの充実ぶりは驚くほどで、ダウンタウンから周辺の住宅地へ向けて網の目のように路線が用意されており、都心部では10系統以上のバスが停まる場所がいくつもあります。基幹バスや急行バスは本数も多めです。しかも車内には上の写真にあるような路線図や系統ごとの時刻表が置いてあるので、初めて訪れた人でも使いこなせるでしょう。私自身、海外の都市でここまでバスを多用したのは初めてでした。

IMG_3736

一方オースティンは産学連携でIT企業を積極的に誘致しており、今ではシリコンバレーに次ぐ規模を誇るそうです。研究開発拠点は都市の北部にあり、急行バスが都心との間を結んでいるほか、2010年に鉄道も開通しました。既存の線路を活用したもので、架線がないのでディーゼルカーを走らせています。設備投資を抑えつつ利便性を確保した賢い手法だと思いました。

IMG_3228

アトランタも地下鉄やバスは走っていましたが、危険な香りが漂う地域を何か所も目にしました。その点オースティンは、街の中心部に州議会議事堂や大学があるという幸運はありますが、企業誘致や交通整備が目的ではなく、まちづくりという大きな枠の中で働く場所や乗り物を用意していったことが理解できます。それが安心して暮らせる都市に結実しているという点は、1月に紹介したポートランドに似ていました。

ポートランドが注目される理由

ドナルド・トランプ氏が米国大統領に就任しました。就任演説でも「米国第一主義」をはじめ、選挙戦中に掲げていた方針をほぼ実行すると明言しており、大統領選でヒラリー・クリントン氏が勝った州を中心に賛否両論が巻き起こっています。そのひとつが昔からリベラルな気風で知られているオレゴン州です。

IMG_8270

2週前のブログで書いたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)取材を終えた私は、そのオレゴン州で最大の都市であり、日本のまちづくり関係者から注目されているポートランドに向かいました。ポートランドについては、実際に同市開発局に勤務する山崎満広氏が書いた「ポートランド 世界で一番住みたい街を作る」がくわしく、自分も同書を参考にモビリティ視点で街を巡りました。

ポートランド国際空港を降りると、ターミナルの端からライトレール(通称MAX)が出ています。これに乗るとダイレクトで市の中心部(ダウンタウン)に行けます。ダウンタウンでは他のライトレールや、ひとまわり小柄な車両を使ったストリートカーと交差しており、乗り換えることで市内の主要地域に行くことができます。日本で言えば、都心部を巡るストリートカーは広島電鉄の市内線、郊外へ直通するライトレールは宮島線に近い印象です。

IMG_8361

ライトレールの郊外部分には、◯◯トランジットセンターという駅がいくつかあります。これらは駅前にバスターミナルが併設された駅です。電車もバスも低床で駅やバス停には階段がないので、車いすやベビーカーの利用者を含め、多くの人が楽に乗り換えできそうです。一方都心部には地元の大企業ナイキがスポンサードしたサイクルシェアリングがあり、ダウンタウン脇を流れるウィラメット川沿いの再開発地区を筆頭に、自転車レーンも各所に整備されていました。

IMG_8280

まるで欧州の都市を見るようなモビリティ環境でした。おかげでラスベガスでお世話になったライドシェアやタクシーを、一度も使う必要がありませんでした。しかしモダンなビルが建ち並び、ハイウェイの高架橋が続く光景は米国そのもので、メインストリートにカジュアルでクリエイティブな店舗が並ぶ景色も欧州とは違うところです。米国らしさを消さずに、うまく欧州流モビリティを組み込んだ感じです。

ランチタイムのレストランは客も店員も若い人がメインでした。一方でライトレールやストリートカーは高齢者の利用が目立ちます。あらゆる世代にとって住みやすい街になっているようです。レストランやショップはライトレールやストリートカーの沿線に集中しているおり利用しやすそうでした。裏通りは荒廃した箇所もありましたが、メインストリートは一部の米国のダウンタウンのような危険な雰囲気とも、日本のシャッター通りのような寂れた感じとも無縁でした。

IMG_8428

山崎氏の著作によれば、このまちづくりは都市が明確なビジョンとプランを持ち、住民が積極的にバックアップする形で作り上げていっただそうです。行政任せでも、市民任せでも、この街はできなかったでしょう。クルマ社会の典型と言われた米国で、こんな都市が構築できたことは驚きです。日本の地方都市もクルマ社会から脱却する可能性はある、やればできるということを、ポートランドは示しているようでした。

高齢ドライバーと郊外型ショッピングセンターの関係

報道が過熱気味という感もありますが、連日のように高齢ドライバーによる事故がニュースになっています。そんな中インターネットメディアのcitrus(シトラス)から、郊外型ショッピングモールについての記事の依頼を受けたので、流通最大手のイオングループが展開するショッピングセンター、イオンモールを例に挙げ、高齢ドライバーとの関係を書きました。

IMG_9184
 citrusの記事=http://citrus-net.jp/article/10045

高齢ドライバーがステアリングを握り続ける理由はいろいろあります。個人的には記事にも書いたように、多くの高齢者が運転免許を取ったのは高度経済成長期であり、高速道路の開通、モータースポーツの盛り上がりなどもあって、クルマに対する憧れが特に強い世代であることが大きいと考えています。

もうひとつ、この時代の庶民の目標だったのがマイホームです。都心の職場から遠く離れ、駅から徒歩圏内でなくても、庭付き一戸建てに住むことがステイタスでした。もちろん車庫には愛車がありました。マイホームだけあって、多くの人はそこを終の住処とします。郊外に住み、クルマで移動する生活を続けながら、歳を重ねていく人が多いようです。

こうしたライフスタイルを支えてきたのがイオンモールなどの郊外型のショッピングセンターです。広大な郊外の空き地に広い駐車場を構え、レストランや銀行、医療施設などを併設しているので、中心部へ行く必要がなくなり、クルマ中心の生活が加速していきます。駅と店舗を結ぶ専用バスを運行している店舗も多くありますが、ほとんどの利用者は鉄道とバスを乗り継ぐのが面倒と感じるでしょう。

IMG_9208

ところがこのイオンモールが最近になって、駅の近くに相次いで店舗をオープンさせています。イオングループの経営状況が芳しくなく、なかでも総合スーパー事業が不振であることから、いままでと異なる分野への進出を考えたのかもしれません。

自治体としてはこの流れを好機と捉えるべきでしょう。市役所や病院などの公共施設も移設して、駅を中心とした街づくりを進めれば、クルマ中心の移動を公共交通に転換させる転機になるからです。もちろんこれだけで高齢ドライバーの問題が解決するとは思っていませんが、郊外型ショッピングモールの代表格が駅前に進出という事実は、移動を変えるきっかけになる可能性があると考えています。
ギャラリー
  • タクシー改革は東京ばかり
  • タクシー改革は東京ばかり
  • タクシー改革は東京ばかり
  • 自動運転のレベル分けは正しいか
  • 自動運転のレベル分けは正しいか
  • 自動運転のレベル分けは正しいか
  • 交通と政治の関係
  • 交通と政治の関係
  • 交通と政治の関係