THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

まちづくり

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点字ブロックは正しいのか

先週末、私も所属している「日本福祉のまちづくり学会」の全国大会が行われました。今回は北海道函館市という、多くの方にとって遠い場所での開催ということもあり、このブログでの事前告知はしなかったのですが、多くの方に参加していただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

毎年、全国大会ではさまざまな気付きがあるのですが、今回も例外ではありませんでした。その中から今週は、会場となった函館アリーナの床に貼られていた帯について紹介します。

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帯の名前は「HODOHKUN Guideway」で、松江市にあるトーワ株式会社が開発し、大阪府八尾市の錦城護謨(きんじょうゴム)株式会社が製造販売を行う、視覚障がい者向け誘導路です。両社は以前から同様の製品を「歩導くん」の名で商品化しており、デザイン性を高めた商品としてHODOHKUN Guidewayを送り出したそうです。

さまざまな色を選ぶことが可能で、非常時の誘導路を兼ねるべく蓄光素材を用いたり、写真のようにピクトグラムを入れたりすることもできます。そのデザインは国際的に評価されており、世界的に知られているデザイン賞のひとつ、ドイツのiFデザイン賞で金賞を受賞しました。プロダクト分野のパブリックデザインでは日本初の金賞受賞とのことです。

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視覚障がい者向け誘導路としては、いわゆる「点字ブロック」が良く知られています。しかし点字ブロックは、車いすやベビーカー、スーツケースの利用者および高齢者やハイヒールを履いた女性などにとっては、逆に通行しにくいものとなっています。黄色は弱視の方への配慮だそうですが、景観を考えればもう少し落ち着いた色が好ましいとも思えます。広い目で見ればユニバーサルデザインではないかもしれません。

視覚障がい者でもあるトーワ社の会長が、こうした現状を懸念し、スムーズな形状でありながら白杖や足裏で触れることで分かるソフトな素材を使った誘導路を考案しました。これが歩導くんシリーズです。おかげでスーツケースを持った自分もスムーズに通過することができました。しかし現状では屋内の使用に限られているそうです。屋外の誘導路はJIS規格に合致した点字ブロックに限られるためとのことです。

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では海外はどうなのでしょうか。今年訪れたフランスの写真をチェックすると、グルノーブルではいくつかの横断歩道の手前に点字ブロックが貼り付けられていました。しかし色は黄色ではなく、横断歩道と同じ白でした。景観を重視したのでしょう。しかし他の多くの都市では、点字ブロックのような誘導路はほとんど見掛けませんでした。

ただしニースでは、歩道と車道・軌道の境目に、材質も色も異なる石が埋め込まれていました。健常者の方ならどこまでが歩道か一目瞭然でしょうし、視覚障がい者の方も白杖や足裏の感触で境目を判別できるかもしれません。

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日本の点字ブロックは、視覚障がい者に対する配慮は素晴らしいかもしれませんが、その結果ユニバーサルデザインや都市景観の面では、好ましくない誘導路になっていることも事実です。東京パラリンピックが開催される2020年までに考え直しても良いのではないかと思っています。

マンションをステーションに

三菱地所グループに属し、「ザ・パークハウス」などのブランドでマンションを提供している三菱地所レジデンスから、取材を受ける機会がありました。先日その内容が、オフィシャルサイト内の「ザ・パークハウス調査ノート」というコーナーで紹介されました。テーマは、所有から利用に動きはじめたモビリティの最新事情で、私が長年見続けてきたパリの状況を紹介しながら、現在の状況や今後への希望など話しました。下にURLを掲載しましたので、お時間がある方はご覧ください。

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2015年度グッドデザイン・ベスト100を受賞した「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」

モビリティにおける所有から利用へというフレーズでお分かりかと思いますが、話題の中心はカーシェアリングやサイクルシェアリングについてです。加えて公共交通を活用した、自動車中心から人間中心のまちづくりへの転換にも触れました。三菱地所グループはまちづくりにも関わる総合デベロッパーであり、シェアモビリティについても以前からマンションに導入してきた実績があるので、このようなテーマを選んだと思われますが、不動産を扱う会社が動くモノやコトにスポットを当ててくれたことには、とても好感を抱きました。

その中で、マンション開発を手掛ける会社のサイトということで、いくつか提案をさせていただきました。ひとつは地域内に複数の同グループのマンションが存在するのであれば、ネットワークを構築し、ワンウェイ型のシェアモビリティを導入してはどうかということ。そこに住むことの付加価値が向上するのは確実です。もうひとつは、とくに自転車など小型軽量の乗り物については、一定の料金を設定したうえで近隣住民も利用できるようにしてはどうかということです。

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記事のURL=http://www.mecsumai.com/brand/lifestyle/note/1602-2/ 

一戸建てに比べて敷地に余裕があり、多くの居住者がいるマンションには、シェアリングのステーション(拠点)としての可能性があると考えています。他のマンションや近隣住民とのシェアが実現できるなら、そこに新たなコミュニティが生まれるでしょう。マンションというとそれ自体をプライベートな場と捉えがちですが、住民のプライオリティを確保したうえで、一部をパブリックな場にできれば、まちづくりという視点でもプラスになるはずです。

桜島と共存するまちづくり

鹿児島市の桜島で今週、大規模な噴火があり、噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げられました。しかし桜島港と鹿児島港を結ぶフェリーは通常どおり運行され、鹿児島市民も冷静に受け止めています。箱根山がレベル3になった時との違いに驚かされました。長い間、噴火と降灰に悩まされてきた経験が生かされているのでしょう。その経験はまちづくりやモビリティにも反映されていることが、噴火の直前に鹿児島を訪れた際に理解できました。

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鹿児島市の中心は九州新幹線が乗り入れる鹿児島中央駅周辺ではなく、そこから1kmほど北東にある天文館という場所です。天文館を訪れると、アーケードの多さが目に付きます。このアーケード、夏の暑さと桜島の灰をよけるためだそうです。また私が訪れたのは平日の昼間でしたが、他の県庁所在地の繁華街と比べて活気があるという印象でした。商店街が積極的な振興策を打ち出していることもありますが、ひんぱんに運行される市電や市営・民間路線バスで市内各所からアクセスしやすいことも、にぎわいを失わない理由だと思いました。

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その市電は、芝生軌道(軌道敷緑化)に積極的に取り組んでいます。欧州の路面電車で良く見られる手法で、線路の周辺に芝生を植えることで、ヒートアイランド現象防止、沿線の騒音低減、都市景観向上などの効果を得るものです。特に鹿児島市は、降灰時には一面グレーがかった景色になるので、道路に緑の帯があることは、他の都市以上に効果がありそうです。架線柱を中央に設置したことも、景観面で効果を上げていました。なお芝生軌道の維持管理のため、芝刈電車も用意されていますが、この車両は散水も同時に行うことで、灰の掃除も行っているようです。

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道路においては、清掃車や散水車をひんぱんに走らせるとともに、ドライバーは早めのヘッドランプ点灯を心掛け、スリップしやすいので速度を落としての運転を心掛けるそうです。ワイパーはガラスを傷つけるので厳禁であり、水で流すのが基本とのことです。もちろん大規模な噴火が起きれば避難が必要になるはずですが、的確な対策を行ったうえで冷静に生活を営む鹿児島市の人々に、学ぶべき部分は多々あるような気がしました。

より良い国立競技場のためにすべきこと

昨日、全国地方銀行協会で、融資担当者を相手に、地方交通についての講座を行いました。国内外の地方交通事情を紹介したあと、参加者に地元の街の交通改革を考えてもらうワークショップを行いました。こちらの説明をすぐに理解し、展開につなげていく能力に感心しました。

同時に、坂道の移動にエスカレーターを用い、既存の鉄道をベースとしたループ線を考えるなど、限られた予算で有効な対策を施そうとする考え方にも好印象を受け、同時に地方の財政状況が恵まれていないことを改めて教えられました。そして対照的な立場にある、今週7日に決まった新国立競技場の建設計画を思い出しました。

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日本スポーツ振興会=http://www.jpnsport.go.jp/

ニュースなどでご存知のとおり、総工費は以前の計画より約900億円も増えて、2520億円に上っています。しかもこの数字には当初予定されていた開閉式屋根は含まれず、観客席の一部は仮設となるそうです。 確定している予算は600億円ほどと言われており、残りは未定だそうです。デザインについては納得していた人も、この数字を見て多くが反対に転じたのではないでしょうか。しかし大切なのは、反論することよりも、その先だと思います。

国内外の地方交通改革の成功例で目立つのは、技術力よりも政治力です。交通に限らず、新しい政策の導入には、当然ながら反対意見もあります。それを論理的な説明と根強い対話によって説得し、合意形成を築いていく能力が、改革成功に結び付いている例が多いのです。私が書籍にまとめたパリ市や富山市も例外ではありません。

今回の議論についても、まず対案を出すこと、そして対案の方が現案よりも優れていることを論理的に説明していき、合意形成を確立し、多数派に育てていくことが大事だと考えています。個々の人々がただ反対の声を上げたり、各自がバラバラの対案を出すという、我が国の野党政治のような手法は、ほとんど効力はないと思っています。

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国立競技場に関しては、建築家の槇文彦氏の対案が知られています。現行案の最大の特徴であり高コストの原因にもなっているキールアーチを廃し、屋根も設置しない結果、建築費は約1000億円、工期は42か月(3年半)程度と算出しています。建築の専門家ではないので厳正な判断はできませんが、費用や工期は妥当ではないかと思えます。

槇氏の案についても不満を持つ人がいるでしょう。しかし反論があれば対案を出すべきであり、なければこの案に賛同するのが自然に思えます。反対を唱える多くの人間がその方向に動けば、多数派になり、事態が動くのではないでしょうか。それが政治力ではないかと考えます。
 
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