THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

まちづくり

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都市と治安と交通の関係

 1月に続いて米国に行ってきました。 今回はSXSW(サウスbyサウスウエスト)というイベントの取材のためにオースティンを訪れたほか、アトランタとロサンゼルスにも滞在しました。 1月にラスベガスとポートランドを訪問したので、3か月で5都市に足を運んだことになります。

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米国の都市と言えば治安が気になりますが、この5都市の中で、もっとも安心して過ごせたのがオースティンでした。 直前まで犯罪率が高いアトランタにいたこと、SXSWは街全体がイベント会場になっているので朝から晩まで賑わっていたこともありますが、まちづくりも関係しているのではないかと思いました。

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オースティンはコンパクトな街です。都心はテキサス州議会議事堂とハドソン川に挟まれた1km四方ほどで、歩いて回れます。昔ながらの街並みも残っており、飲食店も目に付きます。さらに議事堂の北にはテキサス大学オースティン校の広大なキャンパスが広がっています。そこにバス、カーシェアリング、サイクルシェアリング、自転車タクシーなど、さまざまな乗り物が走っています。こうした作りが賑わいを生み出していることは間違いありません。

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特にバスの充実ぶりは驚くほどで、ダウンタウンから周辺の住宅地へ向けて網の目のように路線が用意されており、都心部では10系統以上のバスが停まる場所がいくつもあります。基幹バスや急行バスは本数も多めです。しかも車内には上の写真にあるような路線図や系統ごとの時刻表が置いてあるので、初めて訪れた人でも使いこなせるでしょう。私自身、海外の都市でここまでバスを多用したのは初めてでした。

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一方オースティンは産学連携でIT企業を積極的に誘致しており、今ではシリコンバレーに次ぐ規模を誇るそうです。研究開発拠点は都市の北部にあり、急行バスが都心との間を結んでいるほか、2010年に鉄道も開通しました。既存の線路を活用したもので、架線がないのでディーゼルカーを走らせています。設備投資を抑えつつ利便性を確保した賢い手法だと思いました。

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アトランタも地下鉄やバスは走っていましたが、危険な香りが漂う地域を何か所も目にしました。その点オースティンは、街の中心部に州議会議事堂や大学があるという幸運はありますが、企業誘致や交通整備が目的ではなく、まちづくりという大きな枠の中で働く場所や乗り物を用意していったことが理解できます。それが安心して暮らせる都市に結実しているという点は、1月に紹介したポートランドに似ていました。

ポートランドが注目される理由

ドナルド・トランプ氏が米国大統領に就任しました。就任演説でも「米国第一主義」をはじめ、選挙戦中に掲げていた方針をほぼ実行すると明言しており、大統領選でヒラリー・クリントン氏が勝った州を中心に賛否両論が巻き起こっています。そのひとつが昔からリベラルな気風で知られているオレゴン州です。

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2週前のブログで書いたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)取材を終えた私は、そのオレゴン州で最大の都市であり、日本のまちづくり関係者から注目されているポートランドに向かいました。ポートランドについては、実際に同市開発局に勤務する山崎満広氏が書いた「ポートランド 世界で一番住みたい街を作る」がくわしく、自分も同書を参考にモビリティ視点で街を巡りました。

ポートランド国際空港を降りると、ターミナルの端からライトレール(通称MAX)が出ています。これに乗るとダイレクトで市の中心部(ダウンタウン)に行けます。ダウンタウンでは他のライトレールや、ひとまわり小柄な車両を使ったストリートカーと交差しており、乗り換えることで市内の主要地域に行くことができます。日本で言えば、都心部を巡るストリートカーは広島電鉄の市内線、郊外へ直通するライトレールは宮島線に近い印象です。

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ライトレールの郊外部分には、◯◯トランジットセンターという駅がいくつかあります。これらは駅前にバスターミナルが併設された駅です。電車もバスも低床で駅やバス停には階段がないので、車いすやベビーカーの利用者を含め、多くの人が楽に乗り換えできそうです。一方都心部には地元の大企業ナイキがスポンサードしたサイクルシェアリングがあり、ダウンタウン脇を流れるウィラメット川沿いの再開発地区を筆頭に、自転車レーンも各所に整備されていました。

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まるで欧州の都市を見るようなモビリティ環境でした。おかげでラスベガスでお世話になったライドシェアやタクシーを、一度も使う必要がありませんでした。しかしモダンなビルが建ち並び、ハイウェイの高架橋が続く光景は米国そのもので、メインストリートにカジュアルでクリエイティブな店舗が並ぶ景色も欧州とは違うところです。米国らしさを消さずに、うまく欧州流モビリティを組み込んだ感じです。

ランチタイムのレストランは客も店員も若い人がメインでした。一方でライトレールやストリートカーは高齢者の利用が目立ちます。あらゆる世代にとって住みやすい街になっているようです。レストランやショップはライトレールやストリートカーの沿線に集中しているおり利用しやすそうでした。裏通りは荒廃した箇所もありましたが、メインストリートは一部の米国のダウンタウンのような危険な雰囲気とも、日本のシャッター通りのような寂れた感じとも無縁でした。

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山崎氏の著作によれば、このまちづくりは都市が明確なビジョンとプランを持ち、住民が積極的にバックアップする形で作り上げていっただそうです。行政任せでも、市民任せでも、この街はできなかったでしょう。クルマ社会の典型と言われた米国で、こんな都市が構築できたことは驚きです。日本の地方都市もクルマ社会から脱却する可能性はある、やればできるということを、ポートランドは示しているようでした。

高齢ドライバーと郊外型ショッピングセンターの関係

報道が過熱気味という感もありますが、連日のように高齢ドライバーによる事故がニュースになっています。そんな中インターネットメディアのcitrus(シトラス)から、郊外型ショッピングモールについての記事の依頼を受けたので、流通最大手のイオングループが展開するショッピングセンター、イオンモールを例に挙げ、高齢ドライバーとの関係を書きました。

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 citrusの記事=http://citrus-net.jp/article/10045

高齢ドライバーがステアリングを握り続ける理由はいろいろあります。個人的には記事にも書いたように、多くの高齢者が運転免許を取ったのは高度経済成長期であり、高速道路の開通、モータースポーツの盛り上がりなどもあって、クルマに対する憧れが特に強い世代であることが大きいと考えています。

もうひとつ、この時代の庶民の目標だったのがマイホームです。都心の職場から遠く離れ、駅から徒歩圏内でなくても、庭付き一戸建てに住むことがステイタスでした。もちろん車庫には愛車がありました。マイホームだけあって、多くの人はそこを終の住処とします。郊外に住み、クルマで移動する生活を続けながら、歳を重ねていく人が多いようです。

こうしたライフスタイルを支えてきたのがイオンモールなどの郊外型のショッピングセンターです。広大な郊外の空き地に広い駐車場を構え、レストランや銀行、医療施設などを併設しているので、中心部へ行く必要がなくなり、クルマ中心の生活が加速していきます。駅と店舗を結ぶ専用バスを運行している店舗も多くありますが、ほとんどの利用者は鉄道とバスを乗り継ぐのが面倒と感じるでしょう。

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ところがこのイオンモールが最近になって、駅の近くに相次いで店舗をオープンさせています。イオングループの経営状況が芳しくなく、なかでも総合スーパー事業が不振であることから、いままでと異なる分野への進出を考えたのかもしれません。

自治体としてはこの流れを好機と捉えるべきでしょう。市役所や病院などの公共施設も移設して、駅を中心とした街づくりを進めれば、クルマ中心の移動を公共交通に転換させる転機になるからです。もちろんこれだけで高齢ドライバーの問題が解決するとは思っていませんが、郊外型ショッピングモールの代表格が駅前に進出という事実は、移動を変えるきっかけになる可能性があると考えています。

点字ブロックは正しいのか

先週末、私も所属している「日本福祉のまちづくり学会」の全国大会が行われました。今回は北海道函館市という、多くの方にとって遠い場所での開催ということもあり、このブログでの事前告知はしなかったのですが、多くの方に参加していただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

毎年、全国大会ではさまざまな気付きがあるのですが、今回も例外ではありませんでした。その中から今週は、会場となった函館アリーナの床に貼られていた帯について紹介します。

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帯の名前は「HODOHKUN Guideway」で、松江市にあるトーワ株式会社が開発し、大阪府八尾市の錦城護謨(きんじょうゴム)株式会社が製造販売を行う、視覚障がい者向け誘導路です。両社は以前から同様の製品を「歩導くん」の名で商品化しており、デザイン性を高めた商品としてHODOHKUN Guidewayを送り出したそうです。

さまざまな色を選ぶことが可能で、非常時の誘導路を兼ねるべく蓄光素材を用いたり、写真のようにピクトグラムを入れたりすることもできます。そのデザインは国際的に評価されており、世界的に知られているデザイン賞のひとつ、ドイツのiFデザイン賞で金賞を受賞しました。プロダクト分野のパブリックデザインでは日本初の金賞受賞とのことです。

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視覚障がい者向け誘導路としては、いわゆる「点字ブロック」が良く知られています。しかし点字ブロックは、車いすやベビーカー、スーツケースの利用者および高齢者やハイヒールを履いた女性などにとっては、逆に通行しにくいものとなっています。黄色は弱視の方への配慮だそうですが、景観を考えればもう少し落ち着いた色が好ましいとも思えます。広い目で見ればユニバーサルデザインではないかもしれません。

視覚障がい者でもあるトーワ社の会長が、こうした現状を懸念し、スムーズな形状でありながら白杖や足裏で触れることで分かるソフトな素材を使った誘導路を考案しました。これが歩導くんシリーズです。おかげでスーツケースを持った自分もスムーズに通過することができました。しかし現状では屋内の使用に限られているそうです。屋外の誘導路はJIS規格に合致した点字ブロックに限られるためとのことです。

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では海外はどうなのでしょうか。今年訪れたフランスの写真をチェックすると、グルノーブルではいくつかの横断歩道の手前に点字ブロックが貼り付けられていました。しかし色は黄色ではなく、横断歩道と同じ白でした。景観を重視したのでしょう。しかし他の多くの都市では、点字ブロックのような誘導路はほとんど見掛けませんでした。

ただしニースでは、歩道と車道・軌道の境目に、材質も色も異なる石が埋め込まれていました。健常者の方ならどこまでが歩道か一目瞭然でしょうし、視覚障がい者の方も白杖や足裏の感触で境目を判別できるかもしれません。

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日本の点字ブロックは、視覚障がい者に対する配慮は素晴らしいかもしれませんが、その結果ユニバーサルデザインや都市景観の面では、好ましくない誘導路になっていることも事実です。東京パラリンピックが開催される2020年までに考え直しても良いのではないかと思っています。

マンションをステーションに

三菱地所グループに属し、「ザ・パークハウス」などのブランドでマンションを提供している三菱地所レジデンスから、取材を受ける機会がありました。先日その内容が、オフィシャルサイト内の「ザ・パークハウス調査ノート」というコーナーで紹介されました。テーマは、所有から利用に動きはじめたモビリティの最新事情で、私が長年見続けてきたパリの状況を紹介しながら、現在の状況や今後への希望など話しました。下にURLを掲載しましたので、お時間がある方はご覧ください。

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2015年度グッドデザイン・ベスト100を受賞した「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」

モビリティにおける所有から利用へというフレーズでお分かりかと思いますが、話題の中心はカーシェアリングやサイクルシェアリングについてです。加えて公共交通を活用した、自動車中心から人間中心のまちづくりへの転換にも触れました。三菱地所グループはまちづくりにも関わる総合デベロッパーであり、シェアモビリティについても以前からマンションに導入してきた実績があるので、このようなテーマを選んだと思われますが、不動産を扱う会社が動くモノやコトにスポットを当ててくれたことには、とても好感を抱きました。

その中で、マンション開発を手掛ける会社のサイトということで、いくつか提案をさせていただきました。ひとつは地域内に複数の同グループのマンションが存在するのであれば、ネットワークを構築し、ワンウェイ型のシェアモビリティを導入してはどうかということ。そこに住むことの付加価値が向上するのは確実です。もうひとつは、とくに自転車など小型軽量の乗り物については、一定の料金を設定したうえで近隣住民も利用できるようにしてはどうかということです。

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記事のURL=http://www.mecsumai.com/brand/lifestyle/note/1602-2/ 

一戸建てに比べて敷地に余裕があり、多くの居住者がいるマンションには、シェアリングのステーション(拠点)としての可能性があると考えています。他のマンションや近隣住民とのシェアが実現できるなら、そこに新たなコミュニティが生まれるでしょう。マンションというとそれ自体をプライベートな場と捉えがちですが、住民のプライオリティを確保したうえで、一部をパブリックな場にできれば、まちづくりという視点でもプラスになるはずです。
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