THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2017年04月

ひさしぶりに京都に行ったので、以前から気になっていた四条通を訪れました。京都市の中心部を東西に貫く四条通は、国内外から多くの観光客が訪れることから、歩道の狭さが問題となっていました。そこで2005年の地元関係者からの要望をもとに歩道拡幅事業を実施。2015年に完成しました。その様子を2年後に見に行ったということになります。

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四条通の歩道拡幅については2年前にニュースで報じられたのでご存知の方も多いかと思います。当時は変更直後で大渋滞が発生していたので批判が多かったと記憶しています。そのニュースを見て、現場を知らない人の中には、片側2車線だった車道をすべて1車線に狭めたと誤解している人もいたようです。しかし実際はもっと柔軟な対応をしていることが分かりました。

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歩道拡幅が行われ車道が1車線になっているのはバス停留所の部分ぐらいで、それ以外の部分はタクシー乗り場、荷捌き場、左折車線のために2車線のままとしてあるのです。直進車線を1車線に限定し、残りの空間についてはそれぞれの場所に見合った用途に転用しているという状況でした。

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今回はタクシーに乗る機会もあったので、運転手の方にも歩道拡幅について聞いてみました。タクシー乗り場以外で客扱いがしにくくなったこともあり、四条通を走ることは少なくなったと言っていたぐらいで、表だった苦情は述べていませんでした。たしかに私が訪れた平日の夕方は、渋滞は発生していませんでした。2年が経過してドライバーたちが道の変化に慣れたと言えそうです。

またこのタクシー運転手は、京都を訪れる観光客の多くはバスで移動するので、一般的な路線バスとは逆に土日祝日のほうが本数が増え、その影響で四条通のバス停留所には多くの人が押し寄せ、歩道通行の支障になっていたことを指摘していました。その状況を考えれば今回の歩道拡幅は理に叶っています。バス停留所も前後に長くなり、表示も多彩になっていて利用しやすくなっていました。

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車線の中央には車両1台分のゼブラゾーンが設けられています。京都市ではこのゼブラゾーンを、緊急車両の通行用に確保したと表明していますが、四条通を走る自動車は停車中のバスを追い越すためにこのゼブラゾーンを使っていました。ここではドライバー側が道路を柔軟に活用していたわけです。

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欧米では歩道の拡幅や自転車レーンの設置、路面電車の導入などを理由として車道を減らす例は数え切れないほどあります。当初は批判の声も聞かれるようですが、数年すると新しい道路環境に見合った交通が形成されています。交通とはそもそも流動的なものです。問題解決のために積極的に動いていくことが正しい流れを作っていくはずであると、四条通を眺めながら思いました。

大型連休を前にして、東京都内を走る路線バスに下のようなポスターが掲出されていました。夏休みや年末年始を含めた繁忙期に羽田空港の一般車駐車場が混雑し、数時間待ちという事態も予想されるので、なるべく公共交通を利用してくださいというお願いです。

交通が不便な地方空港ならともかく、モノレールを含めた鉄道やバスが乗り入れている羽田に、どうして自家用車で向かう人が多いのか、疑問に思う人も多いと思います。私も前後の予定の関係で自動車を使わねばならないとき以外は鉄道かバスなので、同様の気持ちです。

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ただベビーカーや車いす利用者、足腰の弱い人、怪我をしている人、ペット連れの人など、大きな荷物を持って行く場合に、自動車でなければ移動が難しい人々もいます。私が身を置いているジャーナリズム業界ではカメラマンなど、荷物が多いなどの理由で自動車での移動が前提となる人もいます。

空港や駅のエレベーターでは最近、こうした方々に優先して乗ってもらう表示を見るようになりました。駐車場でも車いす利用者のための枠を建物への出入口近くに用意する施設が多くなっています。羽田空港の駐車場も、ただ公共交通への転換を促すだけでなく、優先順位を記したほうが、理解が深まるのではないでしょうか。

もちろん利用者側の理解も必要です。駐車場は公共施設であるわけですから、他の公共施設と同様の配慮が欲しいところです。また旅行用の荷物を小さくまとめることは、公共交通で空港に行こうという気持ちにさせるだけでなく、目的地での移動など多くの場面でメリットになることを、自分自身の経験からも付け加えておきます。

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平日に何度か羽田空港の駐車場を利用した経験から言えば、キャパシティが決定的に不足しているとは思えません。空港アクセス交通はあらゆるモビリティを統括して考えた結果であり、ここまで鉄道やバスが充実している羽田へのアクセスは公共交通が原則と考えるべきでしょう。

たしかに自動車は、自分の好きな時に好きな場所へ行けることが魅力のひとつです。しかしその結果、環境面をはじめ多くの問題が起こっているわけで、今回のような場合には真に自動車での移動を必要としている方々に道路や駐車場を譲るという考え方が根付いて良いのではないかと思っています。

このブログでも1カ月前に紹介した無人運転については、その後IT mediaビジネスオンラインで記事にもさせていただきましたが、記事公開前後に新たな動きが複数あったので、補足の意味を込めて取り上げることにします。

まず先月末、国土交通省が「中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービス」について、2017年度の実証実験計画(案)を発表しました。2月24日から3月7日まで応募を行なっていた実験車両協力者については、DeNA、先進モビリティ、ヤマハ発動機、アイサンテクノロジーの4社が選ばれています。このうちDeNAは米国SAEの自動運転レベル分けで無人運転となるレベル4のみ、他の3社はレベル4とドライバーが運転主体となるレベル2を併用するそうです。

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イージーマイルのウェブサイト=http://easymile.com
IT mediaの記事=http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1704/12/news012.html
 
続いて今週、今度は警察庁が、無人運転(警察庁では遠隔型自動運転システムと称しています)の実証実験について、道路使用許可の審査基準を満たせば公道での実験を許可すると明らかにしました。システムのオペレーターを道路交通法上のドライバーとみなし、走行時の状況把握や緊急時の車両停止などを求め、事故の際はオペレーターやシステム開発者などが責任を追うことを考えています。警察庁ではこの件について5月7日までパブリックコメントを募集しています。
 
一昨年までは話題にも上らなかったのに、最近はテレビのニュースでも無人運転の4文字を見るようになりました。ここまで我が国で急に注目されてきた理由として、過疎化や高齢化で地方の移動が厳しい状況に置かれていることが関係しているでしょう。これは住民のみならず移動事業者にも言えることです。以前バスの事業者の方から、支出の7割は人件費と教えられたことがありますし、タクシーやトラックと同じように運転士の高齢化も進んでいます。

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国土交通省の資料=http://www.mlit.go.jp/common/001178887.pdf
 
欧米ではコンパクトシティを推し進め、路面電車などの公共交通を充実させるという解決法もありますが、無人運転もまた欧州のCityMobil2というプログラムから生まれた乗り物であることは以前も書いたとおりです。既存の公共交通では移動の問題を完全に解決できないから、無人運転が誕生したと解釈すべきでしょう。さらに農耕民族が祖先で八百万の神という考え方を持つ国民が多い日本は、コンパクトシティの形成が難しい民族ではないかとも思っています。

政府では東京五輪・パラリンピックが行われる2020年に無人運転を実用化するという目標を掲げています。ここへきて国土交通省に加えて警察庁が動き出したことで、目標達成の可能性は高まったと感じています。過疎地の高齢者をはじめ、すべての人に安全快適な移動を提供するために、早めの実用化を望みたいところです。

東南アジア出張で、 日本とタイの往復にはLCC(ローコストキャリア)のタイ・エアアジアX、タイとシンガポールの間はタイを代表するエアラインのタイ国際航空を使いました。スケジュールの都合でこうなりましたが、両者の違いが分かりました。ちなみにLCCに対して従来からの航空会社を大手と呼ぶことがありますが、エアアジアも大手なので、航空業界で使われる「レガシーキャリア」という表現とします。

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成田空港にはLCC専用の第3ターミナルがありますが、タイ・エアアジアXは第2ターミナルから出発します。ただしチェックインカウンターは建物の外に作られた小部屋の中でした。機体は往復ともエアバスA330で、エコノミークラスは左右も前後もやや詰めた印象。斜めにフラットになるビジネスクラスは、ひと昔前のレガシーキャリアの設備を譲り受けたのかもしれません。

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6時間以上乗る国際線でありながら、ビジネスクラスを含めて機内エンターテインメントはありません。提供されるのはペットボトルの水だけ。それ以外の飲食物はすべて有料です。ビジネスクラスは食事も無料ですが軽食というレベルです。機内持ち込み手荷物の大きさや重さも厳しく制限されており、オーバーした場合は追加料金を支払って預けることになります。

ただし飛行は安定しており、タイの首都バンコクへの到着が30分遅れたぐらいで、帰りは逆に30分早く成田に着くほどでした。やはり先月乗ったアメリカン航空のロサンゼルス〜羽田便は、乗務員がひとり見つからないとかで出発が2時間遅れた経験があります。LCCの運行が不安定とは言い切れません。隣の乗客はLCC慣れしていたようで、手持ちのiPadで映画を見て過ごしていました。到着前に客室乗務員が枕や毛布を片付けに来ることも、コスト対策として納得できました。

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ところがバンコク〜シンガポール間のタイ国際航空を利用して、少し考えが変わりました。2時間ほどのフライトなのに、全席に機内エンターテインメントが付き、水だけでなくワインやコーヒー、タイ・エアアジアXより豪華な食事まですべて無料です。とりわけ行きはエアバスA350という最新鋭機で、圧倒的に静かだっただけでなく、コーポレートカラーのパープルを間接照明で表現した演出は見事でした。付加価値を提供するレガシーキャリア、付加価値は自分で用意するLCCの違いが明らかになりました。

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レガシーキャリアとLCCの違いは、携帯電話の大手通信事業者とMVNOの違いに通じるところがあります。しかし携帯電話が二者択一なのに対し、航空会社は場面ごとに選ぶことが可能です。私は4回のフライトで、両者を使い分けていこうという結論になりました。他の多くの交通同様、共存が望ましいと感じたのです。航空運賃は購入のタイミングで大きく上下することや、今回のようにスケジュールが左右することもありますが、そのときの状況に合わせて選ぶことで旅の幅が広がると思いました。

もっとも昔からサウスウエスト航空などがある北米では、LCCとレガシーキャリアの差が少なくなっているようです。たとえば日本にも就航するデルタ航空は、米国内線では手荷物や食事は有料と、LCCに近いサービスになっています。LCCの歴史が浅いアジアで、今後両者の関係がどのようになっていくかも注目です。

昨日、国土交通省が「第12回大都市交通センサス」を発表しました。首都圏・中京圏・近畿圏の三大都市圏における鉄道、バスの利用実態を把握し、公共交通施策の検討に資する基礎資料の提供を目的としているもので、1960年から5年ごとに実施しています。今回は2015年に実施した調査結果を取りまとめ、公表されました。

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結果については国土交通省のウェブサイトからダウンロード可能となっていますが、利用者へのアンケート調査の他、自動改札機などを介して集計したビッグデータなども活用した調査結果は膨大であり(首都圏だけで約300ページに上ります)、ここですべてを紹介することは不可能なので、今回は「乗り換え」に焦点を絞って話を進めていきます。

というのも、乗り換え移動時間について5年前の結果と比べると、中京圏と関西圏ではわずかに短くなっているのに対し、首都圏では少し長くなっているからです。具体的に駅別で見ると、水平方向では東京駅や渋谷駅、上下方向では大井町駅や下北沢駅などが長いと報告されています。主要駅の乗り換え時間を水平移動・上下移動・列車待ちに分けたグラフもあります。多くの駅で水平移動が4分の3を占める中、大井町駅では半分近く、下北沢駅ではなんと約7割を上下移動が占めています。

乗り換え時間比較
大都市交通センサスのウェブサイト=http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000064.html

水平方向の乗り換え距離が長い駅は以前からあったのに対し、上下方向が長い駅は最近になって増えてきたと感じています。理由はもちろん、既存のインフラを避けるべく、駅がどんどん地下深くなっているからです。ここでネックとなるのは移動手段です。階段では利用者に負担をかけ、一方のエスカレーターやエレベーターは輸送量が限られます。効率的な上下移動モビリティが発明されない現状では、移動そのものをなるべく少なくする設計が大事でしょう。

駅別移動グラフ

エスカレーターの利用方法についても触れておきます。最近日本では、安全のためにエスカレーターは歩かず立って乗るという方向に動いています。一方海外は、今週訪れたタイやシンガポールを含めて片側を空けています。しかし海外でも、混雑時は両側とも歩かず立ったままというシーンを多く見かけます。

エスカレーターに限った話ではありませんが、いまの日本人には臨機応変な判断が不足していると考えます。駅は時間帯によって利用者が大きく上下します。それをひとつのルールで決めつけるのは無理があります。乗り場に列ができているときは両側立ち、できていないときは片側空けなど、そのときの状況によって利用者が決めるほうが、判断力が養われて、結果的に人の流れがスムーズになりそうな気がします。

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