東京池袋で起きた高齢ドライバーによる暴走死亡事故を契機に、再び運転免許返納についての議論が高まっています。その中でよく見られる意見に、東京のような大都市ならともかく、地方ではクルマがないと生活できないので簡単には返納できないというものがあります。
さまざまな地方の交通事情を見てきたひとりとして書けば、そうではない地域も多くあり、最近取り上げた青森県八戸市や京都府京丹後市のように、独自の工夫でマイカー以外の移動の選択肢を充実させている自治体もあります。つまり最初の意見はすべての地方に当てはまるわけではなく、現場を知らない人がイメージだけで語った主張だと考えています。
今回の一件で良く取り上げられるデータに、都道府県別の運転免許返納率があります。このデータに対しても、昨年のデータでは東京都がトップで茨城県が最下位だったことから、ここでも大都市はクルマがなくても生活できるが地方はそうはいかないという意見が出ています。
ただしこのデータ、母数が少ないことから、年ごとに順位が大きく変わることはあまり知られていません。そこで3年前のデータとともに、上位と下位の10都道府県を表にしてみました。上位が大都市で下位が地方という画一的な結果でないことがお分かりでしょう。2015年には大都市名古屋を擁する愛知県が39位になっている一方、上位には北陸・中国・四国・九州地方の県も入っています。
個人的に注目したいのはどちらの年にもベスト10入りしている富山県と香川県です。両県の特徴として公共交通が発達していることが挙げられます。JRのほか富山県には富山地方鉄道の鉄道・路面電車・バスと富山ライトレール、香川県にはことでんグループの高松琴平電気鉄道・ことでんバスなどが走っています。県庁所在地の富山市・高松市がともにコンパクトシティを目標としているところも共通です。
ただ走らせるだけでなく、高齢者対策も充実しています。富山市では満65歳以上の人を対象に、市内の公共交通を1回100円で乗れるうえに、中心市街地にある協賛店で粗品の進呈や商品の割引が受けられ、市の体育施設や文化施設を半額または無料で利用できる「おでかけ定期券」を用意しています。
ことでんグループのICカード「IruCa(イルカ)」はショッピングのほか一部のレンタサイクルやフェリーも利用可能で、うち満65歳以上の人が使えるシニアIruCaでは公共交通を多く利用した際の割引率がさらに高くなり、高松市または隣接する綾川町在住で満70歳以上の人向けのゴールドIruCaは鉄道・バスの運賃が半額になります。
運転免許の返納を考える際、マイカー以外の交通手段があるか否かは重要な判断材料になるでしょう。それが両県の結果につながっていると思います。ただし交通利用券や各種割引などを用意する自治体も多くあります。それを考えれば「クルマなしでは生活できない」という意見には、物理的な理由のみならず、「楽だから」「慣れだから」といった感情的な理由が多く含まれている感じもします。
運転免許返納を年齢で区切るのは、人間には個人差があるので反対の立場ですが、私たちが移動のためにクルマを走らせるのは公道、つまり公の道であり、多くの人が共用する場です。他人に迷惑をかけないことは鉄則であり、感情を安全より優先させるべきではないと思っています。
さまざまな地方の交通事情を見てきたひとりとして書けば、そうではない地域も多くあり、最近取り上げた青森県八戸市や京都府京丹後市のように、独自の工夫でマイカー以外の移動の選択肢を充実させている自治体もあります。つまり最初の意見はすべての地方に当てはまるわけではなく、現場を知らない人がイメージだけで語った主張だと考えています。
今回の一件で良く取り上げられるデータに、都道府県別の運転免許返納率があります。このデータに対しても、昨年のデータでは東京都がトップで茨城県が最下位だったことから、ここでも大都市はクルマがなくても生活できるが地方はそうはいかないという意見が出ています。
ただしこのデータ、母数が少ないことから、年ごとに順位が大きく変わることはあまり知られていません。そこで3年前のデータとともに、上位と下位の10都道府県を表にしてみました。上位が大都市で下位が地方という画一的な結果でないことがお分かりでしょう。2015年には大都市名古屋を擁する愛知県が39位になっている一方、上位には北陸・中国・四国・九州地方の県も入っています。
個人的に注目したいのはどちらの年にもベスト10入りしている富山県と香川県です。両県の特徴として公共交通が発達していることが挙げられます。JRのほか富山県には富山地方鉄道の鉄道・路面電車・バスと富山ライトレール、香川県にはことでんグループの高松琴平電気鉄道・ことでんバスなどが走っています。県庁所在地の富山市・高松市がともにコンパクトシティを目標としているところも共通です。
ただ走らせるだけでなく、高齢者対策も充実しています。富山市では満65歳以上の人を対象に、市内の公共交通を1回100円で乗れるうえに、中心市街地にある協賛店で粗品の進呈や商品の割引が受けられ、市の体育施設や文化施設を半額または無料で利用できる「おでかけ定期券」を用意しています。
ことでんグループのICカード「IruCa(イルカ)」はショッピングのほか一部のレンタサイクルやフェリーも利用可能で、うち満65歳以上の人が使えるシニアIruCaでは公共交通を多く利用した際の割引率がさらに高くなり、高松市または隣接する綾川町在住で満70歳以上の人向けのゴールドIruCaは鉄道・バスの運賃が半額になります。
運転免許の返納を考える際、マイカー以外の交通手段があるか否かは重要な判断材料になるでしょう。それが両県の結果につながっていると思います。ただし交通利用券や各種割引などを用意する自治体も多くあります。それを考えれば「クルマなしでは生活できない」という意見には、物理的な理由のみならず、「楽だから」「慣れだから」といった感情的な理由が多く含まれている感じもします。
運転免許返納を年齢で区切るのは、人間には個人差があるので反対の立場ですが、私たちが移動のためにクルマを走らせるのは公道、つまり公の道であり、多くの人が共用する場です。他人に迷惑をかけないことは鉄則であり、感情を安全より優先させるべきではないと思っています。