自動車の電動化についての国や企業の情報発信が続いています。今年の夏に限っても、欧州委員会が7月14日にEuropean Green Deal」の一環として、EUの気候、エネルギー、土地利用、交通、税制を適切にするための提案をしたのに対し、8月5日にはホワイトハウスがバイデン大統領の名前で、環境に優しい乗用車および商用車についてのリーダーシップを推進していくためのステップを発表しました。
その中から米国側の発表を軸として、自動車専門インターネットメディア「AUTOCAR JAPAN」に記事を書かせていただきました。気になる方は読んでいただければと思います。私は別のメディアで欧州の電動化戦略についても取り上げ、このブログでも扱いましたが、今回はなぜ米国の戦略に注目するかを書いていきます。
双方の発表内容を見ていくと、欧州は乗用車および小型商用車の新車CO2排出量を2035年にゼロにすることを義務付けるというもので、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も禁止し、電気自動車と燃料電池自動車のみにするという厳しい方針です。一方の米国は2030年に販売される新車の半数を電気自動車と燃料電池自動車、プラグインハイブリッド車にするというものです。
米国の発表内容は、目標とする年こそ5年早いですが、50%はエンジン車やハイブリッド車でもいいことになります。不安を煽るニュースで耳目を集めるという悪しき旨味を覚えてしまった我が国のマスメディアは、米国の発表はあまり取り上げず、いまだに欧州の発表だけに注目していますが、個人的にはむしろこちらの内容に感心しています。
50%をハイブリッド車やエンジン車などとしたのは、欧州や日本に比べて鉄道網が貧弱であり、ある程度の距離は自動車で移動しなければならないという事情もありそうですが、同時に多様性を認めるこの国らしい判断だとも感じています。モビリティは多様な選択肢があるほど理想的という私の考えと一致するところです。
実は欧州の発表も、自動車以外の交通として取り上げた航空と船舶では、排出権取引を使うとともに、主要な港や空港でクリーンな電力供給を受けられるようにする、ジェット燃料にe-fuelとして知られる合成燃料を混合することなどが列記されており、多様な対策を考えています。自動車だけがゼロエミッション一本という方向性になっており、やはり戦略的な意図を強く感じます。
もうひとつ注目したのは、フォード、GM、ステランティスの旧ビッグ3と全米自動車労組が同席し、共同で目標を推進していくと発表したことです。行政の一方的な押し付けではなく、企業や労働者、そして国民とともに電動化を進めていこうという協調性が伝わってきます。それ以外のメッセージも、1台のクルマに乗る間に最大900ドルの燃料を節約できる、国内のサプライチェーンを強化し高給で待遇の良い雇用を増やすなどわかりやすく、発信のしかたに感心します。
ところでこの発表内容には、中国という言葉が何度も出てきます。バイデン政権はことあるごとに中国を意識しているので納得できる部分でもありますが、中国が電気自動車とバッテリーでリードしていることを冷静に受け止めているとも感じます。逆に日本のマスメディアがひんぱんに取り上げる欧州には、まったく言及していません。
当然だと思います。国や地域によって気候や人口や地勢などは違うわけで、それぞれの国や地域が今ある状況の中で最善を尽くすことが、誰もが幸せになれる環境対策だと考えるからです。それに新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の米国の自動車販売台数は世界の約19%で、中国の28%よりは下ですが、欧州も同じ19%です。同じ規模の相手に無条件で従う必要はないと考えたのでしょう。
それに比べると日本は6%と市場規模が小さいので、こういう議論になるとどうしても劣勢になりますが、それなら米国のルールを適用するという手もあります。そこに豪州やインドが加われば、日本は中国さえ上回る勢力の一員になります。欧州の影響力は自然と低下していくはずです。コストの安い軽自動車を残すことができるなど、すべてを電動化する日本の方針より好ましい部分もあります。
その中から米国側の発表を軸として、自動車専門インターネットメディア「AUTOCAR JAPAN」に記事を書かせていただきました。気になる方は読んでいただければと思います。私は別のメディアで欧州の電動化戦略についても取り上げ、このブログでも扱いましたが、今回はなぜ米国の戦略に注目するかを書いていきます。
双方の発表内容を見ていくと、欧州は乗用車および小型商用車の新車CO2排出量を2035年にゼロにすることを義務付けるというもので、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も禁止し、電気自動車と燃料電池自動車のみにするという厳しい方針です。一方の米国は2030年に販売される新車の半数を電気自動車と燃料電池自動車、プラグインハイブリッド車にするというものです。
米国の発表内容は、目標とする年こそ5年早いですが、50%はエンジン車やハイブリッド車でもいいことになります。不安を煽るニュースで耳目を集めるという悪しき旨味を覚えてしまった我が国のマスメディアは、米国の発表はあまり取り上げず、いまだに欧州の発表だけに注目していますが、個人的にはむしろこちらの内容に感心しています。
50%をハイブリッド車やエンジン車などとしたのは、欧州や日本に比べて鉄道網が貧弱であり、ある程度の距離は自動車で移動しなければならないという事情もありそうですが、同時に多様性を認めるこの国らしい判断だとも感じています。モビリティは多様な選択肢があるほど理想的という私の考えと一致するところです。
実は欧州の発表も、自動車以外の交通として取り上げた航空と船舶では、排出権取引を使うとともに、主要な港や空港でクリーンな電力供給を受けられるようにする、ジェット燃料にe-fuelとして知られる合成燃料を混合することなどが列記されており、多様な対策を考えています。自動車だけがゼロエミッション一本という方向性になっており、やはり戦略的な意図を強く感じます。
もうひとつ注目したのは、フォード、GM、ステランティスの旧ビッグ3と全米自動車労組が同席し、共同で目標を推進していくと発表したことです。行政の一方的な押し付けではなく、企業や労働者、そして国民とともに電動化を進めていこうという協調性が伝わってきます。それ以外のメッセージも、1台のクルマに乗る間に最大900ドルの燃料を節約できる、国内のサプライチェーンを強化し高給で待遇の良い雇用を増やすなどわかりやすく、発信のしかたに感心します。
ところでこの発表内容には、中国という言葉が何度も出てきます。バイデン政権はことあるごとに中国を意識しているので納得できる部分でもありますが、中国が電気自動車とバッテリーでリードしていることを冷静に受け止めているとも感じます。逆に日本のマスメディアがひんぱんに取り上げる欧州には、まったく言及していません。
当然だと思います。国や地域によって気候や人口や地勢などは違うわけで、それぞれの国や地域が今ある状況の中で最善を尽くすことが、誰もが幸せになれる環境対策だと考えるからです。それに新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の米国の自動車販売台数は世界の約19%で、中国の28%よりは下ですが、欧州も同じ19%です。同じ規模の相手に無条件で従う必要はないと考えたのでしょう。
それに比べると日本は6%と市場規模が小さいので、こういう議論になるとどうしても劣勢になりますが、それなら米国のルールを適用するという手もあります。そこに豪州やインドが加われば、日本は中国さえ上回る勢力の一員になります。欧州の影響力は自然と低下していくはずです。コストの安い軽自動車を残すことができるなど、すべてを電動化する日本の方針より好ましい部分もあります。