地方に行くとよく目にする移動手段のひとつにオンデマンド交通があります。既存の鉄道やバスが定時定路線を基本としているのに対し、移動する人を電話などの予約で募り、集まった利用者を1台の車両でまとめて運ぶ公共交通です。呼び名はon-demand transportのほかdemand-responsive transportなどがあり、単にデマンドと呼ぶ人もいますが、英語のdemandの意味は「要求」なので、ここでは交通分野以外でも多く使われるオンデマンドを使います。

toumiletsgo

ひと口にオンデマンド交通といっても、路線は決まっているが予約があった場合だけ走るもの、路線の一部を予約に応じて迂回するもの、すべてのバス停をオンデマンド対応にしたもの、走行経路や時刻まで利用者の予約に応じて変えるものなどいろいろあります。利用者の要望が多様であることから、早くからICTの導入が進んでおり、近年は運行経路や時間にAIを活用したAIオンデマンド交通もあります。

komoroainorikun

日本では地方の過疎地などで、定時定路線バスでは「空気輸送」と呼ばれるほど利用者が少なく、採算が取れなくなってきた路線をオンデマンド交通に変える例が多くなっています。たしかに利用者が少なくなったことに対応して、必要な時間に必要な路線だけ走らせるというのは、理にかなっていると思う人もいるでしょう。しかし現実には課題がいろいろあります。

このブログでも取り上げた長野県東御市では、2006年度という比較的早い時期にオンデマンド交通を始めています。しかも利用者がそれなりにいる朝夕は定時定路線とし、日中のみオンデマンドとするという斬新なスタイルを導入しました。しかし当初は順調だったものの、その後利用者が減少しており、料金値上げなどを行っています。

東隣の小諸市でも2016年度から、東御市と同じ朝夕定時定路線、日中オンデマンドというスタイルで走り始めました。しかし近年、利用者数がやや減少しているのに対し、運行事業費は増大しているとのことです。午前中に利用が集中することに対応して、予備車両を用意したり、コールセンターの人員を増強したりしたためだそうです。今後は運転手をはじめとする人員不足も深刻になっていくでしょう。

toumireiden

オンデマンド交通は好きな時間に好きな場所に行けるという点で、マイカーに近い移動を提供するものです。しかしその分、人材や資金はよけいに掛かるのです。小諸市の例を見ると、ある程度は定時定路線で賄えそうな印象を持ちます。それにドアtoドアの移動は、まちなかの活性化にはほとんど寄与しません。最近になって両市で実証実験したのがいずれも、中心市街地回遊型の交通であったことは、それを裏付けるものです。

10章扉のコピー

一連の経緯から見えてくるのは、利用者の減少に合わせて鉄道〜路線バス〜コミュニティバス〜オンデマンド交通と単純に輸送規模を縮小していくだけでは、最適なビジネス、最適なサービスにはならないということです。その土地のどこにどのように人が住み、どのように動くか。まちをどのようにしていきたいか。それによってモビリティの選択は柔軟に変えていくべきだと考えています。