THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2022年05月

先週に続いて自転車の話題を取り上げます。今回のテーマはインターネットメディア「Merkmal」でも取り上げた、子供乗せ自転車です。 日本で子供乗せ自転車と言うと、前後の車輪の上にチャイルドシートを乗せて親子3人で乗る「幼児2人同乗用自転車」がポピュラーですが、事故の話も耳にします。

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最近では先月、東大阪市で、親子3人で乗っていた自転車が転倒して子供が投げ出され、後続のトラックにはねられて亡くなりました。今回の記事もこの事故をテーマとしたものです。くわしくは記事を見ていただきたいですが、私は以前から、日本の幼児2人同乗用自転車は安全面で疑問を持っていました。二輪のまま重心が高くなる位置に2人の子供を乗せ、前側のチャイルドシートは操舵を司るハンドルに装着しているからです。

そこで思い出したのがヨーロッパの子供乗せ自転車です。現地では荷物運搬用のカーゴバイクが普及しており、日本よりもはるかに多彩な設計の車両があります。その流れを受けて子供乗せ自転車も様々なスタイルが用意されています。二輪のまま車体を伸ばして間に子供を乗せたり、三輪にすることで安定感を確保したり、自由な発想に感心しています。 

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イタリア「Taga family bike」のウェブサイトはこちら

こうした事例を見たうえで個人的には、前二輪で子どもをその間に乗せるスタイルが好ましいと思っています。先週も紹介したBICYCLE-E・MOBILITY CITY EXPO 2022(自転車・電動モビリティまちづくり博)では、オランダ大使館が写真の車両を展示していましたが、これの前座席を子ども用としたようなイメージです。

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ベビーカーを見ればおわかりのように、子どもは親の前に乗せたほうが、親の目が直接行き届くので安心ですし、三輪としたうえで子どもを低い位置に乗せれば走行安定性は高まります。3人乗りの場合は前輪の間に2人を乗せるか、あるいはひとりを後輪側に乗せるというスタイルになるでしょう。



日本には内閣府令で定めた普通自転車という基準があり、外寸などが規定されていることから、この基準から外れる車両が作りにくいような雰囲気がありますが、基準に適合しないからと否定する前に、その基準が今の時代に即しているかを考えるべきだと思っています。止める場所、つまり駐輪場については前回書いたとおりの対策を望みます。

展示会では川崎重工業が二輪車の経験を生かし、2023年の市場化を目指す三輪車「ノスリス」を展示しただけでなく、試乗も受け付けていました。電動アシスト自転車仕様とミニカー(原付三輪)仕様があり、両方に乗ることができましたが、いずれも2輪と比べると安定性は段違いで、剛性感なども信頼できました。これをベースに子供乗せ自転車を製作すれば、安心安全な移動手段が提供できるのではないかと思いました。

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他の自転車と長さや幅が違うことを不満に思う人もいるでしょう。でもそれは、鉄道車両やバスにベビーカーを畳まずに乗ることに対しての不満に似ていると感じます。多様性を認めるという観点からも、すべての人が低コストで環境に優しく安心安全に移動できる環境が必要であり、自転車については走行場所の拡充はもちろん、車両についても使用目的に応じて柔軟な設計を行い、安心して移動できる社会を構築していってほしいと思います。

今週水曜日と木曜日、東京ドームシティのプリズムホールで、BICYCLE-E・MOBILITY CITY EXPO 2022(自転車・電動モビリティまちづくり博)というイベントが開催されました。モビリティやまちづくりという言葉が入っているとおり、車両だけでなくインフラ関係の展示もありました。そこで今回は久しぶりに、駐輪場にスポットを当ててみたいと思います。

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会場にはいくつかの会社がサイクルラックを展示していました。日本でよく見かける方式であり、製品自体に文句をつける気はありません。ただ海外では、駅前と街中などで駐輪場を作り分けており、前者では2段式のラックなども使いますが、路上は小さなスペースを数多く用意し、ポールなどが設置されている程度がポピュラーなので使いやすく感じます。街中でも1台ごとに駐輪場所を位置決めする方式は、私が見た中では日本ぐらいです。

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ラックがないと自転車の止めかたがバラバラになると危惧する人がいるかもしれません。そのとおりで、ここで使った写真は数年前に撮ったものですが、バラバラです。駐輪場ではない場所に止める車両も目につきます。でも通行の邪魔にならない止め方にはなっています。日本人ならではの規律の正しさを、管理者が必要以上に重んじて管理しているという、この国にありがちな判断の結果が、サイクルラックにつながっていると個人的には理解しています。

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そもそも自転車は自動車と同じように、車体の長さや幅はまちまちです。親子3人乗り自転車などの登場で、サイズのバリエーションは昔よりも大きくなっていると感じています。もっとフレキシブルに対応すべき時期にきていると思います。

ただしシェアリング用ポートとなると話は別です。最近は電動アシスト自転車が増えてきており、そのための充電施設も必要でしょう。国内最大級の事業者であるNTTドコモ系のドコモ・バイクシェアは、一部の携帯電話販売店でバッテリー交換を受け付けているそうですが、理想を言えばポート駐輪中に充電できることではないでしょうか。

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今回の展示会ではそんな現状を見据えて、非接触充電装置を内蔵したポートの展示もありました。デモンストレーションを行っている会社もあり、技術的にはすぐにでも実用化できそうでしたが、車両が所定の位置に駐輪されていることが条件なので、その点でもラックが必須です。個人所有の電動アシスト自転車の充電も、スマートフォンアプリなどを活用すれば、充電対応が可能になるでしょう。

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新型コロナウイルス感染症の拡大とともに、自転車の利用者が増加していることは以前も書きました。シェアリングの普及は進み、E-Bikeと呼ばれるスポーツ系電動アシスト自転車も増えています。「100年に一度」と言われる自動車に匹敵するぐらい、自転車社会も状況が急変しています。だからこそインフラについても考え直す時期だと感じています。

先週に続いて、先月衆議院で可決された道路交通法の改正案を取り上げます。今回の改正案では電動キックボードなどが属する新たなカテゴリー「特定小型原動機付自転車」の新設とともに、自動運転についての内容もあったからです。

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改正案ではドライバーがいないレベル4相当の自動運転を「特定自動運行」と定義して、従来の運転の定義には該当しないものと位置づけ、新たに許可制度を創設しようとしています。日本政府では現在開会中の通常国会での成立を目指しており、早ければ今年度中に限定地域でレベル4の車両を使った移動サービスが可能になるとのことです。

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こうした動きは日本以外でもあります。たとえばドイツでは昨年、やはり道路交通法の改正案が閣議決定され、特定分野に限定して公道でのレベル4を可能にするという通称「自動運転法」が、今年度内に導入される見込みだそうですが、ここではレベル4が可能な分野として、シャトル交通サービス、自動運転ミニバス、ラストワンマイルの移動や物流などを挙げています。

米国でも今年3月に自動車の安全基準を修正しており、ハンドルなどの手動制御機能がない車両に義務付けられる安全基準を明文化しました。前の月にゼネラルモーターズ(GM)が、子会社のクルーズ、我が国の本田技研工業(ホンダ)と共同開発する自動運転車「オリジン」の生産および商用サービス展開を申請しており、この要請に対応したものと言われています。 つまり日米独で導入が計画されている新しいルールは、いずれも移動サービスを主眼に置いたものです。

自動運転は当初、マイカーへの導入が話題になりました。しかしマイカーはいつでも好きなところに行けるというメリットゆえ、走行状況は無限と言えるレベルになります。それでも自動運転の研究開発を進める企業は、実験走行を繰り返してはAIに学習させているようですが、この手法では到底追いつけるはずもなく、現在はシミュレーションを併用して対処しているそうです。

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それに比べれば走行経路や時間が限定され、運行管理者も特定される移動サービスは、はるかにハードルが低いと言えるでしょう。ゆえに自動車メーカーの中でもGMやホンダのように、この面に注力しているところが出てきており、日本でクルーズ・オリジンの運行を担当するホンダモビリティソリューションズでは、東京都心でのサービス展開を目指してタクシー会社との合意締結などを進めています。



自動運転が実現すれば公共交通はいらない。かつてこのような意見が多く出されていましたが、直近の状況を踏まえれば、自動運転=公共交通なのです。自分の愛車で寝ている間に目的地に着くというシーンの実現は、かなり先の話と考えたほうがよさそうであり、多くの人にとってのレベル4自動運転は、まず移動サービスによって体験することになりそうです。

道路交通法の改正案が先月衆議院で可決され、2年以内に施行されることになりました。今回の改正では電動キックボードなどについて、特定小型原動機付自転車(特定小型原付)というカテゴリーを新設することになりました。ニュースで報じられたので知っている人もいるでしょう。

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特定小型原付の最高速度は20km/hで、16歳以上であれば運転免許不要、ヘルメット着用は努力義務となるそうです。走行場所は車道・自転車道・自転車レーンですが、機械的に6km/h以下に制御された場合は、自転車通行可能な歩道も利用できるとのことです。自転車とは違って交通反則通告制度や放置違反金制度の対象にもなり、危険な違反行為を繰り返す者には講習の受講を命ずることにもなるとのことです。

従来の電動キックボードはシェアリング車両が小型特殊、販売車両が原付という2種類のルールがあったので、それに比べればわかりやすくなりそうです。しかしながら自転車のルールが曖昧で、それゆえの事故もある中で、運転免許不要の新しい乗り物が認められようとしている状況を前にして、もっと本気で交通安全教育をやるべきではないかとも思います。そこで今回はフランスの例を紹介します。

フランスの小学校では、道路に関するルールや行動、知識などを習得するAPER(初等教育交通安全証明書)という制度があり、中学校では歩行者・自転車・原付・自動車同乗者などの立場で自分の責任を自覚してもらうASSR(学校交通安全証明書)が2段階で発行されます。これ以外に学校に通っていない、あるいはASSRを取得していない若者のためのASR(交通安全証明書)、ASSRおよびASR試験を受けることができない視覚障害者のためのAER(交通教育証明書)もあります。

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つまり中学校卒業時点で、ほとんどの人が交通安全の基礎をしっかり叩き込まれています。もちろん自動車や二輪車の運転免許取得もASSRあるいはASRにパスしていることが条件です。ただし性能の低い原付や超小型モビリティ、たとえばシトロエン「アミ」などは、実技講習を受ければ運転可能です。これらの車両は免許不要と言われますが、実際はもう1段階免許があるような状況なのです。

今回の日本の改正道交法に当てはめれば、電動キックボードは16歳以上限定なので、ASSRあるいはASR取得者のみ乗車可能ということになるでしょう。交通安全に関する相応の知識を持っていると判断できるし、交通違反をした場合の処分もしやすくなりそうで、理に叶っていると思う人は多いのではないでしょうか。

ところで改正道交法では電動キックボードなどと表記されています。個人的には電動車いすへの適用も期待しています。日本では電動車いすは歩道走行が原則で、最高速度は6km/hとなっており、行動範囲が限定されるという不満も耳にします。欧米の一部では車道などに限り15~20km/h程度を認めていますが、それもフランスのような教育制度があれば納得できるという人が多くなるでしょう。

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フランスは誰もがいつでもどこでも,環境負荷をかけず,安全快適に移動できることを法律で定めた「交通権」を世界でいち早く認めた国として評価されていますが、一方でその権利を得るための義務も、国の方針として教えられているのです。新しいモビリティが続々と展開されつつある日本でも、こうした課程を取り入れるべきだと思っています。

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