今週月曜日に国土交通省から発表された、「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言」が話題になっています。「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」がまとめたもので、このブログでも取り上げたJR西日本(西日本旅客鉄道)のローカル線に関する課題認識と情報開示、滋賀県の交通税提案などの問題提起に対する、国としての指針を示したものと理解しています。
しかしこれを報じたメディアには愕然としました。多くが1キロあたりの1日平均利用者数(輸送密度)が1000人未満という数字を大きく取り上げ、これが存続か廃止かの目安であると伝えていたからです。70ページにわたる提言の中でこのフレーズが出てくるのは一度だけです。ごく一部だけを切り取ってショッキングに伝える、最近の日本で目立つ悪しき傾向が、ここでも出てしまった感があります。
時間があれば提言全部を読んでいただきたいですが、ローカル鉄道については既存の地域公共交通活性化再生法に加え、新たに国の主体的な関与で沿線自治体や鉄道事業者などからなる協議会の設置が適当としており、1日1000人は具体的な要件のひとつとして出されたものです。しかもそこには隣接する駅間において、1時間あたりの一方向の最大旅客輸送人員500人というもうひとつの目安も書いています。
1日平均1000人しか利用しない路線で、限られた時間とはいえ1時間に500人も乗るはずないと思う人もいるでしょう。しかし地域鉄道の中には、日中は空いているものの、朝のラッシュ時には一転して大混雑する路線もあります。先週のブログで触れた地方の道路事情と似たような感じです。
象徴的な存在が福岡県福岡市と新宮町を走る西鉄(西日本鉄道)貝塚線です。西鉄の2021年末のデータによると、輸送密度は1727人ですが、提言の直前に国土交通省から発表された都市鉄道の混雑率調査結果では、最混雑区間の1時間の利用者は2076人、混雑率は140%で、東京都の日暮里舎人ライナーに続いて全国第2位になっています。輸送密度だけですべてを判断すべきではないことがわかります。
これだけの人を路線バスで運ぼうとしてすると、バスは定員オーバーは違反になるので、15台ぐらい必要になります。車両や運転士の確保だけでも大変です。しかも当然ながらその時間の道路は渋滞が予想されるので、定時性でも劣ります。ラッシュ時の利用者は通勤通学という、生活に必須の移動をしているわけであり、公共交通である以上、こういう人たちを軽視してはいけないと考えています。
ではどうすれば底上げを図れるでしょうか。少し前のブログで触れた近江鉄道では、沿線の工場の近くに駅を新設することで、利用者減少に歯止めをかけました。貝塚線の場合は、沿線に病院や図書館など公共性の高い施設を誘致したり、観光地へのアクセスを改善するなどして、通勤通学以外の利用者を増やすことがポイントになりそうです。
そうなると現状の2両編成では乗客をさばけなくなりそうですが、貝塚線は他の西鉄の鉄道路線とは軌間(レールの間の幅)が異なるので、車両の増備に手間がかかりそうです。それよりも以前から懸案に上がっている、起点の貝塚駅で同じフロアで乗り換えできる福岡市営地下鉄箱崎線(6両編成)との直通運転を考えたほうが、利便性向上による利用者増加も見込めるのではないかと思っています。
どちらの路線も複数の自治体をまたぐので、提言にあるように、国が主体的な関与をすることで、協議会の中で自治体や事業者との調整を図っていくことを望みます。そしてこれも提言にあるとおり、数字だけを頼りに存続か廃止かという二元論で進めるのではなく、あくまで利用者の立場に立って、その地域の将来を見据えた協議を進めていってほしいと願っているところです。
しかしこれを報じたメディアには愕然としました。多くが1キロあたりの1日平均利用者数(輸送密度)が1000人未満という数字を大きく取り上げ、これが存続か廃止かの目安であると伝えていたからです。70ページにわたる提言の中でこのフレーズが出てくるのは一度だけです。ごく一部だけを切り取ってショッキングに伝える、最近の日本で目立つ悪しき傾向が、ここでも出てしまった感があります。
時間があれば提言全部を読んでいただきたいですが、ローカル鉄道については既存の地域公共交通活性化再生法に加え、新たに国の主体的な関与で沿線自治体や鉄道事業者などからなる協議会の設置が適当としており、1日1000人は具体的な要件のひとつとして出されたものです。しかもそこには隣接する駅間において、1時間あたりの一方向の最大旅客輸送人員500人というもうひとつの目安も書いています。
1日平均1000人しか利用しない路線で、限られた時間とはいえ1時間に500人も乗るはずないと思う人もいるでしょう。しかし地域鉄道の中には、日中は空いているものの、朝のラッシュ時には一転して大混雑する路線もあります。先週のブログで触れた地方の道路事情と似たような感じです。
象徴的な存在が福岡県福岡市と新宮町を走る西鉄(西日本鉄道)貝塚線です。西鉄の2021年末のデータによると、輸送密度は1727人ですが、提言の直前に国土交通省から発表された都市鉄道の混雑率調査結果では、最混雑区間の1時間の利用者は2076人、混雑率は140%で、東京都の日暮里舎人ライナーに続いて全国第2位になっています。輸送密度だけですべてを判断すべきではないことがわかります。
これだけの人を路線バスで運ぼうとしてすると、バスは定員オーバーは違反になるので、15台ぐらい必要になります。車両や運転士の確保だけでも大変です。しかも当然ながらその時間の道路は渋滞が予想されるので、定時性でも劣ります。ラッシュ時の利用者は通勤通学という、生活に必須の移動をしているわけであり、公共交通である以上、こういう人たちを軽視してはいけないと考えています。
ではどうすれば底上げを図れるでしょうか。少し前のブログで触れた近江鉄道では、沿線の工場の近くに駅を新設することで、利用者減少に歯止めをかけました。貝塚線の場合は、沿線に病院や図書館など公共性の高い施設を誘致したり、観光地へのアクセスを改善するなどして、通勤通学以外の利用者を増やすことがポイントになりそうです。
そうなると現状の2両編成では乗客をさばけなくなりそうですが、貝塚線は他の西鉄の鉄道路線とは軌間(レールの間の幅)が異なるので、車両の増備に手間がかかりそうです。それよりも以前から懸案に上がっている、起点の貝塚駅で同じフロアで乗り換えできる福岡市営地下鉄箱崎線(6両編成)との直通運転を考えたほうが、利便性向上による利用者増加も見込めるのではないかと思っています。
どちらの路線も複数の自治体をまたぐので、提言にあるように、国が主体的な関与をすることで、協議会の中で自治体や事業者との調整を図っていくことを望みます。そしてこれも提言にあるとおり、数字だけを頼りに存続か廃止かという二元論で進めるのではなく、あくまで利用者の立場に立って、その地域の将来を見据えた協議を進めていってほしいと願っているところです。