THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2023年01月

ソフトバンクとトヨタ自動車が共同で設立したモビリティサービス企業MONET Technologiesが、自治体や企業などのLINE公式アカウントからオンデマンドバスの予約を可能にするサービスの提供を7月に開始すると、今週発表しました。オンデマンドバスをはじめとする各種MaaSをワンパッケージで提供可能にする、事業者向けサービスのオプションとして提供する予定とのことです。
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ただしMaaSでLINE公式アカウントを使うのは、これが初めてではありません。自動車総合ニュースサイト「レスポンス」で当方が担当している連載「MaaSがもたらす都市変革」で、Visaのタッチ決済とともに記事にしたので、くわしくはこちらをご覧になっていただければと思いますが、2年前からいくつかの地域で、モビリティサービスにLINEを活用する事例が出てきているのです。
私が民間企業のアドバイザーとして関わっている長野県小諸市の「信州こもろ・こま〜す」も、LINEを活用しています。最近の画面の一部をここでお見せしますが、モビリティの位置情報やオンラインチケット購入だけでなく、地域のイベント情報も見ることができるという、ポータルサイトと呼べる状況になっており、利用者の方々からも分かりやすいという評価をいただいています。
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LINEそのものがMaaSアプリになっているわけではなく、MaaSの入口となるインターフェイスの役目を果たしています。ではなぜLINEなのか。これはMONETのニュースリリースにも書いてありますが、MaaSを利用するために新たにアプリをダウンロードして使い方を習得するのは、とりわけ高齢者にとってはハードルが高く、結果的に電話による申し込みが多くなり、電話がつながりにくく、通話料がかかるなどの不便が寄せられるからです。
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その点LINEは、高齢者が離れた場所にいる子供や孫との会話に使うことが多く、世代を問わず浸透しているアプリのひとつになっています。高齢化が進む地方型MaaSへの導入は賢明な判断だと思いますし、LINEは2021年にMONETと同じソフトバンクグループの一員となっているわけで、今回このような決断を下したのは妥当だと感じています。
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元祖MaaSアプリと言えるフィンランドのWhimのように、ゼロからすべてを構築するのはたしかに理想です。しかしMaaSは多くの人が使いやすいと感じることも大事であり、LINEのようなアプリをインターフェースとするのは理に叶っています。MONETが今回このような発表をしたことで、日本国内のMaaSのインターフェイスとして、LINEがいままで以上に存在感を増すのではないかと予想しています。

2023年もモビリティシーンには大きな動きがいくつかありそうです。そのひとつが2週間前のブログでも触れた電動キックボードで、7月に新しいルールが施行されることになりました。ただ繰り返しになりますが、この話題は来週火曜日に開催される「令和4年度交通安全フォーラム」でも触れると思います。なので今回はそれ以外のジャンルの中から、自動運転レベル4を取り上げます。

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自動運転に0から5までのレベル分けがあることは、知っている人もいるでしょう。現在一部の乗用車が搭載している先進運転支援システムはレベル2で、運転支援という表現のとおり、運転主体は人間です。その上のレベル3では、限られた領域で運転主体が人間からシステムに変わるものの、システムが交代を要請した際には人間が運転を担当しなければならないので、言うまでもなく居眠り運転や飲酒運転はできません。

今回取り上げるレベル4は、限定された領域であることはレベル3と同じですが、すべての運転操作をシステムが行うという違いがあります。つまりドライバーがいない無人運転も可能になります。これが今年4月1日から解禁となるそうです。

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法律上では、ドライバーがいないレベル4自動運転は「特定自動運行」と位置付け、都道府県公安委員会に運行計画を提出するなどして、事前に許可を受けることを義務付けています。さらに運行確認や事故対応などのために、車両内あるいは遠隔で監視する「特定自動運行主任者」も配置しなければならないそうです。つまりマイカーのレベル4ではなく、移動サービスでの導入になることがわかります。

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付け加えれば、4月からすぐにレベル4の移動サービスが始まるわけではなさそうです。現在、茨城県境町などでレベル2の自動運転バスを運行しているBOLDLYでは、昨年12月から北海道上士幌町で同様のサービスを開始しましたが、同社のニュースリリースでは2023年度中に、日本初となる市街地でのレベル4自動運転サービス実用化を目指すとしており、相応のタイムラグがあると予想されます。

それでも個人的には、レベル4移動サービスの普及を望みます。フランス、スイス、そして日本でハンドルやペダルのない車両に乗り、レベル4に進化するうえで大きな支障はないと感じたこと、鉄道では東京のゆりかもめや神戸のポートライナーなどでレベル4相当の営業運転が以前から続いていること、そしてバスやタクシーの運転手不足解消の手段として期待するからです。

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最後の点はとりわけ、高齢化や過疎化に悩む地方で切実です。逆に言えば世界最先端の高齢化社会である日本こそ、レベル4移動サービスが重要と考えています。前出のBOLDLY以外に、ホンダモビリティソリューションズは栃木県で公道実証を開始し、JR東日本は気仙沼線BRTの一部区間でレベル2の運行を開始するなど、実現へ向けた歩みは着々と進んでいます。地方の移動を持続可能とするためにも、レベル4移動サービスの成功を望みます。

日本の冬に雪はつきものです。すでに今期も、昨年12月には東北地方や北陸地方などが大雪に見舞われ、新潟県の国道8号線で1日以上立ち往生が続くなどの影響がありました。幸いにして東京は初雪はまだですが、昨年1月には自分の愛車の取材中に雪が降り始めたことや、2か月連続で雪の金沢を訪れたりしたことを思い出し、気持ちの準備が必要と感じつつあります。

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自分自身は最近、雪道を運転したことはありませんが、冬用タイヤやチェーンの取材はいくつか行っています。その経験から言えるのは、装備の種類が増えていることです。そのひとつが布製チェーンで、昨年秋にはスペインISSE社製の「スノーソックス」の紹介を受ける機会に恵まれました。

布チェーンは、金属製やゴム製のチェーンに代わるものではなく、応急用として短距離の移動に用いるものです。東京などで走行中に雪が降ってきた場合は、幹線道路は雪がないのに、自宅近くの路地は積雪や凍結という場合があります。そういうシーンでの、いわばラストマイルの冬用装備として重宝しそうです。小型軽量であることもメリットでしょう。

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タイヤについても代表格であるスタッドレスタイヤ(写真はブリヂストン「ブリザック」)に加えて、オールシーズンタイヤというジャンルが出てきました。氷雪性能はスタッドレスに及ばないものの、ある程度のレベルまでは走破可能であるうえに、サマータイヤとしての性能も相応に確保しているので、こういう名前で呼ばれているようです。

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どれを使うか悩む人もいるでしょう。でも自動車の運転はそもそも、ドライバー自らの認知・判断・操作が基本であり、それは氷雪路への対応にも当てはまると思っています。つまり走行状況に応じて的確な装備を選ぶこともまた、ドライバーの義務ではないでしょうか。もちろん雨の日に自転車に乗らない人がいるように(自分はそうです)、雪の日は自動車を運転しないという判断も妥当だと考えています。

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というのも、たしかに製品の技術は進歩しているものの、豪雪のレベルもまた上がっていると感じるからです。気象予報士の方々の説明では、地球温暖化による海水温度上昇が、原因のひとつだそうです。しかも道路交通は、自分がいくら万全な体制で臨んでも、同じ道路を使う他車によって移動が制限される恐れがあります。この点は交通事業者が運行の可否を判断する鉄道や飛行機などとは大きく違うところです。

こうした状況を含めて考えればやはり、不要不急の外出は避けるのが鉄則になるでしょう。自分も愛車のうち1台にはゴムチェーンを用意していますが、これからも雪の予報が出ているときは、自動車での外出は控えるつもりです。ただ外出自体は避けられないこともあるので、そういうときのためにスノーブーツは持っています。1年前に金沢に行った際も安心して移動できました。

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ところで金沢と言えば、繁華街の階段やスロープなどに滑り止めを敷いている場所があり、好感を抱きました。たとえ降っても年に1〜2回という東京のような地域では、なかなか用意はできないかもしれませんが、安全な移動を確保するためには最新技術だけでなく、こうした生活の知恵もまた大事だと思った次第です。

あけましておめでとうございます。本年もTHINK MOBILITYをよろしくお願いいたします。

2023年最初のブログは、フォーラム出演のお知らせからです。1月24日(火曜日)16時から17時50分まで、内閣府と神奈川県が主催し、警察庁、文部科学省、厚生労働省、国土交通省が後援する「令和4年度交通安全フォーラム」に、パネリストのひとりとして出席することになりました。

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今年度のテーマは「新たなモビリティに対応した交通安全対策」で、パンフレットにあるように電動キックボードなどが対象になる予定です。当日の模様はYouTubeでライブ配信されますので、YouTubeが視聴可能で当日時間に余裕のある方は、ご視聴いただければと思います。



電動キックボードと言えば、昨年秋に訪れたパリでも多くの人が乗っていました。こちらについては昨年末、インターネットメディア「東洋経済オンライン」にまとめさせていただきました。こちらもご覧になっていただければと思いますが、以前のブログで紹介した自転車走行空間の急拡大が、電動キックボードの安全性も高めており、ゆえに乗る人が増えたのではないかと感じました。

とはいえ課題があることも記事で触れたとおりで、来月に予定されているシェアリング業者との契約更新を打ち切るかどうかという話まで出ているようです。今日あらためて現地のメディアを調べたところ、逆に規制に反対する意見も多く出ており、現時点では結論が出たという内容の記事は確認できませんでした。



パリではアンヌ・イダルゴ市長が2年前に「15分都市」、具体的には2024年までに誰もが(つまりマイカーに頼らず)会社や学校などあらゆる都市機能に15分以内でアクセスできる都市を目指すと宣言しています。そのためには公共交通のひとつと言える電動キックボードシェアリングは重要と主張する人も多くいるようです。

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24日のフォーラムでは、こうした話題も提供したいと考えています。個人的には記事にも書いたように、新たなモビリティは移動の多様性という意味でも受け入れる立場です。こうした観点に、パリでの経験も踏まえて、日本でもこうした乗り物が安全快適に走ることができるよう、他の参加者の方々とともに考えていきたいと思っています。 

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