THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2024年11月

今月から、自転車運転中の「ながらスマホ」が道路交通法違反となり、飲酒運転については酒酔い運転に加え、酒気帯び運転が新たに罰則対象になるとともに、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供すること、飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供することなど、酒気帯び運転のほう助も違反になったことは、ニュースなどで知っている人もいるしょう。

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いずれも改正道路交通法の施行によるもので、今年5月に法律が交付された青切符による取り締まりについても、16歳以上を対象とし、113種類の違反行為を適用範囲とすることなどが決まっているそうで、今後反則金の金額などが定められ、導入されるとのことです。

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これにともない、ながらスマホや酒気帯び運転だけでなく、信号無視や一時停止無視など、重大事故につながる可能性のある違反行為の取り締まりが厳しくなっています。いままでが緩すぎた感もありますが、私も今月、自転車が対象と思われる取り締まり現場をいくつも目にしており、これまでとは違うという印象を抱いています。

それとともに、ある変化に気づきました。自宅近くの歩道から、自転車の通行が可能であることを示す「自歩道(自転車歩行者道)」の標識が一斉に消えていたのです。これまでは自転車は車道のほか、こうした歩道を通行しても良く、歩車分離式信号を備えた交差点では、いつでも渡れるという状況でした。この曖昧さが多くの違反を許してきたと思っていますが、それを改め、歩車分離式信号では車両の信号に従うというルールに、近い将来改められるのかもしれません。

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自転車が車道左端を走るのは、本来のルールどおりであり、個人的には一歩前進だと思いますが、そうなると自転車走行空間が確保されているかという問題が新たに浮かび上がります。自転車レーンそのものは、東京都内では路上にペイントで示した簡易的なものを含め、増えていると感じていますが、写真のように駐車車両がレーンをふさいでいることも多くあります。

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このブログで何度も紹介してきたフランスのパリをはじめ、自分が訪ねた欧州の都市で、自転車レーンに駐車する車両を見た記憶はありません。横断歩道を渡る人がいるのに止まらないクルマがいることもそうですが、日本は交通弱者に対して冷たいドライバーがそれだけ多いということなのでしょう。だからこそペイントだけではなく、ポールや縁石などで車道と明確に区切ることが必要だと思います。

今の道路状況のままで歩道の通行を全面的に禁止すれば、事故が増えることが予想されますし、その結果ヘルメットの着用が義務に移行すれば、手軽な移動手段という存在価値が薄れます。オランダなどのように、自転車のための空間をしっかり用意したうえで、ヘルメットの着用は任意とするのが、移動の自由を尊重する考え方ではないでしょうか。取り締まりは大事ですが、並行して迅速な環境整備も求めておきます。

先週土曜日、JR北海道の函館本線で貨物列車が脱線する事故があり、同線の森〜長万部間が3日間にわたって不通になりました。JR北海道によると、踏切部分のレールの腹部(くびれている部分)が腐食していたことが原因とのことで、今年9月の超音波検査で異常を検知したものの、その後の確認をレールの頭部だけ目視で行っただけという説明もありました。

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私が直近でJR北海道を使ったのは今年の夏で、新千歳空港〜小樽間、小樽〜旭川間を、途中下車を含めて移動しました。自分の乗った快速や特急は正確かつ快適でしたが、札幌と帯広・釧路を結ぶ特急列車が走る石勝線は豪雨で不通となっていて、貨物列車を含めて全面運休となっていました。

2つの区間に共通しているのは、迂回路がなかったことです。なので大きな影響が出ました。しかも札幌と道東を結ぶルートは今年3月、かつて特急列車が走っていた根室本線の富良野〜新得間が廃止され、迂回ルートを失ったばかりでした。そして函館本線についても、北海道新幹線の延伸に伴い並行在来線となる長万部〜小樽間について、北海道では運営費用が嵩むことを理由に、第3セクター化ではなくバスへの転換を考えているようです。

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たしかに直通の移動は新幹線で賄えるのでいいでしょう。しかし新幹線が停車しない余市などは不便になりそうです。私が行ったときも、週末ということもあって鉄道で余市に向かう乗客はそれなりにいて、なぜこの路線を廃止にするのだろうかと思いました。

それ以上に懸念しているのは物流です。貨物列車の輸送量は1列車で最大650tと、10tトラック65台分に匹敵します。ドライバー不足の中で、これだけの運転手を集めるだけでも大変だし、北海道は四国や九州と違い、そもそもトラックで本州に行くことができません。仮に現在のメインルートである室蘭本線が災害や事故で不通になると、物が運べなくなってしまう可能性が出てきます。

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北海道はたしかに、札幌周辺や旭川、函館などの拠点都市を除くと人口密度は低めです。しかし物流については、農産物などを本州に向けて送り出しています。日本の食料自給率はカロリーベースで38%なのに対し、北海道は実に218%。もちろん全国トップです。この国の食生活のかなりの部分を北海道が賄っており、その一部を貨物列車が運んでいることを忘れてはいけないでしょう。

JR北海道に対しては、もちろん事故防止を徹底し、復旧を迅速に進めてほしい気持ちはありますが、冬季の除雪を含めた運行管理はギリギリの状況という感じもします。やはり欧州がやっているように、線路の管理と列車の運行を別々にする、上下分離が自然ではないでしょうか。これは北海道だけでなく、四国や九州にも当てはまる話です。

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物流を含めて考えれば、北海道の鉄道の問題は北海道だけの問題ではなく、日本全国の問題と言えるわけです。直近の情報では、北海道新幹線はトンネル工事などで苦労しているそうで、開業が延期される可能性もあるとのこと。時間の猶予があるからこそ、目先の損得勘定だけでなく、国全体での移動や物流のことを考えたうえで、結論を出してもらうことを望みます。

富山県と長野県にまたがる立山黒部アルペンルートの立山トンネル内を走る、国内唯一のトロリーバスが、今月30日で営業を終えます。同じ立山黒部アルペンルートの関電トンネルを走っていたトロリーバスは、ひと足先に電気バスに置き換えられているので、これにより日本からトロリーバスが姿を消すことになります。これを機に読売新聞富山支局では連載記事を出しており、私のコメントも使っていただいたので、今回はトロリーバスをテーマに書いていきたいと思います。

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日本でも太平洋戦争直後、全国各地にトロリーバスが普及したことがあります。当時は石油の輸入が大変だったうえに、ディーゼルエンジンはまだ性能が低かったのに対し、電気は水力や石炭火力など自国内の資源で作り出せ、需要は今ほど多くなかったので、電気で走るバスを走らせたのだと理解しています。しかしその後、石油の入手が容易になり、ディーゼルエンジンの性能が向上すると、架線の下しか走れないトロリーバスは運行上不便ということになり、廃止になっていきました。



そんな中、立山黒部アルペンルートでトロリーバスが走り続けていたのは、国立公園に指定されており環境保護が大切であること、2区間ともにルートがほぼトンネルであることなどが関係しているようです。関電トンネルは、そもそも電力会社の運営で、近くの黒部ダムで発電もしていることもあり、1964年の開業当初からトロリーバスでしたが、立山トンネルは当初ディーゼルバスを導入したものの、トンネル内に排気ガスがたまるようになり、1996年からトロリーバスに切り替えたと記事にもあります。

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それとは別に海外では、フランスのリヨン、スイスのローザンヌ、米国サンフランシスコ、中国上海などでトロリーバスを見たことがあり、欧州では利用もしたことがあります。上海を除く3都市に共通しているのは、坂道が多いことです。ディーゼルエンジンでは排気ガスだけでなく音も気になることから、都市環境の保全という目的でトロリーバスを選んだのでしょう。

しかし同じような地形のルクセンブルクでは、以前ブログで紹介したように、トロリーバス同様屋根上から電気を取り、バッテリーに充電して走る電気バスが走っていました。これに限らず、2010年代に入ったあたりから、駆動用バッテリーの性能が向上したことで、充電式の電気バスが増えてきたと実感します。関電トンネルのトロリーバスも、屋根上で充電する方式に置き換わっているようです。

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では平地が続く上海がトロリーバスを走らせているのは、どうしてでしょうか。環境対策とともに、エネルギーの自給を重視していることも関係していそうです。日本はお金を払えば石油は手に入るという考えの人がいるようですが、輸送によるコストや環境負荷を抑えるだけでなく、地域情勢の急変に備えるためにも、地産地消が基本という考え方は理解できます。中国が電気自動車を推進しているのも、産業としての戦略もありますが、エネルギーの自給という観点も大きいと想像しています。

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その中国でも最近は電気バスへの置き換えが進んでいるそうです。日本にも同国製のバスが入ってきているほどなので当然でしょう。トロリーバスが減りつつあることは寂しいですが、架線や集電装置がなくなっただけで、電気で走ることは共通です。静かで環境に優しい路上の公共交通というトロリーバスの利点は、電気バスに引き継がれ、生き続けていくのだろうと思っています。

先週に続いて二輪車の話題です。今回はヤマハ発動機の「ヤマハライディングアカデミー」のうち、運転免許は持っているけれど運転に自信がない初心者やリターンライダーを対象とした「ヤマハバイクレッスン」を取り上げます。先月取材する機会に恵まれ、インターネットメディア「マイナビニュース」で記事にしているので、興味のある方はご覧ください。

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ちなみに今回取材したのはU35、つまり35歳以下限定のオンロードレッスン&ツーリングコースで、運転免許を取りたてだったり、進学・就職でしばらく乗ることがなかったりという、若いライダー向けのコースでした。

まず驚いたのは、女性の参加者のほうが男性より多かったことと、免許は持っているけれど路上で乗ったことがない人が数人いたことです。いずれも私がライダーを始めた40年以上前とはかなり違う状況です。参加者2人に対してインストラクターひとりと、インストラクターの数が多いことも目につきました。そのために一回15人に制限しているそうで、毎回のように抽選になっているとのことです。

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実技では、半クラッチやUターンなど日常的なシーンで多用する操作の練習が印象的でした。当然ながら個人差があり、うまくできない人もいましたが、別のグループで練習を重ねていき、終了する頃には普通のメニューに合流していました。できるまでじっくり教えていく、学校のような姿勢に感心しました。



それでいて教育的な雰囲気は薄く、楽しみながら学んでいける場でもありました。写真でわかるように会場は広いので、仕上げの走行では加速やコーナリングを味わえ、その後の公道でのツーリングでは、緊張感の中で解放感や爽快感を満喫した様子でした。仲間づくりも目的のひとつと言っていたとおり、終了後はあちこちで話の輪ができていました。教習所にもサーキットにもない時間がそこにはありました。

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このようなレッスンが企画されるのは、二輪車が危険な部分も併せ持つ乗り物だからでしょう。エンストするだけでも転倒の可能性があるのですから。だからこそ参加者はみんな真剣に受講していたし、二輪車だけでなく自転車や自動車の運転も、安全かつ確実に行ってくれるのではないかと期待しています。

ヤマハのこの種の取り組みは半世紀以上の歴史を持ち、現在は日本以外でも実施されているそうです。そうした取り組みが評価され、私も審査委員を務めている本年度のグッドデザイン賞を受賞しました。さらに私は、審査委員が個人的に評価したものを選ぶ「私の選んだ一品2024」でもこれを選びました。

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「私の選んだ一品2024」の詳細はこちら

今年度のグッドデザイン賞の受賞展は、すでに終了していますが、私の選んだ一品2024は丸の内仲通りにあるGOOD DESIGN Marunouchiで展示が行われています。現在は第2期で、当方が選んだヤマハライディングアカデミーは今月14日からの第3期で紹介予定です。私を含めた審査委員がどんな気持ちでデザインを見つめているのか、気になる方は足を運んでみてください。

本田技研工業(ホンダ)がビジネスバイクのベストセラーとして知られる「スーパーカブ」のうち,
原付(原動機付自転車)の運転免許で乗れ、登録は原付一種となる50 ccモデルについて生産を終了すると発表し、ファイナルエディションが受注期間限定で発売されました。受注期間は今月24日までと短いので、気になる人は早めに決断したほうがいいと思います。

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「スーパーカブ50・Final Edition」のニュースリリースはこちら

スーパーカブ50の生産終了は、これまでの経緯から予想できることでした。このブログでも、昨年9月には原付の排気量をすべて125 cc以下にすること、今年7月にはホンダが50 ccエンジンで走る原付の生産を終了することをそれぞれ伝えています。今回のニュースはそれが現実的になったということなので、特に驚きはありません。

こうしたニュースが出るたびに、「スーパーカブ生産終了!?」などという、衝撃的な見出しのニュースをインターネットで複数目にします。ページビューを稼ぎたいというサイトの運営側が、ショッキングな印象を与えるべく、こういうフレーズを用いるのでしょう。ただし今回は、ホンダが同じニュースリリースの中で、引き続き自動二輪小型限定免許で運転できる原付二種のスーパーカブ110は生産すると書いているので、こうした言い回しは誤報になります。

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ホンダはスーパーカブの前身である、自転車用補助エンジン「カブA型」や「カブF型」の頃から、50ccにこだわってきました、原付の排気量が50ccに定まったのはその後なので、カブが影響を与えたのかもしれません。こうした経緯を考えれば、スーパーカブが50ccでスタートしたのは当然でしょう。ただし現在、海外ではスーパーカブは125 ccクラスが主流になっています。

東南アジアでよく見かけるのは、バックボーンフレーム、水平シリンダーのエンジンといった基本設計を受け継ぎつつ、スポーティな外観を持った車種たちです。排気量は110ccや125ccが多いようでした。バックボーンフレームにスポーツバイクのエンジンを搭載した独自のモデルもあります。世界に進出していく中で、デザインもメカニズムも、地域に合わせた進化を遂げてきていることがわかります。

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ではなぜスーパーカブはここまで愛好されているのでしょうか。10月25日に発売された自動車専門誌「ENGINE」12月号で、自分が所有するスーパーカブC125を、ルノー「トゥインゴ」とともに取り上げてもらう機会があったので、その中で書きました。くわしくは雑誌を読んでいただきたいですが、ひとことで言えば、ツールとしての使いやすさとマシンとしての楽しさが高度に両立していることに尽きます。

記事ではスーパーカブ誕生の背景についても少し書きましたが、やはりホンダの創業者である本田宗一郎氏と藤澤武夫氏の2人が作り上げた最高傑作であり、それを日々の移動で体感できるという満足感は、何物にも変え難いものです。たしかに50ccという排気量は、日本のマーケットでは重要でしたが、自分自身125ccに乗っていることもあって、50ccがなくなることでスーパーカブの魅力が薄れるとはまったく思っていません。

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自動車専門誌「ENGINE」12月号の紹介はこちら

今後、排出ガス規制や騒音規制がさらに厳しくなると、空冷単気筒エンジンのままで作り続けることができるのかという懸念はありますが、新興国を中心に、今の内容のままで良いという地域も多くありそうです。これだけ愛されている乗り物をあっさり終了とするのは考えにくく、デザインや装備などをアップデートさせつつ、これからも世界中の道を走り続けていくのではないかと期待しています。

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