THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2025年04月

今週は、自転車の交通違反に反則金が科せられるというニュースを多く目にしました。このブログでは昨年11月、自転車の交通違反の罰則強化を書いたときに、いわゆる青切符が導入され、反則金の金額が今後決められるということを紹介しましたが、それが来年4月1日に道路交通法施行令の改正で導入されることになったというわけです。それに先駆けて警察庁では、昨日から5月24日までパブリックコメントを受け付けています。

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最初に書いておくと、今回の改正は自転車に乗る人だけが対象ではありません。自動車などを運転する人が自転車の右側を通過するときに間隔を十分に取らなかった場合、相手が歩行者のときと同じように、普通車の場合違反点数2展、反則金7000円が課せられるというものです。

自転車利用者については、運転免許がないので違反点数はないものの、携帯電話使用等(ながら運転)、信号無視、通行区分違反、指定場所一時不停止等など、50以上の交通違反について反則金が定められました。金額は原動機付自転車を参考にしたとのことで、ながら運転が1万2000円、信号無視や通行区分違反が6000円などとなっています。

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これまで青切符や反則金がなかったので戸惑いの声もあるようですが、世界的には珍しいことではありません。例えばフランスではこのように、ながら運転や信号無視など、さまざまな交通違反について罰金が定められています。イラストはなぜか日本と同じ左側通行になっていますが、一枚にうまくまとめてあり、日本もこのような親しみやすくわかりやすい告知が欲しいところです。

概要資料

ところで今回のニュースでは、通行区分違反が話題になりました。パブリックコメントの概要資料の中に、「通行区分違反(逆走、歩道通行等)」という表記があったことから、これを機に自転車での歩道通行が全面的に禁止となると思った人がいたようです。しかし実際はそうではありません。道路交通法第63条の4には、普通自転車の歩道通行という項目があり、次のような内容が示されています。

1 道路標識などにより歩道を通行できるとされているとき
2 児童や幼児、70歳以上の人など車道通行が危険と認められる人が運転するとき
3 このほか車道または交通の状況から安全確保のためやむを得ないと認められるとき

加えて同法では、歩道を通行するときは徐行しなければならず、歩行者の通行を妨げるような場合は一時停止しなければならないとしつつ、歩道の中に道路標識などにより指定された通行部分(普通自転車通行指定部分)があるときは、そこを通行しようとする歩行者がないときは安全な速度と方法で進行することができるともあります。
  
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なので警察庁の資料は説明不足という感もありますが、現場の警察官がこのような認識で臨んでくる可能性もあるので、自転車を利用する人たちは道路交通法などを頭に入れておいた方が良いでしょう。たとえば上の写真のような道路は、自転車通行用の矢羽根は描いてあるものの、安全確保のため歩道を通行するという理由が通用するのではないかと思っています。

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またこの写真の場所のように、歩道側に自転車レーンがある場合は、自転車らしいペースでそこを通って良いことになります。 欧州を見ても、自転車レーンはあとから設置されたところが多く、車道にあったり歩道にあったりさまざまです。車道か歩道かという二元論からそろそろ卒業してほしいし、道路交通はもっと臨機応変に対処すべき場だと認識してほしいものです。

もちろんそのためには、自転車レーンなどの走行空間をしっかり確保することが大事であることは言うまでもありません。「やむを得ない」道路があちこちに残っている現状では、真の安全快適は遠い先の話になるでしょう。そしてもうひとつ、車道側にある自転車レーン上に駐車する車両が一向に減らないことも問題です。

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自転車の取り締まりを強化するなら、こうした駐車車両の同じレベルで取り締まるべきで、今ならセンサーやカメラを使っての対策もできるでしょう。今回発表された反則金は概ね賛成ですが、自転車は道路交通では歩行者の次に弱い立場にあるわけで、自動車に甘く自転車に厳しい、弱い者いじめのような状況にはなってほしくはないと、今回のニュースで思いました。

今週月曜日、総務省が昨年10月1日現在の人口推計を発表しました。外国人を含めた日本の総人口は1億2380万2000人で、前の年より55万人、率にして0.44%減ったことなどが、すでにニュースで報じられているので、知っている人も多いでしょう。ただ個人的には国全体の減少よりも、都道府県別で人口が増加したのが東京都と埼玉県だけという結果のほうが気になりました。
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しかも東京都は1417万8000人で、前の年から9万2000人増加しているのに対し、733万2000人の埼玉県が増えたのは1000人にすぎません。2022年と2023年の人口推計では、いずれも増加していたのは東京都だけだったので、ここ数年は東京都のひとり勝ちと言っていい状況です。コロナ禍で一時的に東京都の人口が減少しましたが、結果的にはそれは一瞬の出来事になりました。

東京に再び一極集中の流れが出てきていることは、ターミナル駅などでの再開発を見れば一目瞭然です。渋谷駅周辺には、ここ10年ほどで高層ビルが一気に増え、現在は新宿駅西口が、同じような状況になっています。ビルの中身は多くはオフィスになるようです。東京駅や品川駅の周辺も、状況は同じと言えるでしょう。
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地方からの人口流出の原因のひとつとして、働く場所がないことが挙げられます。でもさまざまな娯楽があふれる東京の繁華街に、大資本のデベロッパーなどが高層のオフィスビルを続々と建てていっては、地方は到底立ち打ちできないのではないかと感じています。

こうした地方の実情を中央に届ける役目を担っているのが国会議員ですが、日本は衆議院も参議院も人口に比例して議席が割り振られるので、人口が減り続ける地域は圧倒的に不利です。今年予定されている参議院議員選挙では、少し前から鳥取県と島根県、徳島県と高知県が合区となっています。鳥取県と島根県の面積の合計は10215㎢で、人口の合計は117.3万人。対する東京都は2200㎢と1417.8万人なので、東京都は面積は4分の1以下なのに12倍の議員を送り出せることになります。
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国政選挙が終わると、必ず「一票の格差」を不服として裁判を起こす人たちは、このままでいいと思っているのでしょう。しかし世界には人口比例でない事例がいくつもあります。米国の上院議員(各州あたり2名)は有名ですが、国の大小を問わず平等の権利が与えられた国連もそのひとつと言えます。人口の少ない国や地域の問題が世界レベルでクローズアップされるのは、この制度のおかげもあると思っています。

では東京都は暮らしやすい場所でしょうか。東京生まれで今も東京に住む私はそうは思わないので、東京目線で地方を褒める活動を続けていますが、統計でもその理由は出ています。ここでは国土交通省が2021年に公表した、都道府県別の経済的豊かさ(可処分所得と基礎支出)の上位20位を紹介しますが、東京都は可処分所得の平均で1位ではないのに、支出ではトップなので、差額では42位になっています。
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国土交通省「都道府県別の経済的豊かさ(可処分所得と基礎支出)」はこちら

さらに通勤時間の機会費用(月単位)についても東京都は1位で、これを上で出た差額から引くと47位、つまり最下位になります。そんな東京都にどんどん人が集まってくれば、子育てをしようという余裕がない人が増え、結果的に人口減少と高齢化が進むのではないでしょうか。 つまり一極集中と人口減少、少子高齢化はリンクしていると考えています。

そう言えば昨年6月には、厚生労働省が公表した2023年の「人口動態統計」の概数の中で、東京都の出生率が全国の都道府県でもっとも低い0.99で、1を下回ったことが話題になりました。しかしこれを全国平均まで引き上げる必要はないと思います。多数決の論理でそれを強行すれば、地方は壊滅に向かっていくと予想します。
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今年の初めにキャベツの価格が高騰したことを覚えている人もいるでしょう。しかしオールドメディアは消費者目線で高いことばかりを報じ、農業人口の減少に加えて天候不順に悩まされる生産者のことは、ほとんど取り上げませんでした。この先誰が野菜を作り、誰が魚を獲ってくれるのでしょうか。いろいろな面で、東京都への一極集中は危険水域に近づいていると感じています。

今週日曜日の未明に発生したNEXCO中日本(中日本高速道路)のETC障害は、17路線で100カ所以上の料金所やスマートインターチェンジでETCが利用できなくなり、復旧までに1日半以上かかるなど、自然災害を除く日本の高速道路の障害としては、もっとも大規模と思われる事態になりました。この件ではSNSの書き込みなどで、海外の同様のシステムへの言及もありました。

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私が海外で運転をするときは、借りた車両ということもあり、ETCのようなシステムは使いませんでしたが、料金所に専用ゲートがあったことは知っています。さらに米国ニューヨークで乗った送迎車には、トンネル通過のための端末が備わっていたことも覚えています。そこで調べてみると、国土交通省が細かく調査をした結果があったので、それを紹介しながら、日本のETCシステムについて考えていきます。

まず欧州について見ると、高速道路で有料としているのは、乗用車ではフランス、イタリア、スペインなど一部の国ですが、大型トラックは逆に有料の国が多くなっています。ドイツのアウトバーンも大型トラックについては 2005年から有料です。理由としては、大型車の通行は道路を傷める度合いが大きいうえに、鉄道や船舶へのモーダルシフトを促すという目的もあるようです。
乗用車とトラックの課金の違い
そこで使われているのは、日本のETCより小型でカードや配線が不要の端末や、ビニエットと呼ばれるシールで、どちらもフロントウインドウに貼り付けます。端末の価格は地域や会社によって差があるようですが、フランスでは年間20ユーロぐらい。シールは通行料金を定額制としたタイプ、GPSなどで走行区間を記録して料金を徴収するタイプなどがあります。どちらも日本のETCと比べるとはるかにシンプルです。

日本は小さく軽い製品を作り、きめ細かいサービスを提供するのが得意なはずですが、ETCについては逆になっていることがおわかりでしょう。機器や手続きが複雑になれば、それだけ関わる会社や団体も増えることになるわけで、さまざまな利権が絡んでいるという噂は、内容を見ていくほど頷いてしまいたくなります。
フランスの課金方法
国土交通省の海外の高速道路料金の資料はこちら

さらに言えば、欧州では大都市近郊の区間は無料としたり、均一料金としたりして、出入口を増やしつつ料金所を省略しています。料金所を減らせば設備投資を抑えられ、通行料金の引き下げにもつながるでしょう。首都圏では小田原厚木道路がこのシステムですが、かつては均一料金だった中央自動車道の高井戸〜八王子間は、現在はETCは区間ごとの料金となってしまいました。

海外の話に戻ると、端末はコンパクトでありながら、割引制度には対応できているようです。その手法も、日本のように時間を区切って行うだけでなく、道路の平均速度をチェックし、渋滞しているときは料金を高くするという、ロードプライシング的な制度を採用しているところもあります。料金所の手前で割引を待つことはできなくなりますが、合理的な手法ではあります。
スイスのビニエット
今回の障害では、NEXCO中日本の対応も非難されました。鉄道が事故でストップした際は、改札をフリーとして、特急料金は払い戻しをするのが一般的ですが、今回は当初有人ゲートのみで対応したものの大渋滞となったことから、途中でETCゲートを開放しました。ところが同時に、後日利用者自身で精算をしてほしいという通達を出しました。

もし私が同じ状況に陥っても、自分から支払いには行かないでしょう。料金を払わないわけではありません。そのまま通過して良いと言ったのはNEXCO中日本なので、同社が料金を徴収するのが筋だからです。そして仕事や生活に支障が出た場合は、損害の程度を明確にしたうえで、精算してもらいます。ひとりでは相手にされない可能性もあるので、同じような損害を受けた人たちとともに、集団で対応に当たるのが良さそうです。
アメリカの変動料金
今回の一件で、日本と海外の高速道路の料金徴収に大きな差があり、日本のそれはとにかく前時代的なので、最新のデジタル技術を使うことでスマートなシステムになってほしいという思いを強くしました。高速道路を走るすべての人が、同じような気持ちを抱き、問題提起の大きな流れに発展していくことを望んでいるし、今はその絶好の機会であると考えています。

4月になって新しい生活をスタートした人もいるかと思います。中には最近運転免許を取得したという人もいるでしょう。今回はそんな人たちの多くが通った自動車教習所がテーマです。今月から普通自動車に「AT(オートマチックトランスミッション)自動車」という分類が加わり、まず「AT普通免許」の試験に合格したあと、MT(マニュアルトランスミッション)の技能教習を受けて試験に合格するという手順になったからです。

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これらは今月改正された道路交通法施行規則などの法律でも定められています。とはいえすべての教習所がすぐに対応できるわけではないので、猶予期間も設けられているとのことです。なおここで言う自動車教習所とは、運転免許試験場での実技試験が免除される指定自動車教習所のことであり、ATとはCVTやDCT(デュアルクラッチトランスミッション)など自動変速機すべてを含むこととします。

今回のルール変更について、一部の人から批判的な意見が出ていますが、日本自動車販売協会連合会が2019年に発表した新車に占めるAT比率は約99%なので、妥当な判断でしょう。このテーマに限った話ではありませんが、反対意見が目立つのは、賛成の人が声を上げていないことも関係していて、実際は問題ないと考えるサイレントマジョリティーが圧倒的な多数だと想像しています。

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MTには安価で燃費が良いなど、数多くのメリットがありました。しかし現在は、新車のほぼすべてがATということもあって、MTと同価格という車種もいくつかあります。燃費は多段化や無段化が進んだおかげで、MTの数字を上回ることが多くなっています。そしてフルハイブリッド車や電気自動車、燃料電池自動車は、そもそもATしかありません。

日本のAT比率は世界的に見ても突出して高いようですが、それはこの国の自動車メーカーがAT中心のラインナップを敷いてきたことも大きいと考えています。今回のルールはそれに合わせたものであり、不満があるならまず自動車メーカーに言うべきでしょう。ペダル踏み間違え事故の防止のためにMTが良いという声もあり、個人的には理に叶っているとは思いますが、これも自動車メーカーが作る車両のペダル配置が変わらないことが理由にあります。

それに日本のAT比率は突出していますが、海外でもATは浸透しつつあります。たとえばフランスは、かつてはAT免許は身体的な障害を持つ人のために用意されていましたが、2017年からは一般の人も取得可能になっています。教習時間は13時間で、MTの20時間より短く、取得後にMTに限定解除したい人は、7時間の追加教習を受けることで切り替えできるそうです。今年3月までの日本の制度とほぼ同じと言えるでしょう。


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フランスのAT免許についてのオフィシャルサイトはこちら(仏語)
 
それよりも気になることがあります。まず技能検定の車両に、全長4.4m以上、全幅1.69m以上などの規定があります。当然ながら教習のときもこの車両を使うことになりますが、昔はともかく、現在国内で販売している新車で、これに近い外寸の車種はほとんどありません。唯一の例外がトヨタ自動車「カローラアクシオ」ですが、今年10月に教習車ともども生産終了となることが発表されています。

その後はマツダがタイで生産している「マツダ2セダン」ベースの教習車のみとなります。日本の規定なのに、国内に該当する販売車種がないという、妙な状況になるのです。しかも全長の要件をクリアするためなのか、世界的に少数派になりつつあるセダンにこだわっています。いずれにしても、これから運転免許を取得しようと考えている人たちのハードルを下げる方向に変わっていってほしいものです。

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さらに教習所のコースは80m以上の直線持つこと、頂上の高さが1.5m以上の坂道を2つ以上用意することなどの規定があり、教習時間も法律で定められています。普通免許の技能教習時間は、AT免許が31時間、MT免許が35時間となっています。フランスのそれが少ないのは、教習所のコースがなく、シミュレーターを体験後すぐに路上講習になることも関係しているでしょう。

こうした規定が免許を取得する人だけでなく、教習所を運営する側にも負担になっていることは明らかでしょう。そのため石川県輪島市では、民間での教習所運営が難しくなり、2011年に第3セクターの運営に切り替わったりしています。他にもこうした状況に悩む地方は多いのではないでしょうか。最初に書いたAT免許優先のルールも、教習所の厳しい運営状況が裏にあるという声も聞かれます。

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なので個人的には、どこで線引きするかは議論の必要はありますが、自動車が生活必需品である地方では、フランスのように路上教習のみとして、運転免許取得者や自動車教習所の敷居を下げてはどうかと考えています。それが地域活性化につながればという想いを込めての提案です。いずれにしても今の教習所では、AT免許の是非以上に、改善すべき問題が数多く存在していると思っています。

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