THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2025年05月

前から訪れたいと思っていた場所に行くことができました。大阪梅田のJR西日本大阪駅北側に広がる「うめきた公園」です。ここは以前は貨物駅があった場所で、まず東側の敷地に2013年、オフィスや住宅、商業施設などが入る「グランフロント大阪」がオープン。そして昨年9月に公園と高層ビルなどからなる西側の「グラングリーン大阪」のうち、南北の高層ビルとうめきた公園の南側がまちびらきしました。残るうめきた公園の北側は2年後の春に完成する予定とのことです。

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まず驚いたのは、関西を代表するターミナルである大阪梅田の駅前に、ここまで大きな広場があることです。面積は北側を含めれば4.5ha、東京ドーム2個分だそうです。しかも全面芝生で、出入りは自由。もちろん無料です。西側には水遊び場(水盤)まであります。数ある日本の広場の中でも、ターミナル駅のそばにこんなに広く、自由に使えるスペースがある場所は、珍しいのではないでしょうか。

続いて気づいたのは、座る場所が多いことです。芝生広場はもちろん、周辺の遊歩道も広く取ってあって、いたるところにベンチが置かれています。ウォーカブルシティという言葉が日本にも広まって久しいですが、歩き続ければ当然疲れるわけで、休む場所が必要です。しかし東京の繁華街では、お金を払って飲食店に入るなどしないと、座ることができないような場所が多くあります。

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ただこれは、うめきた公園に限った美点ではありません。前後して訪れたなんば駅前広場や、回を改めて紹介する大阪・関西万博会場を含めて、大阪は座る場所に恵まれていると思いました。さらにキタとミナミの広場に共通しているのは、自動車の進入禁止は当然のこと、自転車も押して歩くようにしていることです。自転車も車両なのだから当然のことですが、ウォーカブルシティへの本気度を感じました。

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植栽の配置も印象的でした。芝生広場の周囲を巡る遊歩道や、周辺の建物をつなぐペデストリアンデッキから広場がどう見えるかを考えて、木や花を配しているような感じがしたのです。たしかにそういう場所からの眺めは絶好でした。日本は緑化というと、樹木の本数やCO2の吸収量などを話題にしがちですが、現地を訪れる人にとって大事なのは量ではなく質であることを教えられました。

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写真を撮っていると、この周辺で仕事をしているらしき人たちから「一等地なんだからビルを建てれば儲かっただろう」というような言葉が聞かれました。おそらく東京だったら、この敷地を高層ビルで埋め尽くし、経済効果を押し上げるという開発が主流になるでしょう。

その東京では今週、中野区が中野サンプラザの再開発を断念し、住民説明会を開きました。隣の区の出来事なので覚えていますが、もともと現区長は、再開発の見直しを主張して区長選挙で当選したものの、まもなく再開発推進に舵を切りました。それでも断念したのは、当初から1800億円だった予算が3500億円に膨れ上がったため。既存の建物を改修して使う場合は100億円ほどで済むとのことですが、区では再開発を前提として計画を練り直すそうです。

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うめきた広場の心地よさを身をもって知ったひとりとしては、建物の再利用が難しければ広場にして、サンプラザの遺産を引き継ぐ野外ステージを設置するような手法もあるような気がしたのですが、東京なので「箱で稼ぐ」手法から抜けるのは難しいのでしょう。かつて商人の街と呼ばれた大阪は、そういった再開発路線は限界がくると感じて、「広場で憩う」まちづくりを目指しているのかもしれません。

毎年この時期に神奈川県の横浜メッセで行われる「人とくるまのテクノロジー展」は、自動車に関係するさまざまな業種の企業や団体が最新技術を展示する催しで、私も何度か足を運んでいます。今年も時間ができたので訪れたのですが、その中に興味深い車両がありました。スズキの軽トラック「キャリイ」を電気自動車化した実証実験車両です。

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この車両は今年4月に実証実験が発表されたときから、概要を見て気になっていました。もともと定置用として使われていたバッテリーを使用したうえに、必要にして十分なバッテリー容量と動力性能に留めたとされていたからです。加速性能や満充電での航続距離などをアピールしてきた乗用車とは違う考え方に興味を持ちました。

開発担当者に話を聞くと、今回の実証実験は農家が対象ということで、止まっている時間が長いことから定置式のバッテリーを採用したとのこと。もちろん車載するにあたり、振動や遮熱などのテストはしているそうです。そして容量を抑えたのは、走行距離が短いうえに、将来市販した場合の価格を抑えるためという説明が返ってきました。

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具体的な最高速度や航続距離は明らかにしてくれませんでしたが、高速道路を使って長距離移動するのは難しいようです。そこで思ったのは、そもそも軽トラックの使い方は近距離低速走行が多いので、高速道路の走行を禁止として、安全基準などを見直し、価格を抑える方向に持っていってはどうかということです。

このブログで4年前、山口市のパークアンドライド「置くとバス駐車場」を紹介しました。開設の理由として市の担当者は、高齢の農家が自分の軽トラックで高速道路に乗り遠くに出かけてしまうのが怖いという家族の声を挙げていました。市の施策になっているので、ある程度まとまった声があったのでしょう。本人はともかく、家族にとっては、軽トラックで高速道路を走ってほしくないという気持ちがあるようです。

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私も何度か軽トラックを運転したことがありますが、心理的に安心して出せるスピードは80km/hあたりが上限だと感じています。現在の高速道路は一部区間で最高速度が120km/hに引き上げられていて、軽自動車も法律上はそこまで出すことができますが、とてもそういう気持ちにはなりません。それなら高速料金を払わず、一般道路を60km/hで走ったほうがいいという気持ちになります。とりわけ交通量も信号も少ない地方ではそう思います。

欧州では、日本の軽トラックに相当する作業用車は、軽自動車のひとつ下のクラスである超小型モビリティのL6e/L7eのカテゴリーになっています。高速道路は走れませんが、使用目的から言えばデメリットとは考えられません。特に最近増えている電動車両は、低速近距離移動が向いているし、レギュレーションの緩さは作業目的に合った車両を作る点でも有利でしょう。今週イタリアのフィアットが、中東やアフリカ向けとして発表した電動三輪トラックもこのカテゴリーです。

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同じ軽商用車のパンについても、似たようなことを感じています。大型トラックを上回るスピードで高速道路走るのは、個人的には安全面でも快適面でも不安があるし、現実に高速道路を走る姿はあまり見かけません。そもそも現在はスピードよりも、安全性能や環境性能が大事という雰囲気になっています。120km/h出すためのスペックを与えるより、身近な場所で働くツールに徹した内容にしたほうが、ユーザーにもメーカーにも良いのではないかと、スズキの実証実験車両を見て思いました。

昨日、私が乗っていたバスに、タクシーが接触する事故がありました、写真は発生後、後続のバスに乗り換えようとしているところです。運転士の後ろに座って見ていた私の記憶をもとに説明すると、停留所から発車したところ、空いていたバスの前の車線に入ろうとしたタクシーが無理に車線変更しようとして、バスの右前端にタクシーの左後輪部分が接触したという状況です。乗客と運転士には怪我はありませんでした。

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バスはこの先の交差点を直進するので、右に車線変更する必要がありますが、事故後の写真でわかるように、まだ車線変更はしていません。当たった場所からも、バスの前にタクシーが強引に進入した後、さらに左にハンドルを切って進路を塞ぐような動きをしたことが想像できるでしょう。タクシーには、バスが発車したことは見えていたはずで、バスの後方で車線変更をすれば何も起こらずに済んだことは確実です。

路線バスとタクシーは、どちらも道路運送法で規定されています。法律ではそれぞれ一般乗合旅客自動車運送事業、一般乗用旅客自動車運送事業という名称になっています。しかし道路交通法では、路線バスの優先レーンについての規定、停留所から発進するときの進路変更優先などはあるものの、基本的に一般の自動車と同様のルールで走ることになるようです。ちなみに路面電車は道路交通法に通行方法などの規定があり、いくつかの場面で自動車より優先される存在であることが記してあります。

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ただ運賃を見比べればわかるように、バスはタクシーよりはるかに敷居が低い、言い換えれば公共性が高い交通手段です。しかも路線バスは時刻表に沿って運行しているので、この車両の乗客はもちろん、このあと通るバス停で待つ乗客にも影響が及ぶことになります。タクシーにも乗客がひとり乗っていたようでしたが、バスは10人ぐらいいました。いろいろな点で事故による影響は、バスとタクシーでは大差があります。

他車が起こした事故でも、路線バスは大きな影響を受けます。自宅の近くの道路で以前、ながら運転が原因と思われる横転事故があったことは紹介しましたが、先日も似たような事故が起こりました。全車が側道に迂回することになって、数時間にわたり大渋滞となりましたが、側道は路線バスのルートでもあるので、バスも影響受けました。乗客は大変だったと思うし、先のバス停で待っている人も困ったはずです。

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こうした状況に直面して、路線バスは道路交通法での優先順位を、少し上げても良いのではないかと思っています。たとえば事故による遅れが発生した場合には、事故の当事者が鉄道のような払い戻しを負担するなどの制度があっても良いのではないでしょうか。もちろん運転士の負担を軽減するためもあります。全国的な運転士不足を解決するためには、運転士の待遇を上げることが重要になると考えているからです。

昨年何度もメディアを賑わせた「物流の2024年問題」というフレーズ。もちろん今年になって解消したわけではなく、物流だけでなく移動にも関係したテーマであり続けています。とりわけバスは、それ以前から運転士不足が課題になっていたうえに、人口減少やマイカー普及などの影響を受け、新型コロナウイルス感染症で利用者が落ち込んだことなどから、トラック以上に厳しい状況だと感じています。

こうした状況を受けて国土交通省では昨年度、完全キャッシュレスバスの実証運行を実施しました。大型連休前に報告書が公表されたので、今回はこのテーマを取り上げます。ちなみに海外では国交省の資料にあるように、英国ロンドン、韓国ソウル、オランダのアムステルダム、シンガポールなどいくつかの都市で完全キャッシュレスを実現しており、現状報告なども報告されています。

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今回紹介する実証運行は、昨年7月に事業者の募集を行い、翌月採択。合わせて一般乗合旅客自動車運送事業標準運送約款を一部改正すると、11月からの実証運行開始に向けて、プレスリリースやポスター掲示により利用者への周知を図りました。さらに実証運行中は、国土交通省側で統一の報告様式を作成し、事業者は1カ月ごとに実証運行の結果を様式に記入のうえ、報告を行ったとのことです。

実証運行には18 事業者 29路線が参加。実証運行前のキャッシュレス比率は、生活路線については多くが80%〜90%台で、100%という路線もありました。影響の少ない路線を選んだようです。一方空港連絡路線や観光路線では50%以下もありましたが、こちらはインバウンド対応という側面もありそうです。私も北欧諸国の移動で実感しましたが、通貨の違う国を複数巡ろうと考えたとき、いちいち現地通貨に替えるのは面倒だからでしょう。

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さらに福岡市内を走る西日本鉄道(西鉄)の連節バスでは、以前から交通系ICカード利用者のみ、後ろの車両のドアから降りることが可能で、全面キャッシュレス実証運行でもこの方式を踏襲していました。芳賀・宇都宮LRTでも同様の取り組みがありますが、大量輸送をスムーズにこなすために有効な仕組みだと思っています。

実証運行中の利用者からの問い合わせは、半数の事業者で「なし」だった一方、3割以上の事業者は運転士の負担が減ったと答えています。逆にネガティブなポイントとしては、IC カードの残高不足、スマートフォンの電池切れ、カードのシステム障害、アプリのエラー、災害時の通信環境などが挙げられていました。

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私はMaaSの書籍を複数出しているうえに、現金は落としたり盗まれたりしたら他人の物になる怖さがあるので、公共交通の利用に限らず、日常生活はほぼキャッシュレスになっていますが、今週ブログで紹介したこともある茨城県日立市のひたちBRTで自動運転の営業運転が始まったので乗りに行った際、改めてキャッシュレスを推進したいと思う出来事がありました。

当初は交通系ICカードが使えないので現金払いにしようと思い、整理券を取って乗車しました。 ところがその後、数人しかいない乗客のひとりが途中の停留所で降りる際に、小銭が足りず、高額紙幣しかないないことを申し出たようで、運転士が財布を取り出して1000円札に両替し、それを両替機で小銭にして支払うというシーンがありました。このやりとりだけでも1分ほどを要していました。

これ以上運行に影響を与えてはいけないと思った私は、スマートフォンでキャッシュレス情報を調べました。PayPayなどのQR決済は整理券を取ったあとも使用可能とのことなので、それで支払いました。その後の利用では、スマートフォンに入れているクレジットカードのタッチ決済を使用しました。こちらは整理券を取らない代わりに、乗車時と降車時にとタッチが必要ですが、反応に不満はありませんでした。

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もちろん前に書いたようなトラブルの可能性はあるでしょう。そのうちスマートフォンの電池切れは利用者の責任になりますが、小銭の用意はバス停などに記してあるはずなのに、事業者の責任にする人が多いようです。しかも使い慣れた手段なので、新たに手順を覚える必要はありません。多くの利用者にとって楽な決済手段ということは言えるかもしれません。

しかしながら最初に書いたように、バスをはじめとする公共交通の運営は厳しい状況です。本来はこのブログで何度も書いてきましたが、海外のように税金や補助金主体の運営にすべきでしょう。しかし現状の制度では、合理化を推し進める以外にありません。キャッシュレス決済は鉄道のワンマン運転や駅の無人化と同じように、そのための手段のひとつであることを、多くの利用者に理解してもらいたいものです。

大型連休では中日(なかび)になることが多い4月30日は、図書館記念日だそうです。今から75年前のこの日に、公立図書館は原則無料などを定めた図書館法が交付されたことを記念して、定められたとのことです。そこで今回は、ジャーナリストとして欠かせない存在である図書館や書店、そして本について、モビリティとの関係を交えながら書いていきたいと思います。

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先月、子どもの頃は毎月購読していて、近年は記事を書かせてもいただいた鉄道専門誌「鉄道ジャーナル」が休刊になりました。自分と関係の深い雑誌としては、かつて編集部に在籍していたこともある自動車専門誌「カー・マガジン」が4年前に休刊となって以来の、大きな出来事になりました。これ以外のジャンルでも、雑誌の休刊のニュースはいくつか目にしていて、厳しい状況にあることを教えられます。

インターネットの普及が大きな理由であることは間違いないですが、それは速報性で劣るだけではないと思っています。インターネットは自分の好きな情報だけを選んで見ることができるので、興味がない情報は見なくなり、さまざまな話題を幅広く扱う新聞や雑誌、テレビやラジオなどは、無駄な部分が多いと考える人がいるような気がするのです。それが証拠に、特定のテーマを深掘りする書籍の販売は、雑誌ほどは落ちていません。

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こうした傾向は、いろいろな部分で弊害を生み出しています。そのひとつが鉄道の工事運休のときの反応です。事前にいろいろな方法で告知されているのに、自分の興味のある情報しか見ないので、スマートフォンという情報端末を手に持っていながら、知らなかったという言い訳を平然とする人がいます。海外では昨日から、タイ入国時に米国ESTAなどど同様の電子渡航認証システムが必要になりましたが、それを知らずに空港で慌てて手続きを始める人がいたようです。

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こういう場面で知らなかった側に立ち、交通事業者の情報伝達に問題があったように報じるマスメディアにも疑問を抱いています。幅広くニュースを扱う新聞やテレビを見ていれば、運休情報は手に入るはずなので、自分たちの存在意義をアピールできるチャンスなのに、なぜか敵対関係に位置付けがちなSNSの側に立っているからです。報道機関が民の側に立つこと自体は非難しませんが、その立場に固執するあまり、情報社会の変化に気づかないというオールドメディアぶりは改めてほしいものです。

そもそも私は新しもの好きで飽きっぽい性格なので、図書館や書店に行ったら専門のコーナー以外にも足を運んで、気になる本があれば借りたり買ったりしています。ただ書店は本を買う場なので、いろいろな書物を気ままに見て回るには図書館が最適です。最近読んだ脳科学の先生の本では、脳は新鮮な情報を入れ続けていれば衰えにくいと書いてあって、いままで以上にいろいろな本を読もうという気持ちになりました。

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多くの人がそのような体験を得ることができるよう、せめて公立の図書館は公共交通で行きやすい場所に用意してほしいものです。私が訪ねたところでは、富山市、宮城県名取市、石川県七尾市などが、駅や停留場のすぐ近くにあって便利そうでした。たとえ列車やバスの本数が少なくても、待ち時間を読書に充てることができそうです。本を通じて多くの情報に出会う習慣をつけることは、移動はもちろん、生活のあらゆる面に生かされると考えています。

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