THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2025年07月

今週は私も所属している日本自動車ジャーナリスト協会で、神奈川県にあるいすゞ自動車藤沢工場での勉強会がありました。最新の小型トラック「エルフ/エルフEV」に試乗するとともに、トラックのコネクテッド、自動運転、電動化についての説明があり、一時期自動車業界を賑わせたCASE(コネクテッド、オートノマス、シェア&サービス、エレクトリック)というフレーズを思い出しました。

DSC04688
いすゞ自動車のオフィシャルサイトはこちら

乗用車は個人の嗜好で選ばれるので、CASEについても最終的には個々のドライバーに任されます。しかし日本でもさまざまな気候変動を引き起こしている地球温暖化などの社会課題に、自動車が対応することは不可欠で、商用車が率先してこの問題に取り組んでいかなければなりません。加えてドライバー不足への対策も重要です。当日はこうした背景を含めての説明がなされたので、自分を含めて普段トラックに触れていない人も理解できる内容でした。

その中で印象に残ったのは、3分野ともに独自開発をしていることです。自動運転については、このブログで以前紹介した高速道路でのレベル4を話題に挙げていましたが、国が主導する「RoAD to the L4」で規格が共通なのはインフラ部分だけで、車両側は各社が独自に開発しているそうです。電動化についても同様で、コネクテッドも他のトラックメーカーとの関連はないとのことでした。

【P15】いすゞ|0722商用車説明会プレゼン資料

今週は東京秋葉原のUDXアキバ・スクエアで開催された「まちづくりデザインWEEK」にも足を運びましたが、そこには日野自動車のグループ企業、日野コンピューターシステムが出展していました。いすゞが紹介したのは顧客向けの物流最適化だったのに対し、日野は官公庁や自治体向けの脱炭素ソリューションをアピールしていました。いすゞによると、自動運転もコネクテッドも試行錯誤の段階で、ある程度のレベルに到達したところで統一化という流れになるのではないかとのことでした。

スライド1
日野コンピュータサービスのオフィシャルサイトはこちら

ただ両社も関わるバスでは10年ぐらい前から、米国Googleとオレゴン州ポートランドの交通事業者TriMetが共同開発したGTFSを母体とする「GTFS-JP(標準的なバス情報フォーマット)」が導入され、全国の多くのバスの停留所、時刻表、運賃といった静的情報に加えて、渋滞による遅れなどの動的情報が、GoogleマップやYahoo!乗換案内などのアプリに反映されるようになっています。トラックもコネクテッド領域では、フォーマットの統一化が望ましいのではないかと思いました。

まちづくりデザインWEEKではヤマトグループの企業、ヤマトオートワークスの展示も目を惹きました。グループで使う10万台近い車両の整備や管理を行うという経験を生かし、社用電気自動車(EV)の導入計画立案、充電器の設置場所検討、車両および充電器のメインテナンス代行、導入効果の検証および報告などを、ワンストップでサポートする「EVライフサイクルサービス」を紹介していました。

IMG_8108 (1)
ヤマトオートワークスのオフィシャルサイトはこちら

日本はいわゆる「EV嫌い」が根強いうえに、乗用車の感覚で商用車を考える人も多く、それが社会的に重要な商用車のCASEにまで影響を及ぼしていると感じています。そのための対策として大事なのは、敷居を下げること。メーカーでは日野に続いていすゞでも、普通自動車免許で運転できるトラックを登場させていますが、同時にヤマトのような導入サポートもありがたいと感じました。

前回のブログで報告した、鎌倉市でのウォーキングプログラムでは、鎌倉駅周辺から深沢地域へ、JR東日本横須賀線と湘南モノレールを乗り継いで行きました。私も登壇したワークショップは深沢地域で行ったので、帰りも湘南モノレールを使いました。ひさしぶりに乗車して、あらためて独特の楽しさがある公共交通だと思いました。

IMG_7685
湘南モノレールのオフィシャルサイトはこちら

現在営業中の日本のモノレールは、スウェーデンの学者アクセル・レナート・ウェナーグレンがドイツで設立したアルウェーグ社の技術をもとにした跨座式(アルウェーグ式)と、フランスのミシュランやルノーなどが設立したサフェージュ社(フランス経営管理研究株式会社)の技術を継承した懸垂式(サフェージュ式)に分けられます。前者は日立製作所、後者は三菱グループが国内での展開を進めました。

湘南モノレールは、かつて京浜急行電鉄が保有し、日本初の有料道路かつ自動車専用道路でもあった道の上を通っています。当初は通常の鉄道を考えたそうですが、起伏が激しいので断念し有料道路化。しかし第二次世界大戦後、沿線に三菱電機の工場があったこともあり、懸垂式モノレールの導入となったそうです。なおモノレールの開通後、有料道路は一般道路に切り替わりました。

たしかにゴムタイヤで走るモノレールは、アップダウンに強い乗り物です。湘南モノレールが開通した1970年前後は、全国的にモノレールの展開が進んでいた時期ではありますが、持ち味を生かした選択には今でも納得するところです。

ZnE5lpm069VX11At_C1_230617_stationValenton_zoomvuduciel_BD (1)
© Île-de-France Mobilités/Doppel France

懸垂式モノレールに似た「ぶら下がり式」の乗り物として、ケーブルを用いたロープウェイもあります。こちらもアップダウンに強いことから山岳地帯で多く見ますが、最近は都市型ロープウェイも出てきています。日本では横浜市が知られていますが、フランスのパリ周辺でも、新たにロープウェイによる都市交通が生まれようとしています。

ZnBTjJm069VX10AQ_C1_240617_Creteil_vueduciel_PointeduLac_BD (1)
© Île-de-France Mobilités/Doppel France

パリの南東に位置するイル・ド・フランス地域圏の都市クレテイユとヴィルヌーヴ・サン・ジョルジュの間4.5kmを結ぶもので、メトロ(地下鉄)のM、トラム(LRT)のTと同じように、C1という路線名が与えられました(詳細はこちら)。海外ではロープウェイとケーブルカーをケーブルトランスポートとまとめて扱うことも多いので、ケーブルの頭文字を当てたようです。今年中に開業予定で、5つの駅が設けられ、10人乗りのキャビンを30秒間隔で動かし、1日最大1.1万人を運ぶとしています。

現地の地図を見ると、湘南モノレール沿線のような起伏の多い土地ではありませんが、オフィシャルサイトでは貨物駅や高速鉄道の専用線、高速道路などが走っていて、クレテイユで連絡するメトロ8号線など、地上を走る鉄道の延伸は難しそうです。オフィシャルサイトでもロープウェイ選択の理由として、この点を挙げていました。同じ理由で道路整備も十分でないことが想像できます。ゆえにロープウェイは交通渋滞を解消し、交通空白地に移動の自由を与えるという目的もあるとのことです。

IMG_7692

2種類のモビリティサービスに共通しているのは、その土地の状況に合った乗り物を柔軟に選んでいることです。しかも移動することそれ自体が喜びになる乗り物でもあります。地表からかなり離れたところを、それなりのスピードで、アップダウンを繰り返しながら走る湘南モノレールは、それ自体がアミューズメントと言えます。とりわけ日本では、公共交通を維持していくうえで、こうした面は大切なことだと考えています。

先月のこのブログで告知した、鎌倉ウェルビーイングラボが主催し、ヤマハ発動機の街づくり活動TOWN EMOTION(タウンイモーション)が共催するプログラム「知りたいね、未来の街のこと〜徒歩15分歳の幸せ〜」は、7月6日の第3回を含めて終了しました。第2回に登壇させていただいた者として、参加した方々にこの場を借りてお礼を申し上げます。

IMG_7623 (1)

私も関わった第2回の模様については、記事にもしているので、興味のある方はご覧になっていただきたいと思いますが、その後気になって世界ウォーカブルシティの最新事情がどうなっているか調べていくと、興味深い事例に当たりました。

昨年11月に米国ニューヨークで、信号無視や横断歩道のない道の歩行を認める法案が成立し、今年2月に施行されたというのです。違反切符を切られる対象が有色人種に集中しているとの批判に配慮したとも言われています。たしかに過去の写真を見ると、人種を問わずかなりの人が横断していました。信号無視は好ましくないという意見もあったようですが、上記の結果に落ち着いたそうです。

IMG_1041

さらにインターネットで、外国に暮らす日本人の書き込みを見ると、英国でも歩行者の信号無視を違反としていなかったり、イタリアではそもそも歩行者用信号機をあまり設けていなかったりという記述も見つかりました。私もよく訪れるフランスは、歩行者用信号機が赤でも渡る人が多いことで知られていますが、理由として人権尊重を挙げる書き込みもありました。

いずれもルールをきちんと守ることが当然と考える人が多い日本では、考えられないことかもしれませんが、歩行者優先という思想が強く根付いていることも感じます。 というのも、日本の道路は歩行者の横断禁止を標識などで厳しく規制しており、実際にも横断する人は少ないのに、このブログで書いてきたように交通事故死者数に占める歩行者の割合が、他国と比べてかなり高いからです。

IMG_1057

私は郷に入れば郷に従えということわざどおり、日本に来たら日本のルールで移動をしてもらいたいと思っています。最近話題になっている「外免切替」についてもそうで、同じ道路を走るわけですから、日本人の運転免許と同等レベルの試験をすべきだと考えます。



しかしながら日本の道路交通は完璧ではありません。とりわけ課題となっているのが、上に書いたように歩行者が犠牲になる比率が高いことです。横断歩道で渡りたい歩行者がいても一時停止しないなど、自動車優先という意識を持つ人が多いからでしょう。逆に欧米は、車道を含めた道路全体を歩行者優先と考えているので、信号無視は大目に見るなどの考えに至るのかもしれません。

鎌倉に話を戻すと、鶴岡八幡宮に向かう若宮大路は中央の参道「段葛」に加えて左右に広い歩道があり、小町通りは午後は歩行者専用になるので、いずれも安全性は保たれていると感じていますが、狭い道では歩行者と自転車、自動車が混流しているところもあります。

IMG_7208 (1)

これに対して鎌倉市では、江ノ電(江ノ島電鉄)などと共同でパーク&ライドを展開していますが、行政や公共交通事業者ができることには限りがあります。肝となるのはやはり、個々のドライバーが歩行者優先という原則をしっかり持ち、観光客が多く訪れる場所では自動車の運転を控えるなどの心構えでしょう。そんなことを、久しぶりに鎌倉を歩きながら思ったのでした。

今から6年前の2019年7月5日、自宅から近い東京メトロ丸ノ内線方南町駅に大きな動きがありました。路線図を見ていただければわかるように、丸ノ内線は池袋〜荻窪間の本線と、途中の中野坂上駅から方南町駅に向かう通称・方南町支線があります。それまで方南町駅を発車する電車は、すべて中野坂上駅止まりでしたが、この日から一部の電車が池袋方面に直通運転を始めたのです。

IMG_7741

私は直通運転のニュースを知って、2016年秋に近くに引越しました。2番目の写真はその頃の方南町駅で、当時は短い3両編成でした(現在は6両)。妻の通勤が楽になりそうというのが、引越しの主な理由でした。実際には翌年のコロナ禍でリモートワークとなり、今もそれが続いているので、予想どおりとはなりませんでしたが、自分を含めてお出かけの際には、行きも帰りも直通運転のありがたさを感じています。

IMG_2746 (1)

そして周囲では自分たちの生活以上に、変化が大きくなっています。駅の周辺には集合住宅が続々と建設され、一戸建ての新築も見ることが多くなりました。いちばん驚いたのは、引っ越してきた直後に私がすんなり借りることができた駅前の自転車駐輪場を、最近妻も利用しようとして申し込もうとしたら、数十人待ちだったので諦めたということです。

気になって杉並区全体、区役所のある南阿佐谷1丁目、方南町駅のホームが位置する方南2丁目の、2015年と今年の7月1日の人口を比較すると、以下のようになりました。

杉並区合計     551,803人→581,829人 105.4%
阿佐谷南1丁目  7,507人→7,917人    105.4%
方南2丁目         4,562人→5,330人            116.8%

東京23区内ということもあって増加基調ですが、区全体と南阿佐谷1丁目の増加率は同一なのに対して、方南2丁目の増加率が大きいことがわかります。ただし杉並区の中では、方南町駅は東側の端にあるうえに、方南町支線の他の駅はすべて中野区なので、沿線という捉え方をされないことが気になっています。区にとっては税収増などの恩恵はあるはずなので、今後は駐輪場整備などを推進していってほしいと感じています。

IMG_7718

すべての電車が直通運転するわけではなく、朝夕は増えるものの、日中は1時間に2本に限られています。当初は日中は1時間3本でしたが、コロナ禍を機に本数が減るという動きもありました。それでも妻も私も、特に不満なく直通運転の電車を選んで乗っています。多くの人が、それでも直通運転に価値があると感じて、移住してきたのでしょう。

IMG_7702

東京や大阪では、ひとつの路線にいろいろな鉄道会社が乗り入れています。わかりにくいと思う人がいるかもしれないし、遅れが発生すると多くの路線に波及するという欠点もあります。私の場合は同じ路線なので、少し状況は違いますが、沿線に住む人にとって直通運転が大きなメリットというのは、共通して言えることだと思っています。

このページのトップヘ