THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2025年09月

今週末は私も所属している、日本福祉のまちづくり学会の全国大会参加のため、久しぶりに石川県小松市を訪れています。本日自分の研究発表と、研究討論会への出席を済ませたところです。発表および討論会を聞いていただいたみなさまには、この場を借りてお礼を申し上げます。

今回のテーマは、自分の活動範囲を生かして、ライバルにも挙がりがちな自家用車と公共交通の対比としました。公共交通の側から見ると、マイカーは無敵と思われがちですが、実際は車両価格や燃料代の高騰など、厳しい面もあることを取り上げました。加えて、運転中のスマートフォン注視や操作が道路交通法で禁止されていることにも触れました。

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公共交通を利用しているときは、言うまでもなく通話は控えるべきですが、私を含めて現在、スマートフォンの主な用途が通話という人は少数派で、動画やゲーム、SNSをはじめとするアプリの利用がメインになるでしょう。これらは音漏れに気をつければ、自由に使えます。これは公共交通の大きなアドバンテージではないかと考え、発表に盛り込みました。

ただそのためには、より快適に利用できる環境を用意することも大切です。一例を挙げれば、車内や駅構内などでのWi-Fi提供です。ブログで何度か紹介している、栃木県の芳賀・宇都宮LRT (ライトライン)では、すべての車両および宇都宮市内の停留場に、フリーWi-Fiサービスがあります。先日、平日昼間に乗車すると、かなりの人がスマートフォンを見ており、私もストレスなく使えました。これもまた公共交通の魅力のひとつだと再認識しました。

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一方の自家用車には最近、ディスプレイオーディオなるものが装備された車種があります。スマートフォンを有線あるいはBluetoothで車両と接続すると、インパネ中央のディスプレイで地図を表示したり、音楽を流したりできるもので、私が所有する車両にもついています。

ただし安全性を考えてでしょう、YouTubeなどの動画は見ることができません。カーナビ画面で走行中にテレビを見ることと同じで、違反になるからでしょう。ところがインターネットを見ると、ディスプレイオーディオでYouTubeを見ることができるような改造を紹介しているサイトがあります。驚いたのはその中に、自動車メーカー系列のディーラーもあったことです。

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前回のブログで、埼玉県小鹿野町で開催されたフォーラムに出席したことを書きましたが、乗用車よりも目線の高いモーターサイクルで高速道路や国道などを移動していてわかったのは、スマートフォンを見ながら運転している人がかなりいたことです。とりわけ目についたのはトラックでした。パトカーからは運転席が見えないのをいいことに、違法行為に及んでいるのでしょうか。

警察庁の統計では、今年上半期の携帯電話等使用による死亡・重傷事故件数は、違反の厳罰化が行われた翌年以降増え続けており、過去最高になっています。飲酒運転やあおり運転のように、やがて重大な死亡事故が起こり、それを契機にさらに厳しい処分になるという暗い将来が想像できます。

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そうならないためにも、商用車はともかく乗用車に乗る人は、スマートフォンを見ながら移動したければ公共交通を使うという習慣をつけてほしいものものだと、先週末のライダー経験を踏まえて思ったし、公共交通の事業者はこの点をもっとアピールしても良いのではないかと感じたのでした。

昨日は埼玉県小鹿野町で行われた、「第13回バイクラブフォーラム(BLF)im 埼玉・おがの」に参加してきました。このイベントは経済産業省や日本自動車工業会などの二輪関係団体および自治体からなる開催実行委員会が主催するものです。首都圏が舞台ということで、私も自分のトライアンフを駆って参加してきました。

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バイクラブフォーラムのオフィシャルサイトはこちら

小鹿野町という地名を初めて見る人もいるでしょう。埼玉県の西部、秩父市中心部の西側にある街で、面積は埼玉県の町で最大ですが、人口は1万人ほどです。ではなぜここでBLFが開催されたかというと、日本の自治体で初めて、「バイクでまちおこし」を始めたからです。BLFではもちろん、同町の取り組みの説明もありました。

小鹿野町長は、なによりも交通安全を大切にしたとのことで、その効果もあって、昨日まで交通事故ゼロを5093日も続けているとのこと。これは埼玉県トップだそうです。さらに地名の由来にもなった小鹿神社をバイク神社としてアピールしたり、専用駐車場を各所に用意したり、最初の写真にあるロゴマークを制作したりと、多彩な取り組みを進めています。

たまたま昼食で立ち寄った「MOTO GREEN CAFE」は、店内にホンダ(本田技研工業)のクラシックモデルが並んでいて、博物館のような眺めでした。100年以上前に建てられた銀行の蔵を用いており、バイクでまちおこしをしていることを聞き、ご自身が所有するバイクを置く形で10年前に営業を始めたとのこと。ライダーならずとも立ち寄りたいスポットのひとつではないでしょうか。

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BLFではパネルディスカッションで、他の地域の取り組みも紹介されました。国内からは、3メーカーの創業の地であり、過去2回BLFを開催している浜松市とともに、鳥取県八頭町の担当者が登壇。町内を走る若狭鉄道に隼駅があることから、スズキ「隼」の聖地となり、毎年8月の「隼駅まつり」には多くのライダーが訪れるそうです。鉄道とバイクのコラボは世界的にも異例だと思います。

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さらにグローバルな組織であるFIM(国際モータサイクリズム連盟)では、モトツーリズムを積極的に推進していて、26か国で展開してきたことや、日本人ライダーとして初めてパリ・ダカールラリーを完走した風間深志氏が立ち上げたSSTR(サンライズ・サンセット・ツーリング・ラリー)は、ダカールの海岸を思わせる石川県の千里浜なぎさドライブウェイをゴールとするなどの設定も注目され、わずか10年で国内最大のツーリングイベントに発展したことなどが紹介されました。

世界で販売される二輪車の半分以上は日本メーカーが生産しており、海に囲まれた山がちな国土に四季が彩りを添えてくれるおかげもあって、ツーリングを楽しめる道がたくさんあります。バイクの保有台数は1000万台レベルをキープしており、高速道路を走れる軽2輪と小型2輪の台数は増加しているそうです。であれば小鹿野町のような取り組みを、他の地域でも展開して良いのではないかと感じました。

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ちなみに今日は、小鹿野町の国民宿舎両神荘前広場で、BLFの関連イベントである「寄ってけ〜な!オガのツーリングキャンペーン」開催記念ステージが行われました。秩父の自然を満喫してもらうツーリングキャンペーンで、専用ウェブサイト「GPSモバイルスタンプラリー」にアクセスしたうえで、秩父エリアのチェックポイントを訪問してスタンプを獲得すると、スタンプ数に応じて抽選で商品がプレゼントされるとのこと。気になる方は挑戦してみてください。

東京都内でウェイモの自動運転実証実験車両を見かけることが増えてきました。グーグルの自動運転研究開発部門が独立する形で生まれたウェイモは、東京都内の大手タクシー会社、日本交通と提携したのに続き、トヨタ自動車とも協業を合意したので、今後は我が国でもタクシーなどの自動運転の展開に関わることが予想されます。それを考えれば実証実験は納得できる動きです。

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ところで最近、E2E(エンドツーエンド)という新しい自動運転の考え方が注目されています。私も最近知ったので、しっかり理解しているわけではありませんが、その範囲内で説明したいと思います。

従来の自動運転は「ルールベース」と呼ばれ、交通ルールをひとつひとつAIに読み込ませ、LiDAR(ライダー)などの高性能センサーや高精度地図(ダイナミックマップ)を使って実際の交通環境を読み取り、そこをルールに沿って走行するもので、ウェイモのほか日本の自動車メーカー、中国のバイドゥが立ち上げたアポロなどが採用してきました。

これに対してE2Eは、情報を取得するのはカメラだけで、その後はさまざまな交通環境を学習したAIがすべてを判断することから、この呼び名が付けられたようです。なのでLiDARや高精度地図は不要とのことです。生成AIが学校での勉強をしてこなかったのに、インターネットの情報を取り込んで文章を作成する状況に通じるところがあります。

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こちらは米国テスラが、母国で自動運転レベル2ではあるもののハンズオフ(手放し運転)を実現する高度運転支援機能「FSD(フル・セルフ・ドライビング)」でE2E方式を導入し、テキサス州オースティンで運用が始まった「ロボタクシー」に採用。日本では導入を前にテスト走行が始まっています。中国のファーウェイもこの方式を使っており、我が国では自動運転スタートアップのチューリングがこの方式に取り組んでいます。

E2E方式は、ルールベースでは戸惑ってしまう、路上駐車や道路工事などにも柔軟に対応できるほか、高精度地図が必要ないので、道を選ばずどこでも行けるという利点もあるそうです。なので限定領域で完全自動運転を実現するレベル4の上、限定領域なしのレベル5にはこちらのほうが適していると言われています。しかもLiDARや高精度地図を使わないため、コスト面でも有利です。だからでしょう、経済メディアでも取り上げることが多くなっています。

生成AIを使っていると、たしかに戸惑うことなくさまざまな質問に答えてくれますが、ところどころ適当に見繕って回答を出す、「ずる賢さ」を感じることがあります。なので法律分野などは、現状では信頼できるレベルにないと認識しています。E2Eに携わる関係者の中には、将棋や囲碁でAIが人間に勝ちはじめたので運転もAIでいけるのではないかという考えを持っているようですが、事故が起こると最悪の場合、他人や自分の命を落とす可能性があることは、わきまえておいてもらいたいと思います。

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経済産業省「『モビリティDX戦略』2025年のアップデート」はこちら

とはいえAIの進化のスピードは驚くべきレベルであり、当初は使い物にならなかった音声入力や翻訳は、今や信頼できるレベルに達しています。なのでE2Eの自動運転がルールベースと同等の信頼性を手に入れ、駐車車両や工事箇所をスムーズに回避していくようになれば、自動運転の主流になるかもしれません。 となるとやはり、受け手の気持ちが大事になりそうです。日本も自動運転の技術レベルは高いと信じているので、それを育てるようなマインドが求められていると感じています。

4月にこのブログでも紹介した自転車の交通反則通告制度(青切符)導入に動きがありました。警察庁では来年4月の導入を目指して、パブリックコメントを受け付けたりしてきましたが、このたび自転車の基本的な交通ルールと警察の交通違反の指導取締りの基本的な考え方について周知を行い、自転車の安全・安心な利用を図るための資料を「自転車ルールブック」として公表しました。

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50ページ以上にわたるボリュームがありますが、図や写真を多用し、赤切符・青切符に該当する違反は赤色あるいは青色のアンダーラインで示しているなど、わかりやすいと感じました。下で紹介したものは概要版になります。

個人的に印象的だったのは本題に入る前に、「普通自転車の歩道通行について」というページがあったことです。普通自転車については、2年前のブログで解説したので見ていただくとして、このような項目をわざわざ用意したのは、4月の発表時に取締り対象として「通行区分違反(逆走、歩道通行等)」とがあり、自転車での歩道通行が全面的に禁止となると思った人がいたことへの対応でしょう。

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当時のブログでは、道路交通法に普通自転車の歩道通行という項目があるので、全面禁止とはならないと書きました。自転車ルールブックでも、単に歩道を通行しているという違反については、これまで同様「指導警告」が行われ、基本的に取締りの対象となることはないと記してあります。

これに限らず、悪質・危険な違反行為でない場合は従来どおり指導警告となり、悪質・危険な違反をした場合に、これまでの赤切符に青切符が加わるというのが、来年4月からの大きな違いになります。

どのような違反があるかは、ガイドブックに書かれていますが、たとえば携帯電話を使用しながらの運転では青切符、それで事故を起こした際は赤切符になるということで、自動車の交通違反に近い内容です。他に赤切符は酒酔い運転・酒気帯び運転、妨害運転など、青切符は遮断踏切立入り、ブレーキのない自転車での走行などが挙げられています。

指導取締りを重点的に行う場所・時間帯も記されています。場所については各警察署ごとに「自転車指導啓発重点地区・路線」を指定するとのことで、ウェブサイトや自治体の広報誌などで示されるそうです。時間帯については、自転車関連事故の発生が多い朝の通勤・通学時間帯および日没前後の薄暗い時間帯を中心に、重点的に行っていくと示されています。

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また自転車で交通違反を繰り返した人は、青切符などの処理手続とは別に、自転車運転者講習の受講が必要となります。さらに自動車の運転免許を所持している者が、自転車乗用中に重大な事故や違反をしたときは、運転免許の停止処分を受ける可能性も書かれています。後者については異議を唱える人がいそうですが、個人的には同じ道路を通行する車両なのですから、妥当と考えます。

いずれにしても、来年4月以降は、このガイドブックに沿って取締りなどが行われることになりそうであり、警察庁のオフィシャルサイトで公開されているので、自転車を利用する、しないにかかわらず、道路を使う人は目を通し、自転車のルールはこうなるんだと頭に入れておくことが大切ではないでしょうか。

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それとともに大事なのは、青切符導入で自転車の安全対策を終わりとしないことです。日本は国民のおよそ2人にひとりが自転車を保有しており、移動分担率は欧州諸国と比べても上位に位置します。それを考えれば、走行空間が絶対的に不足しています。警察庁と国土交通省、自治体などが連携して、あくまで利用者目線での走行環境整備を進めていってほしいものです。

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