THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2026年01月

私の事務所の近くを走る京王電鉄が、明日から2月末日まで、ポイントサービス「京王トレインポイント」のうち、鉄道乗車時の小児会員のポイント付与率を100%とし、小児運賃が実質無料(1回の乗車につき上限200ポイントまで) となるキャンペーンを実施するそうです。

通常は大人会員が利用運賃の5%分、小児会員は50%分のポイントを付与しているそうなので、もともと子どもは優遇されていたのですが、全額還元というのはインパクトがあります。ちなみに京王電鉄は昨年の夏休み期間にも、同様のキャンペーンを実施していました。

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京王トレインポイントのオフィシャルサイトはこちら
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東武鉄道「子育て応援プログラム」サイトはこちら

他にもこのようなキャンペーンを行っている事業者はあります。たとえば東武鉄道は今年1月13日から、東武グループ共通の「TOBU POINTアプリ」内で「親子登録」をすると、小児運賃だけでなく定期券の全額について、ポイントで運賃相当額を付与するというものです。これまで夏・冬・春の長期休みなどの期間限定で実施していたものを、通年に広げたものとのことです。

また東京都の多摩地域や川崎市・横浜市北部などを走る小田急バス(小田急電鉄とは出自が異なっており営業範囲もやや違っています)では、2024年4月より小児が交通系ICカードで利用した場合の運賃を、乗車区間に関わらず1乗車一律50円(一部路線を除く。深夜バスは100円)としているそうです。

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京王電鉄では、親子でいっしょに冬のお出かけやお買い物をしやすくすることをキャンペーンの目的としていて、普段マイカーで動いている人たちにも電車で出かける楽しさを知ってもらうとともに、親子で住み続けたい沿線づくりを行っていきたいとしています。

都心への便が良い鉄道沿線の自治体の人口が増えているのは、前にもブログで書きました。東京23区内のマンション価格上昇に歯止めがかからない中、通勤が確実にできて、広い家に住めることが、支持されている理由でしょう。ただ首都圏で言えば、つくばエクスプレス沿線など、特定の路線に注目が集まりがちなのも事実です。そのあたりを打開したいという気持ちもあるでしょう。

加えて京王電鉄や東武鉄道は、沿線に高尾山や日光などの観光地を擁し、動物園やテーマパークもあります。もちろんターミナルのある新宿や池袋などは都内有数の繁華街です。お出かけしたくなる要素が多彩であることも、子育て世代が移り住む理由になるのではないでしょうか。そのためにもこうした取り組みはアピールするのではないかと思います。

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子育て世帯が公共交通でお出かけするのは、大変なことも多々あるでしょう。ただし社会を知ることができるというのは、車内という閉じた空間で移動するマイカーにはないアドバンテージだと考えています。「可愛い子には旅をさせよ」ということわざのとおりで、社会に揉まれながら成長していくことは大事なことだし、それは公共交通ならではの場だと、自分自身の経験からも感じます。

海外の公共交通を見ると、パリやロンドンは日本に近い制度なのに対し、ニューヨークは親の同伴なら無料になるようです(ただし年齢でなく身長で区分)。もともと小学生の公共交通利用は限られている上に、もし日本でも小学生以下を無料とすれば、交通事業者にとっては2種類の運賃を設定する手間が省けるはずだし、少子化の中で明るいニュースと捉えられそうな気がします。

電気バスに関するニュースが最近多いと感じています。私自身、国内外でさまざまな電気バスに乗ってきたので気になっているためもありますが、今回はこれをテーマに選びました。ちなみに電気バスのことを「EVバス」と表記するメーカーやメディアがありますが、EVとはエレクトリックビークル(電気自動車)の略であり、バスは乗合自動車のことで意味が重複するので、ここでは電気バスと記します。

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まずは大阪・関西万博用として150台導入され、万博終了後は路線バスなどに活用される予定だったEVモーターズ・ジャパン(EVMJ)のバスについてです。こちらは不具合が各地で発生したことから、万博閉幕後の昨年10月に国土交通省が道路運送車両法に基づく立ち入り検査を実施。その結果3分の1以上に不具合があったうえに、翌月には同社が一部車種について国交省にリコールを届け出た影響を受けて、すべての車両が大阪市内に留置されているとのことです。

EVMJは福岡県の会社ですが、車両は中国のメーカー3社で生産されたものでした。当初は福岡県内に組立工場を作り、国内生産に切り替えるとアナウンスしていた記憶がありますが、工場は今も稼働していないようです。バス事業者は国内メーカーということで契約したものの、実際はそうではなかったうえに、モビリティの肝である安全面の不具合が発生したということで、被害者と言えるでしょう。

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今週は日本国内の電気バス分野で圧倒的なシェアを誇る、中国BYDの2025年の統計結果も発表されました。総輸出台数は4234台で、電気バス輸出で3年連続世界No.1を達成したそうですが、同時に日本導入から10年で累計納車台数が500台突破したことも発表されました。BYDでさえ10年間で500台なのに対し、2019年創業のEVMJは、万博の150台以外にも全国各地にバスを導入してきており、オーバーペースではなかったかと想像しています。

EVMJとBYDを、同じ中国製としてまとめて扱う意見もSNSなどに見られますが、5年以上前から運行側で実車に触れてきた経験から言えば、BYDの信頼性、対応ともに日本車並みで、安心して使えると認識しています。なぜ日本製にしなかったのかという意見もありますが、いすゞ自動車が開発し日野自動車と合弁で設立したジェイ・バスで生産する車両が走りはじめたのは2024年で、万博の車両選定時には存在しなかったので仕方ありません。

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そんな中、今週木曜日には、三菱ふそうトラック・バスと台湾の鴻海精密工業(Foxconn)が日本国内に新しいバスメーカーを設立し、EVバス開発を推進するという発表がありました。FUSO ブランドの下、現在バスを製造している富山市の工場で開発・製造するとのことです。三菱ふそうは世界最大級の商用車グループである独ダイムラートラックに属しており、FUSOの名は90年以上の歴史があるので、日本製電気バスを望む人も満足するのではないでしょうか。

三菱ふそうは今年4月、日野自動車と経営統合し、持株会社のARCHION(アーチオン)を設立することが決まっていますが、ここまで発表されている戦略はトラックに関することであり、バスについてはしばらく、2つのブランドが独自の歩みを続けるような気がしています。だからこそ昨年秋のジャパンモビリティショーで日野が出展したコンセプトカー「ポンチョドット」に期待しています。

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ヤマト運輸などが走らせている前輪駆動の電気トラック「デュトロZ EV」をベースに、地域の移動課題解決を想定した車両で、前輪駆動であることを生かした低くフラットなフロア、サイドとリアの2カ所に用意した乗降口など、地域交通を見据えた作りに感心しました。初代「ポンチョ」はプジョーの前輪駆動商用車のプラットフォームを活用していたので、原点回帰でもあります。ぜひとも市場投入してほしいと思う1台です。

自動車を運転する人は最近、ガソリンの価格が安くなったと感じているでしょう。たしかに少し前までは180円ぐらいだった、レギュラーガソリン1リットルあたりの価格が、最近は150円を切るまでになっています。値下げの理由はもちろん、暫定税率の廃止です。昨年12月に廃止されたガソリンに続いて、軽油についても今年4月に廃止されるとのことです。

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個人的にはまず、暫定という名前のまま、半世紀以上も放置してきた政治家の傲慢さを責めるべきだと思っています。最近になって野党からの働きかけがあり、廃止の動きになりましたが、それでも前政権は財源不足などの理由をつけて先延ばしにしてきました。その点で言えば現政権の決断力は評価したいと思っています。

暫定税率廃止でもっとも恩恵を受けるのは、移動における自動車依存の割合が高い、地方で生活をしている人たちでしょう。ただでさえ厳しい状況にある地方の公共交通が、さらに追い込まれるという懸念はありますが、東京23区で移動をマイカーに頼る人は少ないことを考えれば、一極集中が進む最近では珍しく、地方に追い風になる出来事だと思っています。

ただし、これ以上ガソリンの価格は安くなる可能性は少ないと考えています。ここでは財務省の資料を出しますが、そもそも税金を含めた日本のガソリン価格は、世界的に見てもかなり安いからです。そして自動車関連の税の総額も、車両購入時の消費税(付加価値税)を含めれば、日本は欧州に比べて安く抑えられています。

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それ以上に気になっているのは、ガソリンの原料である石油のほとんどすべてを輸入に頼っているという事実です。なので為替相場や産油国の政情など、さまざまな理由で価格が変動するのは避けられず、安定した価格を望むのは難しいでしょう。しかし国内には、ガソリンは水のように安定して手に入るものと認識している人がいるようです。

年明け早々、米国がベネズエラを攻撃し、大統領を拘束した出来事は驚かされました。政治のことはくわしくないので、この判断の是非について言及は避けますが、アメリカは世界トップの産油国なのに、ベネズエラの石油資源を管理下に置こうとする動きを見て、改めて資源は大事だと思いました。そして今から85年前に始まった太平洋戦争のことを思い出しました。

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太平洋戦争が始まった理由のひとつが、中国やインドシナからの軍の撤退を要求していた米国による石油禁輸措置であることは、多くの専門家が指摘しています。当時日本は石油の7〜8割を米国から輸入し、備蓄は2年分と言われていました。それが「戦うなら今しかない」という議論に発展したそうです。わが国で反戦を訴える人は多いですが、先の大戦の理由にまで踏み込んで考える人が少ないのは不思議です。

もちろん合成燃料やバイオ燃料など、日本国内で生産できる代替燃料の開発は進んでいますが、製造コストを考えると、今のガソリンより高くなるのは確実だと言われています。水素については以前もブログで取り上げましたが、ステーションの設置に莫大な費用が掛かるという現状では、ガソリンの代わりにはならないと考えるのが自然ではないかという気がします。

ではどうすべきなのか。徒歩や自転車で行けるところは、健康のためにもそのほうが良いのではないしょうか。地方は近くのコンビニにも自動車を運転して行く人が多いそうですが、そういう使い方は自分の経験からも燃費が悪くなるので、他の移動手段に置き換えれば節約につながります。そして公共交通は、電気で動いているものも多いので、石油への依存は抑えられます。

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電気も石油から作っているので同じだという主張は誤りです。内閣府が発表した、国内の電力会社の電源構成を見ると、火力発電の主力は天然ガスや石炭です。これらも輸入に頼っていますが、火力比率が9割を超えるのは沖縄電力だけで、東京電力は約7割、中部電力は約6割、原子力発電所を動かしている関西電力は5割以下です。北陸電力は水力だけで25%の電力を確保しています。

自動車が20世紀の移動の主役になった理由のひとつに、ガソリンという安価で扱いやすい燃料があったことは間違いないでしょう。しかしそれは日本ではほとんど手に入りません。私たち日本人が平和を訴えても、他国の人が賛同してくれるとは限りません。そんな現状を見れば、エネルギーについても多様化を進め、食糧と同じように自給率を高めていくことが大事ではないかと考えています。

2026年最初のTHINK MOBILITYになります。本年もよろしくお願いいたします。今年最初のテーマは駅弁です。京王百貨店新宿店で毎年この時期、「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」が開催されていることがきっかけです。京王新宿店は事務所からも近いので、今年も足を運びました。そこで駅弁について取り上げてみようと思ったのです。

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私は駅弁好きと言えるほどではありません。移動は多いですが、そのほとんどが仕事で、朝食は軽めに済ませたいので、東京駅ではたまに「チキン弁当」を買うぐらいです。しかし出先からの帰りは、多くが夜であり、その土地の名産をいただきたいという気持ちもあるので、選ぶことがしばしばあります。列車内以外で食べるために、駅やドライブイン、サービスエリアで購入することもあります。

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最近は空港で販売している「空弁」もありますが、離着陸時はテーブルが使えないなど制約が多いので、落ち着いて食べることができないのではないかと思っています。乗り物酔いしやすい体質なので船やバスでの食事は控えたいし、マイカーは運転中は食事ができません。移動しながら食べることに関して、鉄道は圧倒的に有利な立場にあると認識しています。

加えて約140年の歴史がある駅弁は、いまや日本の文化のひとつであり、モビリティの要素のひとつとして大切なものに数えられるでしょう。そしてもうひとつ、多くの駅弁はその土地の業者が、その土地の食材を使って作るので、食べて応援という側面もあると思っています。なので駅弁イベントに行ったときは、仕事で訪れた地方の駅弁を買うようになっています。

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今年は写真にあるとおり、2年前の元日の地震で被害を受けた、のと鉄道能登中島駅構内の売店、駅マルシェ わんだらぁずが販売していた「能登ふくめし」を買ってきました。震災前に輪島を訪れたとき、ふぐが名産であることを知り、現地でいただいたことが記憶に残っているのでこれにして、想いを馳せながらいただきました。駅弁も最近は高価になりましたが、ふるさと納税のようなものかなという気持ちでいます。

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真に地域を応援するためには、現地に行くことになりますが、なかなかそういうわけにもいきません。なのでたべて応援というのは理解できるものであり、そのひとつとして駅弁を考えるのもアリかと思っています。今年で第61回目になる「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」は21日まで開催。名称にあるとおり、駅弁だけでなく全国各地の名産品も扱っています。駅マルシェ わんだらぁずの出店は14日までとのことです。

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