THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2026年02月

京都市の松井孝治市長が今週火曜日に行われた市議会で、京都市交通局の市バスについて、市民とそれ以外でバスの運賃を区分する市民優遇運賃の導入案を明らかにしました。現在230円の均一料金区間を、市民は200円に引き下げる代わりに、市民以外の利用者は350〜400円としたいとのことで、2027年中の開始を目指していくそうです。

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驚きとともにこのニュースを受け止めている人もいるようですが、私は納得しています。というのも、以前このブログで書きましたが、2018年に訪れたエストニアの首都タリンが、市民を対象に公共交通運賃を無料としていたからです。ちなみに市外からの訪問者は1時間2ユーロ、1日5.5ユーロなどの運賃を支払うことになっています。

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このときは市役所の担当者に話を聞き、市民から公共交通の運賃が重荷という声が寄せられたこと、自動車交通を削減すること、都市の価値を高め移住者を増やすことなどの説明を受けました。0ユーロ対2ユーロですから、その差は京都市以上と言うことができます。古い記事ですが、気になる人は東洋経済オンラインをご覧ください。

公共交通以外では、パリのルーヴル美術館の入場料が話題になりました。1月14日から、EU加盟国及びノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの居住者はこれまでどおり22ユーロなのに対し、それ以外の地域からの訪問客は32ユーロになりました。こちらは建物の老朽化や混雑の緩和のほか、昨年発生した窃盗事件への対策などを目的としているそうです。

ルーヴル

いずれも明確な目的があれば、運賃や料金に差をつけるのは妥当だと思っています。京都市の場合は、昨年11月のブログでも書いたように、多くの観光客がスーツケースを持って乗り込んでくることで、地域住民が乗れない事態に発展しています。値上げによって混雑の緩和を狙うのはルーヴル美術館と同じだし、収益が向上すれば検討中のLRT導入など、モビリティの整備を進めることができます。

現金しか支払い手段がなかった昔であれば、市民か否かの識別に運転免許証や健康保険証などを提示してもらわなければならず、乗り降りに時間がかかりそうですが、現在はさまざまなデジタルチケットが用意されており、居住地域によって運賃や料金を変えやすくなっていることも、こうした事例が多くなっていると考えています。



ところで今月は、京都市と対照的な動きも鹿児島県で起きています。塩田浩一知事は20日の県議会で、九州新幹線を活用する訪日客対策として、博多〜鹿児島中央駅の片道分の運賃を全額助成する案を出しました。県内の宿泊施設に1泊以上泊まることが条件で、理由として外国人と日本人の旅行者ひとりあたりの消費額に大きな差があることを挙げています。

しかしながら九州新幹線の工事は県も工事費用を出しているうえに、第3セクターとなった並行在来線の肥薩おれんじ鉄道にも県の税金が投入されています。であれば、お財布にゆとりがある外国人観光客より、県民に無料チケットのような形で還元して、県民の消費額を底上げし、地域のうるおいにつなげていくのが本筋ではないでしょうか。

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京都市に話を戻せば、これを日本の公共交通での先例にしていってほしいと思っています。栃木県の宇都宮市と芳賀町にLRTが開業したことで、京都市をはじめ岐阜市や神戸市など、いくつかの自治体がLR Tの検討を始めています。これと同じように、京都市がバスの市民優遇運賃を実現することで、他の観光都市も追随がしやすくなるような動きを期待しています。

受験シーズンだからというわけではないですが、今回は通学と交通の関係を綴っていきます。舞台は昨年秋に続いて訪れた長野県上田市です。

今回は現地の公共交通を利用したのですが、平日の日中ということもあり、昨年10月に大規模なダイヤ改正を行ったバスは、期待したほどの乗客はいませんでした。だからこそ、昼過ぎに乗った上田電鉄別所線、夕方近くに利用したしなの鉄道しなの鉄道線がともに、座席がほぼ埋まり、立ち客もいるほどなのに驚きました。 

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乗客の姿を見て理由がわかりました。別所線は大学、しなの鉄道線は高校に通学する人が多かったのです。とりわけ印象的だったのは別所線で、途中の大学前駅で、上田駅を発車した電車に乗っていた乗客の半分ぐらいが降りました。帰りはその逆で、この駅で乗客が倍に増えました。

ここには駅から徒歩10分圏内に公立長野大学と私立上田短期大学があり、さらに駅からやや離れていますが、長野県工科短期大学校もあります。おかげで駅別乗降客数では、北陸新幹線も乗り入れる上田駅、街道沿いで住宅が多い上田原駅に続く3番目となっており、観光客が多い終点の別所温泉駅を上回っているのです。

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駅ができたのは1921年で、その時は下本郷という駅名でしたが、戦後になって駅の近くに大学が開設されたことから、今の駅名になったそうです。大学にとっては、遠距離通学を受け入れやすくなるというメリットがありそうだし、別所線にとっても、沿線には学生向けのアパートも点在しているうえに、大学は授業の時間帯がばらばらなので乗客の分散化が図れます。いろいろな意味でありがたい存在だと感じました。

一方のしなの鉄道は、上田駅より西側の駅の近くに高校がいくつかあります。上田駅の隣、西上田駅の南徒歩5分の場所にある私立上田西高校もそのひとつです。 西上田駅は信越本線北塩尻駅として1920年に開業。塩尻というのはこの地域の地名ですが、すでに中央本線に塩尻駅があったので「北」がついたそうです。そして戦後1956年に今の駅名になりました。

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上田西高校ができたのは1987年。上田電鉄上田原駅周辺にあった上田城南高校が、校名を変えて西上田駅の近くに移転してきました。 西上田駅のまわりは住宅があまりなく、同じ上田市内にあるしなの鉄道の大屋駅や信濃国分寺駅の周辺と比べて閑散としていますが、乗降客数はこの2駅より上で、上田駅に続く2番目です。ここもまた通学輸送に支えられていると感じます。

今回はこの西上田駅から上田駅までひと区間だけ利用しました。西上田駅で乗る人は少なかったものの、上田駅の近くには上田高校があり、反対側にはその名も屋代高校前という駅もあるぐらいなので、両方向とも高校生風の乗客が多く乗っていました。こちらも通学が鉄道を支えていると実感しました。

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上田市公共交通活性化協議会では昨年10月のバス再編前に、アンケートを実施しています。その中で目を惹いたのは、市内高校に通学する生徒を対象とした交通手段で、しなの鉄道がバスを大きく上回っていて、家族送迎や自転車に匹敵していたことです。複数回答可能な質問だったので、駅まで送迎や自転車で来て、そこから鉄道を使うというパターンでしょうか。

学生や生徒の数が少なければ、バスに置き換えるという話も出てきそうですが、長野大学の学生数は約1500人、上田西高校の生徒数は約800人です。大学はクルマやバイクで通学する人もいそうですが、運転手不足も考えれば、バスでは到底さばき切れないでしょう。

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上田市公共交通活性化協議会のウェブサイトはこちら

時間に正確で大量輸送が可能な鉄道は、通学に適した移動ツールだと認識したし、家庭や学校だけでなく、少子化が課題になっている自治体でも、まちづくりという観点で高校や大学が駅近であることは大事だと感じました。

昨日、名古屋市で新しい交通システム「SRT」が走りはじめました。スマート・ロードウェイ・トランジットの略で、名古屋駅と繁華街の栄を結びます。名古屋市住宅都市局都市計画部交通事業推進課が事業を運営、名鉄バスが運行を担当していて、毎週金曜日から月曜日までの4日間運行。実車はまだ見ていませんが、全長18mのメルセデス・ベンツのディーセルエンジン連接バスはシックなカラーをまとい、車内も落ち着いていて、ひと味違う都市交通になりそうです。

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名古屋市のSRT紹介ページはこちら

実はこの3日前、フランスでも新しい交通システムが走りはじめました。パリを含めたイル・ド・フランス地域圏の南部、エソンヌ県のヴィリー・シャティヨンとコルベイユ・エッソンヌを結ぶ「Tzen 4」です。Tzenとはこの地域圏がBRT(バス・ラピッド・トランジット)に与えた名称で、トランスポートやトラムの頭文字Tと、日本語の禅が由来でフランスでは落ち着いた、穏やかなという意味のzenを組み合わせたようです。

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イル・ド・フランス・モビリテ Tzen 4の紹介ページはこちら(仏語)
 
トラムのクオリティとバスのフレキシビリティを兼ね備えたと説明されるこのTzen、すでに今回開業した路線の近くにTzen 1がありますが、そちらの車両は連節バスを含めてディーゼルエンジンでした。これに対してTzen 4は、全長24mの3連節電気バスで、ベルギーのヴァン・フールとともに開発。充電は停車中に床下から5分以内で完了させるなど、フランスらしく前衛的な内容となっています。

山梨県が富士山麓に導入を計画している「富士トラム(仮称)」への採用が予定されている車両は、やはり3連節で、全長は30mあり、燃料電池を使用し、路上の白線を用いて自動運転をするなど、さらに個性的な内容を持っています。中国中車(CRRC)グループが同様の内容の車両を開発しており、中国内ではすでに営業運転をしているとのことです。ただフランスも地下鉄の無人運転、バスの正着制御などは実用化しているので、Tzenの自動化はさほど困難ではないと想像しています。

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山梨県の富士トラム(仮称)紹介ページはこちら

もちろんSRTとTzenは位置付けが大きく異なります。SRTは名古屋の都心部の回遊性やにぎわいを増すため、まちづくりと一体となった新たな路面公共交通システムとして位置付けています。観光的要素を兼ね備えた路線バスという感じでしょうか。なのでBRTで重要な専用レーンがないことも納得できますが、それ以上に車両に対する考え方の違いが印象に残りました。

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日本のバスは、道路車両運送の保安基準で全長12m以内、全幅2.5m以内と決まっており、連節バスは路線を定めて定期的に運行する事業用車両のみ、適用を緩和してもらっています。ここだけみても基準が厳しいことは想像できますが、SRTの車両が国内でも導入例があるメルセデス製なのに対し、Tzen 4ではベルギーのメーカーとともに斬新な車両を新開発したわけで、交通システムに対する力の入れ方の違いを感じます。

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我が国は連節バスも、フルフラットバスも、電気バスも、第一号はすべて輸入車です。日本は乗用車については世界トップレベルの技術を持ち、販売にも結びつけています。社会を支えるバスにも、その実力をもっと注ぎ込んでいただきたいものです。日本がフランス並みになることは難しいことかもしれませんが、我が国ならではのデザインとテクノロジーを盛り込んだ、世界から注目されるバスが出現してほしいものです。

少し前の話になりますが、昨年11月下旬に千葉市の幕張メッセで、「RDE(レールウェイ・デザイナーズ・イブニング)フォーラム」が開催されました。さまざまな立場のデザイナーたちが鉄道の未来を考える場として、毎年開いているものです。このほど私がまとめた実施報告が、オフィシャルサイトにアップされたので、今回はこの話題を取り上げたいと思います。

第11回となる今回のテーマは「鉄道と色彩」で、長い歴史を誇るRDEフォーラムで初めて色を扱うことになりました。報告を見ていただければお分かりのとおり、鉄道以外の分野からの話題提供もあり、いろいろな角度から色彩を考えることができました。個人的にはその中でも、パネルディスカッションで話題になった地域との関わりが重要だと感じました。

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自分が乗った車両ではまず、JR西日本の特急「やくも」に使われる273系電車を思い出します。特急としては異例のブロンズカラーは、宍道湖に沈む夕日、住宅の屋根を彩る石州瓦など、地域の色を反映したとのこと。車内は古来から神事に用いられてきた「麻の葉」 模様、富と長寿の象徴とされる「積石亀甲」模様をあしらっています。デザイナーと鉄道事業者が、地域の声を取り入れながら決めていったというプロセスも感心しました。



地域内の移動を支える車両では、JR東日本の「長野色」が気に入っています。JR東日本は営業区域が広いので、路線や地域ごとに独自の色を用いていますが、アドバンスブルーとリフレッシュグリーンの帯はいずれも爽やかな色調で、自分が信州にいることを実感させてくれます。長野色と言いつつ、東京都の立川駅や岐阜県の中津川駅まで乗り入れているので、多くの人が目にしていると思いますが、東京側の乗り入れは3月のダイヤ改正で高尾駅までになるそうです。

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海外では何度か紹介している、ルクセンブルクのトラムをここでも取り上げます。一見すると銀色と黒の2トーンでクールな雰囲気で、周囲の景観にしっくり溶け込んでいますが、ドアのガラスは5色に色分けされていて、昼は車内を彩り、夜はまちを彩ります。しかも座席の背もたれの水色の部分には照明が仕込まれていて、夜間のアクセントになっています。デザインには色彩と照明のアーティストが参加したそうで、その成果は十分以上にあると感じました。

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ちなみに今年のRDEフォーラムは、2022年の第8回と同じように、5月27〜29日にインテックス大阪で行われる予定の「鉄道技術展・大阪」の併催イベントのひとつとして開催されるそうです。例年とは時期や場所が違うのでご注意ください。次回も皆さんの興味を惹くテーマが設定されると思いますので、気になる方はスケジュールを空けておいていただくよう、お願いいたします。

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