THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2026年04月

今週末、東京西新宿で「スマートシティフェスタ 2026」というイベントが行われています。東京都の主催で、最新のデジタル技術を活用したさまざまな先端サービスを体験する機会を提供し、便利になった未来のまちを感じてもらうというもので、今年で5回目になるそうです。私は昨日見てきたので、モビリティとロボットに関連した展示を取り上げます。

IMG_2718

モビリティで多かったのは、ひとり乗りで歩道を通行するパーソナルモビリティでした。以前紹介したことがあるホンダ(本田技研工業)のモビリティロボット「UNI-ONE」のほか、体幹の動きをベルトで感知し前後左右に移動するハンズフリー車いす「Feeling(写真上)」、配送ロボットの技術を応用した自律走行型ロボット「LOMBY(下)」がありました。

IMG_2712

UNI-ONEは以前乗ったことがあるので、今回はそれ以外の2台を試しましたが、Feelingの説明で興味深かったのは、社会貢献を考えていること。具体的には脳梗塞からのリハビリに役立つとのことで、そういう用途もあるのかと教えられました。UNI-ONEも下肢が不自由な人たちに業務で活用してもらう実証を重ねてきており、LOMBYは認知機能が低下してきた高齢者の移動をサポートできそうです。

ロボットでは人の動きを再現したヒューマノイド型ロボット「Unitree G1」のほか、米国Boston Dynamicsが開発した四足歩行ロボット「Spot」も姿を見せていました。以前から実物を見てみたいと思っていたSpotは、長い首を持つタイプはドアの開け閉めなどが可能。顔の部分をカメラにしたタイプは警備や捜索ができるとのことで、日本のような災害が多く発生する地では、災害用ロボットとして重宝しそうです。

一連の展示を見て感じたのは、現代社会は自動車や自転車などの既存の乗り物では対処できない分野が増えており、新たなモビリティやロボットが求められているということです。見た目の面白さからアミューズメント的に捉える人がいるかもしれませんが、実際は私たちの生活の役に立つものばかりであると理解しました。

IMG_2704
スマートシティフェスタ2026のウェブサイトはこちら

会場のロケーションにも感心しました。新宿駅西口地下広場と都庁や新宿中央公園、これらを結ぶ4号街路と呼ばれる道路の歩道を使っているので、駅と公園の間を往復しながら見ていくことができました。歩道を広く確保しているからこそ、このような催しに対応できるのだと実感しました。スマートシティというとデジタルを結びつけがちですが、こういうスマートさも大事ではないかと思いました。

IMG_2745

もちろんまちづくり関連の展示もありましたが、スケールが大きくて、自分たちにとって何がメリットなのか、わかりにくいという人もいるでしょう。その点、スマートシティを構成するピースであるモビリティやロボットは、私たちの生活をサポートしてくれることがリアルに実感できます。こういう視点でスマートシティを見ていけば、イメージが少し変わるかもしれません。

富山市を走る富山地方鉄道富山港線が、日本初の本格的LRTとして開業してから、今月で20年を迎えました。この路線はJR西日本のローカル線だったものを、第3セクターの富山ライトレールに転換し、北陸新幹線も乗り入れる富山駅の南側を走る富山地方鉄道の市内電車との直通運転を機に、富山地方鉄道の路線のひとつになったものです。

IMG_2128

私は開業の1ヵ月後に富山を訪れて、欧州で見たようなモダンな車両や美しい景観がこの国にあることに驚き、2011年には東日本大震災の被害を受けていなかったこともあって、一連の取り組みを書籍にまとめるべく取材に伺いました。その後も南北直通運転の開始を含めて、何度も足を運びました。

LRTというと最近は、2023年8月に国内初の全線新設LRTとして開業した、栃木県の芳賀・宇都宮LRT(運行事業者:宇都宮ライトレール)にスポットが当たることが多くなりました。私自身、東京暮らしということもあって、近年は宇都宮に目を向けがちになってはいますが、先輩格の富山はいろいろな部分が宇都宮と違い、いまだ参考になる部分が多いこともたしかです。

IMG_2401

富山の特徴は、既存の線路をうまく活用したことで、整備費用を安く抑えたことです。さまざまな創意工夫は参考に値すると考えています。しかも昔からある市内電車を含めた路面電車ネットワークを最初から想定し、市内電車には環状線を復活したというロードマップと、多様な運転モードも特徴になっています。

現在は1路線のみの宇都宮も、宇都宮駅西側の延伸に際して、東武鉄道宇都宮線との乗り入れ構想があります。実現すれば初めて2方向に分岐することになるわけで、富山に近づくことになります。さらに西側延伸が実現すれば、新幹線が乗り入れるターミナルがネットワークの中心に位置することも、富山に似てきます。コンパクトシティの軸としての公共交通の位置づけも、参考になるでしょう。

IMG_2293


今週、定例会見した富山市の藤井市長は、現在の課題にも触れ、フィーダーバスの維持、空家や未利用地の増加を挙げました。宇都宮市と芳賀町では、2つのトランジットセンターで接続していたJRバス関東の路線が廃止されるなどの動きがありました。電車とバスで事業者が同じ富山のほうが、フィーダーバスの維持では有利かもしれません。

一方の空きや未利用地については、逆に宇都宮が参考になるかもしれません。2つのLRTを何度か見てきた印象では、高齢者の外出機会向上のツールという雰囲気の富山に対し、宇都宮は現役世代の沿線居住やマイカー移動からの転換を促していると感じるからです。宇都宮は新しい乗り物としてLRTをアピールできたこと、沿線にショッピングセンター、スポーツ施設、工場などが点在していることも大きいと思います。

IMG_2340

これまで宇都宮は、富山の成功事例を参考にして進めてきた部分も多かったと認識していますが、これからは逆に宇都宮の良さを富山が取り入れる「思想の相互乗り入れ」も大事だと考えています。そして岐阜市や神戸市、京都市など、LRTを導入検討する自治体は、宇都宮だけでなく富山の実績もチェックしていただくことを望んでいます。

予想していたことが現実になりました。3月20日、三重県亀山市の新名神高速道路で、大型トラックが渋滞で停車中の車列に追突し、子ども3人を含む6人が死亡した事故で、大型トラックのドライバーがスマートフォンを見ていたため、渋滞に気付くのが遅れて追突事故を起こしたことがわかり、過失運転致死の罪で起訴されたという一報が入りました。

このブログでは昨年も、ながら運転が原因と思われる事故の写真とともに、事故が増えていることを示す警察庁の統計を紹介しました。その傾向は続いていて、昨年の携帯電話等使用による死亡・重傷事故件数は、全交通事故の発生件数や死傷者数が減少しているのに、最高記録を更新しています。携帯電話等を使用していなかったときに比べ、死亡事故率が約3.4倍になること、事故原因における「前方不注意」が圧倒的に多いことも紹介されています。

R07bunseki
令和7年における交通事故の発生状況等について(警察庁)はこちら

事故直後には「前をよく見ていなかった」という供述だったのが、ここへきて「スマホを見ていた」に変わったのは、国土交通省の要請を受けた第三者委員会の事業用自動車事故調査委員会が、社会的な影響の大きい特別重要調査対象事故に当たると判断し、関係者への聞き取りや現場の状況の確認などを通じて事故原因の分析を進めているためかもしれません。

2014年に委員会が設立されて以来、特別重要調査対象事故は20件目になります。この中には、長野県軽井沢町の碓氷バイパスでの大型貸切バス転落事故、横浜市の京浜急行電鉄踏切における大型トラックと列車の衝突事故など、今も記憶に残る事故も含まれています。ただしスマホが原因の事故は初めてです。たしかに私が覚えている限りでも、スマホが原因とはっきり報じられた事故で、ここまで重大なものは記憶にありません。

1943102-outline
事業用自動車事故調査委員会(国土交通省)はこちら

たまに乗用車より目線の高い二輪車に乗って高速道路を走ると、スマホを見ながら運転している大型トラックがけっこう多くてぞっとします。高速道路を走るパトカーはセダン型が多いので、この実態を把握できていないのではないでしょうか。白バイによる取り締まりは危険が伴うので、SUVなど目線の高い覆面パトカーを走らせてほしいと思っています。

トラックと言えば、いわゆる「物流の2024年問題」対策として、高速道路での中大型トラックの最高速度が80km/hから90km/hに引き上げられたことも気になっています。ドイツのアウトバーンをはじめ、欧州の多くの国でトラックは80km/h制限であり、反対意見も多く出されたのに、安全性より経済的を優先して、しれっと引き上げた事実には怖さを覚えます。

IMG_2085

ながら運転に話を戻すと、死亡・重傷事故が増え続けているのは、今の刑罰が役不足ということになるでしょう。そして今回の事故。委員会では再発防止策の提言も出すとの事なので、飲酒運転に比べて甘い懲罰を見直してもらいたいものです。また、危険運転致死傷罪にアルコール濃度や速度超過の数値基準を導入することが先月閣議決定されましたが、ながら運転が含まれなかったことにも疑問を持っています。

「あまり厳しくするとドライバーが減ってしまう」という声は表向きには出ないと思いますが、裏では厳罰化を阻止しようという巧妙な動きを、さまざまな業界が仕掛けてくるかもしれません。しかし忘れてはいけないのは、人の命が懸かっているということです。ドライバー不足になるなら鉄道や船舶にモーダルシフトするなり、荷待ちや荷役を禁止するなりしていけば良いのではないでしょうか。個人的には今回の事故、物流業界の歪みが生んだ惨事だと見ています。

このブログでは何度か取り上げている「RDE(レールウェイ・デザイナーズ・イブニング)フォーラム」。毎年秋のイベントというイメージを持っている方がいるかもしれませんが、今年は5月27〜29日に大阪市のインテックス大阪で行われる「第2回鉄道技術展・大阪」の併催事業として、5月28日(木)13:30〜18:30に開催されることになりました。

スクリーンショット 2026-04-04 18.47.55スクリーンショット 2026-04-04 18.55.21

個人的にはそれ以外にも変化があります。ひとつは今年からRDEの実行委員のひとりとして運営に携わるようになったこと、もうひとつは当日のキーノートスピーチを担当させていただくことです。本年度も審査委員を担当するグッドデザイン賞などで、鉄道のデザインは長年見てきましたが、鉄道専門でもデザイン専門でもない人間であり、身に余る光栄だと感じているところです。

今回のテーマは「蘇る地方鉄道ー型破りのデザイン戦略と地域ブランディング」です。それを受けて私は「地方は大胆になれる」というテーマで話を進めるつもりです。地方は鉄道に限らず、たしかに厳しい状況に置かれています。しかし東京で生まれ、東京で暮らす自分が地方に行って感じるのは、狭い土地に多くの人が密集する東京では、むしろ実現が難しいモノやコトがあることです。

IMG_0859

このブログでも紹介してきましたが、自動運転やドローンなど、最近は地方から導入が進むモビリティサービスがいくつかあります。鉄道の分野でもLRTやハイブリッド車両は、地方で走りはじめました。デザインについても同じことが言えると考えています。地域や利用者が絞り込めるからこそ、思い切った造形や色彩ができるのではないでしょうか。それを「大胆になれる」という言葉に託しました。

DSC07662

当日は車両だけでなくインフラやサービスまで含めて、今の地方鉄道の中からいくつか、個人的に印象に残るモノやコトを紹介したいと思っています。さまざまなモビリティシーンを見てきた者として、鉄道以外の地方のモビリティデザインも紹介することで、地方鉄道復権の後押しになればと考えています。

IMG_8376


事前申し込みは4月下旬より、第2回鉄道技術展・大阪のホームページ(下のバナーからお入りください)で受け付ける予定です。車両メーカーやデザイン会社で地域鉄道に関わった方々のプレゼンテーションやパネルディスカッションも必聴です。第2部の情報交流会のみ、参加費4000円をいただきます。



母体となる鉄道技術展も、200を超える企業・団体が出展予定で、DMV(デュアルモードビークル)の実機展示、ドクターイエローT4編成の写真パネル展示などもあるそうです。こちらの入場料は2000円ですが、インターネットから事前登録をしていただければ無料になります。ご興味のある方、ぜひインテックス大阪にお越しください。

このページのトップヘ