THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2026年05月

「ブルーリボン賞」と「ローレル賞」。鉄道にくわしい人なら、日本を代表する鉄道車両の賞として、この2つを挙げるでしょう。どちらも鉄道友の会が選定し、今年度は今月21日に発表されました。このうち会員投票で最多得票を得た車両に贈られるブルーリボン賞は、「嵐電」の呼び名で親しまれる京福電気鉄道嵐山本線・北野線の「モボ1形」が受賞しました。

DSC08465

KYOTRAMの愛称を持つモボ1形の受賞は、今回で69回目を迎えるブルーリボン賞の歴史で画期的なことでした。旧国鉄を含むJRグループや大手私鉄以外の事業者が受賞するのは5例目で、関西以西に本社を置く中小私鉄では初めて。そして両端に運転台を持つ単行の路面電車というのも、初だったのです。

今週木曜日には、2ヶ月前のブログで紹介したRDEフォーラムが開催されましたが、ここでも知人でもあるデザインを担当したGKデザイン総研広島の鈴木スバル氏が、KYOTRAMのプレゼンテーションをしました。「これは乗りに行かなければ」という気持ちが盛り上がり、会場のインテックス大阪から近いということもあって、昨日京都に向かいました。

DSC08482

実車に対面してまず印象的だったのが、前後の丸みです。空間効率ではマイナスですが、100年以上前から古都を走る路線ということで、かつてヨーロッパを走っていた電車の形を意識したそうです。しかも路面電車は人と近い距離にいるので、ライトも丸にして、柔らかさや愛らしさを表現。よく見ると屋根上のクーラーも丸みを帯びています。でも今の京都は古いものと新しいものが両立しているので、モダンな要素も取り入れています。

車体色の京紫は、江戸っ子に親しまれた青みが強い江戸紫に対して、昔から京都で織物などに使われてきた赤みが強い紫のことをこう呼ぶもので、以前から嵐電が取り入れてるイメージカラーですが、KYOTRAMにも似合っているし、車体色として京紫を起用した鉄道会社のセンスにも共感しました。

DSC08474

車内も各所に丸みを取り入れたうえに、木目調の天井や床、京紫を用いた座席や仕切り板などで、通勤電車のような無機質なイメージはなく、「はんなり」という言葉を連想させる空間に仕上がっていました。座席は体の当たる部分を少し窪ませたバケットタイプで、座る位置がわかりやすいし、走行中は揺れることもあるので、安全性でもプラスになりそうです。

鈴木氏からは握り棒についても説明がありました。外側に少し湾曲した形は、上から見たときの車両の形をイメージしており、乗客を外側に近づける意味も込めているとのこと。嵐電は後ろから乗って前で運賃を支払って降りるので、乗客が通路を横断することから、通路を幅を広げるための工夫でもあるそうです。また座席間の仕切りは、肩の部分が当たるような高さにしていて、隣の乗客との接触を少なくしつつ、開放感を失わない作りにしたということです。

DSC08095


実際に乗った乗客は、かっこいいと言う人と、可愛いという言う人の両方がいて、レトロモダンという言葉を使う人もいるそうです。外国人観光客からも好ましい評価を受けるでしょう。私もさまざまな鉄道車両を見てきましたが、ここまで地域性をうまく取り込み、大胆でありながら親しみのあるデザインに仕上げたのは珍しいと感じており、ブルーリボン賞は納得です。みなさんも京都に行った際には、KYOTRAMに乗ってみてはいかがでしょうか。

昨年9月、このブログで自動運転を取り上げたときに、これまでの「ルールベース」に加えて、「E2E(エンドツーエンド)」という新しい考え方が出てきたことを紹介しました。あれから1年も経っていませんが、最近有識者の発言や展示会の講演などで感じるのは、状況が急激に変わっていることです。「AIベース」と呼ばれることも多いE2E方式が、自動運転の主役になりつつあるのです。

DSC01517

4月に東京ビッグサイトで開催された「SusHi Tech Tokyo 2026」でも同じ印象を受けました。私はいすゞ自動車、日産自動車、いすゞ自動車の自動運転プロジェクトに関わる米国のフィジカルAI企業Applied Intuitionのセッションを取材し、いすゞにフォーカスした記事を「マイナビニュース」にまとめたのですが、ここでもAIベースを前提とした話になっていました。



日産自動車でソフトウェア内製開発の責任者を務める杉本一馬氏はその中で、短期的にはAIに強いテックカンパニーと組んでいくことが必須と語っていたことです。自動運転の潮流が一気に変わったので、AIベースについては専門企業と組むことが望ましいということなのでしょう。たしかにいすゞは前述したようにApplied Intuition、日産は英国Wayveとともにプロジェクトを進めています。

SusHi Techではトヨタ自動車の「e-Palette」も展示されていました。e-Paletteは当初は自動運転が前提でしたが、昨年発売されたのは通常のハンドルとペダルを持つ、手動運転仕様でした。会場ではこれをベースとした自動運転仕様を展示していましたが、置かれていたのは日本の自動運転テックカンパニー、ティアフォーのブースでした。トヨタの担当者に聞いたところ、自動運転化は外部企業と協力して進めていきたいという答えが返ってきました。

DSC08044

今回のセッションでもっとも印象的だったのは、いすゞで常務執行役員を務める佐藤浩至氏の「日本での自動運転の普及には社会受容性が大事」という言葉でした。

ブログでも書いてきましたが、日本では毎年2000人以上の人々が交通事故で亡くなっているのに、それよりも自動運転による軽微な物損事故を大きく扱う風潮があります。人口減少と高齢化に悩む日本は、自動運転の移動・物流サービスが熱望されているのに、米国や中国で自動運転タクシー(ロボタクシー)が先行している最大の理由はここにあると思っていましたが、いすゞでも同じような考えを持っていることがわかり、共感しました。

IMG_2581 (1)

AIベースの自動運転は、場数を重ねるほど上手になっていきます。そこで課題になるのが、どのレベルまで行けば市場化OKと判断するかです。米中のレベルが日本より低いことは明らかですが、我が国の慎重な姿勢を肯定し、ハードルをどんどん上げていくと、上に書いた社会課題が解決しないばかりか、日本のテックカンパニーの成長を阻むことにもなり、ファミリーレストランの配膳ロボットのように、外国製に席巻されることになるかもしれません。

自分自身も、AIについて疑問を持つこともありますが、スマートフォン同様、これからの社会でなくてはならないものだと認識しているので、相手を理解し、共存していきたいと考えているところです。その点で参考になるのが、リアルな技術展示や専門家の生の声です。今回のSusHi Techではとくに、「AIが奪うもの・奪えないものーそして、余白から始まる人間の再創造」というセッションが勉強になりました。

DSC08032

LINEヤフー代表取締役会長の川邊健太郎氏、慶應義塾大学環境社情報学部教授でLINEヤフーシニアストラテジストの安宅和人氏という、その道のエキスパートが登壇し、AIに任せること、人間が引き受けるべきこと、AI社会を生きる人間にとって大切なことなどを、わかりやすく解説していて、目の前の霧が晴れていくような気分でした。ひとりでも多くの人が、こういう場を体験してほしいものです。

鉄道や自動車が走りはじめた頃も、否定する人はいたようです。しかし実際に乗って、便利で快適なことを多くの人が認め、積極的に使いこなすようになったからこそ、世界に先駆けて高速鉄道やハイブリッド車を生み出すことができたのではないでしょうか。あの頃のように、新しいモノやコトを前向きに受け入れ、磨き上げていく日本に戻ってほしいと、AIの波が押し寄せる今、あらためて思います。

1年前のブログで、NEXCO中日本(中日本高速道路)における大規模なETC障害を取り上げ、合わせて海外の高速道路料金の自動収受システムを紹介しました。その後はETC関連の大きなトラブルはないようですが、一方でETC専用の料金所が増えていることに気づいているドライバーやライダーもいることでしょう。

IMG_2965

このテーマについて今週月曜日、SBSラジオの朝の番組「IPPO」に出演したので、久しぶりにETC関連の話題を取り上げます。なお番組は中部地方(静岡・愛知・岐阜・三重県)の方はradikoのタイムフリーで7日間無料、それ以降あるいはそれ以外の地域の方は有料プラン契約により聞くことができるので、気になる人はradikoにアクセスしてみてください。

番組ではメインテーマであるETC専用料金所のほかにも、ETCに関連したいくつかの話題が出ました。そのひとつが「2030年問題」です。初めて聞いた方もいるかもしれませんが、2030年頃にセキュリティ規格が新しくなり、現在使用しているETC車載器のうち、旧規格対応のものが使えなくなるというものです。



見分け方は簡単で、ETC車載機の取り扱い説明書、セットアップ申込書、本体などに記載されている19桁の「車載器管理番号」で確認します。管理番号の1桁目が「1」の場合は新セキュリティ規格対応、「0」の場合は非対応になります。

IMG_2950

個人的にはこれから登場する2030年問題対応の車載器が、これまでと同じ方式になるのかが気になっています。1年前のブログで紹介したように、日本のように車載機が大きく高価で、しかもカードを差し込む方式というのは世界的には異例で、小さな端末のみだったりシールだったりするなど、もっと簡単な仕組みになっている国がほとんどだからです。

その中で最近動きがあるのはフランスで、ナンバープレートをカメラで読み取り、自動的に料金を請求する方式への切り替えを始めていて、料金所のゲート廃止を進めているそうです。Google マップのストリートビューでは、たしかに取り壊された料金所の写真を見ることができます。奥に見える白いゲート型の建造物がカメラになっているようです。停止はもちろん減速も不要、料金は後払いで、支払い方法は数種類用意されているとのことです。

スクリーンショット 2026-05-16 8.47.36
Carte-flux-libre-1224-EN
SANEF(フランス北部東部高速道路会社)のオフィシャルサイトはこちら

公共交通では交通系ICカードに加えて、クレジットカードのタッチ決済で利用できるところも増えてきました。買い物では多くの人が、PayPayなどのコード決済を活用しているでしょう。この10年で、私たちの身のまわりの支払いのシーンは大きく変わりました。ETCはそんな時代の流れから、取り残されているように見えます。

信頼性が高いかというとそうでもなく、何度か通信トラブルで通過できないことがありました。しかも車載機、カード、セットアップと多くの部門が関わる現状は、癒着につながっていそうな印象も受けます。我が国はこういったしがらみを断ち切れない国であり、そもそも変化を拒む人々が多いので、変革への期待はあまりできませんが、2030年になっても現行のシステムを使い続けるのは、世界的には恥ずかしいことではないかと思いつつあります。

アメリカ・イスラエルとイランの戦争は、始まってから2ヵ月以上が経ち、現在は停戦中とのことですが、戦闘は続いています。日本は戦場から遠く離れているものの、石油の9割以上を中東地域から輸入していたので、大きな影響を受けています。

そんな中、今週は経済産業省が、ガソリンなど石油から作られる燃料への補助金が、3月分だけで1800億円に達したと発表しました。驚くのは残高が約9800億円と、具体的な数字の発表がなされたことで、専門家の話では夏頃には補助金のための予算が底をつくとのことです。一方で今月1日には、国で備蓄している石油の2回目の放出が始まったというニュースもありました(さらに今月予定されていた第3回の放出は12日に見送りになりました)。

IMG_0466

この間、アメリカやロシアなどから石油を積んだタンカーが日本にやってきており、石油は足りているので不安を煽るべきではないという声も聞かれますが、ではなぜ今月になってからも、最初に書いたようなニュースが出てくるのでしょうか。紛争がここまで長期化するとは想定していなかったのではないかという気がしています。

アメリカのトランプ大統領の任期は2年後の2028年までです。一方のイランは政府ではなく革命防衛隊が実権を握っているとのことで、ホルムズ海峡の封鎖が世界的に影響を及ぼすことを知ってしまったので、今後も取引材料として使ってくることは十分に予想されます。仮に戦争が終わっても、ホルムズ海峡経由の石油が以前のような価格で簡単に輸入できるようになるか、微妙な状況です。

ところでガソリンをはじめとする石油製品はどのように作られるのでしょうか。私もくわしくないので調べてみました。こちらは石油連盟のウェブサイトに掲載してあった図です。一部の人は、ガソリンとナフサは別物、ナフサは余り物と思っているようですが、ナフサをベースとしてガソリンが作られていることがわかります。

P22_4-09_製油所の精製工程_0
石油連盟ウェブサイト「製油所の精製工程」はこちら

実際は同じナフサでも成分の違いによって、どの製品に向くかがおおむね決まってくるそうですが、多少の融通はできるそうで、高い価格で売れるガソリンを優先して作っているというという話もあります。それでもガソリンは不足しているので、重油を改質して製造していることも示されています。ガソリン偏重ではないかと思う人がいても不思議ではありません。

現在、世界の多くの国や地域が石油不足に悩んでいるので、現状では価格が上昇するのは仕方ないでしょう。加えて我が国は今月も備蓄を放出しています。なによりも経済産業省が、補助金の残額を具体的に出したのは、注意信号だとは考えられないでしょうか。そろそろ節約の方向に動いても良いのではないかと思っています。

具体的にはやはり、補助金を少しずつ減らしていくべきでしょう。地方ではガソリンがないと移動できない、寒冷地では冬は灯油は必需品などの声が出そうですが、そのためにコロナ禍のときのように、該当する自治体から住民や事業者に補助金を支給します。それによって節約を促すという方法です。石油元売り会社に出すという現在の補助金の方法は、不透明な部分が多いと感じています。

IMG_2653

それに一戸建てなら電気自動車という選択肢もあります。先日お借りした日産自動車「リーフ」は、メーター表示でも満充電で500kmぐらい走れるので「電欠」の心配はほとんどなくなり、急速充電器の性能も上がっているので、充電の回数や時間が激減しました。電気料金も値上げが予想されていますが、さまざまな発電方法があるので、石油頼りのガソリンより安心感は全然上だと感じています。

2ヶ月前のブログで、所有する乗用車にガソリンを入れたときのレシートを見せましたが、実はあれ以降、クルマにガソリンは入れていません。公共交通でほとんどの用は足せるし、乗用車よりはるかに燃費の良い二輪車を持っているためもあります。モビリティにおいてもマルチパスウェイは大事だと、今まで以上に痛感しています。

自転車に青切符が導入されてから1か月。東京都内の道路では、私が見る限り、自転車の走り方が驚くほど変わりました。歩道を通行する人が激減し、多くの人が車道左端を走るようになったのです。

IMG_2547

これまでも日本には自転車のルールはありましたが、運転免許が不要であるうえに、歩道通行も例外として認めるなど曖昧だった部分もあったことで、モラルの低下が目立っていました。それが青切符というわかりやすい罰則が取り入れられたことで、多くの人がルールを守って走るようになったのかもしれませんが、ここまで変わるのかと驚きました。

そんな中、今週水曜日に東京都板橋区の道路で、自動車5台と自転車2台が絡む事故が発生し、警察官2人を含む6人が病院に搬送されました。2人の警察官はいずれも自転車に乗って、車道左側を通行していたそうです。

これを見て自転車での車道通行は危険であるという意見が出ていますが、事故の原因は乗用車を運転していた23歳の中国籍の男の無謀運転によるものです。現場は時速30キロ制限の道路ですが、ニュースを見る限り、車両の損傷はとても30キロ以下での衝突とは思えないし、そもそも駐車車両に衝突するというのが考えられないことです。

R07bunseki11P

警察庁が今年2月に発表した「令和7年における交通事故の発生状況について」にもあるとおり、外国人運転者による死亡・重傷事故は増え続けています。昨年秋、いわゆる「外免切替」が厳しくなりましたが、この数字を見ると納得できるし、私たちが安心して自転車を使えるようにするためにも、外国人だからといって罪を軽くしたりせず、厳正な処分をしてもらいたいと思っています。

この事故では、日本の自転車ルールにも課題があると感じました。そのひとつが、道路交通法では歩道に作られた通行部分は「普通自転車通行指定部分」と定められ、自転車レーン(自転車専用通行帯)として認められていないことです。法律によれば、そこに歩行者がいなければ、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができるものの、歩行者がいた場合は停止や徐行をして、歩行者を優先することになっています。

しかも国土交通省と警察庁が一昨年6月に策定した「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」には、自転車通行空間の基本的な整備形態がイメージで出ていますが、歩道との間は街路樹などで区切っているのに対し、自動車の車線との境はあっても低い縁石だけであり、いずれも同一の路面であることにこだわっています。

スクリーンショット 2026-05-01 22.55.44

私が見てきた欧州の都市はそうではなく、車道にあっても歩道にあっても自転車レーンでした。ここではオランダの首都アムステルダム中心部の道路を紹介します。私が訪れたのは10年以上前なので、一昨年に撮影されたGoogle マップのストリートビューをいくつか転載します。車道の端に自転車レーンがある場所もありますが、歩道に自転車レーンを設けた場所もあることがおわかりでしょう。

とりわけ3枚目の写真は、板橋区の事故現場と同じように路上駐車スペースがありますが、自転車レーンは駐車スペースと歩道の間にあります。これなら警察官の負傷は防げたでしょう。駐車スペースの間に街路樹を植えているのもスマートで、駐車車両との接触も抑えられます。しかし日本ではこうすると、自転車レーンとして認められなくなってしまうことになります。

日本の自転車ルールがこのようになった理由は、ルールづくりに関わった一部の有識者が、車道左側通行に固執しすぎているためだと認識しています。たしかに自転車は車両の一部なので、日本では車道左側を走ることになっていますが、その考えを自転車レーンにまで当てはめているので、歩道上の通行空間は自転車レーンとして認めないとなっているようです。

スクリーンショット 2026-05-01 16.25.26
スクリーンショット 2026-05-01 16.29.15
スクリーンショット 2026-05-01 16.34.39

上で書いたように、自転車用と自動車用のレーンが、同一面で隣接することにこだわっているのも、日本の特徴です。なのでアムステルダムの写真で言えば、自転車レーンとして認められるのはいちばん上だけです。しかし多くの人は2枚目や3枚目のほうが、自転車にとってはより安全だし、歩行者が危険とは言えないと感じるのではないでしょうか。

日本の自転車保有台数は約6700万台で、乗用車のそれとほとんど変わりません。であれば3つの交通モードをきちんと区分したうえで、乗用車のように車両側で安全性を担保できない分、道路側で安全を賄うような作りが必要ではないでしょうか。現状はルールが先行してインフラが追いついていない印象だし、車道か歩道かという二者択一から、そろそろ脱却してほしいと感じています。

このページのトップヘ