THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2026年06月

自動車に興味がある人なら、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)の新車購入時に、国や自治体から補助金が出ることは知っていると思います。今週そのうち東京都が、下にあるように今年度のEVおよびPHEVの補助金(以下EV補助金)の上限額を引き上げました。EVでは最大100万円から130万円、PHEVは最大85万円から115万円にアップしています。

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東京都「令和8年度EV・PHEVの補助上限額を一部引上げ」オフィシャルサイトはこちら

東京都は日本の都道府県の中ではもっとも自動車を保有しにくい場所です。地価が高いので、駐車場を借りたり停めたりするのにコストが掛かるからです。ちなみに私が借りている東京23区内の月極駐車場は、月3万円です。地方に住む人が見たら驚く数字ではないでしょうか。それに鉄道をはじめとする公共交通が発達しているので、自動車に乗らなくても移動に不便は感じません。にもかかわらず、補助金は他の道府県を圧倒しているのです。

東京都の財源が、他の自治体とは比べ物にならないほど余裕があることは、子育て支援などさまざまな面で報じられています。これらは間違いなく一極集中を助長するものですが、議論を行う国会議員も、日本の議員数は人口に比例しているので、一極集中になりつつあります。本来EVは、一軒家が多く、公共交通が不便な地方こそ生きるはずなのに、現実は豊富な財源をバックに環境アピールの材料として使われている感があります。

もうひとつ気になるのは、メーカーごとの補助金に差があることです。東京都の資料を見ると、メーカー別では日本と米国は多く、欧州は中間、中国と韓国は少ないという傾向が読み取れます。実はこの傾向、国のクリーンエネルギー自動車(CEV)導入促進補助金にも見られます。というか国のそれは、えげつないという表現を使いたくなるレベルになっています。

いくつかの車種について、2024年度と今年度の補助金の推移を紹介すると、以下のようになります。

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テスラ「モデルY」 87→127万円
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ミニ「エースマン」45→45万円
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BYD「シーライオン7」 35〜45→15万円

この3車種、車両価格に大きな差はないうえに、生産している場所はどれも中国です。テスラは高性能で扱いやすい独自の充電ネットワークを用意するなど、インフラにも多大な投資をしているので、以前から補助金が多かったことは納得できますが、テスラがBYDの8倍以上というのは、ミニを含めた3台を実際に乗った者として、驚くしかありません。

なぜこのような差が出ているのでしょうか。経済産業省のホームページを見ると、「日米関税競技の合意も踏まえて」見直しを行ったという記述がありました。また同省では各年度の算定基準も掲載していますが、昨年度(上の表)と比べると、今年度(下の表)は点数の半分が供給の安定性/サイバーセキュリティへの対応に充てられていることが目立ちます。この2つの視点が、日米優遇、中韓冷遇という状況につながったのかもしれません。

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経済産業省「クリーンエネルギー自動車の導入補助金」オフィシャルサイトはこちら

ところでEVなどの補助金については以前から、ガソリン車やハイブリッド車に乗る人たちから、不公平であるという意見が出されてきました。このブログを見て、あらためてそういう思いを抱いている人もいるでしょう。

ただし今はガソリンにも補助金が入っているので、EVだけを非難するのは公平ではありません。それでも不満を言いたくなるのは、EV補助金がユーザーに直接還元されるのに対し、ガソリンの補助金は石油会社に出されているためもあるでしょう。EV以上にグレーな部分が多いガソリンの補助金も、クリアになってほしいものです。

2年に1度開催される、トラック業界では日本最大規模の展示会「ジャパントラックショー」が先月、神奈川県のパシフィコ横浜で開催されました。私はマイナビニュースの取材で初めて訪れ、いすゞグループの展示や講演を記事にしましたが、同社を含めて、近年の物流課題に積極的に取り組んでいる姿勢が伝わってきました。

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中でも印象的だったのは、上の展示です。IKEAの店内を思わせる洗練されたディスプレイのこれは、純正用品やサービスパーツを扱ういすゞA&S(アクセサリー&サービスパーツ)が参考出品した「REST +(レストプラス)」。長距離走行をするドライバーのために、脱着式テーブルや間接照明、快適なソファーベッドを備え、限られたスペースながら上質でリラックスできる環境を実現したそうです。

いすゞA&Sからは他に、エンジンを切った状態でも使える冷房装置、ベッド下のクローゼット、運転席用ラウンドカーテンなどの提案もありました。いすゞ自動車が販売している、AT限定普通自動車運転免許で運転できるトラック「エルフミオ」もそうですが、ドライバー不足の解消のために、敷居を低くして、安全快適に運転してもらおうというメッセージを感じました。



ただ先月末に発表された国勢調査の速報値でもわかるように、日本の人口は過去最高のペースで減少が続いています。こういう状況で、ドライバーのなり手だけが増えるというのは考えにくいことで、現状の物流を維持するには、外国人ドライバーを増やすしかないような気がしています。

すでにいくつかの会社が、東南アジアなどでトラックドライバーの求人に動いています。しかし海外の道路を見てきたひとりとして言わせてもらえれば、日本は道路標識が多いうえに、本標識の下にある補助標識は日本語でしか書かれていないものが多く、これらを一瞬で読解するには、単に日本語が読めるだけでは不十分だと認識しています。

それよりも手をつけるべきは、純粋に運ぶ量を減らしていくことではないでしょうか。具体的に言えば、コンビニの24時間営業をやめたりすることです。長時間の荷待ちをさせる荷主を厳しく取り締まったりすることも大事。そして東京への一極集中も悪影響を与えていると思っています。首都圏の高速道路でトラックが増え、渋滞が酷くなっていると感じるのは、全国各地から東京へ運ばれる物資が増えているからでしょう。

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もちろん自動運転も効果があります。こちらは以前ブログで、新東名高速道路での実証実験の様子を紹介しましたが、高速道路のインターチェンジの近くにステーションを設け、そこでドライバーが降りて自動運転に切り替え、目的地近くのステーションまで無人で走り、そこで待機している先方のドライバーにバトンタッチするという形になるようです。

つまりドライバーは配送センターから自動運転ステーションまでの短区間を運転するだけなので、負担が大幅に減るだけでなく、3月に新名神高速道路で起きた、ながらスマホにより6人の命を奪ったような悪質な重大事故は激減することか期待されます。

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事故と言えば、5月に磐越自動車道で起きたマイクロバスの死亡事故では、部活の遠征のためのドライバー不足が浮き彫りになりました。ここでも自動運転トラックが活用できそうです。運動部は荷物が多く、公共交通での移動は大変なので、バスを選んでいると想像していますが、荷物だけ自動運転トラックに運んでもらい、生徒や教員は送迎バスでの移動を最小限に抑えれば、安全性は高まるはずです。

個人的には、人口が減ること自体は、それほど大きな問題とは考えていません。大事なのは、人口減少に見合った社会を構築していくことだと思います。今の物流を維持しようとするあまり、トラックドライバーがさらに無理をするという構図は、重大事故をいくつも引き起こす可能性があるわけで、物流の構造を抜本的に見直す必要があると感じました。

通勤電車というと、片側に3・4箇所の両開きの広いドアを持ち、車内に入るとドアの間は進行方向に対して横向きに座る長い座席(ロングシート)と、それに沿ってつり革があるというレイアウトが一般的です。ところが最近、これとは違う座席配置の車両が増えてきました。

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まずは少し前にブログで紹介したRDEフォーラムも行われた鉄道技術展・大阪2026の会場、インテックス大阪への往復で使った大阪メトロ中央線です。ここには昨年の大阪・関西万博の開催に合わせて、斬新なデザインの400系が導入されました。そのうちの1両がクロスシートとなっているのです。車体中央部のドアの色がグリーンではなくグレーなので、外からもわかります。

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同じ関西を走るJR西日本の新快速のような片側2人掛けではなく、ひとり掛けです。おかげでロングシートと同等以上の通路を確保できており、つり革も同じ位置にあります。座ってみると、鉄道は横方向の揺れが少ないので、加減速のときの前後の揺れを背もたれで受け止めてくれるクロスシートは楽だと、あらためて感じました。

大阪メトロ中央線は近鉄(近畿日本鉄道)けいはんな線に乗り入れ、奈良市の学研奈良登美ヶ丘駅まで直通運転しているので、全区間を乗り通すと約1時間になります。たしかに座席定員は減りますが、6両中1両なら、長時間移動のためにも、こういう座席があっていいと思いました。

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車いすやベビーカー利用者のために座席を置かない、フリースペースも目にするようになりました。写真は京王電鉄2000系の5号車に設けられた「ひだまりスペース」で、ひと足先に登場した西武鉄道40000系の「パートナーゾーン」も近い作りです。座席をなくした代わりに、中央部に腰壁を備えていることが特徴です。

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横の窓がかなり下まで広がっていることも目立ちます。子供でも外が見えるようにという配慮だそうですが、私が乗った電車では、窓際に立つ人がいないことにも気づきました。ここまで大きいと外から丸見えなので、気が引けると思うのかもしれないし、子供のための空間だと理解する人が多いためかもしれません。

鉄道技術展・大阪2026では近畿車輛のブースに、「近車式多用途客室」が展示してありました。上で書いたように、車いすやベビーカー利用者に対応したフリースペースは増えていますが、ベビーカーを押してきた親などが座る場所は用意されていないことが多かったりします。そのための座席ということで、一部が東武鉄道80000系、近畿日本鉄道8A系などに採用されているそうです。

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電車はもともと都市内の短距離輸送用として生まれたこともあり、昔からロングシートが一般的でした。乗り降りしやすく、通路が広く取れるなどの特徴が向いているのでしょう。ただ近年はさまざまな利用者のことを考えた設備が大事になりつつあります。個人的には鉄道会社や車両会社、デザイナーの腕の見せ所ではないかと思います。斬新な車内をどんどん提案してもらいたいものです。

まずは下の写真をご覧ください。これは事務所の近くにある商店街の道路です。手前から奥に向けての一方通行で、歩道はなく路側帯があるだけですが、最近、自転車の通行部分を示すブルーの矢羽根型の表示が両脇に加わりました。この商店街から伸びる脇道(2枚目)は一方通行ではありませんがさらに狭く、路側帯すら設けられていませんが、同じように矢羽根表示が新たにペイントされていました。

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これを好ましい交通安全政策だと思う人は少ないのではないでしょうか。そもそも自動車1台がようやく通れる程度の幅で、歩道もないのに、自転車の通行場所だけを示すことに、違和感を抱いたのではないかと思います。

国土交通省の資料を見ると、国が定める自転車通行空間には、自転車道、自転車専用通行帯(自転車レーン)、車両混在(上で見せた矢羽根型路面表示など)の3つがあります。下のグラフにあるように、トータルでの距離は年々伸びていますが、増加分の多くは車両混在の路面表示となっています。これが我が国の自転車通行空間の実態なのです。

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狭い道と言えばもうひとつ、SNSなどで話題になっているのが、下の写真のように追い越しのための右側部分はみ出し通行を禁止したイエローのセンターラインが引かれた道路です。警察庁では自動車が自転車の右側を通過するときの目安として、少なくとも1メートル程度の間隔を空け、間隔を確保できない場合には時速20〜30キロ程度で追い抜くことが安全としています。しかし写真の道路の場合は、四輪車は間隔を開けると右側にはみ出すことになり、イエローラインなので違反になります。

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それならと違反回避のために時速20〜30キロで追い越しをすると、この道路の制限速度は写真にもあるように時速40キロなので、後続車もスピードを落とすことになり、追い越しに時間が掛かることから、対向車にも影響を及ぼすなど、交通に乱れを生じさせることが考えられます。

私は欧米での運転経験もありますが、追い越しのための反対部分はみ出し通行を禁止する区間が、日本ほど多い国はちょっと記憶にありません。見通しの悪いカーブなど、限定した場所で禁止とするのがほとんどです。 はたして自転車が車道を通ることを想定しているのでしょうか。自転車が車道を走るという前提であれば、自動車は追い越しのためにセンターラインをはみ出すことになるわけで、イエローラインにはしないからです。

では狭い道で歩行者と自転車、自動車が共存するには、どうすれば良いのでしょうか。ここではシェアドスペース(歩車共用空間)の考え方を紹介しておきます。

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シェアドスペースはオランダで考え出されたもので、歩道と車道を一体化して、信号機や道路標識などをなくすことで、道路を共用してもらうというものです。例としてグローニンゲンの事例をGoogleマップのストリートビューで紹介します。一見すると事故が増えそうな感じを受けますが、移動者が注意深く行動するからでしょう、実際には事故は減り、自動車のスピードが低下したという報告も出ているそうです。

自転車王国と言われるオランダで、シェアドスペースの考えも生まれていることに注目です。最初に紹介した渋谷区の商店街も、そもそもはシェアドスペースであるはずです。そこに矢羽根型の路面表示を描いて、自転車通行空間の整備をアピールすることが安全につながるのでしょうか。狭い道まで無理に区分することはなく、公道という呼び名のとおり、みんなで使うという原点に立ち返ってほしいものです。

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